歌を奏でる装者と無限を操りし少年   作:アユムーン

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今さらなんですけど幸詞って・・・

無限操ってないですよね、これはまさかタイトル詐欺になるのでしょうか・・・?ダレカオシエテー!!?


二つの「呪」

マリアを認めさせた後、ご飯(マリアの奢り)を食べてからの帰宅早々

 

「マリアはチョロいデスが!」

「私たちはチョロくない!」

「「私たちは簡単には認めない!」」

 

「ちょっと!チョロいってなによ!?」

 

切歌と調がそう言ってきた

 

「マリア姉さんがチョロいのは全面的に同意ってことではい、お土産のお高いアイス」

「これからよろしくデス」

「ウェルカムこーじ」

「チョロッ!?っていうか幸詞まで!?」 

 

・・・

 

「まぁ今日の戦いを見た時点で認めざるをえないんデスけどね」

 

テーブルを囲んで買ってきたアイスでデザートタイム

 

「足手まといの私たちよりよっぽど戦えてた・・・くやしい」

 

「悔しがらなくても・・・二人がギアを纏えれば俺も敵わんと思う」

 

「二人の連携は見事なものだものね・・・!、そうだ幸詞、貴方ならリンカーを作れるんじゃないの?」

 

「!、そうデス!天才研究員のこーじなら!「ごめん無理」即答!?」

 

「リンカーみたいな薬物は専門外、俺とかマムはあくまでも聖遺物の解析や研究がメイン、そういったのは生態学に詳しい人じゃないと無理」

 

「畑違いというやつか」

 

「そ、材料がそろえて俺がレシピ本片手になんとか作っても多分出来損ないしかできないと思うよ」

 

「そっか、残念・・・でもこーじがあんなに戦えるとは思わなかった、昔から運動神経がすごいのは知ってたけど」

 

「んー、けど肝心なところは弧仁任せなんだよ。」

 

「そう!それ今日一番気になってるワードですよ!」

 

「弧仁が生きてるって本当?」

 

「んー・・・まだ明確には言えないけど今のところ眠っていた俺と同じで、俺の深層意識内に弧仁が眠ってるってのが今の仮説」

 

「だけど戦っている貴方に呪力の受け渡しをしているならもう目覚めてるんじゃないの?」

 

「そこなんだよ、目覚めているのならなぜ表にでてこないのかが分からない」

 

「そんなのこーじの時間を邪魔したくないからじゃない?」

 

「けどちょっと表に出てきて『実は生きてました☆』って言うくらいなら別によくない?」

「あれだけ盛大にさよならしたから恥ずかしいのかもしれないデスね・・・」

「あぁ・・・切ちゃんはよく知ってるよねあのてがみ・・・「待っ!それは言わないでほしいデス!!」あむっ!?」

 

自分の抹茶のアイスを調の口に放り込み、黙らせた切歌をよそにマリアが続ける

 

「それはないわ、五条弧仁は本当に家族と友達を愛していた。生きているのならそれを必ず伝える・・・大好きな人達と側にいない道なんて選べないでしょう?・・・うんおいしい」

 

言い切ってから自分のバニラアイスを食べる

 

「え?まじで?一口頂戴」

「はい、あーん」

「うめぇ。けどだとすれば、表に出れない理由がなにかあるってことだ」

 

マリアのを一口もらいながら自分の選んだバニラ&ソーダが溶け初め混ざってきているのを眺め

 

「なんとかできるなら、してあげたいよな」

 

今日自分の仮説を伝えた時の響、未来、翼はすぐにいつもの表情に戻っていたが・・・伝えた時のほんの一瞬だけ喜んでいた

 

きっと報告を聞いた他の弧仁を知る人達も

 

「そうデスね、弧仁に会えたらアタシはもっとお礼を言いたいデス」

「私は料理が上手って聞いたから教えてほしいな」

「私は・・・そうね、お茶でもしながらゆっくりと話したいわ」

 

「俺も、話してみたいな」

 

できれば自分も会って話してみたいけれど・・・自分達が出会うことは不可能だ

 

「(なんとか、しねぇとな、例え俺がいなくなったとしても・・)」

 

どちらかが存在すれば、どちらかは消えなくてはならないという運命が二人を結んでいる気がした

 

・・・翌日

 

