歌を奏でる装者と無限を操りし少年   作:アユムーン

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集結する「戦場」

未来を見つけて、撤退してからの朝

 

「っあぁ~・・・・・・身体痛い」

 

一晩寝て少し身体は軽くなった気がするがまだダルい

 

「どんだけ怒ってるんだよ。もう分かったからそろそろ許せよ」

 

内にいるもう一人の自分に愚痴りながら冷蔵庫を開ける

 

「んー、これとこれと・・・」

 

未来のお陰で見やすく取りやすい冷蔵庫、そこから食材をいくつか取り出す

 

「日付ちょっと前だ・・・未来がいなくなって響帰ってないのかな」

 

傷んでしまっては勿体無いので、遠慮なく使わせていただき朝御飯を作る

 

「あ、勝手に使ってるわけじゃないからね?ちゃんとお金は折半してるから」

 

そうして出来上がった朝御飯でしたが量が多い

 

「(日持ちするもの多めに作ったから保存しておかないと)」

 

いつ二人が帰ってきてもいつでもご飯が食べられるように、用意しておいた

 

そして朝御飯と洗い物を終えて、机に向かう

 

「さて、続き書くか・・・」

 

色々と心配なことはあるがもう残された時間が少ないことを考え、皆への手紙を書き進める

 

・・・

 

場面は代わり武装集団フィーネのヘリのコックピットで操縦するマリアとその近くに切歌、調、ウェル

 

ナスターシャは病状が悪化してしまい休んでいる

 

フィーネの今後の方針は武力により自分達の存在を主張し、未だ謎の聖遺物である「フロンティア」の封印解除に必要な援助や協力を要請すること

 

そして、月の落下に伴う被害を食い止めることを最終目的として活動する

 

そのために飛ぶヘリの行き先には米国の哨戒艦艇が浮上していた

 

当然刺激していい相手ではないが・・・ウェルの思惑は違った

 

「丁度いい、派手に葬って世間の目をこちらにむけさせましょう」

 

弧仁に殴られた頬の腫れが依然として引いていないウェルは艦艇を強襲することを提案

 

「でもそんなのは弱者を生み出す強者のやり方」

 

そんなウェルの計画に異議を唱えたのは調

 

元々彼女は弱い人に手をさしのべることのできるマリアに付き添い、戦場に足を踏み入れたのだ

 

しかし今はそれとは真逆の行動をとるウェル、そしてウェルの計画に乗るマリアとは意を反していた

 

そんな調の言葉を聞いてなおマリアの意見は世界へ主張を届けるには格好のデモンストレーションになるかもしれないと、艦艇への強襲に肯定的だった 

 

以前のマリアなら無差別に命を奪うことには反対していた、だが今のマリアは違う

 

強者により弱者が虐げられる世界構造を打ち砕くためにこの道を行くことを恐れはしないと、決めたのだ

 

そしてそのために自分達を阻む敵も、障害も全て力によって淘汰し、進むと決めたのだ

 

「なら弧仁のことは?見捨てるの?」

 

「・・・昨日話したはずよ。彼にとって一番の弱点をこちらは握っていると、それを握っている以上「そうじゃない!」!」

 

昨日、弧仁が去ってからマリアは未来のこと、そして未来に纏わせようとしているギアのこと、全てを説明した

 

弧仁の探し人は間違いなく未来、そして・・・

 

「昨日、マリアとドクターから聞いたことが本当なら・・・弧仁はきっと傷ついてる、身体も、心も、そしてそれはこーじにも届いてる」

 

「・・・そうかもしれない、だけどそれは月の落下を何とかしたとしてからでも遅くはない。今私たちが為すべきことは一刻も早いフロンティアの浮上よ・・・ドクター」

 

為すべき最優先事項を見失わないために・・・昨日のように感情が先走らぬように気持ちを固く閉じ込めるマリア・・・その表情を見てなにも言えなくなった調

 

