キーン♪コーン♪カーン♪コーン♪
教室に響くチャイムで机に突っ伏して眠っていた意識が浮上する
黒板には「GLG出張中のため自習!」と書かれている
近くの3つの机には誰もいない
「(はて?自習時間いっぱい眠っていたのは分かるが眠り始めるより前の記憶がないぞ?)」
そもそもここはどこだ?・・・学校?にしてはえらく古い木造建築だが・・・
キョロキョロと教室を見回していると・・・ガラガラガラ!教室のドアが開けられ、誰かが入ってきた
「お!弧仁起きてるじゃん!おはよ!もう昼飯だぜ?」
ピンクのツーブロックの髪に、目の下に傷が入った少年・・・だがなにかが混ざっている
「まだ寝ぼけてる感じ?おーい、おはようって!」
やたら親しげに話してくるがこの人は誰だ?年は同い年のようだが・・・
「なにしてんのよ?ってやっと起きたのかこのバカ目隠し二号」
「あ、釘崎、伏黒」
茶髪の女子生徒と、ツンツンした髪型の男子生徒が入ってきた
「弧仁、お前の分の飯買ってきたぞ。甘ければ甘いほどいいっつってたからとりあえずあんパン、金は返せよ」
「そこは男らしく払ってやれよ伏黒」
「うるせぇ、こいつには既に多量の貸しがあるんだよ」
「そういや五条先生の紹介でかなり昔からの知り合いなんだっけ?」
「あぁ、昔から五条先生と二人でウチに転がり込んできてな・・・津美紀もこいつに甘いからつけあがるし、先生はそれを爆笑するしで思い出したくないけどな」
「でもこの間お台場行った時は一緒になって俺と釘崎に飯おごらせてきたじゃん」
「あれのせいであのあとしばらく金欠だったんだからなお前ら」
「あれは約束を忘れたお前らが・・・って弧仁?本当にどうした?」
目の前で繰り出されるやり取りをボーッと聞いていると伏黒、と呼ばれた男子生徒がこちらを怪しげな目で見ている
「・・・まさかまたなんか悪巧み考えてるんじゃないだろうな」
「なんでだよっ!そこは幼馴染みだからなんとなく不調を察してやるところだろ!?」
「幼馴染みみたいなもんじゃない、ただの腐れ縁だ」
「腐れどころかもはや呪いの縁でしょ。にしても本当に今日は静かね?調子悪いならとっとと硝子さんとこ行きなさいよ」
「そだな、なんなら俺抱えて行こうか?」
「やめとけ、吐くぞ」
「後絵面が無駄にいい分こっちの気分が悪くなるからやめとけ、どこの恋愛漫画だよ」
「ちゃんと良識ある速さでいきますけど!?後釘崎はどういう意味!?」
・・・なんだか面白い人達だ・・・なんだろう・・・懐かしい?