「はーい、オッケーっす。身体に特に異常無しです。最後に脈拍測りますね」

 

「あ、ありがとう・・・ちょっと照れるね」

 

「とはいえ俺ができるのは医者の真似事ッスからね、もうすぐ適任のエルフナインちゃんが公的に参戦できるんでそれまでの繋ぎです」

 

学校を途中で抜けてもらい、昨日ギアを纏うことのできなかった響のメディカルチェックを行っていた

 

行っていたといっても少し学んだ簡単な診察とカウンセリング程度しか行えないのだが・・・

 

「なんか、悩みごとですか?」

 

「え?」

 

「ギアを纏うのに必要な聖詠が胸に浮かばなかったって聞きました。ギアは装者の精神状態に大きく影響するんで・・・なにか悩みごとかなと思ったんです」

 

響の手首に添えていた手を離して書類に記入する

 

「まぁ俺に言いたくないのなら未来さんでも弦十朗さんでもいいんで」

 

「そんなつもりじゃないんだけどね・・・

ただちょっと色々あったからかな」

 

簡単に分かる痩せ我慢の笑顔

 

錬金術師という未知の敵の出現、何故か纏えないギア、親友が生きているかもしれないという希望、これらを考えると精神的に負担が大きいかもしれない

 

そのうちの一つに自分が加担しているので少しばつが悪い、ガシガシと後頭部を掻きながらどうしたものかと悩む

 

「・・・あの、弧仁が生きてるっていう不確定な情報を伝えてしまってすみません」

 

「え?」

 

「その、多分不調の原因の一端は俺の発言なんで・・・その申し訳ないです」

 

「ち、違うよ!?弧仁のことはストレスなんかじゃないよ!そのことは嬉しかったから」

 

「やっぱり、弧仁に会いたいですよね」

 

「・・・うん、会いたいなぁ」

 

「会ったらなにがしたいですか?」

 

「まずは未来と三人でふらわーに行きたい、それから翼さんと奏さんのライブに行くんだ・・・昔一緒に行ったライブはノイズのせいでめちゃくちゃになっちゃったから」

 

「・・・」

 

悲しそう・・・だけどそうなったら楽しいと想像しているのか、顔は少しだけ明るい響を見て弧仁は何も言葉が浮かばなかった

 

「(お前・・・なんで出てこないんだよ。こんなに大切に想ってくれる人が目の前にいるのに)」

 

内なる自分に話しかけても答えはない

 

響達と話すために自分の意識を押し退けることぐらい別に構わないというのに

 

「あ、ごめんね!色々話しちゃって!」

 

「こっちこそごめんなさい」

 

「ううん、もう謝らなくていいよ。幸詞君が悪いと思うことなんてなにもないんだから」

 

「分かってはいるんですけど、ここに俺なんかがいるのが申し訳なくて・・・」

 

「そう・・・だよね。私も似たようなことあったから、分かっちゃうかな」

 

「似たようなこと?」

 

「うん、今のガングニールをマリアさんから託される前は奏さんから受け継いだガングニールで戦ってたんだ」

 

「その話は聞いてますけど、なにかあったんですか?」

 

「胸の歌でガングニールを纏ったけど・・・戦う覚悟ができてなかったんだ。ただ奏さんの代わりになれればって、そう思ってた・・・でもそのせいで翼さんを傷つけてしまった」

 

「・・・」

 

「けど、そうじゃないんだよ。誰かの代わりじゃなくて立花響として戦わないといけなかったんだ」

 

「・・・」

 

「きっと私より賢い幸詞君はそんなこと思ってないよね!・・・ただもう私は、ううん私たちは幸詞君のことを一緒に戦う仲間だと思ってるよ」

 

「!・・・ありがとうございます」

 

励ますつもりが、励まされてしまった

 

「ならよかった!・・・けどこんな偉そうにいってる私が今不調になってたら元も子もないね」

 

「・・・すんません、実はマリア姉さんから聞いてます」

 

カウンセリングするにあたって、SONGの面々に響の不調についてなにか知らないかと聞いてまわった

 

その時マリアがいっていた

 

『あの子、自分の力を戦いに振るうことに悩んでいるみたいね』

 

「・・・って言ってました。勝手に聞いてすみません」

 

