幸詞が弧仁のことを知ってから数日が経った
「はい、とりあえずの修復はできました」
「仕事が早いじゃねーか」
「感謝する」
そういって翼とクリスにアメノハバキリとイチイバルのギアペンダントを渡さ・・・
「はい、あーげた」ヒョイ
なかった、二人の手に渡る寸前で自分の手の中に戻す
「んな!?」
「なんのつもりだ」
「これは弦十朗さんに預けます。本当の非常時にしか使用は認めません」
「それじゃあ強襲された時どうするんだよ!」
「その強襲から裸一貫で逃げるのも、俺が直したこの不完全はギアで戦うのも同じですよ」
「それほどまでに弱体化しているのか・・・」
「はい・・・俺の力不足です。すみません」
頭を下げる幸詞
あの日以降少しずつではあるが響達と話すことも増えていて、人となりも知っていたった
だから今彼が本心から謝っていることが分かる
「・・・わりぃ、お前に八つ当たりたい訳じゃねぇんだ」
「私もすまない、少し焦りすぎていた。こんな状況下でも戦う剣を直してくれたこと、感謝する」
「ありがとうございます。このギアを使うタイミングは弦十朗さんに決めてもらいます。それでも余計な戦闘は避けて、人命救助や撤退することを徹底してください
それから今エルフナインちゃんとギアの強化改善策を準備しています。実行されたら錬金術の観点からのギア修復で完璧に、今まで以上のギアができると思います。」
「そいつはいいな、後はおっさんと上の連中が実行に踏み込むだけか?」
「はい、ただ元々SONG自体がシンフォギアを一纏めに管理したいっていう国連の狙いがあるわけで・・・正直強化となると難しいかもしれないッス」
「そうだったな、しかし現状運用できるギアが立花一人という状況を加味すれば決行もやむなしと思うのだが」
「はい、その立花さんがいるから大丈夫みたいなところがあるみたいで・・・後、切歌と調も」
「はぁ!?あいつらはリンカーなしじゃギアのバックファイアで痛手を追うって知らねーのか!?」
「それでも戦力にはなるというのが上の判断なんですよ」
「くそっふざけてやがる・・・」
「とはいえリンカー絡みで仲間を失うわけにはいかない・・・やはり鳴届、お前にかかっているな」
「はい・・・」
「その感じ、まだあいつらと話し合えてないのかよ」
「すんません」
「あ、謝るなよ!」
「とにかくギアの強化改修となるとそれは過剰戦力と判断されるみたいなんです」
「なるほど、そういった事情があるということか」
「そこまで言うほどの強化なのかよ」
「俺としてはなし寄りのありって感じですかね」
「どっちだよ」
「エルフナインちゃんの改修を行った場合の基礎性能の上昇、そしてアルカノイズの分解に対応できるってのはいいと思うんですけどね・・・ただメイン機能が難ありというか・・・」
「それはどういうことだ?」
「んー・・・ハザードオン♪って感じ?」
ハザード(hazard)・・・危険を意味する
「ハザードって・・・どんなことするつもりだよ」
「まぁそれはお楽しみってことで!んじゃ俺そろそろ上がりなんで帰りまーす」
「まだ昼過ぎだぞ?」
「なにか用事でもあるのか?」
「・・・実は」
ちなみに世間一般で今日は休日であるが翼とクリスは警戒のためにこうしてSONGにやってきている
更にちなみに幸詞はまだ未成年のため基本午後10時以降の労働はできず、1日の労働時間は基本4時間程度で時給が発生している
・・・そうコイツの扱いはバイトなのである
午後10時以降の労働禁止、基本1日4時間労働というのはあくまでも目安であり、タスクが多かったり、緊急性が高い場合に限りこれには当てはまらない
言うまでもなくブラックである、だが給料はいいのだ(ただまぁ今の生活費は国持ちであるので働く必要はないのだが)
そして今回はギアの修繕で割りと頑張ったので・・・
「昨日は徹夜しました☆そして家に連絡いれるの忘れてたから電源切ってた携帯に鬼のような着信が・・・」
「早く帰れバカ!とっとと寝ろ!」
「その前にマリア達に連絡をいれろ!」
二人に怒られながら帰る幸詞だった
・・・で、自宅
「ぐぉー・・・ぐぉー・・・」
帰宅したが皆がいなかったのでそのままリビングのソファで爆睡
幸詞達の家であるマンションの一室、実は部屋があんまりない
リビング、キッチン、風呂、そして切歌と調の部屋とマリアの部屋のみだ
なので幸詞は基本このリビングで過ごし、寝る時も机をどけて布団を敷いて寝ている
さすがに不便であるがこれまで(FISの孤児院や潜伏していた廃病院、違法実験施設など)に比べれば天国である
なので文句はないのだが・・・
「ただいまー・・・!、幸詞!寝るならちゃんと布団で寝なさい!」
スーパー帰りなのか荷物がたくさんはいったマイバックをひっさげたマリアが帰ってくるなりソファで寝ている幸詞を見つけて、説教が始まる
「徹夜明けなんです勘弁してください・・・」
「あ!しかもまた帰ってきてそのまま寝たのね!?私服のままじゃない!」
「徹夜明けなんです勘弁してください・・・」
もはや同じ台詞しか喋れないモブと化したがマリアの説教は続く
「お風呂も歯磨きもちゃんとしなさい!それから今日はマムのお見舞いにいく予定でしょ!準備は!?」
・・・ブチッ
「うるせぇオカン!!」
遂にキレた幸詞
「誰がオカンよ!!」バシィッ!
