「(くそっ、なんなんだよコイツは!!)」
ネフィリムと対峙する奏、響の腕を喰らったネフィリムは喜びの声なのか、大きく吠えている
その奏の後ろには、失くなった腕を抑える響がいる。足元にはおびただしい量の血が広がっている
「(響の出血がヤバい、このままじゃ・・・)」
先ほど翼の拘束を切り裂いたが、翼もまだ気を失ったクリスを守るので精一杯だ
「(始めっからアタシが出てれば・・・恨むぞ旦那)」
響達が取り付けた切歌達との決闘、ノイズの発生を開戦の狼煙としたその決闘
弦十郎による指示で奏は不測の事態に備えて後方待機を命じられていた
理由は簡単だ、弧仁や装者と違い奏には自衛手段がないからだ
自衛といっても、戦闘における防御や回避、呪力を纏うことによる防御はもちろんできる
だが、弧仁のような無下限による絶対的な防御方法や反転術式による回復手段がない
シンフォギアの様に常時バリアコーティングが行われてもいない
呪力による防御も呪力に限りがある以上、状況によっては常に行えるわけではない
弧仁ならできるそれは、あくまでもそれを可能にできる呪力量と操作の高さがあるからこそである
なので奏がノイズに一撃でも貰えば即死、ギアの一撃も致命傷ですめばいいほう
それを加味したからこそ待機命令が出された
頭では分かっているが、それでも
「これは流石にやばいだろうが!!」
槍を振るいネフィリムを斬っても斬っても即座に再生されてしまい、効果がない
しかし攻撃に怯む様子は見られるので、とにかく攻撃を与えて、響達と距離を離していくが、次第に奏の攻撃に慣れてきたネフィリムからの攻撃が来る
「っ!!」
口を開き噛みついてくる、間違いなく一撃を貰えば死ぬ
「(ギア纏った響でもあぁなってるんだ、アタシなら死ぬ)ッ!!」
文字通り死に物狂いでネフィリムの攻撃を避ける
「おやおや!?貴女は戦場に戦いに来たはずではありませんでしたかァ!!?まるで踊っているようではないですか!!」
「っ!うるせぇな!!」
そこに飛んでくるウェルの罵倒、虫酸が走るが集中を切らすわけにはいかない
目前のネフィリムの攻撃を避け続ける
「完全聖遺物ネフィリムは!いわば自律稼働する増殖炉、他のエネルギー体を食いつくし更なる出力を可能にする!さぁ!始まるぞ!!」
頼んでもいないのに高らかに行われるネフィリムの解説、それを聞いて少し頭が冷えてくる
「(落ち着け・・・聖遺物っていうなら、どっかに核があるはずだ)」
神話、伝承に残された強力で現代では解き明かせないオーパーツ、それが聖遺物
父と母がその発掘に携わっていたから知っている情報を元に現状を打破するための方程式を組み立てる
「(ギアにしろ、アイツの持ってるソロモンの杖にしろ、コイツ(ネフィリム)にしろ、聖遺物は何かしらの『物』なんだ、覚醒、進化したとしてもそれは変わらない)」
まず一つ目、先程から狙っている核の破壊
二つ目、フィーネとの戦闘で弧仁が行ったという呪力による聖遺物の機能停止
「(核はこんな状態じゃ探す暇がない!機能停止はアタシの呪力で足りるか分からない・・・けど一番可能性があるっ)やってやるよ!!」
ネフィリムに一撃を与えて大きく後退、これだけの距離があれば、やれる
真っ直ぐに構えた槍に呪力を乗せる・・・その呪力は弧仁が拳に呪力を乗せる時のように炎の如く揺らめく形ではなく、槍全体を螺旋するように動いていた
・・・
『はいまた僕の勝ち~、それにしても奏の呪力って面白いね』
「あ?おもしろい?」ゼーハー
擬きによる特訓が始まった頃のこと、まずは基本的な呪力の扱いを学びながら、体術も含めた模擬戦を行っていた
『そう、奏の呪力って渦なんだよ』
「渦?」
『術式とは違う、呪力の性質だね。呪力を乗せた時その対象に渦を巻くみたいに乗ってる』
「ふーん・・・それってすげぇの?」
『奏にしかない個性だからね、ここは伸ばしていきたいところかな』
「それでなにができんの?」
『それは奏が考えることだよ』
「ちぇっ、ケチだな」
『お好きにどうぞ、けどね呪術を扱うに当たって一番必要なのは自分の可能性を広げ、どこまでも自由であることだよ』
「自由・・・」
『今僕が思ってることを伝えたら、奏はそれだけになっちゃう。それはダメだからね』
「弧仁にもそうしたのかよ」
『弧仁の場合は僕と戦いかたが似るところがどうしてもあるけど、大元の使い方を教えただけで、それ以外は弧仁が思うままに戦ってるよ』
「そっか・・・弧仁も」
映像でしかみていないが、弧仁もそれなりに修羅場を潜ってきていたようだ
下手すれば自分以上の経験を積んでいる
そして、それに裏打ちされた納得の強さ
「負けてられないね」
『!・・・いい顔してるね』ニッ
座り込んでいた体を起こして、槍を構える
今だって自分より年下の弟が頑張ったのだから、ここで立ち止まるわけにはいかない
「さっ、もう一本頼むよ。先生」
『まっかせなさい!』
・・・そうしてそこから編み出した奏だけにできる呪力の使い方
「(槍に乗せる呪力は螺旋状に走る・・・それを強めて貫通力にする)」
集中しドリルの様に回転するように呪力を注ぎ込む
「常に一定に呪力を注ぐ、けど出力は強め、呪力の走る速度を上げ続ける・・・」
できることを一つずつ積み上げてできる自分の技を放つ・・・先生からもらったその技の名は
「"巻閃槍"(かんせんそう)」
ズンッッ!!!!