そして切歌はそんな調を見てなにかを思い悩む・・・それすらも計画なのかそんな状況の最中で怪しく笑みを浮かべながらウェルが動く

 

「はいはい・・・それじゃあやりましょうか」

 

ヘリより発せられる光、それはソロモンの杖によりノイズをバビロニアの宝物庫から呼び出す忌むべき光

 

それが艦艇に照射されノイズが湧く

 

必死に応戦する艦艇の乗組員だが、通常兵器が通用しないノイズには効かず・・・次々と消えていく命

 

自分達によって消え行く命から目を背けるわけにはいかないと、マリアは目を反らさずにそれを見続ける

 

・・・同時刻、響と未来の家にいた弧仁は

 

「よし、できた」

 

悩みに悩んで、書き続けた手紙が遂に関係した

 

「置いとく場所はここでいっか、んぅー」

 

それをそのまま机に置いておき、昼御飯にするかと、大きく伸びをした時だった

 

♪~♪~♪~・・・個人用の携帯が鳴る

 

相手は個人的に付き合いのある情報屋

 

「・・・はいもしもし、はい・・・分かった、ありがとう」

 

ピッ・・・

 

「昼飯は後でかな」

 

受け取った情報、それは米国の艦艇がノイズの襲撃にあっているとのこと

 

そして、その上空に武装集団フィーネの所有するヘリが飛んでいるということ

 

米国だけなら放っておいていいのだが、フィーネの方に未来がいる以上行かないわけにはいかない

 

目隠しを着ける、もうなんの力もないそれを着けるのは

 

「行こう、先生」

 

こうすればより近くにいてくれる気がしたからだ

 

そうしてドアを開けて、鍵を閉めて弧仁は戦場へと歩を進める

 

・・・弧仁が出発した頃の二課の仮設本部である潜水艇も米国の艦艇がノイズによる襲撃を受けたことをキャッチし、そこに救援のために急ぐ

 

交戦の準備に取りかかる翼

 

響も後を追おうとするが、クリスによって止められる

 

それは当然ガングニールの侵食が現在も進んでいるおり、これ以上の戦闘は危険だから

 

「お前はここからいなくなっちゃいけないんだからよ」

 

そしてなにより、クリスは響に死んでほしくなかった

 

自分には眩しすぎる・・・皆がいるこの場所で響には未来や弧仁と共に生きていてほしかった

 

「頼んだからな」

 

そうしてクリスも交戦の準備に入る

 

「クリスちゃん・・・「心配すんな、アイツらなら大丈夫」!奏さん」

 

心配そうな響を安心させるため、頭を撫でる奏

 

「それに、弧仁もきっと来る。弧仁に全部押し付けるつもりはねぇけど、いてくれるだけで安心するだろ?」

 

「はい」

 

「それにいざって時にはアタシも出るし、それに響、お前がいる」

 

「!!」

 

そうして手を頭から響の手に動かし、繋ぐ

 

「アタシにはギアはないけど呪力がある、そして響には胸の歌がある。 

 

 それは聖遺物に負けない歌だ。命を燃やす歌じゃなくて、誰かの手を繋ぐための優しい歌がある。

 

 アタシ達はそれを信じてる、だから響も自分をそしてアタシ達を信じてくれよ」

 

奏と響、共に過ごした時間は短くともこの二人には切っても切れない繋がりがある

 

「あの日から・・・ずっと、ずっと昔から、信じてますよ奏さん」

 

その絆は互いに恩人であり、

友だちであり、

先輩と後輩であり、

時や形は違えど同じ力と同じ大切な人の手をを握った者同士の絆

 

「!、へへっ、ありがとな」

 

そうして二人はモニターに視線を移す

 

戦場はもうすぐだ

 

・・・

 

米国の艦艇ではノイズが依然として存在し、人を炭へと変えている

 

それを見続けていたマリアだったが、噛み締めた唇が裂け、血が流れる  

 

そんな様子のマリアに調が問いかける

 

「こんなことがマリアの望んでいることなの?弱い人たちを守るために本当に必要なことなの?」   

 

