歌を奏でる装者と無限を操りし少年   作:アユムーン

53 / 92
明かされた「名前」

弧仁は急ぐ、行き先はあまり使われていない倉庫

そこに、米国政府の軍隊が突入しようとしている

 

その理由はそこに潜んでいるもののため

 

『はぁ・・・めんどくさいね』

 

ついさっき、追加の連絡があった

 

そこに潜んでいるもの、の正体・・・物ではなく、者だが

 

「マリア・・・」

 

その正体はマリア達武装組織フィーネ

 

切歌と調が学院にいることから、今はそこにはマリアがいる

 

武装組織フィーネは米国の研究機関FISから離脱した一派

 

その目的はまだ不明だが元々米国は身内である

 

それが何故狙われる?

 

『普通に考えて、逃げ出した制裁』

「もしくは、なにか、持って、逃げた、から」

 

この考えは両方とも間違っていないと推測し、次の疑問へ

 

何故二課は見つけられなかった?

 

「あの、ヘリ、なら、見つか、らない」

『ステルス機能の聖遺物なら、基本フォニックゲインやノイズ波形から調べていく二課からは身を隠せるんじゃない?』

「米、国、なら・・・」

『米国がどこまでやれるかは分からないけど、日本政府よりも鋭い捜査ができるのか・・・でも他所の国でドンパチやらそうなんて、中々やんちゃだね』

「周辺へ、の被害、も、ありえる」

 

益々嫌な予感が増していく、とにかく足を急がせた

 

・・・

 

「もうここが嗅ぎ付けられたの!?」

 

弧仁が得た情報通り、潜伏していた倉庫を米国に包囲されてしまったマリア 

 

「異端技術を手にしたといっても、私達は素人の集団。訓練されたプロを相手に立ち回れるなど虫がよすぎます」

 

そして、そこにはもう一人車椅子に乗った女性がいた

 

彼女はナスターシャ博士、元FISの異端技術の研究者でありマリア達がマムと呼んで慕う、武装組織フィーネの実質のトップだ

 

しかしナスターシャ博士はあくまでも研究者、戦いにおいては相手に軍配が上がる

 

「踏み込まれる前に攻めのまくらを押さえにかかりましょう、マリア背撃を頼ます」

 

「!、背撃って、相手はただの人間、ガングニールの一撃を喰らえば」

 

ギアの一撃でも、人間は簡単には死ぬ

そのことを知っているからこそ、マリアは躊躇う

 

「覚悟を決めなさい、マリア」

 

しかし、ナスターシャはそんなマリアに厳しく詰め寄る

 

ドガァァァァンッ!!

 

攻撃が始まった、ヘリが揺れ、外の様子を映す映像にはこちらに近づく軍隊が見える

 

「くっ・・・!!?、炭素分解・・・だと!?」

 

しかし覚悟を迫られるマリアの目に写ったのは逆に炭素分解され、消えていく軍人

 

それはノイズによるもの、そしてこの世界で今現在唯一ノイズを自在に操れる人間はただ一人

 

「ドクターウェル!」

 

「でしゃばりすぎとは思いますが、この程度の相手に新生フィーネのガングニールを使わせる必要はありません。僕がやらせてもらいますよ」

 

そう言い、手に持つソロモンの杖を振るい、ノイズを出現させ、次々に襲いかからせる

 

響く悲鳴、落ちる武器

積もっていく人だったモノ、消える命  

 

そんな音達がマリアを苦しめる

 

「っ・・・」

 

ナスターシャはそんなマリアを一瞥し・・・目をそらした

 

その先にある映像の一つに、近くを通っていた野球少年達が映っている

 

その少年達がいるのは、倉庫の入り口付近

 

その入り口から飛び出した軍人の一人が、ノイズに逃さず炭素分解された

 

「おやぁ?」

 

それを追ってウェルが現れ、少年達を見つけ・・・ソロモンの杖を向ける

 

目撃者がいてはいけない、だから消す

 

「やめろウェル、その子達は関係ないっ!」

 

ウェルの思惑を察した通信越しにマリアが必死に叫ぶが、ウェルは止まらない

 

嫌な光と嫌な音と共にノイズが出現し、少年達を飲み込まんと襲いかかる

 

「うぁぁぁぁぁ!!!!」

 

ガンッ!!