今までのように切り裂くのではなく、纏われた呪力が身を抉り削ぎ突き刺さるように放たれた槍
「グァァァァァ!!!」
槍が突き刺さったネフィリムが痛みを感じているのかは分からないが叫ぶ
そうしていると槍の中腹辺りで突き刺ささる動きが止まった・・・否止めたのだ
「後はありったけをくれてやらぁ!!!」
グッ!!、槍を持つ手に力を入れて、ありったけの呪力を注ぎ込む
「グァァァァァ!!?」
「(効いて・・・んのか?)あぁぁぁ!!」
内側から注がれる呪力に悶えるかの様に身を捩らせるネフィリム、だがもう逃がさない呪力と共に腕の力を強め、槍を抜かせない
ネフィリムの身体の赤いラインが激しく発光、明らかに何かしらの影響は与えられている
「(もう少し、後少しっ)「立花っ!!」!?翼!?」
拮抗した状態でネフィリムの叫びを間近で聞きながらでも耳に入ってきた翼の声
響の名を呼んだ翼の声に従い、なんとか後方にいるはずの響に眼を向ける
「っ!!?あれは!!?」
眼に写ったのはギアとその身を赤黒く染め上げた響
「うっ・・・ウゥッ、ウアァァァァァッッ!!!」
ネフィリムとは違う叫び声のようななにかをあげながら、腕のない左腕を伸ばし・・・その腕を再生させた
「あれも映像で見たやつ・・・暴走してんのか!?くそっ!・・・おい旦那!どうなってんだ!!?」
装者や自分達が装着してるインカムで連絡を取るが・・・
『恐らく生存本能が引き起こした暴走だっ!!気を付けろ!あの状態の響君は見境なく攻撃を始めてしまう!!』
弦十郎の推察を聞くが突破口がない
「気を付けろって言われてもっ・・・!!?」
不意に力を込めていたはずの腕から力が抜ける
響に向けていた視線を慌てて戻すと
「グァァァァァ!!!」
「っ!?冗談だろ!!」
持っていた槍の先・・・ネフィリムに刺さっていた部分がない、ネフィリムに刺さったままにもなっておらず、欠片も残っていない
「こいつまさかっ!「ウゥッアァァァァァ!!!」っ!こっちもか!?」
ドンッ!!!
地を這いながら、圧倒的な速度でこちらに迫ってくる暴走した響
このままでは巻き込まれてしまう
まさに前門の虎、後門の狼
「止まれっ!響っ!!」
この状態の響を捨て置くわけにもいかないと声をかけるが既に響の手は奏に向けられている
奏諸ともネフィリムを始末するつもりか、止まる気配はない
「っ!!響ぃっ!!」
「奏!?」
こうなっては仕方がないと、響の方へ身体を向ける
出会って数ヶ月だが、奏にとって響はあのライブ会場で唯一守ることができた存在
自分のせいで戦いの道を歩ませてしまったことに引け目を感じていたがそれを払拭するかのように奏との距離を縮めてくれた響
そんな大事な後輩である響に血も涙も知らない獣のようなままでいてほしくない、例えこの状況を打破する可能性があったとしても・・・自分が受け止めてやらねばならない
「っ!」
それでも迫る痛みに恐怖し眼を瞑る・・・そんな時耳に聞こえた音は・・・
トンッ・・・バキィッッ!!!
「!!」
前方からは優しくなにかを当てた音が聞こえた
後方からは強烈な打撃の音が聞こえた
そしてもう一つ
「遅く、なって、ごめん」
聞き覚えのありすぎる声も聞こえた、その声に安堵し瞳を開ける
「お前、本当に来るの遅せぇよ・・・弧仁」
ドゴォォォンッ!!!
