二課仮設本部の一室、そこで眠る弧仁を見守る奏
その弧仁から呪力が見えない
なにもしていなくても溢れんばかりの呪力が見えていたその身体から呪力が消え去ったのだ
「(弧仁ほど呪力が見えるわけじゃない、だけど今の弧仁が明らかに異常なのは分かる)」
呪力とは負の感情から生み出すもの、いわば精神エネルギーに匹敵し、弧仁にとっていわば生命力そのもの、それが失われたということは
「(呪力のガス欠とは訳が違う、根こそぎもっていかれた感じ・・・このままじゃ)」
一生目を覚まさない可能性もある
「弧仁・・・!?」
ゴゴゴゴゴゴゴッッッ!!
潜水艇が大きく揺れる
「っ!?旦那!何があった!!」
無線で弦十朗に連絡を取る
『フロンティアの浮上に巻き込まれた!潜水艇ごと持ち上げられている!!』
「はぁっ!?」
神獣鏡の光により封印が解かれたフロンティア、それにウェルがネフィリムの自律エネルギーを接続したのだ
それによりその巨艦が浮上し始めたのだ
フロンティアに乗り込むために接近していた潜水艇はそれに巻き込まれたのだ
海底から浮上するフロンティアに拾い上げられる
「っ!、一旦戻るか・・・」
揺れが収まる、外の様子を確認するためにも指令室に戻ろうとしたその時
ズンッ・・・後方から感じなれた圧を感じる
「!呪力・・・まさか!」
慌てて振り返ると、寝ている弧仁の身体から呪力が立ち上っている
「弧仁!おい!目ェ覚ませ!!」
弧仁の身に何か起きてるのは間違いない
とにかく目覚めさせなければと揺さぶり声をかけ続けるがその瞳は開かない
「お前!色々心配かけやがって!!」
それでも声をかけ続け、ついでに言いたいことも全部言っておく
「なんか事情があるってことくらいは分かってたけど存在が消えかけてるなら言えよ!あんな言い方じゃ分かんねーんだよ!!」
それほ先程の未来との戦闘で明らかになったこと
解決策がなにもなかったとはいえ、言ってほしかった
そうしたら軽いハグじゃなく、もっともっと強く抱き締めて泣かせてやることだってできた
「いい加減自分がどんだけの人に影響与えてんのか自覚しやがれ!!クリスにもおんなじことで怒られてただろうが!!」
クリスとの一件から黙っていても皆を傷つける結果になることは弧仁も分かっていたのだろう
それでも皆に心配をかけたくなかったのだ
その気持ちが痛い程分かる、だって優しい弧仁だからこの決断だって悩み抜いて決めたに違いない
弧仁の眉が少しだけ動く
「眠りこけやがって!!無事なのかどっちなのか分からねぇんだよ!!」
手にひくつくように動く
「・・・響と未来は無事だぞ。ガングニールの侵食もあのギアの後遺症もなく生きてる。お前達が互いを救い合ったんだ
それからクリスは今ウェル側についてっけど・・・なんか狙いがあるに決まってる。それはお前なら分かるだろ?翼も同じ考えだ
それから月読調からの伝言だ。約束守ってくれてありがとうって・・・なんの約束か知らねぇけど、多分まだ約束は残ってるんだろ」
そうか・・・響と未来は無事なのか、ちゃんと救い合えたんだ
クリスのことは分かってる、あの子が理由なくそんなことするわけないから、早く迎えに行ってあげないと
調の・・・違う調達との約束は確かにまだ残ってる、まだ終わってない、まだ帰すわけにはいかない
「全部守るんだろ?だからとっとと起きろよ・・・弧仁!!」
大丈夫、もう心からは飛び出せた
後は目を覚ますだけ・・・いけるっ!
カッ!!