 

「!?」

 

地に伏せ、叫ぶマリアに聞こえたのはウェルの声でも、人の命が消える音でもなく・・・なにかが殴られた音

 

「・・・まさか、彼が来るとは」

 

「?・・・!!」

 

ナスターシャの言葉を聞き体を起こして、影響に食すがりつくように見る・・・そこにいたのは

 

「五条弧仁・・・」

 

少年達を守る弧仁だった

 

・・・

 

「おやおや英雄の到着が少し遅かったのではないですか?」

 

「?守れ、てる、けど?」

 

到着と同時にノイズを消し飛ばし、無駄なパニックを防ぐために少年達に呪力を当てて気絶させた。

 

「どうやらそのご自慢の目には中の様子が写っていないようだ」

 

「?、別に?炭と、ヘリ、だけ、でしょ?」

 

「その炭がなんなのか、よくご存じのはずでは?」

 

「人、だった、もの」

 

「その通り、それなのにその落ち着きっぷり、英雄の胆力というわけですか?それとも貴方の手で傷つくものなど見慣れているというわけですか?」

 

「・・・なにが、言い、たい」

 

「貴方が誰かを守るために振るった力は他の誰かを傷つけている・・・ということですよ」

 

腕を組み、首をかしげて・・・結論づいた

 

「そう?・・・そう、かな?・・・いや、そうかも、ね」

 

少し考えたが、その通りだと思う

 

「なっ!」

 

「だって、そう、でしょ」

 

この力があるだけで人は争うし、正しく使えたとしても、守れなかったり傷つけてしまったりすることがあるくらい・・・この身をもって知っている

 

「は、ははっ、ならなぜ英雄になろうとしないのです?」

 

「前も、言った」

 

弧仁にとって優先するものは決まっているから

 

「家族、友達、俺が、守り、たいの、は、それだけ、それ、以外は、どう、なって、もいい」

 

「っ!それだけの力を持ちながら烏滸がましい!!」

 

『うわ、なんだこいつ』

 

突然激昂したウェルに引きつつも続ける

 

「ノイズどころか、世界すらも掌握することも容易い力!人に崇められ、導く、まさしく英雄の力!」

 

「・・・」ピキッ

 

「どれだけの人間がその力を羨み、欲しがると思うっ!!?それだけの力を持ちながらちっぽけな小さな箱庭だけを守ろうとする!?」

 

その後も激昂しながら狂言を続けるウェル

 

頭の血管が切れそうになる、これは怒りではない嫌悪だ

 

別に米国の軍団を皆殺しにしようが、正直どうでもいい、顔も名前も知らんし、軍人だってその辺は覚悟の上だと思う

 

後ろで倒れている少年達はたまたま目には入ったから助けただけだ。この子達を殺そうとしたこともまぁいい。目撃されたのだからなんらかの手を打つのは当然のこと

 

嫌悪したのは語ってくるウェルの英雄像と呪術を神格化したかのような発言

 

この力を得るためにどれだけのものを支払って来たと思っているのかと、ぶん殴りたくなった

 

そしてなにより、弧仁の守りたいものをちっぽけな小さな箱庭と言い捨てたことに腹が立った

 

いや、腹が立つというより、もはや嫌悪だ

 

吐き気を催すほどの嫌悪感、ここまでこの感情を人に感じたのは初めてだ

 

目隠しを額に上げる、そうして顕になったのは二つの六眼

 

「君の英雄像なんかどうでもいいし、それを僕に押し付けないでくれる?僕の考えたかっこいい英雄とか引くわ、お前何歳だよ。」

 

そうして中指を立てて、ウェルに向けて続ける

 

「ヒーローごっこがしたいのならお友達とやっててくれる?・・・あ、ごめん!君友達いなさそうだもんね~!!できないかー!」

 

その後も煽りに煽り、ウェルは同然激昂

 

「貴様っ「こうじ!!」ぐはっ!!」

 

激昂し、杖を向けたが後ろから走ってきたマリアには突き飛ばされる

 

そしてマリアは・・・ギュッ!