「あ、そういえば弧仁CD買いに行くんだろ?ほらあの~タッパとケツのデカイ歌姫の!!」
「はぁ~ほんと男子ってそこしか見てないわよね・・・それに違うわよこいつがほしいのはあのーほら、あの二人組の~なんだっけ伏黒」
「風鳴翼と天羽奏のツヴァイウィング、だ。後虎杖のはマリア・カデンツヴァナ・イヴ、それからこいつが近い内に買おうと思っているCDは雪音クリスの新曲だ」
「「あぁー!!それそれ!」」
「ツヴァイウィング・・・マリア、クリス・・・」
聞き覚えのある名前達・・・なにかが思い出せそうな気がする
「あ!それからお前ちゃんと手紙出したん?あの伏黒じゃない方の幼馴染み達に」
「おいじゃない方ってなんだよ、失礼だろ」
「そうそう、伏黒じゃない良い方の。ここから郵便ポストまでいくのめんどくさいとか言ってた割にまめに手紙書いてるあの子達でしょ?写真見せてやたら自慢の幼馴染みって言ってたじゃない。まだ出してないの?」
「おい、良い方ってなんだ。だったら俺はなんなんだ?悪い方か?」
「にしても見事に女の子ばっかりだもんなぁー羨ましいぜこのこの!」
「けどなにがあっても恋愛には発展しなさそうよねー、相手がどう思ってるか知らないけどあんたの精神年齢っておこちゃまだもの
第一印象が小学三年生って感じたアタシの観察眼は間違ってなかったわ」
「あのーそれなら鼻くそ喰ってそうな俺は間違いだと思うんだけど」
「カモメに火つけるわけないだろ」
「そこうるさい」
この三人は軽口叩き続ける位に仲良しで信頼しているようだ
なんだろう、知ってるけど知らないこの感じ・・・ずっとこうしていたいような・・・これは一体・・・
「ん?・・・んん!?」
「おい!どうしたっ!」
「な、なんでいきなり涙なのよ!?」
ポロポロと流れる涙、心配する三人の声・・・そして
「やぁやぁ!!皆大好きな先生が帰ってきたよ!!!・・・ってあれ?弧仁なんで泣いてんの?おいおい誰だよ~僕の弟いじめた不届きものは~祓っちゃうぞ?」
大きな音を立てて部屋に白髪に目隠しという怪しすぎる大男が入ってきた
けど直感でこの人は先生だと分かる
「誰が弟だ!?ただの遠縁の従兄弟だろうが!!?」
「後誰もいじめてませんよ。こいつが勝手に泣いてるだけです」
「けど先生、なんか今日弧仁の調子なんかおかしいんだよ。なんか悪いもんでも食ったんかな?」
「いやー悠仁じゃないんだしそれはないデショ「どういう意味!?」んーでも別に呪力に異変はないんだけど・・・どうかした?」
「分かん、ない」
「もしかして弧仁のプリン食べたのバレた?けど代わりのプリン伊地知に買いにいかせたはずなんだけど」
「もー伊地知さんパシらせちゃダメだってば」
「あれはいいんだよそういう存在だから」
こうして話を聞いている間でも流れ続ける涙・・・そして分かったこの正体が
早く目覚めないと、そのためには
「先生」
「お?珍しいね、いつもはどれだけ言っても悟さん呼びなのに・・・どうしたの?」
「マジ、ビンタ、して」
「え?」
「いいから、早く」
「いやいやいや、理由もなく従兄弟兼生徒をぶっ叩くほど僕クズじゃないし」
「はっ、よく言うわ」
「全くだ」
「悠仁、殴って、黒閃、で」
「えぇ!?俺!?無理無理骨折っちゃう」
「なんで骨折確定なんだ「恵、魔虚羅」お前は俺を殺したいのか」
「んなに殴られたいなら殴ってやろう「野薔薇は、いい」本当に殴るぞお前?」
「本当にどうしたの?硝子んとこ行く?今ならまだ素面だろうし・・・ほらおいで?」
手を差し出す先生・・・だけどこの手をとってはいけない、その先に行くのはまだ早い
「・・・ごめん、後、ちょっと、だけ、時間、ちょうだい」
「時間?なんで?」
「ちゃんと、お別れ、してくる」
「!・・・そっか、なら」
なにかを察してくれた五条先生が手をデコピンの形にして弧仁の額に近づける
「早く言っておいで、もっとも歪んだ
「・・・うん!」
パシィィィンッ!
・・・
パキィィィンッ!