そうして開かれた
「!弧仁!!」ガバッ
見えすぎるこの瞳いっぱいに見えるのは奏
覆い被さるように抱き締めてくれている
「奏、姉、さん・・・おは、よう」ムクッ
「おはようってお前・・・」
優しく拘束を解きながら上体を起こし、挨拶を交わした。
そしてすぐ近くに置かれていた目隠しを掴んで装着・・・六眼で周囲を確認
フロンティアにうちあがっている潜水艇の中のにいるのはここにいる自分と奏、先に戦場に向かった翼とクリスを除いて7名
「(六眼でも見きれないくらい巨大な建造物・・・これがフロンティア)」
『そうみたいだね・・・お?この呪力は』
「(!、響と調?)」
今自分がいる潜水艇から二つの呪力が飛び出していった
きっと一足先に戦場へ向かったのだろう・・・しかし違和感がある
「(響と未来・・・なんかおかしくない?)」
響と未来の呪力の見え方に違和感がある・・・いつもはもう少し不明瞭に見える呪力がはっきりと見える
『そうだね、多分呪いが「弧仁!」おっと』
思考していた頭脳に奏の声が届いた
「なに黙りきめてんだ、おはようの他にもっということがあるだろうが」
そういっていつものようにアイアンクローをかましてやろうとしたが・・・
ぐぐぐ・・・
「あ?無限バリアか?」
手が近づかない
「あ、ごめん」
パチッ
ぱしっ奏の手が弧仁の顔に被さった
「まだ、戦えるってことか?」
「戦えるよ・・・でもこれが最後」
その『最後』がどういった意味なのかは分かる
「そうか・・・後悔は?」
「いっぱい・・・だけど、それは、全部、吐き、出して、きた、から、大丈、夫」
あの時ここに来る前に書いてきた手紙
もしかしたら呪いが籠ってしまっているかもしれないが・・・そこは許してほしい、そのくらいの歪んだ愛が籠っているということだ
「はぁ・・・止めても無駄なんだろ?」
「ごめん、ね」
本当は止めたい、だけど止めたところでもう遅い
弧仁はもう
「謝るくらいだったらやるなよ・・・」
「それ、でも、やる、しか、ないから」
守りたいもののため、約束のために
ベットから降りて、入院着を脱ぐ
「着替え、ある?」
「弦十朗のダンナがクローゼットにスペア入れてたよ。起きるって分かってたんだろうな」
「そっか、ありがと」
奏の前だが特に隠したりせず着替える
「今さらそんなこと気にする間柄じゃないしな」
「うん」
手早く着替えて、最後に目隠しの位置を調整
「さて、じゃあ、行こう、か」
奏にてを差し出す
「・・・」
その手をを思わず見つめる
「?、行か、ないの?」
「いや、行くけど・・・お前からこんな誘いを受けるとは思わなくて」
いつもなら大切な人は戦場から遠ざけるのが基本の弧仁が奏に一緒にいこうと手を差し出している
驚くのに訳なかった
「それ、は・・・!、分かった」
「?『はーい、久し振り擬き先生だよ』!、先生!?」
弧仁の雰囲気が変わり、擬きと変わったのだ
『なんでこんなすんなり連れていくのかに疑問を感じてるのかな?』
「そ、そりゃまぁ・・・って、先生も復活したのか!?」
『うん、限定的なものだけどね』
「多分聞いてもはぐらかされるから黙ってるわ・・・それで?なんでなんだ?」
『お察しの通り言わぬが花だよ。それからこうして誘う理由は単純明快、今の奏の力が必要だからだ』
「?戦力的になら翼もクリスもでてるだろ?」
『それを加えてもこれから行われるのは総力戦だからね。それに僕たちが二課で一番戦力的に頼れるのは奏だからだよ。』
「!、アタシはまだまだ弱いぞ」
『そんなことないさ、僕がいない間も呪術のトレーニング繰り返してきたんでしょ?』
「そりゃまぁな」
『奏の場合は元々シンフォギアで戦ってたってこともあって近接で教えることあんまりなかったからね。
呪力操作の基礎を徹底的に繰り返す、それが一番だ。それはこれからも同じだよ精進しな。
でもそれをやり続けた今の君は一級呪術師位の実力がある』
「一級ってのがよくわかんねーけど高いの?」
『十分高いよ
