歌を奏でる装者と無限を操りし少年   作:アユムーン

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飛び出す「心」

バシャァ・・・

 

ここはいつもの生得領域、海面に浮かぶ

 

神獣鏡の光の影響か、領域は元に戻っていて綺麗な青空が見える

 

そんな綺麗な景色だというのに身体がだるく、起きる気力が湧かない・・・そう考えている孤仁の目前に影が射した

 

「こうも簡単にここに来れたらプレミア感無くなるよね」

 

「呼んだくせに」

 

「ま、そうなんだけどね」

 

影の先には当然目隠しの意思である五条悟

 

しかし以前見た包帯のような目隠しは取られており、この領域のような蒼い二つの六眼でこちらを見ている

 

「とにかく特級呪物『五条悟の目隠し』の解呪おめでとう」

 

「解呪・・・できたの?」

 

「うん、できてるできてる。その身にかかっていた侵食は綺麗さっぱり祓われた。ここにいる僕もただの残留思念・・・残りカスだよ」

 

「・・・」

 

「いやー、それにしても驚いた。この世界でも最強のつもりだったけどまさかあんな天敵がいたとはね」

 

「すっごく痛いけどね」

 

「だろうね、僕(目隠し)を祓うほどの光、そしてそれを放った未来と共に受けた響には恐れ入った・・・それともう一人、立役者がいるけどね」

 

「・・・」

 

目隠しの意思である五条悟から光が立ち上り消えていく

 

「それじゃ僕はそろそろ消えるから・・・後はじっくり話し合うといいよ」

 

「・・・うん」

 

こうしてみると、なんだかんだ憎かった存在だというのに寂しさを感じる・・・と思っていると

 

「あ、あとそれから・・・」

 

シュンッ・・・そうして最後まで言いきる前に完全に消えた

 

「!・・・後、なんなんだ『それは僕から話すよ』!」

 

背後から掛けられた声・・・さっきから聞いていた声と全く同じ・・・だけど久しぶりに聞いた安心できる声

 

その声に答えるために振り返る

 

「久し振り・・・先生」

 

『うん、ずっと一緒にはいたんだけどね?』

 

孤仁よりもずっと大きな身体、だけど同じ髪と目隠しをつけた先生、五条悟擬きとの久々の再会だった

 

・・・

 

孤仁と響と未来を飲み込んだ神獣鏡の光、それは海面のあるポイントに落とされた

 

その光によってそのポイントにあった聖遺物『フロンティア』の封印が解かれ、浮上した

 

月の落下に対しての人類救済の打開策

 

海面から見えているのはほんの一部であり、その全長は人類皆を救う方舟として申し分のない規模だ

 

その最中、二課仮設本部である潜水艦のメディカルルーム

 

そこには未来がいた

 

めだった外傷はなく、身体は健康そのもの

そしてそれはもちろん他の者も同じ

 

「未来~!」

 

「!、響っ!」

 

メディカルルームに飛び込んできた少しだけ怪我をした響、そして頭に包帯を巻いた翼と付き添いの友里もいた

 

神獣鏡の光は未来のギアを安全に引き剥し、響を蝕んでいたガングニールの欠片も消え去った

 

「だったら孤仁は?」

 

「呪いがどうなったのかは分からない、だけど身体に異常は見られないわ」

 

「今は別室眠っている。近くに奏が着いているのでなにかあっても問題ないだろう」

 

「孤仁は強いから絶対に大丈夫だよ!」

 

「それに海面に落下する寸前で小日向と立花は潜水艇の上に移動した。そんなことできるのは一人しかいないだろう?」

 

「孤仁・・・」

 

確かにあの時孤仁に抱き締められながら落下したのは覚えている・・・だけど

 

『まっかせなさい!!』

 

あの時聞こえた声は孤仁じゃなかった

 

「・・・もしかして、擬きさん?」

 

「!、やっぱり未来にも聞こえてた!?」

 

「!響も?」

 

「うん!やっぱりそうだったんだ!ってことは擬き先生も生き返ってる!それなら孤仁も!「それはまだ分からないの」えっ」

 

「どういうことですか?」

 

