歌を奏でる装者と無限を操りし少年   作:アユムーン

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復活の「槍」!

経過観察だとかなんだとかで、今日は実験も検査もなし

 

それなりに辛い毎日だけど、こんな日がたまにあるのだ

 

だから今日は久し振りにたっくさん遊んだ

 

そうして遊び疲れた身体は今にも眠りに落ちてしまいそうでふわふわしている

 

そしてそんな状態で寝転ぶ自分を誰かが優しく撫でている

 

頭の裏が柔らかい、枕とは違った柔らかさ、とっても心地いい

 

「「♪~♪~」」

 

そんな微睡みの中で誰かの歌声が聞こえる

 

その声は翼でも奏でもない

クリスでも、ソネットでもない・・・もっと昔に聞いた声

 

そんな優しい二つの声色に紛れて隣から聞こえてくる二つの寝息・・・それに釣られてふわふわしていた意識がもっと落ちていく

 

完全に落ちる寸前、切歌と、調と、マリアと、   と一緒に皆で何をしようかなとワクワクしながら落ちていく

 

・・・

 

パチッ、目が覚める

 

『おはよう、弧仁』

 

「おは、よう」

 

なんだか久しぶりにゆっくり寝た気分

 

このところ家事しかしていなかったので、久々の戦闘と謎の涙でかなり疲れていたようだ

 

なにか夢を見ていたようだが、覚えていない

 

覚えていないのなら仕方ないと、身体を起こす

 

マリア達と別れた後、ボーッとしながら帰ったので・・・どこに帰ったのか覚えていない

 

確認のために周りを見る、前には見覚えのある玄関、着てる服は昨日のままだ

 

どうやら家についてからそのまま玄関に倒れて寝たようだ

 

「お、起きたか」

 

「!、奏、さん」

 

そして二階から降りてきた奏、つまりここは弦十朗の家

 

「今起きたってことはお前昨日の夜からずっとそこで寝てたんだな。」

 

「起こ、してよ」

 

「起こしても起きなかったんだよ。それよりライブの後はそのまま響のところ行くんじゃなかったのか?」

 

「間違、えた」

 

「ふーん、まぁいいけどさ、折角だし朝飯作ってくれよ」

 

「うん」

 

「っと、その前にシャワー浴びてこい、昨日暴れたんだろ?」

 

「・・・うん」

 

奏の薦めのまま、風呂場へ向かう

 

・・・

 

シャワーを浴びて、リビングに戻ると

 

「あっちゃー、今冷蔵庫なんにもないじゃん」

 

奏の声が聞こえる

 

「ほん、とに?」

 

「了子さんの件の後片付けとかソロモンの杖とか翼のライブとかでバタバタしてたからなあ・・・旦那も二課に缶詰めだ」

 

「・・・」

 

そんなことなにもしらなかった、ただ順番になったら帰ってきて、ご飯作って掃除して、助けた気になっていた

 

・・・そんなことはなかった、知らないということがこんなにも罪悪感を募らせるなんて知らなかった

 

「・・・」グッ

 

「・・・しょーがない、飯食いに行くか」

 

「え?」

 

「ハンバーガー屋の朝メニュー食いたくなったしいくぞ~」

 

弧仁の手を引いて進む奏だった

 

・・・

 

「・・・」モグモグ

 

「こーゆーのってたまに食うと上手いよな」

 

「うん」モグモグ

 

「・・・なんか悩み事か?」

 

弧仁の上の空な受け答えに疑問を感じた奏が問う。    

 

「うん・・・あのね」

 

「なんだ?」

 

「俺、皆の、所に、いて、いいの、かな?」

 

「どういう意味だ?お前が離れるのは皆で止めたはずだぞ」

 

「うん・・・けど、もう、昨日、とは、立場が、違う」

 

今までは家族、友達として接していたが昨日からは違う、変わってしまった

 

味方でも敵でもない自分が、皆のそばにいつも通りいていいのか分からない

 

「そうだな、お前はアタシ達の味方にはなれない」

 

「けど、守り、たい」

 

「それは好きにすればいいさ、お前がアタシ達を守りたいなら守ればいい、逆にアタシ達だってそう思ってる」

 

弦十朗も緒川も、好きにやれ、と言っていた

 

だから、翼のことを助けた・・・だけど、気持ちはそれだけじゃなくて

 

「守り、たい、はず、なのに・・・」

 