「痛い!!ぶったね!?マムにもぶたれたことないのに!!」
「ろくに連絡しないほうが悪い!!」バシィッ!
「痛ってぇ!あーもう知らねぇ!?姉とか関係ねぇ!!戦争だ!!」ワシィッ!
「!!、どこ触ってるのよ!!」
「んなもんぶら下げてるほうが悪い!!」←徹夜テンション
「触りかたが雑なのよこの○貞!」ベシッ!
「触ったことは怒らねぇのかよ!?」
「そんなんじゃ将来困るわよ!」
・・・でひとしきり喧嘩した後で
「ほらちゃんと布団で寝なさい、そんなんじゃ疲れもとれないでしょ」
「あーい」
シャワーを浴びている間にマリアが布団やらなんやらを用意してくれた
「なにか軽く食べられるもの作っておくから起きたら食べること」
「あーい」
「それに残業するならちゃんと連絡する!切歌と調がどれだけ心配してたか・・・ちゃんと謝りなさいよ」
「あーい」
「だから言ったじゃない、無茶しないでって・・・幸詞?」
「ぐがぁー・・・」
再び眠ってしまった幸詞、その頭を優しく撫でる
「けど、貴方がそこで・・・安全な場所で戦ってくれれば、私たちも戦えるんだから」
喧嘩したり仲直りしたり、そうした瞬間瞬間でこの大事な弟が生きていることを実感する
それが堪らなく幸せなのだ
・・・
それから切歌と調と合流、三人に身支度を整えられてからナスターシャの元へ
病室前の警備員に許可証を見せる
「はい、許可証」
「やぁよく来たね、前々から話してた件やっと申請が通ったよ」
すっかり顔馴染みになった警備員さんと軽く談笑する
「あ、本当ですか?」
「申請?こーじなにかお願いしてたの?」
「うん、面会時間増やしてってお願いしてんだよ・・・で、何分いけるんですか?」
お見舞いの人数が増えたら15分では足りないなと感じていたのでお願いしたのだが・・・
「なんと20分だ」
「5分増えただけデス!」
前回より5分増えただけだった
「けどこれから次第では伸ばしていけるそうだ。ナスターシャ教授の指導により我が国の聖遺物研究学は大きく進歩しているからね。その功績さ」
「そっすか・・・ありがとうございます」
「さぁ、時間がもったいないだろう?早くいきなさい」
そうして病室へ入る
「マム!」
早速マリアがナスターシャに駆け寄った
「こらマリア、いくら私しかいないとはいえここは病院、静かになさい」
「ごめんなさい、けどようやく会えたんだもの」
「全く・・・しかたのない子です」
軽く叱るナスターシャだが、その表情はとても優しい
前からちょくちょくこれてた幸詞、切歌、調に対してマリアがここにこれたのは初めて
三人も嬉しそうなマリアが見られて釣られて微笑む
「風鳴司令から話は聞いています。幸詞、貴方記憶を取り戻したそうですね」
「んー、取り戻したっていうか聞いたけど実感がないんだ」
「そうですか、恐らく五条弧仁が全てを持っていったのでしょうね」
「・・・なんでだろう」
「きっとこーじに戦ってほしくないからデス。のんびり余生を楽しめってことデス」
「そう、このまま研究職として成功していずれは寿退社を目指そう?」
「いや俺生まないからね」
「けどそれならひとつ疑問が残るのよ」
「疑問?それはなんですマリア」
「幸詞が以前ノイズと対峙した時に呪力が使えていた・・・それは何故かしら」
「そうデス!戦う力を残しちゃったらこーじは飛び出して行ってしまうデス!!」
「多分弧仁が持っていけなかったか、もしくはあえて持っていかなかったか、じゃないかな」
「調?」
「きっとこーじが自分の身を守る最低限の力を残しておきたかったんだよ」
「・・・そうかなぁ」
若干不満そうな顔の幸詞、その顔に気づいたナスターシャは