「あはは、マリアさんには話したからかな」

 

装者としての任務を重ねるうちに誰かの手を繋ぐ自分の力・・・誰かを守れるシンフォギアの力を纏える奇跡が嬉しかった

 

「けど、そう思えば思うほど・・・それを戦いに向けて、人を傷つけるのが嫌になった・・・ううん今も同じ、相手と分かり合えないかって思ってしまうんだ」

 

「・・・(それがギアを纏えない原因か)」

 

「けどそのせいで、昨日私は大切なものを失いそうになった。マリアさんや幸詞君が来てくれなかったら・・・きっともっとひどいことになってた」

 

「そうかも、ですね・・・」

 

「力から目を背けるなと、マリアさんに言われた。未来は私の歌は誰かを傷つけるものじゃないと言ってくれた・・・だけど」

 

「それは下手すれば一生付きまとう悩みかも知れないですね」

 

「厳しいな・・・けどそうだよね」

 

「でも俺は響さんの歌好きですよ」

 

「!」

 

「これまでの戦闘の映像とか見てたんです。それで響さんの歌を聞きました・・・なんか胸が暖かくなるようなそんな歌だと思いました。そんな歌が誰かを傷つけるとは思えません・・・なんて、俺が言っても慰めにもならないんですけどね」

 

ただ本心を伝えた

 

これが弧仁の感情なのかどうかは分からないが、少なくとも自分がそう思っている部分は確かにあるはずだ

 

「っ!ううん、ありがとう」

 

「なら、良かったです。じゃあこれでメディカルチェックは終わりにしましょう。これから雨降るらしいので車で行き先はお家に向かうように伝えたらいいですか?」

 

「ううん、まだ放課後まで時間があるからリディアンに戻るよ。未来も待ってると思うから」

 

「分かりました・・・あ、途中までですけど俺も一緒に行ってもいいですか?」

 

「?なにか用事?」

 

「実は調におつかい頼まれてて」  

 

「そっか、おんなじ家に住んでるんだもんね。途中までだけど一緒に行こっか!」

 

そうして響と共にメディカルルームを出る

 

そうして途中リディアンに寄り、響と別れて向かったスーパー内でのこと

 

「今日はビーフストロガノフ?なんか強そうな名前だな」

 

牛肉、小麦粉、牛乳と・・・

 

「うげ、玉ねぎとトマト」

 

嫌いな野菜を前に伸ばす手が止まった

 

「・・・買い忘れたって言って誤魔化すか」

 

ヴッー!ヴッー!

携帯が鳴った・・・メールの差出人は調

 

『野菜、買い忘れたら刻むね』

 

「・・・」

 

ヴッー!ヴッー!

追加のメールだ、差出人はもちろん調

 

『後、今日サラダもあるから、食べないとマムに言いつけるね』

 

「・・・はぁ、分かったよ」

 

なんだかんだ調も幸詞のサラダは少なめにしてくれていたり、配慮はしてくれているのだから文句は言えないのだ・・・そして

 

「・・・よし、買い忘れはないな」

 

そうしてスーパーを後にした、雨が降っているので傘を差して歩く

 

もう今日は直帰しても大丈夫なので、真っ直ぐ帰ろうと思ったのだが

 

ピリリリリッ!!

さっきとは違う・・・任務用の携帯が鳴る

 

今度は通話、相手は弦十朗

 

「どうしましたか!?」

『響君と未来くんがアルカノイズとオートスコアラーに強襲された!!現在近くにある工事現場に向かって逃走中だ!』

 

「っ!、場所は!?」

『これからナビゲートする!響君に一番近い場所にいるのはお前だ、急行してくれ!こちらからもすぐに援軍を向かわせる!』

「分かりました!!」

 

傘を投げ捨てて、スーパーの袋片手にナビ通りに走る

 

・・・

 

そうしてたどり着いた工事現場・・・だったが、なにやら破壊音が響いている

 

『現在ガングニールを再び装着することができた響君が現在交戦中!援護せよ!!』

「!、分かりました!!」

 

破壊音は響が交戦している音

 

なにがきっかけかは知らないが、吹っ切れたのならそれでいい

 

ナビしている時とは違い、弦十朗の声も少し上がっている

 

もう心配はないのだろう、だとすれば

 

「今度こそオートスコアラーを落とす」

 