「・・・なにがあったんだ?」

 

マリア、切歌、調との出会い・・・その三人に感じた謎の懐かしさ

 

そして

 

「俺、戦い、たく、ない」

 

本心とともに涙が溢れる

 

「マリア、達と、戦い、たく、ない。守り、たい」

 

「!」

 

それが胸に感じる懐かしさからくるものなのかは分からない

 

分からない、だけどとにかく戦いたくないと感じている

 

「でも、皆を、守る、なら、それは、できない、しちゃ、いけない、のにっ!」

 

だが、現状二課とマリア達は敵対している

 

だからマリア達を守ることはできない、頭では分かっているのに

 

「なのに、俺は、響、達の、ことを、見捨て、ようと、した!」

 

分裂増殖型のノイズが現れたあの時、そのノイズと響達のことを置いて、マリア達を追おうとしてしまった

 

例え、響達を信じていたからとれた行動だとしても・・・それはしてはいけなかった

 

「なぁ、なんでマリア達を守っちゃいけないんだ?」

 

「え?」

 

「さっきから聞いてたらさ、どっちかしか守っちゃいけないみたいな言い方だけど、なんでだ?」

 

「だって、俺は、どっち、かに、いなきゃ、いけ、ないから・・・」

 

「だからそこだって、お前勘違いしてるぞ」

 

「?」

 

「正しい方につけ・・・だけどそれってさ、どっちも正しかったらどうすんだ?」

 

「!」

 

「まだあのフィーネとかいう集団の目的は分からない、もしかしたらなにか理由があるのかもしれない・・・アイツらからそれ程の覚悟を、お前は感じたんだろ」

 

「・・・」コクッ

 

「ならまだなにも分かってないんだ。判断が早いんだよ」

 

「・・・でも、それ、は、今、分から、ない。だから、戦わ、ないと・・・それが、辛い」

 

「なら、守ってやれよ」

 

「!?」

 

「そうやってグチグチ泣いてウジウジしてるくらいなら、全部まとめて守ってやれよ。お前にはそれだけの力があるだろう」

 

「!!」

 

「・・・わりぃ、そんな簡単な話じゃないんだよな」

 

「・・・」

 

「後、もう一つお前悩んでることあるだろ」

 

「・・・うん」

 

「さっき聞いた、マリア達と会った時の懐かしさ、そして愛しさか?」

 

「初めて、会った、はず、なのに・・・なんでか、分から、ない」

 

「お前の無くなった記憶に関係してるんだろうな。ほぼ確実にマリア達はお前の過去に関わってる」

 

「なにも、知らない、のに・・・」

 

記憶がないのに、何故か守りたくて仕方がないのだ・・・

 

「それは違うんじゃないか?」

 

「え?」

 

「お前が皆を守りたいと思うのは、過ごした同じ時間や思い出があるからか?」

 

確かにそれはある・・・だけど違う

 

「!・・・そんな、こと、ない、それだけ、じゃない」

 

時間や思い出を通じて大切な友達、家族ができた、守りたいという気持ちが生まれた

 

「だろ?だったらきっとお前の中ではもうマリア達に守りたいって気持ちが生まれるくらい、同じ時間を過ごしたんじゃないか?」

 

「・・・」

 

「記憶がなくたって、心ってやつが覚えてる。その人達は戦う相手じゃない、守りたいって叫んでるんだろ」

 

「!」

 

「だから、そんな簡単に決めつけるなよ。心の叫びを無視して戦ったりなんかしたら、お前が潰れちまう。

 

それにまだまだ分からないことだらけなんだから・・・だけどさ、忘れんなよ」

 

「?」

 

「例え味方でなくて、敵でもない、よく分からない関係になったとしても、アタシ達は家族だろ?それから響達は仲間であり友だちだ。それはお前がどんな道を選んだって変わらないこと」

 

「!」

 

『弧仁がどんな道を選んだって私たちは皆、弧仁のこと待ってるから・・・帰ってきてね』

 

奏と響の言葉・・・まるで繋がるかのように、二人の言葉が噛み合う

 

「・・・帰る、場所」

 

「そうだ。でもお前の記憶が全部戻ったその時は・・・いや、これは言わない」

 

「?、なん、で?」

 

「さんざんカッコつけたこと言ったけどさ、アタシ的にはお前の帰る場所はアタシ達のもとであってほしい」

 