領域が解かれた、落下していく中でこちらを駆け寄る装者6人が見えた
どうやら夢を見ていたようだ・・・弧仁と擬きがこうなればいいなと願う世界の夢を見ていた
そして体に鞭を撃ってこちらを駆け寄る装者6人を地上に飛ばした
そして・・・ナスターシャのいる遺跡の一区画、進入するために開けた穴、そこを塞ぐために残しておいた呪力を探知して自分を飛ばす
『おお、宇宙空間でもなんとかなるもんだね』
「うん・・・!、いた、ありがとうナスターシャさん」
多量の血を流して倒れるナスターシャを発見、その姿を抱き上げて皆のいる場所に向かって飛ぶ
・・・
なにもない海岸、そこには二課仮説本部の潜水艦が不時着しており、弧仁はそこを狙って装者達を飛ばした
ギアも解除、疲弊しきった体を思わず砂浜に身に預けている時だった
「響ー!!」
「お前ら!無事か!?弧仁は!?」
そこに未来と奏、そして二課のメンバーが駆けつけた
ウェルは既に連行されたようである
「!!、未来ぅ!!」
「奏!弧仁がまたフロンティアに「それ、なら、心配は、ないよ」!」
弧仁の捜索を頼もうとする前に弧仁の声が聞こえた
慌てて皆が振り返るとそこには
「!!、弧仁!お前無茶しやがって!!」
ナスターシャを抱えて戻ってきた弧仁がいた
「マリア、さん」
「マム!!」
ナスターシャをマリアに託す
「最低限の、治療は、して、後は、本人、次第」
「!、えぇ、ありがとう・・・お帰りなさい・・・お母さん」
「ありがとう弧仁、本当に守ってくれた」
「アタシ達との約束も全部守ってくれてありがとうデス!!」
「うん、守れて、よかった」
だって、彼が目を覚ましたときに親がいないと不安になるからナスターシャには生きてほしかった
けど最後はとにかく純粋に助けたかった
「これで、幸詞、との、縛りは、解かれる」
頭の中でガチャリと声が聞こえたと思えば・・・一気に体の力が抜けて倒れる
「弧仁!!」
その体を咄嗟のところで奏が支えた
「みん、な、そこに、いるよ、ね?」
「当たり前だ!」
「ごめん、もう目が、見えなく、て」
あんなによく見えていた目が見せるのは真っ暗な暗闇、見えないのがこんなに不安になるとは思わなかった・・・だけどそれでよかったのかもしれない
皆の悲しい顔を見なくてすむ
「響、未来、二人の、部屋に、ね?俺の、遺書、あるん、だ。皆で、読んで、欲しい」
「やだっ!そんなの聞きたくない!!」
「弧仁・・・嘘でしょ、嘘って言って!」
「ごめ、ん・・・でも、もう、限界、なん、だ」
存在そのものが消えていく
神獣鏡で瀕死となった際に擬きと互いにかけあった縛り
『互いにこの戦いが終わる時まで共に戦い、終わったときは共に消える』
この縛りで無理矢理呪力を産み出して、復活した、そして今その縛りが達成されたのだ・・・
「そこに、俺の、願い、とか、後、悔とか、書いた、から、読んで、欲しい。じゃないと、俺、呪霊に、なっちゃう、かも」
「分かったから必ず読むから・・・だからどこにもいかないで弧仁っ!!」
「ふざけんなよ!お前、アタシの夢を叶える手伝いするって、ずっと一緒だって言ったじゃねぇか!!」
「ごめん、ね・・・皆」
今際だというのに、皆に怒られてしまった
まぁそれだけのことをしたから仕方ない
きっと他にもまだまだ怒られることと謝ることはたくさんある
けどね?
