再会の涙を拭い、戻ってきて横でギャンギャン吠えるウェルをシカトしながら目的地に着いたヘリ
マリアとナスターシャとついでにウェルと共に降り立ったそこで切歌と調と合流した
「!、な、なんでお前がここに!?」
弧仁の姿を見て当然驚く切歌
「ちょっと、色々、あって」
「色々って「弧仁はこちらに来た本国(米国)の強襲を防ぐために駆けつけてくれたのよ」!」
切歌の言葉を遮ってマリアが説明する。
「なので邪険にするのは失礼ですよ切歌」
そしてそれに同意したナスターシャ
「ぐっ・・・遂にマムまでですか・・・」
弧仁に対して未だに敵対心があるのに周りの仲間は受け入れている状況に悔しそうに項垂れる切歌・・・その様子を見て弧仁の胸が少し痛む
だけど、なにも声をかけることはできない
何故ならヘリから降りる時にナスターシャから頼まれたことがあったからだ・・・
「幸詞」
「なに?」
「もうすぐ切歌、調と合流しますが・・・貴方の正体はまだ明かさないでいただきたいのです」
「!なん、『僕や緒川がクリスや響のことを黙ってたことと同じだよ』・・・」
あの時二人は、真実を知った場合の精神的負荷を考え、黙っていてくれていた
本当なら弧仁が寛容と覚悟をもった時の伝えてくれるはずだった真実は不完全な形で知ることになったが、それを乗り越えて強くなった今がある
だけど、その今は弧仁を支えてくれた人がいたから乗り越えることができたこと・・・それなら
「マムは、支えて、あげないの?」
二人がナスターシャを慕っていて、親代わりに思っていることは知っている
そんなナスターシャとマリアがいるのならなんの問題はないはずなのに
「・・・もちろん支えますよ」
「なら」
「しかし現状、どう足掻いても私達は孤立した集団です。いつ倒れてもおかしくない状態の彼女らによけいな負担はかけられませんよ」
「なら、マリアは、なんで?」
「私はフィーネの中心核、そんな私が貴方に違和感を持ったまま戦い、真実に気づいた時にブレてしまっては本末転倒・・・だからマムは伝えてくれたのよ」
「・・・」
マリアに説明されて納得した、だけど燻る思いがある
「貴方の気持ちは分かりますが、分かってください。いずれ貴方も知ることになる私達の目的において、貴方の存在とその真実は私達の希望であると同時に最大の不確定要素に変わりないのです」
「っ!」
「私からもお願い・・・あの子達が自分で気づかない限りは明かさないでほしい」
それでも、二人と和解したいと口にしようとしたが・・・
『情に流されるな』
擬きが止める
「!」
『今の君のスタンスを見失うな、守りたいものを見極めろ』
擬きの制止で今の自分を思い出す、さっきまで完全にマリア達の味方になっていた・・・それではいけない
「・・・うん」
まだモヤモヤする思いを押し殺して、答えた
・・・そんな会話があったから、弧仁はなにも言えないのだ
パシンッ!パシンッ!