「!・・・マリア、すみませんがなにか飲み物を買ってきてくれますか?」
「!えぇもちろん」
「それからできればなにかお茶菓子もほしいですね。切歌、調、マリアを売店に案内してあげなさい」
「了解デス!」
「え?俺は・・・」
「こーじはマムと待っててね」
そうして三人が出ていった
「・・・マム、ここ持ち込み禁止って覚えてるでしょ?」
「えぇ、三人には悪いですが購入する時間と門前で止められる時間を合わせれば少し時間を稼げるでしょう?それでなんの悩み事ですか?」
幸詞の表情に気付き、二人きりになる空間を作ってくれたのだ
「意地悪だなぁマムは・・・あのね」
そうして以前ノイズと対峙した時のこと、そしてこれから自分も戦いたいこと、それをマリア達に止められていることを話した
「あのファラってやつは俺のなにかを狙ってた・・・多分これから戦況は激しくなると思う」
「・・・そうですね、その辺りの話も聞いています」
「だから俺は戦いたいんだ。少なからずその力がここにあるのは分かるから・・・戦いたい」
「そうですか、ならそれでいいのでは?」
対してナスターシャからの答は非常にあっさりとしたものだった
「へ!?」
「貴方が戦うのに、私たちの心配が妨げとなりますか?」
「・・・別にならないね」
弦十朗達も自分の強さはよく知っているだろうから希望すれば即戦力で投入されるだろう
色々制約こそ生まれるかもしれないがそこはまぁなんとかできる自信がある(方法:周りに全投げする)
マリア達の心配で多少心に引っ掛かりを覚えるだろうが・・・その辺は自分は結構ドライなのでまぁ戦えると思う
あの時は否定されるとは思わなかった驚き、そして心配する痛みを感じていたからなにも言い返せなかったが・・・よくよく考えれば自分が戦うことに誰の許しもいらないのだ
誰かからの心配は戦えない理由にはならない
「貴方はとても敏い子です。以前の私たちのようにゴールも覚悟も決めずに戦うなんて道を貴方は選ばない」
「・・・」
「そして誰かを思いやり、守ろうとする優しい心・・・それがあれば大丈夫ですよ」
「・・・うん」
「しかしだからと言ってその身を犠牲にしていいと言っているのではありません・・・貴方の身も大切になさい」
「けどマリア姉さん達は反対してるんだよなぁ~」
マリア達の気持ちを戦う理由にする必要はなくて、無視することができても・・・どうせなら快く共に戦いたいとも思うのだ
「ふふっ、ならマリア達を黙らせる魔法の言葉を教えてあげましょう」
「え!?」
「それは・・・」
・・・そうしてまた数日後、SONG艦艇内のエルフナインに当てられた部屋にて談笑していた幸詞
幸詞とエルフナインはちょくちょくこうして話しており、錬金術と聖遺物研究の意見交換は大変有意義なものとなっていた。
そこに
「鳴届君」
「!、弦十朗さん」
「こ、こんにちは」
「またここにいたのか?」
「エルフナインちゃんの話結構興味深くて、それにアメノハバキリとイチイバルの機能を少しでも上げたいですし」
「そうか、しかし一仕事終えたところだ・・・あまり無茶はするなよ」
グシグシと、幸詞の頭を少し乱暴に撫でてから弦十朗は去っていった
「ガキ扱いかよ・・・ったく」
けど、なんだか悪くなかった
「風鳴司令は五条弧仁さんのパパでしたからね」
「・・・やっぱりそうなのかなぁ」
「なにがですか?」
「その、さ・・・弦十朗さんにはさ結構恩があるんだよ。俺が目覚めてから色々世話してくれて、一時期は俺のことを学校にも行かせようとしてくれてたんだって・・・けどそれって本当は弧仁にしてやりたかったことなのかなって」
「!」