「うん」

 

「だから、万が一でもお前が帰る場所をアタシ達以外の場所を選ぶなんて、考えたくないし、言いたくなくてさ」

 

カッコ悪いな、と言って照れ隠しなのか、頭を掻く

 

「奏、さん・・・」

 

「だから、全部守ってみろよ。マリア達もアタシ達も」

 

「・・・うん、やってみせる」

 

涙を拭い、真っ直ぐ見つめ返す

 

「後、分かってると思うけど、アタシ達だって守られてばっかりじゃないからな。アタシだってどっかのお節介な先生のお陰でそれなりに・・・っとこれも言わないでおくわ」

 

「??」

 

「とにかくっ!もうどっか行こうととか考えんなよ?」

 

「うん、今日も、奏さんと、父さんが、帰って、これる、ように、美味しい、ご飯、作るね」

 

「おう!頼むぜ!」

 

少ししょっぱくなった朝御飯を終えて、奏は二課に弧仁は自身のやりたいことのために、行動を始めた

 

・・・それから一週間、マリア達の行動はなにもなく、二課もその目標を探ることもできなかった

 

弧仁もまた色々動き回っていた(炊事、情報収集、洗濯、ちょっとした戦闘、掃除)などなど行っていた

 

そんなある時、スーパーの前で携帯が鳴った、電話の相手は

 

「?、怪しい、資金、経路?」

 

『はい、とにかくそれはこちらで探らせていただきます』

 

反社会的組織を制圧した緒川からだった

 

弧仁さんの耳にいれていた方がいいことでもありますし・・・とのことで定期的に連絡をくれて情報共有をしてくれた

 

まずあのライブ当日に響とクリスが護送したソロモンの杖を研究するはずだった研究所がノイズに襲われ、ソロモンの杖と聖遺物の研究データが盗まれたらしい

 

そして、ソロモンの杖護送に同行していた研究者のウェル博士が行方不明

 

そしてあのライブ会場付近に乗り捨てられていた怪しげなトレーラーを探り、時計屋の出納帳から架空の企業から医療機器や計測器の発注があったらしい、日付は二ヶ月前

 

『司令からは追いかけるようにと指示をいただいています。また詳しいことが分かり次第ご連絡します。』

 

「あり、がとう」

 

ピッ・・・

 

「んー・・・」

 

『奏が言ってた通り、まだまだ分からないことだらけだね』

 

買い物カゴに今日の晩御飯の材料を入れていく

 

「マリア、達、無事、かな?」

 

『そこも心配だね。響達の方は定期的に確認連絡泊まり込みで、安全確認できてるけどね』

 

豆腐、香辛料、人参、ジャガイモ、玉ねぎ、牛肉・・・

 

「うん、学祭?ある、みたい、楽しみ」

 

『そだね』

 

新設されたリディアン音楽院、生徒は減ってしまったが、新たな生活に戻りつつあり、学園祭まで実施されるらしい

 

もちろん弧仁も誘われている

 

それにしても・・・

 

「医療、機器・・・計測、器・・・」

 

『普通に考えたら、病院だよね』

 

なにやらぶつぶつ言っている美少女面した男に怪しげな視線を向ける店員にも気づかず、

支払いを済ませる

 

「だったら、病院?」

 

『そこが今緒川が探ってるところ、でも普通に考えたらそうだよね』

 

牛肉は結露がでて、他の野菜が濡れないようにビニールに入れて、エコバックに入れていく

 

「でも、見つか、らない、怪しい、場所」

 

『またまたシンプルに考えれば廃病院!・・・なーんてそんな簡単な・・・簡単な・・・あれ?』

 

そうこうしてスーパーを出た辺りで二人は気づく

 

あれ?それじゃね?と

 

・・・

 

深夜、街から少し離れた場所にある廃病院

 

緒川と『ある協力者』の助言により、たどり着いたそこに二課所属の装者の響、翼、クリスが潜入していた。

 

「はぁぁぁ・・・今日のご飯は弧仁と未来の合作、マーボーカレーだったのに・・・もっと味わいたかったよ・・・」

 

「ったく、辛気くせぇため息溢すなよ」

 

「いや雪音よ。弧仁の麻婆豆腐は絶品、その料理は間違いなく超美味で「これから派手におっぱじめる時になに言ってんだよあんたは」しかし、こうも近くに合ったとはな」

 

