歌を奏でる装者と無限を操りし少年   作:アユムーン

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進む「道」、見つける「未来」

弦十朗から連絡を受け、弧仁は響と未来が向かったという展望台に向かった

 

警察やらが近くにいるが瞬間移動で無視って進み、展望エリアへ

 

未だ瓦礫が転がり、黒煙が上がる展望台、報告ではノイズが現れたとのことだが・・・

 

「もうなにもいないな・・・マム・・・ナスターシャさんとマリアさんもいないよな」

 

響と未来が訪れた場所とは別の階でFNS・・・否、ナスターシャ達武装集団「フィーネ」と米国政府の密会が行われていたらしい

 

その最中でノイズが現れたのだ

 

「(この高さで爆発に巻き込まれたらまず死ぬ。だけど未来は生きている)」

 

被害者は多数、そして米国政府の武装した集団がいずれも重症で見つかったらしい

 

更に弦十朗の報告によると未来の携帯端末が少し離れた箇所で見つかり、その反応は暫く同じ速度で移動していたとのこと

 

つまり、拉致されたということ・・・そしてそれは恐らくマリア達

 

「(残穢ってやつが見えれば・・・)」

 

呪力の痕跡である残穢が見えれば、追跡ができるが呪いによって呪力に蓋があるこの世界では呪力が外的な反応を起こさない。よって残穢はできない

 

現に普段の弧仁も人の身に宿っている呪力を直接見ることによって索敵を行っているのだ

 

「(それでも離れ過ぎたら見えないし、そもそもマリアさん達のヘリは聖遺物の効果で中にいる人の呪力を見ることもできない・・・)くそっ」

 

完全な手詰まり、歯痒い思いに怒りを感じていた所に

 

♪~♪~♪~

 

「!・・・?」

 

また携帯が鳴った、今度も普段用の携帯

画面には数字の羅列、つまり登録されていない番号からの連絡

 

「・・・もしもし」

 

「こんにちは、幸詞・・・少し話せる?」

 

「!、調・・・さん」

 

突然の電話の相手は調、電話番号を教えた覚えはないが、今まさに探していた人物の一人だ

 

「?、どうしたの幸詞?」

 

「い、いや、なんでもないよ」

 

「そう?・・・なら今から言う私たちの潜伏地点に明日来てほしい、そこで話がしたい」

 

「わかった・・・俺も話したいことあるんだ」

 

話を終えて、電話を切る

 

「(今日は一旦戻る。明日は調に会って未来の所在を聞く。それから幸詞のことも話す)」

 

今回のことは二課には伝えない、調は弧仁を・・・幸詞を信頼しているからこそ連絡をしてきたのだ。それを裏切ることはできない

 

そしてこれは未来へと繋がる一筋の希望、逃すわけにはいかないのだ

 

・・・翌日、指定された地へ急ぐ

 

木々に囲まれたそこには場違いなヘリが停まっており、その近くに調が待っていた

 

「・・・!、こーじ!」

 

「調さん、お待たせ」

 

「?、昨日からやっぱり変・・・なんでさん付けなの?」

 

「・・・それは後で話すよ。それで話したいことってなに?」

 

「昨日のこと、それから幸詞のことで話したいことがあるの、ついてきて」

 

「分かった」

 

調に手を引かれて、森の更に奥へ進む。

そこには洗濯物をしている切歌がいた

 

「やっときたですか調・・・ってこーじ!?」

 

「切歌さん、久し振り」

 

「確かに久し振りデスけど・・・?、なんでさん付け?」

 

「それは後で・・・それで調さん、話って?」

 

「うん、昨日のことなんだけど・・・」

 

・・・調の話を聞く

 

「昨日、ナスターシャさんは米国政府に対してこれまでの様々なデータを渡そうとし、和解と共にフロンティア?の情報開示と協力を要求した、それをウェルが阻止するためにノイズを放ったのか」

 

「うん、マリアはマムとそこにいた人たちを守るために米国政府の人たちと戦った」

 

「そっか、あれはマリアさんがやったのか」

 

「とは言っても!マリアがいないと米国の攻撃に巻き込まれる人もいたはずデスっ!」

 

「うん、大丈夫。米国が余計なことしかしないことは知ってるよ。」

 

過去に二課の恩人でもある官房長官の殺害を行ったのもである

 

そのことも踏まえ、推察するに米国政府と武装集団フィーネの交渉は決裂したのだろう

 

そして恐らく米国は武力行使を行った

 

「そのフロンティアっていうのはなんなの?」

 