マリアはなにも答えない

追い詰められ、自ら茨の道を進もうとするマリア、自分が慕うマリアはそんな人ではない

 

そしてなにより・・・マリアの苦しむ顔をこれ以上みたくない

 

こんな顔を幸詞なら絶対に放っておかない

 

そしてこのままてまその幸詞との約束のため、自分達のために自分の存在を賭けて戦ってくれる弧仁に顔向けできない

 

世界を救うために必要なことで大切な人たちが苦しむことになるのなら・・・調は駆け出す

 

「調っ!なにやってるデスか!?」

 

ヘリのドアを開けたところで切歌に止められる

 

当然あの場に向かい、ギアを纏いノイズを倒すのだ

 

そうすれば助けられる

 

「マリアが苦しんでいるのなら私が助けてあげるんだ」

 

「調っ!」 

 

バッ!

 

ヘリから飛び降りる

 

「♪~♪~♪~」

 

聖唱を歌い、ギアを纏いノイズを殲滅していくが・・・

 

「!」

 

背後をとられ、ノイズが迫る

 

ジャキィンッ!!

 

しかしそのノイズをイガリマの鎌が切り裂いた

 

そしてそれは当然

 

「切ちゃん!」

 

自分の大切な友達である切歌によるもの、助けに来てくれた

 

切歌は自分と共に戦ってくれると、信じて近づいたが・・・

 

プスッ

 

「!?」

 

一瞬の痛み、慣れているその痛みはリンカーの無針注射と同じ・・・だが薬品が違う

 

「ギアが馴染まない・・・!」

 

纏っていたギアが消え、私服姿に戻ってしまう

 

「アンチリンカー、デス」

 

ギアの適合係数を上げるリンカーとは反対の効果、適合係数を下げるアンチリンカーを打ち込まれたのだ

 

これは廃病院での戦いの際に響達に散布されたものであり、効果は絶大

 

それによりギアが解除されてしまったのだ

 

提案したのはウェルだが、実行に踏み切ったのは切歌だ

 

「私、私じゃなくなってしまうかもしれないデス。そうなってしまう前に何か残さなきゃ調に忘れられちゃうデス

 

例えアタシが消えちゃったとしても世界が残ればアタシと調の思いでは消えないデス

 

だから私はドクターのやり方で世界を守るデス

 

そうすれば、平和になった世界でこーじと弧仁もなんとかなるから!もう、そうするしかッ!」

 

なにかを堪え、悲しむ切歌、調を連れ戻すために手を伸ばしたが・・・   

 

ザッパァァァンッ!!

 

すぐ隣の水面が盛り上がり、ミサイルが浮上・・・そしてその中から翼とクリスが飛び出す

 

「「!!?」」

 

そして一瞬の隙に翼は切歌に剣を突き付け動きを止め、クリスは調を拘束する

 

「ソロモンの杖を持つアイツはどこにいやがる!?」

 

調に問いかけるクリス、元々ソロモンの杖はフィーネによりクリスの歌で解除されたもの、責任を感じていた

 

・・・翼とクリスの参戦により、形成が悪くなった武装集団フィーネ

 

その傾いた天秤を戻すために・・・ウェルは最悪の一手を繰り出す

 

「ならば傾いた天秤をもとに戻すとしましょうよ、できるだけドラマティックにできるだけロマンティックに」

 

そうしてヘリのボタンを押す

 

そうするとヘリから紫色の怪しい光と共に歌が聞こえる

 

「♪~♪~♪~」

 

その歌はシンフォギアを纏うための聖唱

 

その歌を歌う声は二課の面々にとって聞き慣れているが、この場では聞きたくなかった声

 

そしてその姿が露になる

 

その人物は・・・

 

「小日向・・・?」

 

正体不明のギアを纏い、虚ろな目でこちらを見ている

 

「なんでそんな格好してるんだよッ」

 

それは響、そして弧仁のひだまりである彼女

 

「・・・未来?」

 

「うぉぉぉぉぉ!!!」

 

そこに彼女の意思があるのか否かは分からないが、雄叫びを上げる未来

 

誰もが争いに巻き込みたくなかった彼女が最凶のシンフォギアを纏い・・・戦場に降臨した

 

・・・そして、もう一人

 

シュンッ!!