「俺、幸せ、だった」
「「「「「!!」」」」」
「皆と、ご飯、食べて、遊んで、喧嘩も、したけど、仲直り、して、一緒に、戦って、幸せ、だった
全部、皆が、いて、くれた、から」
「そんなの・・・これからも、いくらでもいてやるよ!!だからもう喋んな!!」
これ以上は辛すぎると、奏は弧仁にこれ以上は話さないように願うが、それはできない
「ごめん、今しか、ないから、聞いて、ほしい」
今しかない、その言葉はもう別れが近いということ意味していた
それが分かったからこそ、弧仁の言葉を受け止めるために黙る
「・・・父さん、近くにいる?」
「あぁ」
「俺の、尊敬、する人ってね?二人、いるんだ、一人は、先生で、もう一人は、父さん」
「!!」
「いつも、守って、くれて、ありが、とう、大好き」
「大馬鹿野郎・・・親より死ぬやつがあるか」
本当はあの紙に綴りたかった言葉がどんどん溢れていく
言うつもりはなかったけど・・・もう出してしまえ
歪んだ
「藤尭さん、クリスの、時に、背中を、押して、くれて、ありがとう。あおいさん、あったかいもの、いつも、ありがとう。
道に、迷いがちな、俺を、導いて、くれて、ありがとう、大好き、です。」
「俺も君と一緒に戦えてよかったよ」
「頼りにしてもらえて嬉しかったわ」
「緒川さん、エージェントの、先輩と、して、色々、教えて、くれて、ありがとう。ちょっと、厳しかった、けど、いつも、俺たちを、守ろうと、してくれて、ありがとう、大好き」
「私も先輩として、貴方のような優秀な後輩を持てて光栄です」
「翼ちゃん、奏姉さん、二人の、一番の、ファンは、俺、だよね?だから、いつか、もう一度、双翼、揃った、ツヴァイウィングで、飛んでみせてよ・・・いつだって、かっこ、いい、二人が、大好き、だよ」
「!・・・あぁ、聴かせてやるよ」
「貴方がツヴァイウイングの一番のファンだということを一生忘れない」
「響、未来、初めて、会った、時に、話し、かけて、くれて、ありがとう。俺に、とって、初めての、友だちは、二人で、親友も、二人、だけ、なんだ、だから、いつまでも、仲良く、ね、喧嘩、しても、いいけど、仲直り、してね・・・ずっと、大好き、だからね」
「うん、これからもずっと一緒にいるよ」
「もう二度と未来の手を離さない。約束するよ」
「クリス、俺が、初めて、会った、女の子・・・俺の、初めての、姉さん・・・いつだって、俺の、手を、引いて、くれて、ありがとう・・・愛してるよ」
「!!・・・こんなこと、二度と言わねぇからよくきけよ・・・アタシも弧仁のことを愛してる」
「それから、マリアさん、切歌、調、まだそこに、いる?」
「!、えぇ三人ともいる、マムもここにいる」
「・・・弧仁っ「調!・・・今はなにも言っちゃいけないデス、この時間をあまりアタシ達に裂いちゃいけないデス」・・・うん」
「ありが、とう、切歌・・・出会って、少し、しか、経ってない、けど、俺、マリアさん、達のこと、好きに、なった、もっと、仲良く、したかったな」
「そうね・・・きっといい友人になれていた」
「一緒におさんどん、作りたかったな」
「アタシももっと貴方と一緒に遊んでみたかった、もっともっとお話しがしたかったデス・・・」
「・・・あり、がとう、それ、から、ナスターシャさん、に後は、お願い、しますって・・・それ、から、ウェル、にはお前は、嫌い、だけど、お前の、やり方は、嫌い、じゃなかったって伝えて」
「・・・えぇ必ず伝えるわ」
「ありがとう・・・もう、少しで、起きる、から、一緒に、いて、あげてね」
「「「!」」」
「・・・ごめん、もう、だめだ・・・なんか、すごく、眠い・・・」
なんといえばいいのか分からない、分からないけど・・・なにか言わないといけない
じゃないともう本当に時間がない
本当は嫌だともう一度叫びたい
ここにいろ、と、どこにもいくな、と叫びたい
泣き叫んで、泣きついて、すがり付きたい
だけどそんなことをしたら弧仁は安心していけないから
「皆、ありがとう」
一同「!!」
「俺は、いつも、自分の、証明を、探してた、皆が、それを、くれた。だから、俺は、幸せ、だったって、自信をもって言える・・・だから、本当に・・・本当に・・・」
そうして、声が途絶えた
「おい、本当になんなんだよ」
奏の問いかけには答えない
