歌を奏でる装者と無限を操りし少年   作:アユムーン

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お待たせしました、遅れてしまい申し訳ありません


繋ぎ止める「存在」

落ちていく落ちていく

 

よく知っているこの場所は深い深い海の中

 

水面が遠くなっていくけれど息苦しくはない

 

ただひどく冷たくて寒いけど、身体が動かないから出られない

 

ただただ沈む、そうしていると底についた 

 

どこからか寝息が聞こえる、自分の声ではない、誰かの声・・・ゆっくり開いた目に見えたものは・・・

 

・・・

 

「五条悟」との邂逅を終えた一同は各々の基地へと戻っていた

 

切歌、調は武装集団フィーネの所有するヘリに戻り、リンカーの過剰投与と絶唱の影響の検査を受けた。

 

副作用や体内汚染の影響で暫く出撃を控えることとなったが、二人に別状はない

 

そして・・・

 

「マムが無事で良かったデス」

「うん、本当に」

 

ウェルの治療、そして本人の気力もあってか、容態は再び安定した。

 

「えぇ心配をかけてしまいましたね」

「でもまだ油断はできないわ、暫くは安静にしていてちょうだい」

 

油断ならない状況ではあるが、ナスターシャが容態が安定し、一同は一安心・・・のように思えたが

 

切歌と調には心に蟠りが残っていた

 

それを切り出さないわけにはいかない、だから

 

「・・・マムとマリアはこーじのこと、知ってたって本当デスか?」

 

「!、それは」

 

勇気を出して一歩、一言を踏み出した

 

マリアも思わず驚き、言葉に詰まってしまう

 

「さっきは通信機が途中で壊されて決まったので聞けなかった・・・だけど、五条悟が言うことにも一理あるんデス」

 

「あの状況で嘘をつくメリットなんてない。だから弧仁がこーじだっていうことは真実だと思う」

 

それに・・・

 

「アタシは初めは分かりませんでした。

 

だけど五条弧仁と戦って、ほんの一時でしたが同じ時間を過ごして・・・どうしてもこーじと重ねてしまう時があったんデス」

 

「私は初めて会った時から親近感があった。でもそれは境遇が私と似てるからじゃないかって思ってた。それは正しかった、正しかったどころか同じだった」

 

マムのように一目で気づけなかったのは少し悔しくて、自身への憤りを感じる

 

だけど、今はそんなことを気にしている場合ではない

 

「だからお願いデス。アタシ達はマムとマリアの口から聞きたいデス!そして、こーじとちゃんと話したいんデス!!」

 

「二人が私達に隠そうとした理由は私達の為を思ってのことだって分かってる。だからこそ、今の私達なら大丈夫だから、話して」

 

ようやく会えた大切な彼が消えてしまうかもしれないと思うと、止まっているわけにはいかなかった

 

失った過去を今、得るために、

 

そして前に進むために、

 

二人の少女の覚悟が定まった

 

「貴女達・・・「マリア」!、マム」

 

「もう隠しておく必要はないでしょう、二人にも伝えておきましょう」

 

「・・・分かったわ」

 

「「!」」

 

切歌と調、二人の顔に笑みが浮かんだ

 

「しかし貴女達の通信機が破壊されてからの会話はこちらも傍受できていません。そのことも含めて、現在の幸詞のことについて整理しましょう」

 

「そうね、あの子がなにか問題を抱えているのなら、こちらからもなにかアプローチをかけられるかもしれない」

 

「!、本当デスか!」

 

「昔のこーじ取り戻せるかもしれないってこと?」

 

「えぇ、あの子を助けましょう。幸詞は私の弟だもの」

 

明日も分からなかった過去のあの日に自分達を繋ぎ、照らしてくれた彼のために

 

家族は手を伸ばし始める

 

・・・所変わり、特務二課仮説本部医務室にて

 

パチッ

 

目が覚めた、視界に広がる景色は白く鼻につく消毒の香り、ここは病室のようだ

 

どれだけ寝てたのかは分からないが、身体に一切の不調はない

 

上体を起こし、まだボーッとしながらベッド横の棚においてある鏡を見る

 

そこに写っているのは両眼の蒼い瞳、つい先程まで片眼だけであったそれはいつもと違う

 

眠っている間に侵食が進んだのだろう

 

これからはろくに睡眠も取れないかもしれない、それでも鏡に向かって自分を言い聞かせる

 

「俺は、弧仁」

 