「あれから弧仁のこと色々聞いたり、隠されてた情報とか色々見たんだ。弧仁は普通の生活?ってやつを犠牲にして大切なものを守ろうって頑張ってた・・・けどやっぱり親ならそんなことしてほしくないと思うんだよね」
「そうかもしれないですね」
「だからやっぱり俺って存在は弧仁を知る人にとって悲しませる存在で、本当ならここにいないほうがいいんじゃないかなぁって」
以前響達に謝って、弦十朗達にも謝った
そうしたら、ガキがそんなこと気にするな、
と言ってくれたのだ
でもやっぱり本当は弧仁のことを思うと悲しいだろう
ましてやそんな存在をダブらせる自分がいたら、もっと悲しいだろう
自分は結構ドライだからマリア達が自分のことを心配するのは分かるが最悪無視してでも自分の意思を優先することができる
けど弧仁を思う人たちの気持ちはどうしても無視できない、自分が産み出した彼のことはどうしても無視できない
「!そんなことはありません!」
「!?エルフナインちゃん?」
「弦十朗さんもよくここに来てくださりますがよく幸詞さんのお話をよくなさっています。了子さんがいなくなってから手つかずだった聖遺物研究が進んだと言っていました」
「そ、そうなんだ・・・」
「それにボクのプロジェクトが決行されない今、翼さんとクリスさんのギアは本来なら使用すら不可だったはずです。幸詞さんは不完全だと言っていましたが錬金術もなしにあのレベルの修復はかなりの難易度です!」
「ありがとう・・・なんか面と向かって言われると照れるな」
「!、す、すみません・・・だからそんな悲しいこと言わないでください。それにボクは幸詞さんとお話するのすごく楽しいです!」
顔を真っ赤にしながら慰めてくれるエルフナイン
「!!・・・ありがとねエルフナインちゃん」
思わず手が伸びてエルフナインの頭を撫でる
「わ、わわっ」
「あ、ごめん、嫌だった?」
「い、いえ・・・あの、続けてください」
「り、了解」
そうして撫で続けること・・・数分後
「あ、ありがとうございます。もう大丈夫です」
「うん」
手が離れる
「えっと、本当に嫌じゃなかったんだよね?」
「は、はい!気持ちよかったです!」
「ならよかったけど・・・どうかした?」
「そのパパに頭を撫でてもらった想い出があって」
「俺まだそこまで年とってないんだけど」
「ち、違います!、思い出したんです!」
「そうなんだ・・・んん?エルフナインちゃんのパパ?って・・・キャロルってやつのこと?」
「それはボクの創造主です。パパというのはキャロルのパパ、イザークです」
「ふーん・・・それでキャロルの想い出もエルフナインちゃんに転写されてるの?」
「はい、何故かは分かりませんが・・・」
「けどそうなんだ・・・パパねぇ・・・もしかしてキャロルって意外とパパッ子?」
「パパッ子?というのは?」
「お父さんが大好きな子って意『ヴィー!!ヴィー!!』!?アラート!?行ってくる!」
艦内に響くアラート、これはノイズ発生のサイン
「はい!気を付けてください!」
オペレーションルームへ急ぐ
ーオペレーションルームー
オペレーションルームの大型モニターに映っていたのはまだ見たことのないオートスコアラーとアルカノイズに囲まれた響とその学友達
「これは一体・・・なんで立花さんはギアを纏ってないんですか?」
「原因は分からないが響君は現在ギアを纏えないようだ!現在緒川が向かって・・・「俺も行きます」!何っ!?」
「俺の力ならなんとかなります!!」
そういっているとアルカノイズの隙間を抜けて響達が逃走したがノイズ達が追う
「今は戦える装者はいない!そんな状況下でも貴方が翼さんやクリスさんを向かわせず緒川さんを向かわせ人員救助を優先したということはそれだけアルカノイズを脅威と判断しているということ!