 

「ありがとうっ・・・ありがとうこうじっ」

 

「!・・・マリア」

 

弧仁に抱き着いた

 

その衝撃と驚きで、先程までの怒りが抜けた

 

時折聞こえる嗚咽の声、きっと泣いている

 

声の視線の少し下に見えるマリアの頭、

 

自分の背に回された細い腕、

 

胸部に感じる柔らかい感触、

 

全部懐かしい気がする

 

・・・いや、昔と少し違う

 

少し見上げないと見えなかったマリアの顔、その顔も泣き顔のと声じゃなくて優しい笑顔と声だった

 

背に回された腕ももっと力強かった

 

柔らかい感触も昔は顔に感じてた

 

これはきっと、昔の記憶と感覚

 

だって今マリアを見つめている瞳は日本人特有の黒い瞳だったから、今のような片眼が蒼い瞳ではなかったから

 

「覚悟を決めたはずなのに!、私には、できなかった・・・」

 

戦場の凛々しい彼女を知る人物が今のマリアを見たら、違和感を覚えるだろう

 

だけど、弧仁には今のマリアこそが本当のマリアだと確信が持てた

 

「大、丈夫」

 

マリアの背に自身の腕を回し、優しく抱き締める

 

「大、丈夫」

 

きっとマリアが求めている「こうじ」は、弧仁ではない、それでもこうしたかった

 

「大、丈夫、マリアは、マリアの、ままで、いいよ」

 

いつかしてもらったように、今は自分がマリアを慰めたかった

 

・・・

 

暫くマリアを宥め、五月蝿いウェルは殴って気絶させた

 

そうしていると、通信を受けたマリアが驚きの声をあげた

 

「!、本気なのマム?」

 

「?」←ペンを片手に持っている

『ぶははっ!弧仁その落書き最高!』

「・・・」←額にキバット、ギンガ、ギンガ、オラディーンと落書きされているウェル

 

縛ったウェルの顔に落書きをしていた弧仁はその声に振り向く

 

「えぇ、えぇ、分かったわ、また後で」

 

通信を切ったマリアが弧仁の方を向きなおした

 

「マムがウェルと貴方を連れて戻ってきなさいと」

 

「マム?、確か、切歌が、言ってた」

 

「えぇ、私たちの・・・いえ、貴方も含めた私たちの親と言える人よ」

 

「!」

 

「判断は貴方に任せるわ。でも・・・私としてはきてほしい。きっとマムは貴方の過去を語ってくれるのだと思うわ」

 

「・・・」

『ここは一択でしょ』

 

「いくよ」

 

「!」

 

「マムに、会って、みたい」

 

それと自分の過去を知りたかった

 

「なら案内するわ、着いてきて」

 

マリアの案内に従いながらウェルを引き釣り、廃病院の時に使用していたヘリに乗り込む

 

中を進み、途中の適当な部屋でウェルを投げ入れて

 

「ここよ」

 

「おじゃま、します」

 

操縦室と思われる部屋にはいる・・・そこには

 

「おかえりなさい、マリア。そして、よく来てくれました五条弧仁」

 

「!」

 

「私はナスターシャ・セルゲイヴナ・トルスタヤ・・・好きにお呼びなさい」

 

なにやらモニターを操作していたナスターシャがこちらを振り向く

 

その顔を見た瞬間、マリア達と初めて会った時と同じように懐かしさを感じた

 

それと同時に嬉しさも感じ、それが気持ちを焦らせる

 

「あの、俺」

 

「落ち着きなさい、貴方の記憶がまだ完全ではないということは分かっています。順を追って話しましょう」

 

「う、うん・・・」

 

「その前に一度ヘリを飛ばします。ここも見つかったので離れなければなりません。それに切歌と調を迎えにいきます。危ないのでどこかに捕まっていなさい」

 

そういってモニターに向き直したナスターシャ博士はモニターを操作し、ヘリが動き出す

 