元々弱々しかった体の力が完全に抜けた
「お前がどれだけ人に影響を与えてんのか理解しろって言ったじゃねぇか」
白かった髪が黒く染まっていく
「お前がいなくなったら、皆悲しいだろ」
なのに、どうしてこんなに安らかな顔をしているのだろう
「起きろよ・・・起きろよ!!」
もう我慢の必要は・・・我慢する理由はない
今からいくら泣き叫ぼうと、弧仁には届かないから
その場にいた全ての人が涙を流す
「頼むから!起きてくれよ!!・・・弧仁ぃぃぃぃ!!!!」
海岸に奏の叫びが木霊した・・・それに答える声が返ってくることは・・・二度とない
・・・
綺麗な蒼の空と海、ここは幸詞の生得領域
弧仁の目の前には黒のソファで眠る幸詞がいる
ずっと奥底にいた彼がここまで浮かんでいたのだ・・・目覚めの時は近いのだろう
そしてそれにともなって自分は消えなくてはならない
後悔も願いも想いも全部伝えたから大丈夫
だから、最後は幸詞に送る
「俺を生み出してくれてありがとう。君が生きるはずだった時間を俺に分けてくれてありがとう・・・できるはずないけど、君と話してみたかったな」
幸詞の額に手を当てる・・・これから彼がその名の通りに幸せに生きるため、自分に関わる記憶はいらない
元々ひとつだったのだからこのくらいできる
『
「!、先生?」
後ろを振り向く、そこには擬きがいた
『消える寸前だからかな?こうしてまた会えたね』
「うん・・・」
最後に一体化して声しか聞けないと思っていたがこうして最後に会うことができて嬉しい
『で、もうこれから闘うことなんてないんだから呪力は必要ないでしょ?』
「・・・ううん、これはおいておく」
『どうして?それを持っていたらまた彼は狙われるかもしれないのに』
「この力は呪いだけど・・・守る力にもなる」
『!』
「幸詞ならこの力を正しく使える、そう信じてる」
『そっか、なら置いていこう』
「それじゃあ行こっか、先生」
『うん、弧仁となら楽しい地獄になりそうだ』
「その前に了子姉さんに会えるかな?それにあのお方ってもしかしたら俺の義兄さんになるのかな?」
『さぁどうだろうねぇ・・・その辺を含めて楽しくなりそう』
「うん・・・それじゃあ行こうか」
その前にくるりと振り返り、眠る幸詞を見つめて
「またいつか、会おうね・・・俺の兄さん」
そうして幸詞の心からも弧仁は消えた
・・・
「やっと帰ってこれたね、未来」
「・・・うん」
フロンティア事変からしばらくが経った
響達は色々な手続きや治療などで暫く帰れなかった
マリア達は裁判にかけられてしまったが、弦十朗や官房長官の手によって情状酌量でほぼ無罪放免でなんとかなるそうだ・・・すぐにでも会えるだろう
ナスターシャは一命を取り留め、現在療養しながら取り調べを受けている。マリア同様の判決となりそうだが、武装集団フィーネの主犯核としてマリア達より長くかかるそうだ
そんな日々を経て・・・漸く家に帰ってこれた
だけど響と未来は少し帰りづらかった
だってあの部屋には弧仁の遺書があるから
・・・
弧仁は公的に死亡したことになった
しかし、その存在は秘匿されるべきであるとして葬式を行うことはなく、お墓を立てることは許されず、泊まり歩いていた家にあった弧仁の私物などは全ての回収された
まるで弧仁がいたことが消し去られたようだった
だけど翼の父親が尽力してくれた結果、遺書だけは見逃してもらえた
・・・
「あった、これだね」
「大切なものなのにこんなところに置くなんて・・・」
「まぁまぁ、そのおかげで見つけやすかったんだから」
机の上に無造作に置かれた手紙
封筒には分かりやすく「遺書」と書かれていた
「ねぇ響、やっぱりこれは皆で」
「皆で読んだら皆で泣いてしまうから先に進めない・・・だから皆で回して読むって、決めたでしょ?」
「・・・うん、ごめんね」
震える手をギュッと握り、手紙を開く
見慣れた綺麗な字で書かれる文字・・・一つ一つ大切に読んでいく
『改まって拝啓とか敬具とかを書くような間柄の人がこの手紙を開くことはないから書きません。
俺の私物は多分捨てられるし遺産?みたいなものは死んだらどこぞの支援機構に振り込まれると思いますので面倒な手続きは不要です。その辺は八絋さんにお願いしてます。
でもこの手紙が読まれるのはいつなのかな?