ナビしてもらっている間に今回のオートスコアラーの能力は聞いた

 

今響が交戦しているオートスコアラーはミカ、というらしい

 

熱エネルギーを操るらしく、手には鋭利な爪がついているらしい

 

「装者と一緒に戦うのは初めてだけどなんとかなるだろ」

 

まずは未来の安全を確保してから、戦闘に移ると計画をたてていたその時だった

 

「戦闘前に考え事か」

「!」

 

声をかけられ振り向く・・・そこには

 

「お前は・・・カースだっけ?」

「そうだ、よく記憶しているな」

「物覚えはいいもんで」

 

「なら、私が以前言ったことも記憶しているな?」

「あぁ、俺を殺す、だっけ?」

「そうだ、それが私の役割」

 

ゆっくりとフードを上げる

 

「・・・なんか、お前は他とは違うな」

「そうだな、私は錬金術は扱わないからな。私が扱うのは・・・呪術だ」

「!」

 

「だが、お前のようにただその身に纏わせてもらっているのとは違う・・・この人形の身の中心である格から呪力を捻出している・・・とマスターから記憶させていただいている」

「それがなにか大差でも?」

「お前の身体能力の高さはあくまでも何の力も持たない人間に比べれば・・・というだけの話だ。外に纏うのと・・・内側から捻出し、中と外から呪力で強化した身は・・・」

 

言葉を言いきる前にカースは幸詞の前方に現れ、そして

 

ズンッ!!

 

「っ!?」

 

幸詞の腹部に拳が突き刺さる、居抜かれたかのよう衝撃が走る

 

「これほどの差がある・・・記憶しておけ」

 

ドンッ!!ガン!ズバンッ!!ガシャーンッ!!

 

「えっ・・・幸詞君!?」

 

後方・・・工事現場の中に吹き飛ばされた

 

そこにいた未来の声が聞こえたが答えられない

 

「かはっ、けほっ・・・くそ」

 

痛みに鈍いはずの身体が悲鳴を上げている

 

それでも悪態をつきながらなんとか立ち上がったが・・・

 

「まさか、これだけで終わりではないだろうな?」

 

「!、随分早いお帰りで」

 

既に目の前にカースが来ていた

 

しかしたったの一撃で悟ってしまった

 

「(まずい、勝てる気がしないなこりゃ)」

 

ファラ、ガリィは錬金術を加えても身体能力と機転と作戦でなんとか圧倒できていた

 

しかし、今回は違う

 

「(自分以外の呪力ってものを初めて感じた・・・格が違う)」

 

なんとなく感じていた呪力を正しく使うことでここまでのことができるとは思わなかった

 

「(なんとか逃げたいところだけど、それはできない・・・作戦を考えねぇと・・・)」

 

聞こえた未来の声からここにいるのだろう

 

そうなると今自分が逃げた場合のリスクを考えると、逃げるわけにはいかない

 

「(俺も守らないとな・・・お前の大切なものを)ほら、こいよ・・・」

 

「ふむ、中々に頑丈・・・記憶しておこう」

 

「さっきからやたら記憶記憶言ってるけどなんだ?お前は生まれたばかりのAIか?」

 

「いや、記憶せねばいけないのだ。お前に関することは特にな」

 

「俺?」

 

「あぁ、私はお前を殺すために生まれた存在だからな・・・このように」

 

ガツンッ!!

 

「ぐっ!?」

 

蹴りを受け止めるも、ぶっ飛ばされ倒れる

 

「鳴届幸詞、現在の年齢は推定16歳、身長は172センチ・・・いや、現在の身長は175センチだな。見た目より、内蔵されている筋肉量は多く、咄嗟の機転や観察眼に優れ、その意識内に存在する五条弧仁により呪力を使用することができるというのが今のところの情報だ」

 

ザッ、グシャ!!