だけど、その脅威!俺ならなんとかできる!」
「しかし君は研究者だ!戦闘員では「んなこと言ってる場合ですか!!」!!」
「・・・貴方が許可しようがしまいが、俺は行く!!・・・止めるなら力ずくでどうぞ」
そういって向かおうとする背中に
「待て」
「!」
「・・・緒川と共にマリア君が向かっていると言ってもお前は行くんだな」
「より一層行きたくなりましたよ」
「フッ・・・だろうな。翼聞こえているな!?」
通信機に手を当てて翼に連絡をとる弦十朗
『はい、こうなるのではないかと既に待機済み・・・いつでも出られます!』
「ならいい、緒川とマリア君と合流後は人命救助優先!戦闘は避けろ!!」
『了解しました』
「鳴届君・・・いや、幸詞!!」
「!」
自分の名前を呼んでくれた
「これを出撃ハッチにいる翼に渡し、そして共に向かえ」
そう言って弦十朗が投げてたのはアメノハバキリのギアペンダント
「いいか!必ず生きて戻れ!!」
「!、はい!」
そういって走り出し、バイクに乗って待機していた翼と合流
「鳴届!急げ!!」
今度は翼からヘルメットを投げられ、それを受け取り、装着する
「風鳴「翼でいい」!翼さん、これを」
「アメノハバキリ・・・行くぞ!舌を噛むなよ!」
ギアペンダントを渡して、翼の後ろに跨がりバイクで現場に急行する
・・・
緒川と共に響達の救出に向かったマリアは響のガングニールを纏い、アルカノイズと戦闘を開始
当然一発でも当たれば分解される可能性があり、更にギアからのバックファイアに襲われ続けながら戦闘ではあるが、マリアはその意思の強さでノイズを殲滅
そして水を操るオートスコアラー・・・ガリィとの戦闘に入った、しかし
「これで頭でも冷やしなぁー!!」
ガリィの張った障壁に挟まれ弾かれる
なんとか立つがもうバックファイアが限界、そこに迫るガリィの攻撃
ブォォォンッ!!!
鳴り響くエンジン音・・・そして
「鳴届!行けっ!!」
「はいっ!!」
タンッと飛び上がる音と頭上を差す影・・・それは
「あ?・・・なっ!?」
「!?なんで貴方がここに・・・」
「幸詞君!!」
「弧仁って・・・嘘・・・あれは」
「誰に手ぇだしてんだぁぁ!!!」
怒号と共に落ちてくるのは幸詞、そのままガリィに向かって飛び蹴りを放つ
手に発生させていた氷の刃でその蹴りを防いだガリィだが後退した
「チッ・・・随分と遅い登場ですねぇ?」
「悪いね、人間様は色々と忙しいんだよお人形さん?」
「お前に用はないんですけどねっ!!」
足元に氷を発生させて、そして滑るように高速移動で幸詞に迫るが・・・
「遅ぇ!!」
あっさりとその動きを捉えて蹴り飛ばす
「あのファラってやつの方が早ぇよ・・・お前戦闘タイプじゃないんだろ」
「ふんっ、それは別の大食いの担当なんだよ・・・けど見たとこ脳筋のお前くらいなら余裕かもぉ~」
「はっ、試してみたら!?」
「チッ、腹立つ!」
「こっちの台詞だ、お前性格悪いだろ」
「お前が言うな!!」
迫る水と氷、それを難なく避けて戦う幸詞
「なんで、貴方が・・・うっ」
バックファイアによりギアは解除され、瞳から血を流すマリアに翼が駆け寄る
「今は無理をするな」
「けど、あの子が!」
「お前は少しあの子に過保護すぎるぞ」
「でもあの子は守るためなら簡単に自分を捨てる。そんな優しい子を戦場に駆り立てるわけにはいかないのよ!」
「落ち着け、よく見ろ・・・そして聞け、お前があの子を大切に思う気持ちは私にも分かる・・・だがお前はちゃんとあの子の意思を聞いたのか?」
「!!」
「あの子、鳴届幸詞がどう思っているのか、なぜ戦いたいのか、覚悟を聞いたのか?」
「・・・」
聞いていない、聞く前に止めたから
「そうやって大切だから遠ざけようはするのは簡単だ・・・だがそれではいけないと、私はその大切な子に教えてもらったぞ」
目の前にいて戦っている幸詞は自分が思っているよりもずっと強く大きい
きちんと自分の力で戦っている
氷の刃を素手で叩き割って、攻撃を加えていく
「ったくびっしゃびしゃになるだろうが!」
「なら凍えさせてやるよ!!」
そうして爆発したかのような水蒸気が辺りを包む
防がれた視界、それでもガリィの居場所を即座に感知して呪力の乗った拳を放った・・・しかし
バシャァッ
そのガリィが水に変わり、崩れた
「ざんねぇん、それは水に映っ「オラァ!!」ガッ!!?」
水に映った本物と見待ち構えるほどの見事な虚像・・・しかし怯むことなく反対方向から現れたガリィの顔面に拳を叩き込む
「更に駄目押し!!!」
ガガガガガガガガッッ!!!