緒川の調べでもまだ確実とはいえないが、この廃病院がマリア達のアジトではないかと睨んでいる

 

「尻尾がでていないのなら、こちらから引き釣りだしてやろうじゃねーか!」

 

そうして早速、装者達は突入する

 

中を進んでいく、もちろん人影はない

 

だが、なんだが空気が重く・・・そして

 

「意外に早い出迎えだぞ」

 

ワラワラと現れるノイズ達、明らかに本来なら群れないはずのノイズが統率をとった動きをとっている

 

このようなことができるのは見覚えがある

 

とにかくギアを装着し、ノイズとの戦闘にはいるが・・・

 

「っ!?なんだ!」

 

倒しても倒しても、ノイズが倒しきれない、一部が炭素化しても、即座に再生していく

 

更に・・・

 

「なんでこんなに手こずるんだっ」

「ギアの出力が落ちている・・・!?」

 

翼が感づいた通りギアの出力が落ちてしまっているため、攻撃力に加えてギア自体が重くなり、消耗が激しい

 

それでもなんとか辺りにいるノイズを殲滅・・・しかし

 

「二人とも!気を付けて!!」

 

突如襲いかかる謎の生物、翼のアームドギアにより迎撃したが・・・

 

「なぜ炭素と砕けない!」

 

謎の生物はアームドギアによる攻撃を受けても炭素とならず、即座に傷を再生させ迫ってくる。

 

そして現れたのは謎の生物だけでなく

 

パチパチパチパチ・・・突如響く拍手の音

 

それに釣られて謎の生物は拍手の元へと歩き、檻へと入っていった

 

その拍手を発する相手は

 

「いやいや、なかなか敏いではないですか」

 

「お前はっ!」

 

「ウェル博士っ!?」

 

行方不明のはずのウェル博士・・・その手にはソロモンの杖が握られていた

 

そう、研究所がノイズに襲われた、そもそも護送任務中にも現れたノイズは全てウェルによるもの

 

全てソロモンの杖を得るための演技

 

バビロニアの宝物庫よりノイズを呼び出し、制御することのできる聖遺物、それが相手の手にあるのは非常にまずい

 

それがあの時戦ったフィーネと呼ばれる集団なら、尚更

 

そうしている間にも、ノイズを呼び出し、装者に襲わせるウェル

 

三人の顔に焦りが浮かぶ・・・その時だった

 

「おらぁぁぁぁっ!!!」

 

ドゴォォォォンッ!!!!

 

天井をぶち抜いてノイズと三人の間に人影が落ちる

 

砂煙でまだ見えない、人影がゆっくりと立ち上がる

 

「な、何!?次は一体何事!?」

「弧仁か!?」

「違う・・・まさかっ!」

 

「遅くなってごめんな、マーボーカレーが上手すぎて・・・なんて冗談はおいといて、色々手間どってさ」

 

明るい髪に声、三人はこの人物を知っている

 

「それから色々こっちの状況を聞いたりするのでもっと時間かかってさ」

 

手には身の丈程ある普通の鉄の槍、しかし呪力を纏うそれを軽々と振るうその人物は・・・

 

「ここでやりあうのキツいんだろ?だったらここはアタシに任せとけ!!」

 

「「「か、奏!!?/さん!!?」」」

 

一度その命を燃やして歌い、人々を救いあげ、呪われ・・・その結果得た新たな力を持った少女「天羽奏」が無双の一振として再び戦場に降り立った

 




シンフォギアさんぽ

その頃の響と未来の家

弧「マーボー、カレー、どう、だった?」

未「美味しかったよ!香辛料とかも簡単だったし、これならいつでも作れそう」

弧「でしょ?」

未「それにしても響、おかわりせずに出ていっちゃったけど・・・」

弧「任務、でしょ」 

未「弧仁は行かないの?」

弧「色々、考え、て、暫く、は、様子見、する、ことに、した」

未「そっか、でもそれ長続きしなさそう」

弧「え?」

未「だって弧仁、今にも行きたそうな顔してるもん」

弧「!」

未「だから、私からお願い。響のこと迎えに行ってくれない?カレーは2日目の朝が美味しいんだから、早く帰ってこないとね」

弧「!・・・うん、ちょっと、行って、くる」

ガラッ、窓を開けて、そのまま飛び立つ

未「せめて、玄関から出ていってよ・・・いってらっしゃい、弧仁」


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