倒れた身体を容赦なく踏みつけられる

 

「ぐっ!?おいおい、まだSONG外に漏らしてない記録までなんで出回ってんだよ」

 

「それは企業秘密という奴だ」

 

ガンッ!!・・・ドシャッ

 

倒れていた身体を蹴り上げられて、下層部に落ちた

 

「弧仁君!?」

 

「あー、小日向さん、どうも昨日ぶりです。あっこっちこないで、危ないので」

 

こちらに駆けつけようとした未来を止めて、ちらりと戦闘中の響の方に目を向けてからまた目前に現れたカースに目を向ける

 

「ふむ、やはり身体能力で圧倒すればなす術なしと見たが・・・どうだ?」

 

「大正解みたい、俺もここまでやられるとは思わなかったわ」

 

「そうか、記憶しておこう・・・いや、ここで私の役割を遂行すれば記憶する必要はないのか?」

 

「お前が決めろよ」

 

「ふむ、私自身、か・・・そのような役割は与えられていないから分からない」

 

「・・・それは悲しいな」

 

「悲しい、これは悲しいのか・・・分からない」

 

ここまでカースと話してみたがどうにもこのカース、自分の意思というものが微塵たりとも見られない

 

与えられた役目、それのみで生きているようだ

 

それに対して幸詞は憐れみの目を向ける

 

「なんと考えようとやはり分からない・・・とにかく私の役割を全うさせてもらう」

 

そうして拳を振り上げ、振り下ろす

 

「でもこっちはそうはいかないんだ・・・わっ!!」

 

ガツンッ!!

 

カースの拳に拳をぶつけ、受け止める

 

バキバキッ!!

 

「骨が砕けたな」

「分かってるよ」

 

自身の骨が砕けた音がする・・・が、そのまま拳で拳を抑えておく

 

全力でやれば、多少は拮抗できるようだ

 

「お前の呪力操作による身体強化・・・確かにすげぇよ。けどさ別に俺は戦闘のプロって訳じゃないけどお前が戦闘に関してはトーシロって分かったわ」

 

ゲシィッ!

 

「!?」

 

足払いをかけ、カースの体勢を崩す

 

「パンチとかキックとか、とりあえず出してるって感じだ」

 

ガンッ!

 

「呪力の扱いならお前の方が上だけど、戦闘なら俺が上」

 

ズンッ!ガツンッ!!

 

「こんなふうにな・・・ほらよっ!!」

 

ガッシャァン!!

 

足払いからの連撃、最後にお返しとばかりに一気に攻めて仕上げに蹴り上げたが・・・

 

「なるほど・・・戦闘においての自身の学習不足を実感、今後のために記憶しよう」

 

吹っ飛ばされても平然と立っているカース

 

「・・・だよなぁ」

 

痛覚が鈍い程度の自分とは違い、痛みを感じないオートスコアラー

 

破壊するほどのダメージを与えない限り動きを止めることすらできないのだろう

 

まぁ分かっていたことだが、実際にこうなると流石にくるものがある

 

「学習を生かして肉弾戦から戦闘方法を切り替える。そのためマスターより与えられた術式の行使を行う」

 

「術式?」

 

「私に与えられた術式を使用するためにまずお前を戦闘不能状態にする」

 

「っ!?」

 

ドスッ!!バキッ!!

目に求まらぬ攻撃の嵐・・・今度は意識が飛びかける

 

「カハッ・・・いってぇ・・・ここまでやられたの久しぶりだな・・・」

 

今度は全身の骨が折れた

 

いくら痛覚が鈍いといえどこうなってしまっては動けない

 

「(くそ、これから頑張って戦おうって、弧仁のために頑張ろうって決めたばっかりだってのに・・・)」

 

真面目にやらなかったわけではないがもう少し呪術について研究しておくべきだったかもしれない

 

けどなんとなくなんとかやれるんじゃないかと思っていたが、現実はそう甘くなかったようだ

 

そして自分の弱さに腹が立つが・・・もうなにもできない

 

無駄に賢い分、こういった諦めが早いのは長所か短所か・・・と考えていると

 

「・・・動けないな?」

 

カースが膝をついて、こちらを見てきた

 

「なに、する気だよ」

 

「術式の行使だ、私の術式を提示するのはお前にとって有益な情報と判断するので教えない・・・ただ口を閉じていた方がいいぞ?」

 

「あ?」

 

そういうや否やカースの顔が近づきその距離がゼロになる

 

「!?」

「こ、幸詞君!?」

 

未来のおかしな悲鳴が聞こえたが、しかしその光景を見たのなら無理もない

 

冷たく固い唇が重なっているのだ

 

「(な、んだよ・・・これ)」

 