「落下する月に対して人々を助けるための方舟になる聖遺物」

 

「その起動のためには別の聖遺物が必要なんですけどそれの出力が足りていないんデス。この間も試してみたんデスが失敗して」

 

「なるほど・・・月の落下に対してのナスターシャさんの対抗策なのか」

 

そして米国に襲われそうになったナスターシャ達の救出にウェルはノイズを放った・・・とのこと

 

「感謝したくないけどそこは感謝か」

 

「うん、認めたくないけど」

 

「ぶん殴りたいデスけどね」

 

「それからなにがあったの」

 

「それから・・・実は「マリアはフィーネの刻印を刻まれた者ではなかったんデス」切ちゃん・・・」

 

「ふーん、そっか」

 

「!?えらくあっさりデスね」

 

「いや、それはなんとなく分かってたっていうか・・・」

 

恐らく内に眠る幸詞の感情ではあるが、マリアがなにかに塗り替えられているとはどうしても思えなかった

 

そしてなにより

 

「それに、本物のフィーネに会ったことがあるから分かるんだ。あの人はもう復活しない。死んだとかそういうのじゃないけど、もう俺たちの前には来ないよ」

 

「ッ!」

「そうだったんだ・・・切ちゃん?」

 

「な、なんでもないデス!それから今後はドクターの指揮で動くこととなりました。それにマリアも賛同してるんデス」

 

浮かない顔を切り替えて、話を続ける切歌

 

「!、マリアさんが?」

 

「うん、それで私達はまだ迷ってる・・・」

 

月の落下による人々を救うための目的は変わってない、変わってはいないが・・・

 

「マリアさんやナスターシャさんに嘘をつかれてたのショックだった?」

 

「「!・・・」」コクッ

 

信頼している人たちに嘘をつかれていたこと・・・幸詞の時とは事情が違う、自分達が戦う理由すらも揺らいでいる

 

「そっか・・・なら、俺もなのかな」

 

信頼している人たちに真実を黙られることの辛さは響の件で知ってる

 

「え?」

「こーじ?」

 

「ごめんね、俺は『幸詞』じゃないんだ」

 

「!?でも、マムもマリアも貴方がこーじだって・・・」

 

「ナスターシャさんもマリアさんもまだ知らないから・・・詳しく話すよ」

 

今度は弧仁が語る番、内に眠る幸詞のことを伝える

 

「なら、貴方の中にこーじはいるの?」

 

「うん、そうなるよ」

 

「さっきからさん付けしてたのも、あくまでも貴方とアタシ達は家族ではないと分かったからデスか?」

 

「うん・・・ごめん」

 

「なんで謝るの?」

 

「・・・嘘ついてたから」

 

「貴方はなにも嘘をついてないデス。むしろアタシ達を守ってくれていたデス!」

 

「それでも、それでも!幸詞が眠っているのは俺がいるからだ!俺が生まれたから幸詞は

・・・だから謝りたかった」

 

それは幸詞のことをちゃんと知ってから、ずっと考えていたこと

 

今まで幸詞から溢れる感情に従ってマリア達を助けていた

 

だけどマリア達が家族だと慕う幸詞は自分ではない

 

例え理由が実験だとしても、自分が生まれてしまったせいで幸詞は眠ってしまったから

 

彼女達から家族を奪ってしまったから

 

家族の大切さを知っているからマリア達にも、そして幸詞自身にも申し訳なかった

 

申し訳なさに顔を伏せていると

 

「顔を上げて?」

 

「・・・」スッ

 

調の声に顔を上げ、二人の顔を見る

 

二人の顔は優しい表情だった

 

「貴方の言う通りなら、確かにこーじが眠っているのは貴方がいるからなのかもしれない」

 

「だけど、こーじを守ってくれたのは貴方デス。そんな貴方を恨んだりするわけないデスよ」

 

「!」

 

「正直まだ全部飲み込めた訳じゃない・・・だけど貴方には感謝してる。貴方がこーじを痛みや苦しみから助けてくれた。貴方がいたから幸詞はまだ生きている」

 

「これからどうなるかは分からないデスけど、だけど今まで死んでたと思ってた幸詞が生きていたんデス!こんなに嬉しいことはないデスよ!!だから」

 

「「ありがとう/デス!」」

 

「!!・・・っ、こちらこそ、ありがとう」

 

弧仁を幸詞を重ねるのではなく一個人として弧仁をとらえてくれた二人の言葉に涙が溢れたが・・・

 