「!」
そのことを思い出し端に寄っていた意識が二つの音で戻ってきた
気付くと涙目になっている切歌と調、二人とも頬が赤くなっている・・・ナスターシャが叩いたのだろう
「いい加減にしなさい!マリアも、貴女達二人も!」
そのまま三人を叱るナスターシャ
『詳しいことは話してないから分からないけど、切歌と調は響達・・・違うな、翼とクリスのペンダントをとり損ねたみたい。それからなんか決闘?を挑んだらしいけど』
切歌と調の行動はよく分からないが、今はなにも言えない・・・黙っていると、ウェルが口を挟んできた
「まぁまぁ、その辺でいいでしょう。それより、その子達の交わしてきた約束・・・私が引き継ぎましょう。」
「なに、する、つもり?」
睨む弧仁に対してウェルは皮肉を返す
「おぉ怖い怖い・・・どっちつかずの貴方がこちらに足を突っ込みすぎでは?黙っていていただきたい」
「っ!」
くやしいがウェルに分があり、反論できず口ごもる・・・その様子を見て笑みを浮かべたウェルにナスターシャが問う
「反芻することになりますが、なにをするつもりですか?」
「なぁに、少し試してみたいことがあるだけですよ」
「・・・」グッ
ムカつく笑みを浮かべるウェルに対してこれでもかと拳を固く握る弧仁
『どうする?この場でコイツは潰しとく?』
「・・・」
『コイツになにか役割があるような気がする・・・か、いいね、冷静な判断だ
ここからは対応が後手に回ってしまうのは立場上しょうがないから、この際放っておこう。作戦はいのちだいじに、でいこう』
「・・・うん」
大事にする命は自分ではない、守りたいものの為
昂る気持ちも押し殺して、ヘリに戻る
・・・
なにやら準備があるウェルと別れて、ナスターシャとマリアと共に切歌、調の話を聞く
弧仁と別れた後の切歌と調の二人は秋桜祭で行われている歌唱コンテスト的なのに出場し、その優勝賞品である願いを叶えるを利用して、ギアペンダントの強奪を図った
この時点でなにやってるんだ、と頭を抱えたくなったが・・・話を続ける
コンテストの途中でナスターシャからの米国からの強襲の連絡を受け、コンテストを中断しこちらに向かおうとした
その途中で二課の装者、響、翼、クリスが接触したが、その場での戦闘は互いに望むものではなかった(切歌と調は戦力的に、響達は周囲への被害のため)、そのため後日決闘という約束をつけて、その場を退避した
「・・・」ハァー
先ほどまでどちらかといえば切歌と調の側に立っていた弧仁だったが、流石に溜め息をついてしまう
そもそもマリアに関しても冷静になった今にして思えばだいぶ愚行である
「・・・」
『ん?・・・オッケー、変わろっか』
こういった説明は擬きの方が早いので、説明してもらう
「さて、久々の僕の視点だね」
雰囲気が変わった弧仁に驚く一同
「!、貴方は?」
「やぁやぁ、僕は弧仁の中にいるもう一つの魂こと、五条悟擬きだよ」
「貴方が・・・なぜ出てきたのです?」
「弧仁が説明するのめんどいからって僕に全投げしてきたんだよ。先生使いが荒いんだから・・・まず一つ目はマリアからいこうか
君、覚悟決めたっていうのならちゃんとやれ・・・深く聞かないけど大切なものを失う恐怖、知ってるんだろ?・・・取り返しつかなくなるよ」
「ッ!」
「二つ目、切歌と調、目的があるのなら手段を選ぶな。周囲への被害を相手が危惧してるのならそれを100%使え
邪道結構、戦力差を埋めるのならそのくらいはやれ」
「「っ!!」」
「三つ目ナスターシャ教授、貴方は聖遺物や異端技術には長けてるっぽいけど、戦闘関連に関してはトーシロでしょ?こんな大がかりなドンパチやらかすんだったらその辺のことはちゃんと計算に入れろ・・・この子達殺す気?」
「・・・返す言葉もありませんね」
「なんで見ず知らずのお前にそんなことを「弧仁は優しくて言えないから僕が代わりに言ってるんだよ」!!」