力が抜ける、違う吸われ、奪われている

 

そうして完全に身体に力が入らなくなった頃・・・時間にしてたった数秒、されど長い時間に感じた

 

「くそ、ファースト、キス、返せや」

「それはすまなかったな、どうだ?今度こそ完全に動けないだろう」

 

その通り、全く動かない、指一本動かない

 

「これで完全に終わりだな「響ーっ!!!」どうやらあちらも終わりのようだ」

 

「っ!?」

 

未来の悲鳴、他所を向いたカースの視線の先にはミカの一撃をまともに喰らい砕けるギアと共に落下していく響がいた

 

幸詞の視界の端でもそれが見えた

 

「立、花、さん・・・小日、向さん・・・」

 

ドサッ・・・

ギアが解除され、裸で地面に倒れた響とその響の元へ駆け寄る未来

 

「助け、ねぇ、と・・・」

 

動けないなど関係ない

 

とにかく側へ行かなくてはとろくに動かない身体を動かし這いずって進むが

 

「行かせると思うか?」

 

グシャ!

 

その這いずる手を容赦なく踏みつけるカース

 

もはや痛みすら感じないが、邪魔だ

 

「ど、け・・・っ!?」

 

ドクンッ!

弱くなっていた鼓動が大きく高鳴り、何度も鼓動を刻み続ける

 

その刺激に耐えられず、今度こそ気を失ってしまった

 

「・・・」

「静かになったな・・・気を失ったか?」

 

踏んでいた手から足を離して、爪先で幸詞をつつく・・・その瞬間

 

ズンッッッ!!!

 

「!?」バッ

 

この場にいるものではカースにしか発することはできないはずの力である呪力を感じた

 

異常を感じて、警戒のために後ろに下がる

 

その発生源は幸詞・・・そしてその幸詞は骨を砕いたのに瞳を閉じたまま平然と立ち上がり・・・幸詞の黒髪が白髪へと変わっていく

 

「う、嘘・・・あれは」

 

「お前何者だ」

 

「・・・」

 

カースの問いになにも答えず、瞳を閉じたまま・・・

 

シュンッ!

 

即座に響と未来の元に移動し、自分の上着を響に被せ、手を翳す

 

「う、うう・・・」

「響ッ!?やっぱり・・・」

 

翳した手から暖かい光を当てられた響が少しだけ意識を取り戻した

 

そしてそんな優しい光を当てられる人は一人しかいない

 

「弧仁・・・だよね?」

 

「・・・」

 

瞳を閉じたまま未来たちに背を向けて立ち上がる

 

「もう一度問うぞ・・・お前は何者だ」

 

「・・・」スッ

 

その問いかけに答える変わりに瞳を開く

 

両眼とも黒であるはずの瞳の片方が蒼く光る

 

「!、その目は!?」

 

「ただの、亡霊、だ」

 

向けられた左手、そこから赫い光が放たれる

 

ズドォォォンッ!!!

 

「っ!?」

 

その光に触れるや否や大きく弾き飛ばされたカース

 

「(これは情報にあった無下限術式、そして今のは反転術式・・・)間違いない」

 

瓦礫の中を立ち上がり、遠目で見る幸詞の姿は立ち上るほどの呪力を放っていた

 

「お前は・・・五条弧仁!この世界最強の呪術師と記憶している!」

 

カースの声が工事現場を響いた

 

それに対してなにも答えない

 

名前や存在など、どうでもいい

 

ただ今は背にいる二人の大切な親友を守るために・・・目の前の脅威を殲滅するだけだといわんばかりに、その力を振るう

 




しないフォギアさんぽ

ーファーストキスー

「あーあ、せっかくのファーストキスがカースに奪われちまった」
「どんまいこーじ、あれはノーカン」
「本当に好きな人とのキスこそがファーストデス!」
「小さいころからセレナ姉さんのためにとってたんだけどな」
「!?幸詞にセレナはやれない!!絶対に!!」

そんな光景を端で見ていたある人
「(や、やっべぇ・・・弧仁的には多分アタシが初じゃねーか!?)」
「どうした雪音、顔色が悪いぞ?」
「な、なんでもねぇよ!そんなんだからそんなんなんだこのやっさいもっさい!!」
「ど、どうしたんだ雪音・・・」
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