「でもこーじではなく弧仁だというのならこーじと呼ぶのはこーじにも弧仁にも失礼デス・・・なんて呼べいいデスかね?」

 

「でも下の名前が弧仁だからこーじと同じなんだよね。やっぱりこーじと似た感じが良いよね。こう、とか?」

 

「・・・弧仁でいいよ」

 

こーじと弧仁のゲシュタルト崩壊が起きそうになって引っ込んだ

 

そして話を進める

 

「二人はどうするのか迷ってる、ってことでいい?」

 

「・・・うん、私は優しいマリアだからお手伝いをしようと思ってた。だけどマリアが賛同するウェルがやろうとしていることは力で弱い人たちを押さえ込むこと・・・私はそうなりたくない・・・」

 

「アタシもそれはそう思ってるデス。だけど、マムはなにも言わない。それに・・・」

 

「?」

 

「・・・なんでもないデス」

 

「俺は二人がやろうと思ったことをすればいいと思うよ。ウェルに着くのもいいし、離れるのもいいし、俺に着いてくるっていう道もある」

 

「「!」」

 

「それなりに色々見てきて、戦って、色々やってて分かった。結局やりたいことをやらないと後悔する」

 

「で、でもそれならなんでドクターまで?」

 

「個人的にアイツのことは嫌いだ。でもやり方は間違ってない。強い力を振りかざして弱者を虐げるのも、間違ってない。それだって一つの手なんだから」

 

「ほ、本気でそう思ってるんデスか?」

 

「うん、だけど強い力の使い方を間違えたら失敗するってことも分かってる。

 

俺もそれで大切な人を呪ったこともある・・・けどその点に関してはウェルは上手くやってると思う

 

きちんと自分の立場ややれることを理解した上で行動や対応をしている

 

人を虐げるのは俺も嫌いだけど、間違ってはいないんだ

 

やり方は嫌いじゃない・・・けどアイツ自身は嫌いだよ」

 

そう、ウェルの行動には割りと道理が通っている。

 

綿密な計算に計画、自身の立場を弁えた行動・・・それが助長することもあるけど、引き際も弁えている

 

そして目標に向けて不必要なものを切り捨てる対応

 

そういった面は割りと嫌いではないのだ

 

「ただアイツは俺の大切な人たちを嘲笑い、傷つけた・・・それだけはなにがあっても許さない。

 

それで話戻るんだけど、俺は切歌さんと調さんがどんな道を選ぼうと俺が守るよ」

 

「!」

「アタシ達をデスか?」

 

「え?話の流れ的にそうな「でも!アタシは今まで貴方に酷いことをたくさん!」あぁそのこと?別に気にしなくていいよ、それに約束したんだ」

 

「約束?」

 

「うん、勝手に幸詞と約束した。君の大切な人も守るからねーって」

 

望んでいても望んでなくても、もう決めたこと

 

それに弧仁としてもマリア達を失うのは惜しいと思う

 

「だから安心して?」

 

「なんか、そういうお節介なところ、こーじに似てる」

 

「似てるっていうか同一人物でもあるんだけどね・・・けどそっか幸詞って優しい人なんだ」

 

「はいデス!おやつもなんでも分けてくれましたし!」

 

「あれは先に食べ終わった切ちゃんがこーじのをジッと見てるから・・・」

 

「そ、それは内緒にしてほしいデスよ調~!」

 

「ふふっ、そっか・・・君はいいやつなんだ」

 

自分の内にいる存在に話しかける

 

擬きみたいに声は聞こえないし、存在を感じることもないけど・・・喜びの感情を感じる

 

「(・・・もしも君が目覚めたら、君はこの二人とマリアさんとナスターシャさんと一緒にいるのかな・・・)」

 

なんとも言えない繋がりで結ばれている弧仁と幸詞・・・決して会うことのない二人

 

その存在に想いを馳せるのだった

 

・・・

 

「それで、もう一つ聞きたいことがあるんだ」

 

少し落ち着いてからもう一つの本題に入る

 

「?なに?」

 

「昨日の騒動の後、マリアさん誰か連れてなかった?おっきな白のリボンつけた女の子とか」

 

「??よく分からないデス」

 

「・・・そっか」

 

「あ、けど、昨日ドクターは来客の対応があるって・・・もしかして」

 

「!、もしかしてヘリに!?」

 

「その人かもしれないデスね・・・調!」

 

「うん、私達でマリアの足止めをする。その間に探して」

 

「!、いいの?」

 

「貴方には何度も助けられたからお礼デス」

 

「ありがとう!」

 