自分は「五条弧仁」だと、何度も何度も言い聞かせる。ナスターシャが教えてくれたように、何度も何度も・・・

 

しばらくしてそろそろ皆を呼ぶか、とナースコールに手を掛けようとしたところで気づいた

 

ガチャッ

 

「・・・」

 

右手首と左手首が鎖で繋がれている、それすなわち

 

「・・・手錠?」

 

・・・

 

「弧仁さんに着けても意味はないと思いますが、念のためです」

 

「こちらの立場もあるのでな、今のお前はこちらとあちらの間で暗躍するスパイであり、それをこちらで確保した・・・という状況だ」

 

久し振りに顔を合わせた(連絡はちょくちょくとっていた)緒川と弦十郎から現在の状況を説明された

 

「なるほどね、それなら辻褄があうや」

 

「!」

「弧仁、お前声が、それに目も」

 

ハッキリとした発音、声に関することに障害をおっている弧仁ではできなかったこと

 

「?・・・そっか、多分五条悟の仕業だと思う」

 

「五条悟?、擬きはどうしたんだ?」

 

「ここにいるよ」

 

そう言って胸を指差す

 

「もしかして消えてしまったのですか?」

 

「ううん、生きてるよ。俺と一緒に生きてる」 

 

こんな時には絶対に声をかけてくれた声が、今は聞こえない

 

それでもまだここにいることは分かる

 

「・・・そうか、その件も含めて報告から聞いていることもあるがお前の口からも聞きたいのだがいいか?」

 

「俺の口からでいいの?今敵扱いのはずだけど」

 

「だから尋問という形でな、とはいってもなにをせずとも話してくれるとありがたいな」

 

「・・・なら、こっちにも響のことと二課の現状教えてくれない?」

 

「それは友人としてのお前は知るべきことだ、こちらも隠し事なく話そう。すまんが緒川、席をはずしてくれるか?」  

 

「分かりました。外で待っています。」

 

「ありがとう緒川さん・・・じゃあ、話すね」

 

クイーンミュージックの一件から始まった今回の戦いを振り返りつつ、弧仁は過去とマリア達との関係を語る。

 

「なるほど、クリス君や俺と出会うより以前・・・武装集団『フィーネ』の三人、そしてその中心核であるナスターシャ教授と同じ施設で友好関係を築いていたというわけか」

 

「うん、家族だったみたい」

 

「みたい?、今は違うのか?」

 

弦十郎は報告に聞いていた弧仁がいうにはらしくない返答に疑問を覚えた、それに対して

 

「・・・ねぇ父さん、今の俺は弧仁なのかな」

 

「?なにを「それとも、幸詞なのかな」!」

 

ほんの一瞬、弧仁が黒髪の姿に見えた

 

「お前・・・」

 

「今俺の中で色々ごっちゃになってるんだ・・・だからちょっと整理させてほしい。聞いてくれる?」

 

「あぁ、聞いてやるさ」

 

「ありがとう、まずは先生から」

 

先生・・・五条悟擬きは弧仁との一体化が完了してしまった

 

声が聞こえないのは、自分の中に先生が溶け込んでいるからである

 

「次は五条悟」

 

五条悟・・・正確には歪んでしまった目隠しの能力により生まれた、五条悟のようななにか

 

それは現在、弧仁の人格、身体の全てを塗り潰し続けている

 

「先生が俺と一体化した段階でもう身体の主導権は取り戻せないはずだったんだ」

 

「しかし、今のお前は少なくともその五条悟のようななにかではない、どうなっているんだ?」

 

「先生と一体化した影響で俺自身の呪力が上がったから一時的に取り返せたのか、それか自身で引いたのかも」

 

「?、どういう意味だ?なぜそう考えるんだ?」

 

「五条悟の本質みたいなものがそうさせたんだと思う。

 

五条悟は強く聡い仲間を育てることが五条悟の生涯の目標みたいなものだった

 

だからあの場にいた俺や響、切ちゃ・・・暁さんや、月読さんを見て、育てようとか見守ろうとか、思ったのかもしれない」

 

「擬きの行動と似ているな」

 

「先生もまた五条悟を模倣した存在みたいなものだから似てるんだと思う・・・だけど、俺にとっての先生は五条悟擬きで五条悟じゃない」

 

「当たり前だ、俺が信用しているのも擬きだ」

 