更に後ろの方で轟音が鳴った、きっとネフィリムがぶっ飛ばされた音だ
「でも、間に、合った」
響を優しく抱えながら、反転術式を施しているのか胸に手を添えて治療を行う
「ヒーロー気取り・・・じゃねぇよな、本当に急いで来てくれたんだろ?それにお前にも色々あったっぽいな」
なにも言わなくても、神妙な顔つきを見れば分かる
「・・・うん、響を、お願い」
とりあえずの処置は終わったのか響を奏に託す
その瞳は遥か後方を見据えていた、少し戦っただけでも分かる、ネフィリムのタフさは半端ではないと
「まかせろ・・・あと頼むわ」
「うん」
奏は響を抱えて戦線離脱、翼と意識を取り戻したクリスの元へと走る
「奏っ!立花は!?」
「大丈夫、さっき弧仁が治療してた」
「・・・弧仁は大丈夫そうか?」
遠目から弧仁の姿を見てなにかを察したのか、クリスが問いかける
「なにかあったっぽいけど、話は後だ。今はとにかく離れるぞ、アタシ達がここにいたら弧仁の邪魔になる」
「そんなっ「翼」っ!」
異議を上げる翼を奏が宥めるように穏やかで・・・それでいてなにかを堪えるような声で
「頼む」
本当は奏も弧仁が心配でここに残って加勢したい・・・だけど、それはできない
それが弧仁の足枷になる
「っ!!立花は私が背負う、雪音、殿を頼む」
「分かってんよ!」
その悲痛な覚悟を察し、距離を取る・・・最低限弧仁の様子が見れる位置へと
「万が一弧仁になにかあれば私が残る」
現状まだ余力がある翼、再度響を奏に任せる
「それならアタシがっ!「奏と立花を生かすとしたら雪音が適任だ」っ!!」
奏から翼、翼からクリスへと、悔しさのバトンが渡ってしまう・・・それに続いて
「・・・まぁ弧仁ならそうはならないと思うから安心しろよ、ただ」
「どうしたんだ奏?」
「あのネフィリムってやつ、もしかしたらなんだけど・・・」
・・・
『リアルでみるとグロいねアイツ』
「・・・」コクッ
『全力でいった方がいい』
「もちろん」
「随分と遅れた登場ではありませんか英雄殿ぉ!!?」
「ウェル・・・」
「幼馴染み達との会話が随分と弾んだようで・・・再会のきっかけを渡した私に感謝してほしいところですねぇ」
『うっざ』
「しかし!いくら貴方と言えどネフィリムは止められない!そして先ほどの天羽奏との戦闘で分かりました、絶対に勝てない理由がある!!」
「?『弧仁、前!』!」
その大口を開き、弧仁に食らい付こうと迫るネフィリム
こんな見え見えの攻撃、避けるまでもない
腕を構え無限によるバリアを展開し、迎え打つ体勢に入る
「(とにかくまた遠くにぶっ飛ばして、その間にウェルを締め上げる)」
現状ネフィリムを制御できるのはウェルのみ、そのウェルを抑えてしまえば問題ないと判断したが故の判断
以前のマリアとの戦闘のような油断はしない、完璧な防御を強いた上での作戦
間違いはないはずだった
「っ!!弧仁っ!!ダメだ!!」
この世界において、呪力はフォニックゲインに対抗する弧仁と擬きと奏のみが手にしている力
決して侵されるはずのない無限
その無限に・・・
ガブッ・・・ブチィィッ!!!
「!!?」
「いったぁぁぁぁ!!!!」
その無限を突き破る存在はいないはずだった
構えていたはずの無限はなにもなかったかのように突き破られたのだ
バッ!!!
後退するネフィリム・・・何かを咀嚼している
驚きのあまり、構えていた左腕をみる・・・そこにはあるはずの腕がなく、先ほどの響と同じく、おびただしい量の血が流れていた
『おいおいおい・・・これは予想外すぎるだろ』
「あっ、ぐあぁぁぁぁ!!!!」
ネフィリムが咀嚼しているのは弧仁の左腕・・・奇しくも響と同じ傷を受けてしまった
揺らぐはずのなかった呪力の絶対的優位が崩れた瞬間だった
詳細な設定的なの
弧仁くるの遅くね?・・・いや実は遅くないんです。字体で見れば奏VSネフィリムはかなりの時間がかかってそうでしたが実際には一分少しの出来事、弧仁がヘリを出ていった位で奏の巻閃槍あたりです。そこから弧仁がやってきた・・・って解釈でお願いします
なんで無限を突き破った?・・・呪術廻戦ではより強力な呪力なら中和が可能な無限ですが、ネフィリムはエネルギー体を食って自身のエネルギーに変える動力炉というのが能力、呪力も見方を変えれば一種のエネルギーなので、ネフィリムは呪力を喰らうことができ、無限も発生させている大元は呪力のため突き破る、というより喰い破った、があっているのかもしれません。
奏の一撃で呪力に慣れ、喰らうことができるようになりました。そのことを奏は仮定としてとらえていましたが、確証が得られなかった(自身に起こった現象を見れていなかった+響が暴走+その後退避しなければ危険、という状況から)、弧仁に伝えることができませんでした
しかしウェルはその状況をしっかりと見ていたため、ネフィリムは呪力すらも補食するという定義を見つけ出せていました
原作(シンフォギア)と同じ傷を受けるのは作品としてどうなの?・・・申し訳ありません、今後の展開を考えるとどうしてもこうしたかったのです・・・申し訳ありません