 

「「「「!!?」」」」

 

未来の前に上下の黒い服に、目隠しを着けた弧仁が現れる、驚く一同

 

「んー・・・なるほど、分からん」

 

未来の前に立ち呪力を捉える眼を近づけるが、フォニックゲインによってなにも見えない

 

「おっと」

フォンッ!!

 

いつの間にか未来の手に握られていた大剣を危なげなく避け、後方に下がる  

 

まぁ避ける必要はないのだが

 

「前にウェルが言ってた感じからして脳に直接干渉して戦闘技術とかの底上げしてる感じか・・・無理には剥がせない、ね」

 

冷静に状況を分析する後ろ姿に翼とクリスが話しかける

 

「全く、来るのが遅いぞ」

「こんな時にどこほっつき歩いてたんだよ」

 

普通に海が広くて迷ったせいで遅れた

 

「ごめんね、翼ちゃんクリス・・・多分俺が来た時点でウェルがなにも手を打ってこないわけがない、警戒しながら調と切歌を頼む」

 

二人の方に顔を向けて謝り・・・再び視線を未来に向ける

 

「ッ!お前っ、一人でやる気かよ!?」

 

「そうするしかない、まだノイズはいるし、追加でまだ出てくる。

 

消える命を少しでも少なくするのなら俺が未来の相手をして、二人は人命保護とノイズの殲滅、それが最善だ」

 

ノイズの殲滅と武装集団フィーネの捕縛、それらは今の弧仁なら簡単に行える

 

だが今のこの状況には不確定要素の未来がいる、未来を確実に助けるためにはより強い弧仁が未来の相手をするのが必然であった

 

そしてなにより、全てを行うには弧仁には時間が足りないのだ

 

「だから二人とも、お願い」

 

だから託す、翼とクリスなら自分の願いを叶えてくれると信じて

 

「分かった、そして司令も了承したとのこのだ」

 

「っ!ぜってぇ帰ってこいよな!!」

 

「うん、約束するよ」

 

そして次に切歌と調に視線を向ける

 

「二人が無事でよかったよ」

 

ここに来て身体のダルさはなくなった

 

やはりマリア、切歌、調、ナスターシャを守るためなら彼は力を貸してくれるらしい

 

「あの、弧仁・・・あの人とあのギアは「分かってる」!」

 

未来がギアを纏った理由は昨日聞いた、それはガングニールと融合する響のため

 

そして、目隠しに侵食される弧仁のため

 

どんな方法かは分からないが、あのギアにはその力がある

 

だからこそ、自分が戦わなくてはならない

 

そして、それは・・・

 

「この戦いが終わったら二人の、それからマリアさんとナスターシャさんの所に帰ってくるよ」

 

「「!!」」

 

「はぁ!?お前が帰ってくるのはこっちだろうが!?」

「そうだぞ、弧仁。それに奏と司令がうるさくなったではないか」

 

「あー・・・うん、もう両方俺の居場所で帰る場所なわけだから、そういうことにしといて」

 

諸々は無視して、今度こそ未来に視線を向けて臨戦態勢

 

「(最重要は未来の保護、それからあのギアをできるだけ壊さずに回収して響の治療の材料にする。そしてそれからのことは知らない)」

 

今の未来に自分の意思があるのかは分からないが、恐らくウェルによって操られている

 

あの男のことだ、自分や翼、クリスだけでなく、場合によっては調や切歌たちにも襲いかからせるだろう

 

そんなことをさせないために、守るために

 

「俺は君の家族を守るよ・・・だから俺の大切な人たちを守るために、力を貸して」

 

最凶のシンフォギアを纏う最高のひだまりへと挑む

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