・・・これからは君がこの世界唯一の呪術師だ。僕たち程ではないにしろ呪いが見えるその瞳と諦めずに掴んだ力で皆を支えるんだ』
擬きからの言葉、力を失った自分にもう一度戦う力をくれた人からの言葉・・・それが胸に響く
「っ!!くそっこのタイミングで言うことかよっ」ゴシゴシ
溢れた涙を乱暴に拭う
『ほーら泣かない泣かない』
ポンポンと、頭を撫でる
『ありがとうね奏、忘れてた訳じゃないけど君も僕の大事な生徒だ。あの時弧仁と奏の声ちゃんと聞こえてたよ。だから今こうしていられる』
「そっか、ちゃんと届いてたんだな」
『だから、僕たちからお願いだ。
今の戦場は恐らくあちこちで戦い合ってる。全員潰すのなら僕らで余裕でできる、だけどそうじゃない。
その戦いを上手く収めないといけないけど、それがもっと上手くできるのは奏だと思う』
「なんでアタシなんだ?」
『戦力的に、それから君から全てが始まったからだよ』
「アタシから?」
『君はあの時、命を懸けて響と弧仁を守った。
それを君は響を戦いに巻き込んでしまった、そう言っていたね。けどそうじゃない
あの日君は二人の命を繋いだ、そして今度はその二人がたくさんの仲間と繋がった
そうして繋がった者達は悩み、苦しみ、それらを乗り越えて今こうして強く聡い仲間となった
それは全部君から始めたことなんだ』
「!、アタシが全ての、始まり・・・?」
『そう、これは先史文明期から生きているフィーネにすら予測できなかったこと。もちろん僕にだってね・・・あ、最後は弧仁も言いたい?変わるね』
また雰囲気が変わる・・・弧仁に戻った
「俺が、生きてる、のも、力を、手に、いれよう、と思った、のも・・・奏、姉さん、の、おかげ」
「んなことないだろ」
「ううん、奏、姉さん、の時が、初めて、だった。純、粋に、守り、たいって、思った、のは、あの時が、初めて、だった」
「弧仁・・・」
「だから、お願い、力を、貸して」
目隠しをしていても、真っ直ぐにこちらを見つめていることが分かる
「・・・分かった」
弧仁の手を取る
「最後まできっちり生き残れ、それから皆にちゃんと話せ・・・それが条件だ」
「うん、約、束、するよ」
グッと握り返して・・・そして
「それ、じゃあ、失礼」
グイッ、その手を引っ張る
「なっ!?」
奏を横抱きし、走り出し・・・そしてハッチを抜けて
「飛ぶよ」
「おいっ!!?」
ビュンッ!!空を飛び、全体が見回せるくらいで空中停止
「ここ、なら、よく、見える」
「おい!下ろせよ!いややっぱ下ろすな!?」
六眼で全体を確認、今戦いが起きてる場所は二ヶ所
そのうちの一つに向かって跳ぶ
シュンッ
「奏、姉さん、ここは、任せる」
「はぁっ!?」
そこにいたのは
「なっ!?奏!?」
「弧仁!!?」
いかにも臨戦途中の翼とクリスの元だった
「やぁ、久しい、ね。それじゃ・・・ん?」
軽く挨拶をしてから、次の場所に向かおうとしたがその前にクリスの首に怪しげな機械がついていることに気づいた
「それ、似合って、ないね」
人差し指を立てて機械に向かって呪力を飛ばす
「ッ!?」
パァンッ
クリスに怪我がないように放たれたそれは一部分だけを破壊し、地に落ちた
「お前っ「うん、それじゃあね」待てっ!」
シュンッ
制止するクリスの声は聞こえているが、今は一刻を争うので、次の場所へと向かうために跳ぶ
・・・
ストッ・・・
「よし、と」
「「こーじ!?」」
「あー、ごめん、まだ、幸詞じゃ、ない」
次に訪れた場所には切歌と調がいた
「っ!今さらなにしにきたデス!!今のお前には呪力はないはず!それなのになんっ」
ドガァァァンッ!!!
左手を伸ばして赫を放つ、その先に生えていた木や地面が弾き跳ばされた
「ごめん、元気、いっぱい」
「よかった、体は大丈夫なの?」
「うん、おかげ、さまで」
「くっ・・・だとしても!もう私がこの世界で調にできることはもうこれしかないんデスッ!!だから!!邪魔をするなぁ!!」
大鎌を振り上げて迫る切歌
弧仁は調と切歌を、そして約束を守るためにそれに対して拳を構えた