目にも止まらぬ拳の連撃を浴びせる
「ぐぁっ!!・・・なんで分かったぁ!」
「簡単だよ、まずお前の性格から搦め手くらい使って来ることくらい分かった
お前の水蒸気からの虚像は見事だ、けど相手が悪かったな・・・俺の五感は通常より高い視覚が防がれた所で嗅覚、聴覚でお前の居場所は筒抜け、その上で虚像はあえて殴った・・・お前の虚を突くには十分だったろ?」
「くっ!」
これぞ正に意趣返し、そのギザ歯を噛み締める
「俺との相性最悪だよお前」
水や氷の効果は薄く、搦め手やノイズを立ち向かわせてからの奇襲などのガリィの戦闘方法ではそれらを見抜く五感と全て壊す胆力を持つ幸詞とは相性が悪い
「ただの脳筋ではないってことか・・・」
理解したところでもう遅い
「ここで一人・・・いや一体潰させてもらうぞ」バキッボキッ
拳を鳴らしながらガリィに迫る
「ちっ(この距離じゃあ転送使ってもアイツの速度で壊される・・・)」
「それともこっちの捕虜になるか?情報しゃべるなら腕の二、三本で勘弁してやるよ・・・?」
ガリィにとどめをささんと動いた幸詞だったが、なにかを感じて辺りを見回し・・・ガツンッ!!
「誰だお前?」
「貴様を殺すための人形だ」
突如現れた黒いフードを被った襲撃者の一撃になんなく対応した幸詞
そのまま襲撃者は移動しガリィを抱き上げ、幸詞から距離をとった
「あらぁガリィちゃん惚れちゃいそう!」
「近い内にまた会おう・・・鳴届幸詞」
「名前くらい言えよ、フード付き人形!」
当然逃がすつもりはない、接近を図る幸詞だったが・・・地面に向けて何かを投げる、パリンと音を立てたと思えば、ガリィを連れたままその姿が消えていく・・・襲撃者はフードを外した
白く長い髪を緩く三つ編みにし纏め、オートスコアラー特有の陶器のように硬い白い肌だが整った・・・それこそ人形のような顔立ち
ローブに包まれて体格は詳しく分からないが、幸詞よりも小柄なところをみると今までのオートスコアラーと同じく女性型なのだろう
「名乗らないのは失礼だと記憶している・・・我が名はカース、覚えなくていい」
シュンッ!
そういい残すと、カースとガリィは消えた
「カース・・・呪い、か」
取り逃してしまったのは残念だが、未知数だった相手の戦力の一部分が明らかになったのだから万々歳だ
そして自分を殺すための人形・・・それはつまり
「・・・はぁ、もしかして俺面倒なやつに目ぇ受けられたかな」
「今さらだろう」
「!、翼さん」
「よくやったな鳴届、見事な立ち振舞いだったぞ」
「ありがとうございます」
「怪我はないようだな・・・ほら、とっとと安心させてあげろ」
「・・・はい」
翼の示す先にはマリアがいた、そっと近づきマリアに合わせて座り込む
「本当に、強くなったのね」
「んーまぁ望んだところではないし、まだよく分からん力でもあるけど・・・強くなったよ」
「・・・それでもやっぱり私は貴方に戦ってほしくない、貴方を二度も失いたくない」
いざとなったほ無視できる・・・などと言っていたが、流石に良心みたいなものが痛むし、マリアにこんな悲しい顔はさせたくない
・・・だからこそ、魔法の言葉の出番だ
「あのさ、マリア姉さん」
「?」
「そうやってマリア姉さんと切歌と調が心配するのは分かる。現に一度俺死んだし・・・けどそんな俺の命を繋いでくれた奴がいる、だからそいつに恥じない生き方をしたい」
「!」
まずはジャブ
「そのためにはやっぱり俺は戦わないといけない。アイツがそうやって俺の大切なものを守ってくれたから」
もういっちょジャブ、そして
「それから・・・マリア姉さんたちが心配していると言うのなら俺だってしてるからな!?今日だってそんな血涙流すくらいに苦しんで!・・・だから俺が心配するからマリア姉さんはもう戦わないでよ」
「!、それはできない!この戦いは私たちの戦いだ!最後まで戦い抜く!」