「ありがとう、けどやっぱりこれからも侵食は進むと思う。今も進んでる・・・だからかもしれないけど俺の意思に関係なく、常に自分に対して反転術式を当ててるんだ。多分五条悟がやってる」

 

あれだけ暴れたのに好調な体調

そして詰まらない声

 

そこから、今の自分が身体を常に活性化させ続けていることが分かった

 

そしてそれは弧仁が自ら命を絶つのを防ぐためのもの

 

「・・・それで次は」

 

「うん、鳴届(なりゆき)幸詞だよ」

 

一時的にではあるが完全に五条悟のようななにかに乗っ取られた影響か、完全に過去の記憶が戻った

 

戻って分かったのだ

 

マリア達を大切に想う記憶や感情は自分のものではないと

 

「この身体の主人格である幸詞は死んだ・・・ううん、眠ってるんだ」

 

つい先程眠っている間にたどり着いたいつもの自身の生得領域・・・いわば弧仁の心の中

 

それの更に奥底に潜って、見つけたのは深く暗い海の底で眠っている自分にそっくりな黒髪の男の子

 

一目見て分かった、彼が幸詞だと

 

そして、そこから幸詞の記憶が甦った

 

「俺は・・・弧仁は記憶を失ったんじゃない、初めからなにもなかったんだ」

 

だから、分かってしまった

 

「あの研究所で先生と出会って、皆と出会って、友達と家族ができたこれまでの記憶は間違いなく俺のもの

 

だけどマリアさん達と過ごした記憶や感じる感情は俺(弧仁)のものじゃない、幸詞のものなんだ

 

だから、俺が持つべき記憶ではないんだ

これは、彼が感じるべき感情なんだ」

 

「弧仁、お前は・・・」

 

「うん、実験の最中で精神に異常をきたした幸詞が産み出したもう一つの人格・・・それが俺(弧仁)だったんだ」

 

あの違法実験施設に送られてからの幸詞はその過酷さから自らの心を閉ざして・・・新たな人格を生み出し、逃げるように心の奥底に眠りについた

 

そうして生み出され、これまで戦ってきた存在、それこそが

 

「弧仁、お前なんだな」

 

「うん、マリアさん達を愛しく思うのは心の奥底に幸詞がいるから、その感情が俺に流れてるんだ」

 

初めはそれが分かっていなかったから、それが自分の感情だと勘違いしていた

 

心の奥底にいる幸詞からマリア達との記憶、感情、想いが沸き上がって来ていた

 

それらは全部内に眠るこの身体の本来の持ち主のものなのだ

 

「それなら今のお前は彼女達を守りたいと思っているのか?」

 

「うん、それは今も変わらない。幸詞の感情云々は抜きにしても彼女達を守りたい・・・ううん、響みたいに言うなら手を繋ぎたいんだ」

 

もう敵と呼ぶには彼女達と同じ時間を過ごしすぎてしまった

 

幸調の感情が移ったわけではないが、彼女達がただの悪党には見えない

 

だからこそ、その目的、真意を知りたい

 

知った上で手を取り合いたいと今、思っている

 

「こちらとしてもそうなればと思っている、あちら目的が分かった以上動く方法を模索していこう」

 

「ありがとう父さん」 

 

「かまわん。そして最後がお前だな」

 

「うん、幸詞によって生み出された存在である俺にはなにもなかった・・・だけど初めは名もなかった存在が、名を得て、師を得て、家族、友を得たんだ。これだけは誰にも渡せない、俺の大切なもの、俺だけの守りたいものなんだ」

 

「俺の息子も間違いなくお前だけだ」

 

グシャグシャと撫でられる弧仁の頭・・・昔から変わらない力強く大きくて優しい・・・もう一人の自分の憧れの手だ

 

そう言ってくれることが嬉しくて涙が溢れそうになる、だけどまだダメだ

 

これはまだ流すわけにはいかない

 

「だから、父さんお願い・・・あと少しでいいんだ、俺を戦わせてほしい」

 

撫でる手が止まり、離され、弦十郎の瞳が真っ直ぐに弧仁を見つめる

 

「その結果自分が消えるとしてもか?」

 

「それはそうだけど・・・もうじっとしてたってただの時間稼ぎにしかならないんだ。どうせ消えるなら、最後まで戦いたい」

 

「・・・もう、どうにもならないんだな」

 

「・・・うん」

 

最後の防波堤であった擬きはもういない

今はたまたま生かされているだけの存在

 

だけど

 

