五条弧仁により、離れた箇所へと弾き飛ばされたカース
ボディに問題なし、戦闘の続行は可能の判断・・・そこに
トンットンッ、ガシャンッ
「お手伝いするカ~?」
先ほど立花響を戦闘不能に追い詰めたオートスコアラー・・・ミカがやって来た
「ミカ、ありがたいが手助けは必要ない」
「そうカ~・・・けどアイツやばそうだゾ?」
オートスコアラーの中でも一番幼く見えるが戦闘に特化したミカが警戒する程のプレッシャーをこちらに向けている
こちらに襲いかかってこないのは恐らく下手に動くことで後ろにいる二人の危険に晒さないため
しかしこのままにらみ合いの時間がかかってしまうとSONGの救援が来て、立花響と小日向未来は救出される
そうなれば、五条弧仁はもう止まらないだろう
「ミカはもう今回の目標は達成しているだろう?それなら帰還するんだ。時間は私が稼ごう」
「あらぁ?ミカだけですかぁ?ガリィちゃん忘れられて寂しい!」
えーんえーん、と泣き真似しながら何処からともなく現れたのはガリィ・・・だが
「!、ガリィ・・・いたのか」
「いたわ!お前より最初ッから!!」
カースには聞かされていなかったらしい
「ガリィのおかげで立花響を撃破することができたゾ!」
「そうだったのか、すまない。それからもちろんガリィも共に帰還するんだ」
「ハァ?装者はまだ生かすとしても鳴届幸詞を殺せるなら「違う」アァ?」
「あれは鳴届幸詞じゃない」
「なにを言って「私にもよく分からない・・・だが」?」
「私は今、私自身の意思であの最強の呪術師と戦いたいと思っている・・・こんなことは初めてだ!」
そう語る顔はまるで新しいおもちゃを手にした子どものようだ
「ふーん、まぁどうでもいいですけど・・・ただ壊れるないでね?貴女直すのは結構面倒だからぁ~」
「心配ない、この身が壊れようとも這ってでも帰るさ」
「それは無事とは言わないゾ?」
「む、そうか」
「あー、はいはい茶番なら帰ってやりなさいな・・・マスターの言い付け、忘れるなよ?」
「あぁ、本命はガリィ達に任せるよ。私はただ彼と呪い合うだけさ・・・それが私の生まれた意味なのだから」
・・・
カースが目覚めたのは最近の事だ
しかしそのボディは呪術師として櫻井弧仁が活動を始めた初期の頃から作られており、来る計画に弧仁という存在が邪魔になると判断したキャロルが作り上げた傑作・・・それこそがカース
彼女の胸には通常のオートスコアラーと異なり呪力と似た力を持つ聖遺物であるダインスレイブの破片が埋め込まれている
しかしそれだけでは起動しなかった
ファラがその身で受けた五条弧仁の呪力をカースに注ぐことでようやく目覚めた
目覚めたカースに与えられた役目は鳴届幸詞と五条弧仁の足止め・・・そして可能であれば撃破だった
キャロルから与えられた知識は全て戦うためのものだけ、そしてガリィ、ファラによって常識的なものを与えられたもの
与えられて記憶したもの、そして自分で記憶したものは全てカースにとっての宝物だ
そうして今新しい宝物ができそうな予感に無い心が踊って仕方がない
ガリィとミカか帰還したのだ、もう自分達を止められるものは誰もいない・・・
「さぁ!存分に呪い合おうじゃないか!!」
興奮を隠すこと無く、高らかに宣言する
しかし、弧仁はそれでも動かない
こっちはもう焦らされすぎてどうしようもないというのに!
「安心しろ!!私はその後ろの二人に微塵の興味もない!よって手は出さない!
私はただ、お前に興味が・・・」
そこからの言葉は続かない・・・なぜなら
ゴシャァッ!!
「ッ!!?」
「・・・黙れ」
突如目の前に現れた弧仁、そしてカースの顔面に拳が叩き込まれた
そして気づけば立花響と小日向未来が近くにいない・・・弧仁によって安全な場所へ飛ばされたのだろう
「っ!流石だな・・・だが!」
痛みは感じない身体は便利だ、限界まで動け、少しも怯むこと無く反撃に転じられるからだ!!