「ほら、俺がそういってもできないんだろ?」
「!」
これでトドメ
「自分ができないことを他人に押し付けるんじゃありません!」
「っ!・・・はぁ」
思わずマリアから溢れたため息が一つ、そして
「分かったわ、私の負け・・・それからこれはマムの差し金ね?」
「もちろん!さ!認めてもらえたことだし腹減ったしかーえーろ!あ、立花さんたちもご飯食べに行きません?マリア姉さんの奢りで~!」
マリアとのやり取りを見守ってくれていたのか翼と響とその学友がこちらを見ていたのでご飯に誘う
「ちょっと!今月キツいのよ!?」
「えぇ・・・世界のアイドルがケチくさ・・・って立花さんの隣にいるのは小日向未来さん、ですよね?申し訳ありませんがその他の人達は存じ上げな「こー、だよね?」あら?俺って意外と人気者?」
響の学友からあだ名で呼ばれたが、その感じから自分のことだと即座に理解、ということはつまり
「あー、もしかして五条弧仁のお知り合いですか?すみません、俺は別人っていうか兄弟っていうか・・・なんだろマリア姉さん」
「さぁ?好きに呼べばいいんじゃない?」
「なら俺の兄貴で!・・・って立花さんに小日向さん?なんでそんな驚いた目で俺のことを?」
「もしかしてだけど、未来にも見えた?」
「うん・・・えっと、鳴届君その・・・驚かないで聞いてくれる?」
恐る恐る未来が口を開く
「?はい」
「その貴方が戦ってる時、背中に・・・」
「弧仁の人影?みたいなものが見えたんだ」
「・・・え?」
「なに?私にはそんなものは見えなかったが・・・」
「私にも見えなかった」
翼とマリアには見えなかったようだが・・・
「幸詞君がダインスレイフの欠片に触れた時も見えたんだ・・・あの時は気のせいだと思ってたんだけど・・・」
「私達が、見間違えるはずがない・・・あれは弧仁だった」
「・・・」
今日も戦闘が始まると同時に呪力と呼ばれる力が身体に纏わりついていた
目覚めて初めて戦闘になった時以降は全く発現しなかった力だが・・・戦闘になれば自動ででるものなのではないかと仮定し、今日その仮説は正しかったと思っていたが・・・
「(目覚めたときの夢、ロンドンの際に聞こえた声・・・)そうか」
先ほどまでの仮説を書き換える、呪力は自動ででていたのではない・・・なんらかの存在が幸詞に纏わせていたと考える
そしてその存在が・・・響と未来が見た五条弧仁なのだ、つまり
「どういった過程でそうなったのか、その存在が今どんか状態なのかは分からない・・・だけどこれだけは言える」
思わず口角が上がる、ここまで嬉しいのは久方ぶり、マリア達と再会した時以来だ!!
「五条弧仁は生きている!!俺の中で生きているんだ!!」
結論付けるにはまだ早い・・・だが、彼を知る人物にとってこれほどまでにない朗報を幸詞は叫ぶのだった
しないフォギアさんぽ
ー弧仁生存発覚後ー
「うまい!うまい!」ガツガツ
「こーじの食欲が最近すごい」
「元々たくさん食べてたけど最近は特にデス」
「おかわり~」
「たくさん食べてもらえて嬉しいけど」
「なんで急に・・・成長期デスかね?」
「もう過ぎてると思うけど」
「うまい!うまい!」ガツガツ
「ほら野菜も食べなさいよ」
「あ、マリアがプチトマトを口に運んでるデス」
「こーじ野菜嫌いなのに・・・」
「・・・」パクっ
「美味しいでしょう?」
「おえぇぇ・・・」
「なんでよ!?」
「マリアは事情をしってるんデスかね?」
「ならさっそく聞こ「でもしっかり野菜も食べれて偉いわ・・・もう一人の身体じゃないんだか大事にね?」」
「な、ななな・・・なんデスとぉ!?」
「こ、これは事件・・・幸詞受けの薄い本が厚くなる」
「なにを言ってるデスか調ぇ!こーじは攻め以外認めないデス!」
「二人はなにを言ってるの?」
「さぁ?」