「弧仁も、同じことを思ってるの?」
「うん、ここにいる中では弧仁は戦闘に関して一番知ってるからね
ウェルに関しても行動自体は間違ったことはしてないってさ」
弧仁にもそれなりのキャリア(二課のエージェント→戦闘員)があり、現状二課のサポートなしでもある程度動けるのはそれゆえだ
未来(みく)のように言うのなら友人、家族としてはマリア達の行動は肯定するが、戦士としては否定する内容しかない
ここのメンバーに徹底的に足りないものそれは戦闘に慣れた指導者である
ウェルは本職は研究者なので、それにはなれないのだろう
それを埋めることができる人物がいるも言うのなら・・・
「・・・なら、貴方にこちらにいてほしい」
「!、調!?」
真っ直ぐに擬きを見つめて調が話す
「それは僕?それとも弧仁?」
「両方・・・嘘、8割は弧仁」
「だろうね」
「貴方なら足りないものを補うことができる・・・違う?」
「もちろん、僕と弧仁がいれば鬼に稀血、憂太に里香ちゃん・・・だけど残念、それはできないね」
「それはなんで?」
「弧仁が守りたいのはどちらでもあるからだよ・・・細かい話はここまで、後はウェルの行動を見ようか、弧仁の出番もありそうだしここにいさせてもらうよ」
なにかあった時に即座に対応ができるようにヘリに残る
・・・そうして日が暮れ、夜になる
決闘の場は以前のフィーネとの最終決戦となったカ・ディンギルの近く
そこにウェルが一人降り立ち、ノイズを出現させる
『ノイズの発生で二課に決闘を伝えてるのか』
「・・・」
険しい顔でモニターを見つめる弧仁、今ヘリはカ・ディンギル近くに浮遊している
異端技術により、センサー等に引っ掛からないステルスを持っているからこそできる芸当である
そしてこれは弧仁にとってありがたかった
『なにかあっても、即座にいけるもんね』
「・・・」コクッ
モニターを見つめる弧仁の周りにはもちろんマリア達がいる
そうこうしていると、響達がやって来た
恐らく奏は後ろで待機しているのだろう
そして戦闘に入る
装者達にウェルの出した大量のノイズなど何のその、蹴散らしていく
暫くはその映像が続いたが、その途中でウェルと響達の論争が始まった
『我々が望むのは人類の救済!』
なにを企てるのかと問う翼にウェルが月を指差し答える
フィーネとの戦闘の際に一部が欠けてしまった月、
『月の落下にて損なわれるむこの命を可能な限り救い出すことだ!』
「月の・・・落下?」
ウェルの言葉に疑問を覚え、ナスターシャに視線を移した。その視線に答え、口を開く
「月の欠損により公転軌道が変化しています。そして各国政府はそのことを隠蔽しています。そして、自らが助かる道のみを計画している」
「!!、なら、マム、達の、目的って」
「そう・・・それに対して私達は国を束ね、人を束ねるために、この組織を立ち上げたわ」
マリアが答える
「けど、そんなの、どうやって」
弧仁と擬きでも欠片を消し飛ばすだけで精一杯だった
侮っているわけではないが、マリア達に落下してくる月をどうにかできるとは思えなかった
「そのために私達は目覚めさせました・・・ネフィリムを」
「ネフィ、リム?・・・ッ!?」
聞き覚えのないネフィリムという言葉・・・その答はすぐにモニターに現れた
『グォォォォ!!』
弧仁はまだ見たことはなかった以前廃病院で響達が交戦した謎の生物・・・ネフィリムが突如現れ、クリスを吹き飛ばした
「あれ、は?」
「あれこそがネフィリム・・・この星を救うための力ですよ」
「・・・あん、なのが?」
獣のように響に襲いかかるネフィリムに、そんな希望など見出だせない
「詳しいことはいえません・・・ですが、私達の計画において必要不可欠なピースの一つです」
「ッ!」
噛み締めた唇、モニターではネフィリムの一撃により気を失ったクリスと共に駆け寄った翼が、他のノイズの粘液に捕らえられてしまった
すかさず響がフォローに入り、ネフィリムと一騎討ち