「実は神獣鏡の光の輝きを受けた孤仁君のバイタルは著しく低下していたの」

 

「「!」」

 

「二人にとって特効薬となったあの光は恐らくだけど孤仁君にとって毒と変わりないのだと思われるわ」

 

「・・・いくら身体に異常は見られないとはいえ、孤仁の身体になんらかの悪影響があった、凶祓いの力が未知数である以上予断は許さないということか・・・奏は今の孤仁からは呪力が見られないと言っていたが・・・」

 

「・・・孤仁」

 

沈んでしまう一同だったが、戦況は局面を向かえている落ち込んではいられないと、今後の話へと移る

 

そうして次に未来が告げられたのはクリスが敵の陣営と渡ってしまったという衝撃の真実だった

 

・・・ 

 

擬きがよく座るために取り出していたソファに二人座る

 

『本当、よくここまで頑張ったね』

 

「うん、しんどかった」

 

『それでもやりきったんだから、上出来上出来!』

 

ワシャワシャと撫でられる頭

弦十朗とは違った撫で方

 

もうそんな年齢ではないのに嬉しくて仕方がない

 

「それで目隠しの意思が最後に話そうとしたことってなに?」

 

『うん、五条悟の目隠しの呪物としての力は失われたってことを伝えたかったみたい』

 

「!」

 

『孤仁、君は神獣鏡の光によって目隠しから解呪された』

 

「うん」

 

『その時に目隠しと君との主従関係は第三者(神獣鏡)によってリセットされたんだ。

 

その結果目隠しは初期化、僕(擬き)と君の一体化ももちろん解呪し僕も目隠しの中にもう一度復活した』

 

「それはなんとなく感じてたよ。目隠しに先生がいるんだって、なんとなく」

 

『僕もこんな結果になるなんて予想外だったよ・・・折角解呪されたというのに君は・・・もう一度目隠しに呪われた』

 

「うん・・・怒ってる?」

 

『半々』

 

「それは、嬉しさと?」

 

『そうだね、後愛しさかな・・・心強さもあったりして』

 

「それは違うでしょうが、っていうかそんなこと言ってる場合?」

 

『ナイスツッコミ』

 

・・・

 

場面は変わりフロンティアを進む元FISこと武装集団フィーネ

 

メンバーはウェル、ナスターシャ、マリア、切歌

 

そして二課に保護されている調に変わりフィーネ陣営に渡ったクリス

 

これ以上戦火を広げない為に、無駄に散る命を少しでも少なくするためにと翼を奇襲し、それを証明として下ったのだ

 

「本当に私たちと戦うことが戦火を防げると信じているの?」

 

「信用されてねぇんだな」

 

フロンティアの中枢へ向かう最中、マリアがクリスに問う

 

「気に入らねぇなら鉄火場の最前線で戦うアタシを後ろから撃てばいい」

 

散っていく命の重みを知るクリスだからこそできた決断

 

疑われるのは慣れている、されど目的を果たすためなら・・・喜んでその身を差し出す

 

「・・・あの子を裏切ることとなってもいいの?」

 

「あ?」

 

「貴女とは形は違えど同じ者を弟とした者同士・・・あの子を裏切ることで得る苦しみなど容易に想像できる」

 

「想像?、今お前が感じてる苦しみとしか思えないがな」

 

「ッ!」

 

「それにアイツは・・・孤仁は大丈夫なんだよ」

 

嫌だ、本当は離れたくない

 

「孤仁の周りには支えてくれる奴らがたくさんいる」

 

自分がそうしたい、側にいたい、支えたい

 

「アタシがいなくても、大丈夫なんだよ。孤仁はアタシなんかよりずっと強い」

 

これは本当だ、だけどそうじゃない

最強かもしれないけど無敵じゃない

弱い部分だってたくさんあるのを知ってる

 

「身体の心配だってお前らの差し向けてくれたあの子のギアのおかげでなんとかなる。もうなにも心配なんてないんだよ」

 

嘘だ、心配しかないに決まっている

ちゃんと保護されたのだろうか?

呪いはどうなった?身体は無事なのか?

近くにあの二人はちゃんといるのか?