「それはその人が見つかってから。さ、行こう」

 

・・・

 

ヘリに乗り込み、切歌と調と分かれ、物陰に潜みつつ六眼を解放する

 

「(頭痛むけど、このくらいなら・・・)」

 

ヘリ内部くらいなら簡単に探索できるので呪力を探っていく

 

「(マリアさんの近くには切歌さんと調さんがいる。ナスターシャさんとウェルは別室・・・あれ?)いない?」

 

確認のとれた呪力の数は先程あげた五名

 

しかし確認はとれていないが来客が今このヘリにいるはず

 

そしてその来客は恐らく未来だ

 

だとしたらなぜいるはずの未来の呪力が見えない?

 

考えられる理由はいくつかある

 

「(一つ目、そもそも未来はここにいない。最初から、もしくは昨日から今の間に別の場所に移動したか・・・)」

 

切歌と調もその来客の存在を確認していない以上この線が濃厚だ

 

しかし今のこちらの設備でそこまでのことができるかと言われれば不明だ

 

「(二つ目、未来がフォニックゲインに隠されている)」

 

これは以前フィーネが奏の存在を隠すために行った方法でもある。

 

呪力を見ることに特化している六眼ではあるがフォニックゲインを確認することはできず、それに遮られてしまうと呪力を見ることができない

 

・・・そしてそういったものを用意することはここにいる人物なら容易にできる

 

「(それができるのはナスターシャさんとウェル、そしてそれを用意してなにかを企てようとするのは・・・ウェル)」

 

ナスターシャの性格上無関係な人間を巻き込むとは思えない

 

だとしたらもう一人しかいない

 

「(行くしかないか、未来を助けるためなら容赦なく殺る)」

 

素早くウェルの呪力のある方へ

 

「(ここか・・・けど認証がいるドアか)」

 

やり方は嫌いじゃないけどウェルは嫌いなので

 

ドゴンッ!!思い切りドアを蹴飛ばして開けた

 

「おや、もういらっしゃいましたか?」

 

もちろん部屋の中にはウェルがいた

 

手元のタブレットで見ていたのか、慌てた様子はない・・・そして

 

「未来っ!」

 

「おぉっと近づかないでいただきたい、うら若き乙女の柔肌を見ていいわけがないでしょう」

 

何かの液体の入れられたカプセルの中で未来が機械に繋がれている

 

「これは・・・?」

 

「彼女が望んだことですよ。私はあくまでもその道を提示したにすぎない」

 

「未来が、望んだ?」

 

「今行っているのは彼女を装者へと変えるための作業、邪魔はしない方がいいですよ。既に彼女の脳への接続は完了している。この状態で無理にここから出そうとすれば・・・どうなるでしょうねぇ?」

 

「!」

 

「そしてここで私を殺しても同じこと、彼女を生かすも殺すも私次第・・・いや貴方次第ですね」

 

「・・・」

 

押し黙る弧仁の様子に好機を感じたのか、ニタリの嫌な笑みを浮かべながらウェルは要求する

 

「彼女を生かしたいのなら私に忠誠を誓い、その力を奮っていただきたい。貴方にも色々と試してみたいこともあるのでねぇ」

 

「その前に聞かせろ・・・さっき未来が望んだって言ったな、それはどういうことだ」

 

「ふっ、これに関しては隠していても仕方ない、そして貴方にも悪い話ではないのでお話しましょう

 

彼女が今適合しようとしている聖遺物の名は『神獣鏡(シェンショウジン)』、その力であるその凶祓いの力なら聖遺物の力を分解し、あるべき姿に戻す。

 

つまり、現在融合症例に苦しむ立花響を救うことができる!・・・とお伝えするとすぐに頷いてくれましたよ」  

 

「!」

 

「更に凶祓いの力があれば貴方を救うことすら可能かもしれないと伝えたところ驚いていました。

 

それにしても貴方周りになーんにも話さなかったようですねぇ。

 

貴方が今、その目隠しに塗りつぶされそうになっているということも知らなかったようですが?」

 

「なんでそれを知っている!」

 

「あの二人がベラベラと話していましたよ。この国では壁に耳あり障子に目ありと言うのでしたっけ?このヘリに僕が盗聴機を仕掛けているとも考えなかったのか・・・全くめでたいものです。」

 

「・・・」

 

「彼女、泣いていましたよ。貴方の身にそんなことが迫っていることも知らなかったことを悔いて、泣いて私に懇願していましたよ。大切な親友を助けたい、とね」

 