カースも負けじと攻撃を繰り出すが・・・
「!!?」
ピタッ!!
カースの拳が近づかない、手も足も近づかない
「バリア・・・これが無限か」
渾身の呪力を込めた攻撃が当たらない、記憶によれば無限のバリアは高い呪力でなら中和できるらしいのに・・・
「それにすら達していないのか私は!!?」
ピンチなのに感じる愉悦
「なら、今ここでお前を越えよう!!」
ゴォォォォ!!!
感情の高ぶりに比例してカースの腕から呪力が立ち上る・・・しかし
「黙れと、言った、はずだ」
ドゴァッ!!
カースの腹部に一撃
ドゴッ!ベキッ!ゴシャァッ!!
そして止まらぬ連撃
「っ!」
シュッ!!・・・ガシィッ!!
カースの反撃の拳は受け止められたが・・・
「ふっ、私に触れたな!」
「!」
弧仁からカースへと呪力が吸い上げられる・・・しかし
ミシミシミシ・・・バキッ!!ブチィッ!!
そのまま腕を握り潰し、そのまま引き千切った
「!!?」
ガシッ!!・・・ガリガリガリガリッ・・・ガッ!!!
カースが驚く暇もなく、弧仁の手がカースの顔面を掴み、その身体を壁に擦り付け・・・押さえつけた
「ふ、ふはは・・・」
呪力を吸えないのか、吸う暇もないのか・・・渇いた笑みを浮かべるカース
「なにが、可笑しい」
「楽しい、私はマスターやオートスコアラー達のとは違い『想い出』は焼却せず、装者のように歌うことはない・・・私の記憶の中で呪力を扱えるものは私だけだった」
「それが、どう、した」
「だからだろうか、疎外感、というものを感じていたのだ。与えられた呪力、術式、呪術は知識以外は全て独学だった・・・だから初めてなんだ私以外に呪力を扱える者に出会ったのは・・・お前は鳴届幸詞とは違い、本物の呪術を扱う呪術師・・・たまらなく嬉しい」
「・・・」
「もっと戦いたい、もっとお前の呪いを見せてほしい、私の呪いを見せてやりたい、呪い合いたいんだ・・・でもここで終わりか、これが残念か、記憶しておこう」
涙こそでないが声が悲しそうに聞こえた
「・・・それは、友だちが、ほしい、のか?」
「友、だち?・・・それは気の合う関係や、一緒に遊ぶといった関係のことか?」
「そう、だ」
「そうか、そうだな・・・私は友だちが欲しかったのか」
友だち・・・言い換えればカースは理解者がほしいのだろう
弧仁には擬きがいた、そして呪術を理解してくれる家族、友だちもたくさんいた
「・・・」
「マスターやガリィ達のことはもちろん大切だ。だけど・・・お前とは違った関係になりたい、そしてきっとそれが友だちなんだ」
弧仁だって友だちの大きさはよく知っている
今だってその大切な友だちのために戦っているから
だから、それが欲しいというカースの気持ちも分かる
「そう、か・・・だけど、止める気はない」
ミシッ
少し心が痛むからなんだ
こいつは、こいつらは弧仁の、そして幸詞の大切なものをいくつも傷つけた
理由はそれだけでいい、だからここで壊す
「あぁ、そうしてくれ・・・いっそその方が気が楽だ」
そう言われて一瞬だけ手を緩めかけたが・・・もう一度握り直す
「・・・じゃあ」
ー待てよー
「!」
ー美味しいところだけ持っていくなー
「・・・」ニッ
自身の内から響く声・・・やっぱり彼は思った通りの人物だ、身体も心もとても強い芯の通った人間だ
彼の生活を覗き見るつもりはないが・・・研究に没頭する傍らで過ごす家族との時間はとても幸せそうだった
奪ってしまった時間を少しでも返せている気がしたから
・・・そして自分がいなくなっても強く、そして大切な皆を見守ることができたから・・・
「ごめん、ね、返す、よ」
ドサッ
「!・・・?」
突然落とされたカースが視線を上げると・・・
「戻った・・・のか?」
焦点の合わない瞳を浮かべているがしっかりと立っているのは黒い髪の鳴届幸詞
「・・・なんだ、戻ってしまったのか」
恐らくだが五条弧仁は再び鳴届幸詞の中に戻ってしまったようだった
彼に壊されるのなら別に構わないと思っていたのに・・・これではその望みは達成されない
「仕方がない、それなら私の使命を果たさせて貰おう」
もう意識があるのかすら怪しい幸詞を始末するのは容易い、残っている手で手刀を構える
「もう会えないのは残念だ・・・さようなら、友になれるかもしれなかった者よ
お前のことは永遠に記憶しておこう」
そう言ってからさっきと逆の立場となって・・・手刀を振り下ろした
ガシッ!