「へりの操縦は自動運転に切り替えました。このまま切歌と調と合流する地点に向かいますよ。その間に話をしましょう」

 

「・・・貴女も、俺の、こと、知って、るの?」

 

「えぇ、よく知っています。こちらの話というのも貴方の過去についてお話ししようと思い、招かせていただきました」

 

それは嬉しい・・・だけど

 

「こちらに、つく、とは、言えない」

 

自身の過去の情報と引き換えにフィーネ側につかなければならない

 

全てを守ると決めた今、それはできない

 

「分かっています。今回の件で貴方には恩がある。だから、その件はなしに、貴方の話をします。」

 

「恩?」

 

今回の件での恩・・・思い当たる節はないのだが?

 

「そんなことない、貴方は私の心を救ってくれた」

 

「!」

 

「ドクターウェルは予想外でしたが、貴方が駆けつけてくれたお陰でこちらとしても望んでいない無益な殺生を避けることができた。今からする話はそのお礼です。」

 

「なら、お願い、します」

 

「えぇ、まず貴方の出生から・・・貴方は普通の家庭に産まれ、両親の元で育ち、ノイズに被災し、両親を亡くした。」

 

「それは、知ってる」

 

「そうですか、とはいってもここまでの情報も私も報告でしか知らなかったことです。マリア達も出会う前の貴方のことは知らないでしょう」

 

「えぇ、施設に来た段階で貴方自身も出生や両親の記憶も失くしていたわ」

 

「施設・・・俺が、いた、違法、研究、の場所?」

 

「いえ、違います。そこに行くまでに貴方は私が所属していたFISの研究施設にいたのですよ」

 

「!」

 

「リインカーネーションについては知っていますね?」

 

「はい」

 

「ならば、話は早いです。そのリインカーネーション、その発動条件であるフィーネの器となれる人間・・・子ども達を『レセプターチルドレン』といいます」

 

「俺が、それ?」

 

「えぇ、貴方が、というより、貴方達が、ではありますが」

 

「!、そっか、マリアが」

 

「・・・えぇ、私はこの時代に新たに目覚めたフィーネよ。とはいっても今は聖遺物を使用し、少しずつその記憶を受け入れている状態よ」

 

「・・・それ、本当?」

 

「もちろんよ。そうでしょうマム?」

 

「・・・そうですよ。そしてそのレセプターチルドレンとは、いわば身よりのない子どもを中心に集められました。ノイズの被災により身よりのなくなり・・・フィーネの刻印を持つ可能性のあった貴方は当時の米国政府によって拐われ、FISの研究施設に収容されました」

 

「これについてはかなり無作為なところもあるから、貴方が連れてこられたことに理由はないわ」

 

「そう、なんだ。そこで、マリア、達と?」

 

「その通り、貴方達は実の兄弟のようでした。」

 

「『記憶はないけど、俺には姉ちゃんと妹がいた気がするから俺達これから家族!』・・・なんて、言っていたわよ」

 

「覚えて、ない」

 

「!、そう・・・」

 

「けど、俺と、マリアと、切歌と、調と、あと一人、誰か、いな、かった?」

 

以前みた夢には、四人とあと一人、自分を撫でてくれた人はもう一人いた気がする

 

「!」

 

「セレナのことを覚えているのですか?」

 

「セレナ?その、人は?」

 

「・・・六年前、とある聖遺物の実験で亡くなったわ」

 

それを告げるマリアの顔は険しい

 

「!!・・・ごめん」

 

「構わないわ、でも貴方、セレナに懐いていたのに・・・」

 

きっとマリアにとっても大切な存在だったのだろう

 

「・・・」

 

思わず会話が止まる・・・その沈黙を破ったのはナスターシャだった

 

「話を戻しましょう・・・そしてその事件の少し前に、日本から正体不明の聖遺物が送られてきました」

 

「!!」

 

「完全聖遺物・・・いえ、貴方の言い方でいえば特級呪物『五条悟の目隠し』ね」

 