未来が弧仁の身に起こっていることを知り、弧仁と響を救う力を得られるかもしれないとなれば確実にそれを得ようとするだろう

 

それを攻めようとは思わない、自分だって同じ状況なら同じことをする

 

自分と未来と響の関係は強いが危ういのだ、自分以外のどちらかのためなら命くらい軽く投げ出せる

 

現に自分はそれで一度死んだのだから

 

だから、分かる

 

「・・・」

 

「さてそろそろ答えをいただきたい、どうです?私に忠誠を誓いますか?もちろんこちらの要求を飲んでいただけるのなら、彼女の安全、立花響の融合症例の治療、そして君を侵食する呪いの対処を約束します。どうです?破格の対応でしょう?」

 

「・・・分かった、誓う。響のことも放っておけない。とにかく今は未来の安全を守りたい」

 

「!なら対応が間違っていますね!地面に膝をつき、今ここで私に忠誠を誓い、助けを請え!!」

 

「・・・」スッ

 

手を地面に伸ばし、膝をつけようと動く

 

その動作を見て、今まで弧仁に散々してやられてきたウェルはこの上ない悦に浸る

 

「全く美しい友情ですねぇ!命やプライドを簡単に投げ出せるほどの信頼関係!そのためなら最も嫌悪する存在にすらも頭を垂れ忠誠を誓「うわけない!!!」ガハァッ!!」

 

バキィッ!!!

即座に立ち上がりウェルの顔面を殴り飛ばす

 

呪力を込めないただの裸拳、だけどこれ以上なく拳には力が込められていた

 

「な、なにを!?状況が分かってないのか!?」

 

「分かってないのはお前だろ、今誰を相手にしてると思ってる?そんな甘い誘惑に乗るわけない」

 

以前なら乗っていた誘惑

 

しかし様々な修羅場を潜り、成長した今なら乗らずにこの状況をひっくり返すことすらしてみせる

 

「!?」

 

「今すぐ未来を解放しろ。響のこともお前がなんとかできるならやれ。お前が命令できる立場だと思うな」

 

「っ!?この娘がどうなってもいいのか!?」

 

「はっ、やりたきゃやりなよ。お前にはお前の目的があって未来をこうしてる・・・なら少なくとも今の未来を殺すのはお前にとってもデメリットの筈」

 

「くっ!!」

 

「恐らく神獣鏡はフロンティアの解放に必要な聖遺物、だけど機械的に引き出した神獣鏡の力ではそれに至らなかった

 

だから、人の歌や強い感情でより高い出力を出すために適合者が必要だった。お前の目的はそれだろ

 

そこで響を助けたいっていう未来の心を操っただけだろ・・・悪いのはお前だ」

 

「っ!、しかしいいんですかぁ?私また他の適合者を探してもいい、彼女でなければならないメリットはない!「いやある!」!」

 

「俺と響、そして二課に対して未来の存在は十分なアドバンテージ、戦力、人質に交渉材料といった手札になる。

 

それから今この状況で未来を殺してみろ、その瞬間俺がお前を潰す」

 

「ひぃっ!!」

 

「折角綿密な計画たててたのに残念だったな、未来を人質にした時点でお前の敗けだ」

 

先に何度も逆鱗に触れたのはウェルだ

 

「今度はこっちの番だ。未来を解放して、未来を巻き込まない形で響を助ける方法を考えろ

 

こっちこそお前でなくても別にいいんだ。二課にも優秀な研究班や技術班、そして冷静な判断を下せる人達もいる」

 

今度はウェルに選択が迫る

 

承諾を飲めば命は助かるが計画は終わる

拒否すれば間違いなく今この場で死ぬ

 

自分が消えればナスターシャ達は間違いなく投降する・・・そして今ここにいる弧仁の口利きがあれば二課との協力体制もできあがる

 

自分なしで計画は遂行され、月の落下はなんらかの形で解決されるだろう

 

自分が先頭に立つと決めた以上、そんなこと許せない、だが状況はまさに詰みだ

 

だがそれは一人の存在でまたひっくり返る

 

・・・ジャキッ

 

「ドクターから離れなさい」

 

背後から槍を構える音、その槍を弧仁に向けているのは

 

「・・・マリアさん」

 

ウェルと話しながらマリアがこちらに来ているのは六眼で見えてはいたが・・・まさかこうくるとは思わなかった

 

「離れなさい、幸詞」

 

幸詞の姉・・・マリア・カデンツヴァナ・イヴが再び弧仁にガングニールの槍を向けていた

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