「!?」
「つれないこと、言うなよ」
振り下ろした手が掴まれた
掴んだのは当然幸詞だ
言葉に反してその瞳は先程までと違い、睨みを効かせている
「あんまり、他の人ばっかり見てると嫉妬しちゃうぜ?今お前の目の前にいるのは俺だろうが、目移りしてんじゃねーぞ?」
「!!、とはいえお前では私には勝てないだろう?」
「それはついさっきまでのことだ」
「!?これは!?」
カースのように腕だけではなく、幸詞の身体全体から炎のように呪力が昇っている
今までのように外側だけではない、身体の内側から止めどなく沸き上がり続ける呪力
それと同時に堪らない全能感が身体を巡り続ける
「は、はは!ははははっ!!」
笑みを堪えられず高笑う
「お前のお陰だ、死にかけたことでなんかが見えた」
これまでうっすらなんとなく感じていた力を手にとるように感じられる愉悦
「こんな急激なパワーアップなんて信じられるかよ?いや普通に考えたらねぇよなぁ?」
「ッ!」
バッ!
圧倒的実力差により恐怖を感じた五条弧仁とは違う
傷だらけで狂ったかのようの高笑い続ける鳴届幸詞に恐怖を感じ、掴まれていた腕を振り払う
「俺と手は繋げないってか?」
「な、なんなんだお前は!」
「あ?」
「なぜ立ち上がる!なぜ挑む!実力の差もお前では勝てないことも分かるのだろう!?」
「なにかと思えばそんなことかよ・・・はぁ、んなことどうでもいい」
「なっ!?」
「
「なら!お前は一体何のために戦うと言うんだっ!?」
幸詞に感じる未知の恐怖から目を背けたくて仕方がないが・・・それでもそれが見たくなってしまう
だって自分の心を震わせる者が二人も現れるなど思いもしなかったから
だからこそ知らなくてはならない、知りたくて仕方がない
「それを知ってどうするんだよ」
「いいから、答えろぉ!!!」
そう言って知りたい、記憶したいという欲求を我慢できずに襲いかかってくるカース
先程までなら我慢できていた欲求だったが、初めての経験の連続に遂に耐えきれなくなり身体が動いてしまったのだ
だが無理もない、この戦闘だけでカースにたくさんの感情が発露したのだから。今ではつい先程まで分からなかった悲しみ、恐怖、悦楽、といくつもの感情が生まれたから
それに対して幸詞は慌てることなく、拳を構えた
「そんなもん、家族を守るためだ・・・そして」
襲いかかってくるカースに真っ向から迎え撃つ拳を放つ
「
そしてその拳に
!!!!!
黒い火花が閃いた
・・・
「あ、ぁ・・・・・・」
黒い一撃・・・黒閃は残っていた腕だけでなく、その肩の周りを抉りとった
ギリギリコアであるダインスレイブに傷はないが、このままこれ以上の戦闘は不可能だ
損傷も激しいのでこれは修復に時間がかかるだろう
「これでは、ガリィに怒られて、しまう・・・どうして、くれる?」
しかし気分は晴れ晴れとしていた、だって心がこんなにも震えているから
「・・・」
フラッ・・・バタンッ
幸詞が地面に倒れた
「む?気を失ったのか?もう少しお話ししたかったのだが・・・また今度だな」
カースにとってこの日は一生記憶に残る日となるだろう
「友になれるかもしれない人物が二人もできたのだ・・・こんなに嬉しいことはない」
パリンッ、身じろぎして転送のための小瓶をなんとか地面に落として割ることができた
「また会おう、五条弧仁、そして鳴届幸詞よ」
そうしてカースは自分の家、チフォージュシャトーへと転送された
その場に残った幸詞は目覚めることなく、ただただ倒れ付していた