 

だけど今はそれらを全部飲み込め

 

飲み込んで、嚥下して、腹に据えろ

 

今だけは、堪えろ

 

「そう、そこまで言うのなら・・・これ以上口を挟むのは無粋というものだな」

 

「そうしてくれると助かる」

 

そうしてフロンティアのジェネレータールームへとたどり着く

 

ウェルがそこにあの「ネフィリム」の心臓を置いた

 

聖遺物を喰らいエネルギーに変える働きにより自立稼働を可能としたそれはフロンティアと融合し・・・エネルギーが巡る

 

「(アタシはアタシのやるべきことをやる。だから、無事でいろよ・・・孤仁)」

 

・・・

 

『話を戻すと、めでたくもう一度呪われた。そして一度器となった孤仁に僕はもう一度受肉し、呪力を分けた。

 

一度はほぼ完全に五条悟を受け止めかけた君だ。即座に元通りの力を取り戻した』

 

「けど・・・」

 

『そう、目隠しの侵食もまた始まった。だから君はガングニールの侵食に苦しむ響と神獣鏡のギアに苦しむ未来を救うために光に落ちた』

 

「・・・」

 

『そして今度は目隠しもろとも祓われた』

 

「目覚められないのは、それが原因かな?」

 

『そうだね。僕が受肉した時から君にとって呪力は生きる力そのものと言えた。それを無理矢理剥がされたわけだ・・・下手すれば死んでたぞ』

 

「っ!」

 

『それでも、やるしかなかった・・・そうだね?』

 

「うん」

 

『なら、仕方ないか。君たちは五条悟ができなかったことをやってのけたんだ。

 

君は五条悟を超えてこの世界の最強になった

・・・その代償がこれだけどね。僕もさっきの目隠しの残留思念と同じ・・・でも孤仁に近くにいた分、強い感じかな?一生ここにいるのも悪くないね』

 

「そうだね・・・消滅しなかっただけマシかな?」

 

『そうだねぇ・・・けど一生このままだろうね』

 

「そっかぁ、これも呪いかな」

 

『そうかもね・・・いいの?』

 

「よくないよ」

 

『どうするの?』

 

「どうしよっか?」

 

『分かってるくせに』

 

「そうだね・・・じゃあお願いしていい?」

 

『はぁぁ・・・全く・・・しょうがない生徒だ』

 

口では悪態をつくが、顔はニヤリと悪い笑顔

 

そして、ほらおいで、と両腕を開く擬き

 

「えー・・・それは恥ずかしいんだけど」

 

『ンなこと言ってる場合?それに今まで風呂からトイレまでずっと一緒だったんだから』

 

「はぁ・・・やるっきゃないか」

 

ギュッ

 

擬きに抱き着く、熱は感じないし、返ってくる力は酷く弱い

 

『さぁ、行こうか・・・今度は邪魔はいない』

 

    ・・

それでも最後にこうして教え子の成長を肌で感じられたことが嬉しい

 

こんなこと五条悟は多分しない・・・かもしれないけど、自分はこうすることができて嬉しい

 

はやり擬きと五条悟は違う

 

「やってやろう、俺と先生なら楽勝だよ」

 

            ・・

恥ずかしいけど、こうして最後に先生と触れあえてよかった

 

自分の願いは全てあの紙に託してある

 

思い残すことはない

 

『よく言った!!さぁやってやろう!!』

 

フッ・・・擬きが光の粒子となり消える

 

そしてその光が孤仁の中に入っていく

 

呪力が再び身体を流れていくのを感じ、流れる涙を誤魔化すために・・・空を見上げる

 

二つの蒼に彩られた瞳に映る空は同じように蒼かった

 

「よし、行く『待って』!」

 

ダンッ!!・・・と踏み出す前に耳に響いた声

その声は知っているとか以前に自分のものだ

 

『マリア姉さんと切歌と調とマムを・・・助けて』

 

「分かった・・・だから君も力を貸してね」

 

もう一度約束を交わし、今度こそ今までのようにそこに沈むのではなく、強く踏み出し飛翔・・・大切な人たちの元へ向かうために自らの心を飛び出した

 

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