響が優勢に見えたが・・・
『ルナアタックの英雄よ!その拳でなにを守る!?』
ウェルの言葉が五月蝿く響く
公には月の欠片の落下を止めたのはシンフォギア装者となっているため、関係者は響達のことをルナアタックの英雄と呼ぶ
そんなことをノイズを出現させる手を休めず、語り続けるウェル
『そうやって君は、誰を守るための拳で!もっと多くの誰かをぶっぱなしてみせるわけだ!!』
その言葉で響に動揺が見られた・・・その刹那
『立花ァァ!!!』
「っ!!!」
翼の悲鳴に似た叫び、目に映る光景には響の腕を喰らい・・・喰いちぎるネフィリム
続いて・・・飛び舞う鮮血
あるはずのものがない響の左腕と悲痛な叫び
ネフィリムが現れた時点で駆けつけていたのだろうが間に合わなかったようだ・・・奏が参戦し、翼達の拘束を解き、響の前に立ち、ネフィリムと退治している
「あのキテレツ!!どこまで道を外してやがるデスか!!」
壁を殴りながら、ウェルの奇行に激昂する切歌
「ネフィリムに聖遺物の欠片を餌として与えるってそういう・・・」
「どう、いう、こと?」
「アタシ達は、ネフィリムの餌としてアイツらのギアを奪おうとしていたんデス・・・それを計画したのはドクターウェル・・・でもまさか、こんな・・・」
「ッ!」ギリッ
これらのことをウェルは全て計画していたのかは定かではないが理屈と道理は分かる・・・だけどそれ以上に外道さと友を傷つけられたことに腹が立つ
思わず目を逸らしてしまいたくなったが・・・逸らさない、逸らしてはいけない
『そう、逸らすな・・・しっかり見ろ』
嫌な現実を見るのはいつまでも慣れない、だけど・・・目を逸らす方が罪だと知っている
それでも、頭に血が昇る
そんな頭ではなにか話しているマリア達の言葉が断片的にしか聞こえない
「アイツは人の命を弄んでいるだけ!こんなことが私達の為すことなのですか!?」
「アタシ達、正しいことをするんデスよね」
「どうして、こんな気持ちになるの?」
「その優しさ、今日を限りに捨ててしまいなさい」
弧仁とナスターシャだけが真っ直ぐに現実に目を向けていた
弧仁は友が傷つけられている現状を
ナスターシャは計画のために、捨てなければならない優しさを
ナスターシャはもう覚悟を決めている、だから優しさを捨て、微笑みは要らないと言いきった
だから自分は自分が為すことを為す
『解は出てる、行け弧仁』
「マム、ドア、開けて」
「・・・行かせると思いますか?」
「なら、無理矢理、行くよ?」
「・・・分かりました」
了承を得て、戦場に向かう
・・・その前に
ポスッ
「!?」
「弧仁・・・」
切歌と調の頭に優しく手を乗せる
ポスッ・・・次にマリア
「幸詞・・・貴方・・・」
ようやく分かった
彼女達は覚悟を決めたと言っていたが・・・それはまだ本物ではなかった
他者を蹴落とし、目標のために進む貪欲さ、それが足りない
だけどこれを乗り越えて、悩んで考えて苦しんで、それでも戦うと決めたのなら・・・今度こそその覚悟は本物だと言えるだろう
今は目を逸らしていい、見たくない今は自分がなんとかする
だから、安心してほしい
「行って、くる」
それから振り返らず、大切な人達を守るという、確固たる覚悟の元・・・弧仁は戦場に降り立つ
かなり久々の詳細な設定的なの
いのちだいじに・・・今の弧仁のスタンスは危ない方を助ける、というスタンスに切り替えたので前半は精神的に危なそうなマリアサイドに、後半は身体的に危険と判断した響サイドにつきました。
先生使いが荒い・・・長文を伝えたい時や弧仁自身が言いたくないことは擬きに投げています。擬きは嫌でもこれは弧仁が伝えなければいけないと思わない限りは変わってあげています。今回はマリア達に厳しい言葉をかけたくなかったために投げました
鬼に稀血、憂太に里香ちゃん・・・なんか鬼に金棒っぽいことが言いたかった。対義語は五条悟に獄門疆