マリアさん達の事件が終わって少ししたくらいか、それとも俺が途中で力尽きた後に開かれるのか・・・そんなことは分からないけれども、とにかくその時世界が少しでも平和であることを願います。
ここからは俺の願いと後悔を書きます。
まずは後悔から
響と未来とふらわーに行ってみたかった、美味しいのは知っているから、三人で行きたかった。響達の友だちと行くのも楽しそう
翼ちゃんと奏姉さんのライブに行きたかった。大好きな人達と大好きな人達が輝くステージを見に行きたかった
クリスの夢を最後まで見守りたかった、そしてそれまでずっと側で応援したかった。クリスの夢は壮大だけど、クリスなら叶えられると信じてる
父さんに親孝行がしたかった。いつだって心配かけてばっかりだったから旅行とか映画とか・・・なにかしらの形でお返ししたり、成人するまで生きて一緒にお酒飲んだりしてみたかった
緒川さん、藤尭さん、あおいさんも同じでいつものお礼と、感謝をなんらかの形で伝えたかった
けど、もう無理だから・・・諦めます
来世に期待します
最後に俺の願いを残します
どうか俺の大好きな皆がいつまでも幸せでありますように、いっぱい食べて寝て泣いて怒って笑って、自分を偽ることなく人生を全うできますように・・・俺の願いはそれだけです
以上、皆のことが大好きな五条弧仁でした』
・・・
「・・・最後の最後まで皆のことばっかりだったね」
「うん・・・弧仁らしいね」
弧仁がいなくなって今日までの数日の間、当然だが皆落ち込んでいた
なにをしても足りなかった、いつも傍にいてくれた弧仁がいなくなったから、虚無感・・・のようなものが常に心にあった
けど誰もそれを口に出すことはしなかった
口にしたら、もういないんだということを実感してしまうから
「けど弧仁言ったもんね、泣いていいって」
「・・・う゛ん」
「ちゃんと、その後で、笑うって、約束するから・・・」
今だけは許してほしい、と弧仁に言い訳をして・・・響と未来は互いを抱き締め合いながら涙を流した、そうしないとどうしようもない悲しさに耐えきれそうになかった
・・・
特務二課の目が届いているとある病院の一室
そこには黒髪の・・・かつて弧仁と呼ばれた少年が眠っている
身体は限りなく健康であるがなぜか目覚めないその少年
「・・・」スースー・・・ニッ
今まで一切変わらなかった口角が少し上がる・・・それはよい夢をみているか・・・それとも
しないシンフォギアさんぽ
『やぁやぁ!皆大好き擬き先生だよ!
今回のお話しで五条弧仁の物語は一度終わった
大好きな人達に囲まれて幸せに逝けたんだ、これ以上に幸せなことはないね・・・それに残していったものはたくさんある
これからは彼がどうしていくのか、それを見守って行こうと思うよ
今回は嘘じゃなく本当に弧仁は死んだ・・・現に今僕がいるのって所由あの世と言われるところだしね
色々と懐かしい顔に結構会えたよ
・・・でも実は・・・
今僕のとなりには弧仁がいないんだよね!!!
これがどういう意味なのかはお楽しみに!!
それじゃあまたね!
あ、質問と感想どしどし送ってね!これは催促さ!!』