「戦いたい、守りたいんだ、皆を」

 

今の自分のことを皆が知ったら、もう戦わないように勧めるだろう

 

それでも戦うという我が儘を貫くということは、信頼し、愛している皆からの気持ちを無視するということ

 

だけど・・・

 

「最後の最後まで独占的で、独善的でありたい

 

 ウェルにも言ったけど俺はヒーローじゃない、呪術師だから

 

 だから俺は最後まで呪術師でありたいんだ」

 

イカれてる、そう先生が言ってくれたから

 

皆の心配を捨ててでも、最後の最後まで自分らしくありたいのだ

 

「覚悟の決まった目だ」

 

「!」 

 

「本当に大きくなった、もう一人前の男の顔だ」

 

その覚悟を認め、受け入れた父

 

「覚悟を決めた男を止めるなど野暮というもの、止めたりはしない、最後までお前の生き様見せてみろ」

 

「!、うん、ありがとう」

 

「とはいえ、彼女達にはどう説明するつもりだ?」

 

「あっ・・・」

 

響達に説明するのには、かなり怖い

絶対怒られる

 

それ以前に皆を悲しませるのが心苦しい

 

「言いづらいなら俺から言おうか」

 

「・・・黙ってて、くれないかな」

 

「なにも言わずに消えるつもりか?」

 

「ちゃんとお別れの準備をしてから、話すよ」

 

「お別れの準備?」

 

「うん、だから便箋とペン頂戴?」

 

・・・

 

それから現状の二課の状態を聞いた

 

月の落下への対応を各国に求めているが難航している

 

そして響は・・・

 

「胸に埋まった聖遺物による侵食が広がっているこのままでは彼女は人ではなくなるだろう」

 

「なにか手はないの?」

 

「今のところは戦闘を控える以外にはなにもない、呪術的な方法はなにかないか?」

 

「呪力とフォニックゲインを同じ量注ぎ込んで膠着させて一瞬抑え込むことはできる・・・けど直ぐにそれを上回るフォニックゲインによって効果は無くなる」

 

「膠着?圧殺はできないのか?」

 

ここでフォニックゲインと呪力の関係を少し振り返る

 

フォニックゲインと呪力が混じり合うことはなく、出力が高い方がもう片方を圧殺する

 

しかし一つだけ例外が存在する

 

その出力が全くの同じだった場合は膠着し、停止する

 

以前奏が昏睡状態になったのは、絶唱によるフォニックゲインのバックファイアに対して弧仁が同じ出力で呪力を注いだためだ

 

前回も弧仁は響のフォニックゲインを一時的に抑えるために、同じことをした

 

「うん、今の俺なら響の胸にあるガングニールの破片を圧殺することはできる

 

 だけど、それをしたらほぼ侵食されてる響ごと圧殺することになると思う」

 

「!、つまり」

 

「良くて昏睡状態、最悪生体機能自体が停止する」

 

「・・・そうか、もしかしたらと思ったんだがな」

 

「でも、戦闘を控えるっていう明確な方法があるのならそれで「響君がそれではい分かりましたと聞くと思うのか?」思いません」

 

「響君にとって一番大切な日常である小日向君にサポートはお願いした、彼女の言葉なら響君も多少は堪えるだろう」

 

「うん、それが効果的だと思うよ」

 

「俺としてはそこにお前もいてほしいんだがな」

 

「うーん、それはおすすめできないかも。多分俺が駆け出しちゃうと響も駆け出すと思う、そうなったら未来一人じゃ止めきれないよ」

 

「昔からそうだったらしいな、お前達は」

 

「うん、大切な親友だよ」

 

「響君のことは現在調査中だ。それを含め、こちらにできることは全力で行わせてもらう。お前はお前のやりたいようにやるといい」

 

「ありがとう、父さん」

 

「それから頼まれているものは直ぐに届く。しばらくはこの部屋を使え・・・すぐに来客が来るとおもうがな」

 

「来客?」

 

・・・そう言って部屋を出ていった弦十郎、それからすぐに

 

「おーすっ、弧仁」

「よぅ」

 

「!、奏さん、クリス」

 

二人がやってきました

 

「なんか久し振りだな」

 

「うん、会っても戦場だったもんね。?クリスどうしたの?」

 

「いや、声本当に戻ったんだな。それから目も」

 

「あー・・・うん、パワーアップしたんだ」

 

「へぇ、それは頼もしいじゃねぇか」

 