「調べる限りでは異質なエネルギー反応がありましたが、フォニックゲインや様々なアプローチをかけたとしてもなんの反応もないそれ。

 

しかし唯一反応があった実験がありました」

 

「・・・人体、実験」

 

「そう、初めてのそれを装着した研究者は注がれる情報に脳が耐えきれず、死亡しました。

 

それを見た他の研究者は歓喜し、そしてそこから謎の情報が注がれていることなどが少しずつ明らかとなり、その注がれた情報をその身に受け入れられた時になにが起こるのか・・・飽くなき探求心は留まることを知らず」

 

「聖遺物に適合する確率が高いと思われるレセプターチルドレンでの実験が始まった」

 

「!!」

 

「当初は目隠しは聖遺物と考えられていたことを考えると当然の結論・・・そしてフィーネの器としての可能性が低いと考えられるものが選定されました。その一人が貴方です。」

 

「・・・」

 

「ある日突然のことだったわ、いつも通り貴方の部屋に行ったら、貴方はいなくなっていた。急いでマムに聞いたわ・・・米国の上層部は貴方に対して実験に応じない場合、私達を実験対象に移行すると、脅しをかけたそうよ」

 

「それに対して貴方は参加することを即決した。一介の研究者である私にはそれを止めることができませんでした。申し訳ありません」

 

色々と思うことはあるが、自分でも同じことをすると思うから・・・

 

「しょうが、ないよ・・・一つ、聞いて、もいい?」

 

「なんでしょうか?」

 

「マリア、が、俺の、ことを、『こうじ』って、呼んでた。あの、時は、俺の、ことは、呼んで、なかった、はず、なのに、なんで?」

 

「それについてはこの先でお話ししましょう。私達の元を離れた貴方は目隠しから注がれる情報に耐えきれるように、身体をより強固なものするための実験と改造を受けました。」

 

「・・・うん、それは、少し、覚えて、る」

 

「マムはその違法研究についての情報を常に集めていたわ。貴方を助けるためにね」

 

「そうしていると、その研究施設から脱走者が現れた聞きました・・・貴方ですね」

 

「・・・うん」

 

「ここから先のことは貴方のほうが詳しいでしょう。そして次に貴方の気になっている名前のことです。」

 

「お願い、します」

 

「レセプターチルドレンとして研究施設に連れられる前に貴方の両親が着けた名前、それが「幸詞(こうじ)」なのです」  

 

明かされた名は、今の自分と同じ名前だ

 

「!!」

『これは、驚いたね・・・』

 

「でも漢字は違うのよ、確か幸せに歌詞などの詞(し)だったかしら?」

 

「えぇ、どういった経緯で今の貴方の名前がついたのかは知りませんが、字が違うとしても両親の願いを込めた名前は、ずっと貴方と共にあったのですね」

 

「・・・」

『これは僕も知らなかったよ。本当に偶然・・・普段は全く信じたりしないけど、流石に運命みたいなものを感じるね』

 

胸の奥がジン、と熱くなってくる

 

「幸詞・・・貴方・・・」

 

「?・・・!」

 

ポロポロと涙が溢れて止まらない

 

「ごめ、ごめん、なさい・・・」

 

「・・・いいのですよ、一度に沢山のことを知って心が驚いているだけ」

 

車椅子を移動させて、ナスターシャが弧仁の近くに寄る

 

「顔をよく見せてくれますか?」

 

「・・・うん」

 

ゴシゴシと、目を擦って、まっすぐ前を向く

 

「今はもう背を比べるまでもなく、貴方の方が大きい・・・本当に大きくなった」

 

弧仁の頬を撫でるナスターシャ、眼帯を着けていない方の瞳から涙が一筋流れた

 

「・・・あの」

 

「なんです?」

 

「マムって、呼んでも、いい?」

 

「!・・・えぇ、もちろん」

 

「ありがとう・・・マム」

 

血の繋がりはもちろんないし、なんなら今日が初対面、なのに心と感情がこの人を愛しく・・・そして大切な人だと訴える

 

両親とも弦十郎とも違う、マムと弧仁の親子がここで再会したのだった

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。