「うん」

 

「なぁ弧仁、お前さ二課に戻ってくるのか?」

 

「!、ううん、まだ中間かな」

 

「・・・そうか「話したいのはそんなことじゃねーだろ?」!」

 

クリスの言葉を遮った奏の言葉

 

「・・・前は悪かった、お前の事情なにも考えず、酷いこと言った」

 

「ううん、俺の方こそなにも話さなくてごめん」

 

「けど、お前がどう思うと、お前は・・・弧仁はアタシの弟だ。だから・・・」

 

ギュッ、クリスが弧仁の手を握る

 

「絶対に離さない、もう二度と離してやらない」

 

「!」

 

「お前がどっかに行っても、アタシが・・・アタシ達が連れ戻してやる!、だからアタシとお前は家族だってこと、忘れんな」

 

途切れた糸が今また繋がった

 

「それなら、アタシも同じだな」

 

ギュッ、反対の手を奏がとった

 

「アタシも離してやんねぇ、お前がアタシの手を離さなかったみたいに、繋ぎ続ける」

 

「・・・うん」

 

クリスと奏・・・他にも沢山の人がいるが、「幸詞」ではなく「弧仁」の繋がり

 

自分がここにいる存在を証明してくれる

 

暖かくて大切な人達

 

「お願い、してもいいかな」 

 

だからこそ頼みたかった

 

「?、なにをだ?」

 

「昔からフラフラする癖あるからさ、ギュッと抱き締めて、そっち行くなって叱ってほしい」

 

最後まで皆の知ってる、慕ってくれている弧仁として戦うための願いを

 

「お、おう。なんだか分からないけど分かったよ」

 

「これでいいのか?」ギュー

 

思い切り力を込めて弧仁をハグする奏

 

「いや今じゃねーだろ!?そーゆーことは家で!「今弧仁宿無しだろ?」っ!なら、アンタの家で!」

 

「あはは・・・そういえば翼ちゃんは?」

 

そのやり取りに思わず笑みが溢れたが、ここにいない存在に気づいた

 

「翼は今仕事中だよ」ギュー

 

「ちなみにあのバカは現在謹慎中、けど近くにあの子もいるし、問題ないだろ」

 

「そっか」

 

「・・・なぁ弧仁、今からアタシと一緒に翼に会いに行ってくれないか?」

 

「翼ちゃんに?」

 

「アイツ今色々背負い込みすぎててさ、見ていて心配になるんだよ」

 

「・・・分かった」

 

「それに、アタシも話したいことあるんだよ。翼にも、弧仁にもな」

 

そうして弧仁と奏は翼に会いに行くこととなった

 

・・・また場面は変わり、武装集団フィーネのヘリ内

 

ドクターウェルとの今後の方針について話し合った後に、ウェルを除いた面々で幸詞についての話をしていた。

 

「なるほど、特級呪物『五条悟の目隠し』によって幸詞の人格が消えた、そう言っていたのですね?」

 

「はい、けど別れる時にはアタシ達の知ってるこーじみたいで・・・」

 

「また会おうって言ってくれた」

 

「まだ完全ではなかったか、幸詞自身が主導権を取り返したのか、目隠し自体の判断なのか・・・今はまだ分かりませんが残された時間はあまりないでしょう」

 

「聖遺物とは異なる呪物か・・・より高いフォニックゲインをぶつければその働きを停止させられるのでは?」

 

「仮にそうだとして、今の私たちにはそれを達成できるだけのフォニックゲインを発生させることはできません」

 

「けど絶唱なら行けるかもデス!」

「ドクターもそう言ってた」

 

「可能性はあります。ただ今回は立花響のおかげでバックファイアがないだけで本来なら貴女達は今ここに立っていませんよ。それだけ危険な手であることを自覚なさい」

 

「「!」」

 

「そうね、それにその方法で幸詞を助けることができたとしても・・・私たちが犠牲なることで幸詞がどれだけ傷つくか、分かるでしょう?」

 

「それは、そのとおりデス・・・」

「でも、二課の装者ならできるんじゃ」

 

「今の幸詞にとって二課の面々はもう一つの家族・・・自身が消えるかもしれないなどという言葉を話すでしょうか?」

 

「・・・きっと黙ってる、あの日もこーじは私たちには心配させないためになにも言わずに行っちゃったから」

 

「だったらもう八方塞がりデス!」

 

「・・・いえ、手がないわけではありません」

 

「「「!!?」」」

 

「それを行うには確実に出力の問題があります。」

 

「もしかして、あのギアを使うの?」

 

以前から疑問視されていた武装集団フィーネ

の所有するヘリの謎のステルス機能

 

それはヘリに取り付けられている聖遺物の欠片の働きによるもの

 

それは周囲の景色を投影し姿を眩ます機能の他に・・・

 

「えぇ、伝承通りの魔を祓うあのギアなら・・・理を越えて彼にかかった呪いすら祓える」

 

「!、だったらそれを!」

 

「切ちゃん、さっきマムが言ってたでしょ?出力が足りないって」

 

「出力についてはギアを最大限扱える存在、装者がいれば或いは・・・しかし」

 

「他になにか問題があるの?」

 

「彼にかかっている呪いの規模、量、質が分からない・・・そしてそれ以上に幸詞に降りかかるデメリットも無視はできません」

 

「デメリット?」

 

「もはや彼と呪いとは切っても切り離せない、それを無理矢理引き剥がせばどうなるのか・・・そしてなにより彼は呪力を失うことになるでしょう」

 

「!」

 

「・・・けど、けど!こーじが生きられるなら私は「調っ!」切ちゃん?」

 

「それはダメデス。それはアタシ達のエゴですよ・・・そんなのドクターや今までアタシ達を虐げてきたやつらと同じデス」

 

「ッ!・・・ごめんなさい」

 

「・・・今日のところはここまでにしましょう。幸詞についてはギアによる魔祓いを最優先候補として、問題である出力をどうするのかを考え、そして遂に最終段階となった計画に集中しましょう」

 

「ならアタシたちが!「貴女達は暫く炊事係です」えぇ!?」

 

「リンカーの過剰投与による副作用はまだ残っているはず、二人も今は休みなさい」

 

「うぅ・・・分かったデス」

 

「それなら早速買い出しに行ってくるね。行こう切ちゃん」

 

そう言って切歌と調は手を繋いで外へ

 

「元気ね」

 

「そうですね、マリアすみませんが車椅子を押していただけますか?」

 

「?、もちろんいいけど、どこに行くの?」

 

「少し外の空気を吸いにいくだけですよ」

 

「分かったわ」

 

そうしてマリアもナスターシャの車椅子を押して外へ

 

・・・そんなマリア達のここまでの話を盗聴している者がいた

 

「なるほど、あの厄介な呪術師は乗っ取られかけていると・・・それを解除するためにはこの『神獣鏡(シェンショウジン)』のギアが必要・・・というわけですか」

 

言わずもがなそれはウェル、操縦席にてハンドルに足をかけながら、盗聴した内容を整理していた

 

視線の先には操縦席に装着されているギア『シェンショウジン』のギアがある

 

「ならこのギアを人質に・・・といきたいですが、僕としてもあの呪術師は最も排除したい存在・・・ならいっそ無力化できるかもしれないこれで・・・フフフッ、計画もなにも問題はありませんねぇ」

 

不敵な笑みと共に立ち上がり

 

「しかし、あのオバハン共まだなにか隠してそうですね。ここは分かりやすく追跡といきましょう。」

 

マリアとナスターシャの後を追うのだった

 




今回分かったこと

一時的に五条悟(以降目隠しの意思と表記する)に塗り替えられたことで自らの意識の奥底に潜ることに成功、そこには眠るもう一人の弧仁がいた

その弧仁こそ、マリア達と関わりのあった幸詞だった

過去の過酷な実験により、精神に異常をきたした幸詞が生み出した存在こそが弧仁だった

今までマリア達に抱いていた感情は全て幸詞のもの、それらが漏れだして弧仁に発現、弧仁はこれを自分の感情だと勘違いしていた

それらを理解した上で弧仁は最後まで戦い抜くことを決意、最後の戦いに挑む

現在の弧仁は目隠しの意思に塗りつぶされてはいないが、侵食自体は現在も進んでおり、常時反転術式の発動と気づいていないが無限のバリアも常時展開されている

片眼だった六眼も現在は両眼が覚醒している

塗りつぶされなかった理由としては

1、擬きと一体化したから弧仁の呪力が上がり、抵抗できた

2、五条悟の本質でもある若人の青春を取り上げない精神が働き、目隠しの意思自体が引いた

の2つ、実を言うとこれは両方とも正解である

1の考えから擬きは弧仁と完全に一体化していると思われるが・・・

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