歌を奏でる装者と無限を操りし少年   作:アユムーン

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ちょっと気合いいれたので!存分にお楽しみください!!


継いで繋いで「結ばれた」

チフォージュシャトーにて

 

「まーったく、あれだけ壊れて帰るなって言ったのに」

 

「すまないガリィ」

 

カースを自身の台座に寝かせたガリィ、他のオートスコアラーはそれを可笑しなポーズをとったまま見つめている

 

「で?鳴届幸詞は殺したの?」

 

「いや、あと少しだったんだがこの様だ」

 

「はぁ~・・・それでそんなになってダッサ」

 

「返す言葉もないな」

 

「チッ・・・マスター?どうしますこの末っ子」

 

悪態を突いても反応が面白くないカースに舌打ちを一つ鳴らしたガリィは玉座に座るキャロルに処遇を求めた

 

「・・・仕留められなかったことはまぁいいだろう元々そこまで期待していない」

 

「えぇー?コイツの役割ってそれくらいじゃないですかぁ?」

 

「まぁその通りなんだが酷いぞガリィ」

 

「今回の戦闘でカースの呪力は上がっているのも含め今後に期待しよう・・・それにしてもなにかいいことでもあったか?」

 

「!、はい!友になれるかもしれぬ者と出会いました!」

 

「ほう、友か」

 

「五条弧仁は私より呪術センス、鳴届幸詞は戦闘センス、どちらも私を大きく上回っていました・・・次はどちらに会えるのか楽しみです!」

 

「ふん、ガリィちゃんアイツ(幸詞)嫌ーい」

 

「あら?私は(幸詞)のこと好きなのだけど?」

 

「いきなり入ってくんな!」

 

突然会話に入ってきたファラにツッコミをいれるガリィ、割りと苦労人なのかもしれない

 

「しかしそうか・・・ならお前にはやらなければならないことがあるな」ニィッ

 

不敵に笑むキャロル

 

「そのために暫くは修理に当たれ、カースの修理が終わり次第動くぞ・・・今度は俺が動く」

 

「ありがとうございますマスター!本当にまた会えるのが楽しみだなぁ・・・」

 

それに対して瞳を輝かせて次を楽しみにするカースは修理のために一度その機能を停止するのだった

 

・・・

 

オートスコアラーミカ、ガリィ、そしてカースの襲撃から一週間が経った

 

その襲撃により重症が予想されていた立花響だったが身体に怪我一つなく、メディカルチェックにも異常は見られなかった

 

響は翌日に意識を取り戻し、現在は検査入院も終えて小日向未来と共に日常生活に戻った

 

その響が纏っていたギア、ガングニールは破損してしまった

 

しかしガングニールの破損による状態、そして風鳴八紘の口利きもあり、遂に決行が決まったエルフナインによるシンフォギア強化修繕策「プロジェクトイグナイト」により現在修復が行われている

 

その修復のために必要となるエネルギーの供給のために現在SONGの潜水艇は各地のエネルギーが送電されている電力施設に待機していた

 

そして鳴届幸詞は・・・

 

SONG艦艇内、メディカルルーム

 

「・・・」

 

襲撃後から幸詞は目を覚まさない

 

彼の家族は交代で傍に付き添い、今はマリアがいた

 

「幸詞・・・」ギュッ

 

幸詞の手を握るが、その手を握り返してこない

 

襲撃された現地に駆けつけたクリスにより幸詞は発見、保護された

 

響同様、身体に一切の怪我は見られないが目覚めないのだ

 

ウィンッ、メディカルルームのドアが開いた

 

そして訪れたのは

 

「まだ目ぇ覚まさねぇか」

 

「!、天羽奏」

 

ツヴァイウィングの片翼、現在はSONG所属のエージェント天羽奏がやって来た

 

「来るの遅くなって悪い、色々と立て込んでて」

 

ここ座るからな、とマリアの隣に椅子を運び座る

 

「幸詞から聞いたわ。この子のことを鍛えてくれたみたいね、ありがとう」

 

「弦十朗のダンナに頼まれたからだよ。ただまぁ鍛えがいはあったけどな」

 

「そうなのね、幸詞も貴女のこと結構気に入ってた、槍のねーちゃんはすごい強かったって」

 

「そっか・・・にしてものんきに寝やがって・・・こいつといい弧仁といい周りの心配も知らずにさ」

 

「全くよ。こうなるから戦わせたくなかったのに・・・」

 

「けどまぁ止まってられなかったんだろ」

 

「えぇ私たちを守るために、そして五条弧仁の意思を継ぐためにって、頑張ってた」

 

「守るために・・・か、そういうところは弧仁に似てるな」

 

「そうなの?」

 

「あぁ、アイツも守るって決めたら迷っても最後まで諦めなかった」

 

マリアと奏、SONG内の歳上組二人は意外と話が合うようだ

 

「しっかしこいつが起きない姿は心臓に悪いや」

 

「っ!それは・・・」

 

奏の言葉で表情を曇らせるマリア

 

「あっ、悪い。そんなつもりじゃないんだ」

 

「いえ、いいの。それより貴女にちゃんと謝ることができていなかった、五条弧仁のことは本当にすまなかった」

 

「やめてくれ。あれは弧仁が自分で決めたことだし、お前に謝られることじゃない。それにアタシはもう気にして・・・ないっていったら嘘にな、ゴメン。やっぱり割りきれない想いってのがあるんだよ」

 

「・・・そうよね、こっちの幸詞もすごく気にしてたから」

 

「翼達から聞いたよ。いきなり土下座したって・・・バカ正直、でも純粋無垢」

 

「それで周りにとびっきり優しいくせに、自分にはちっとも優しくない?」

 

「そうそう!だからこっちから甘やかしてやらないといけないんだよな!」

 

「それで普段はそっけなく優しくしてくるくせにいざ自分がされるとすっごく照れるのよね!!」

 

「あ~~分かる!それがなんか・・・」

 

二人の声が重なる

 

「可愛いのよ!」

「可愛いんだよ!」

 

ここにクリスがいれば間違いなく更に盛り上がる姉トークを横にしながらも、幸詞はまだ目覚めない

 

SONG艦艇内研究室

 

いつもは幸詞が座っている椅子でエルフナインがギアの強化修繕を行っていた

 

いつかの幸詞のように缶詰めになっておりここのところろくな休息もとれていない程だ・・・そこに

 

「おじゃまします」

「エルフナインちゃーん!差し入れだよー!!」

「また根詰めすぎてねぇだろうな?」

 

たいやきの袋を片手に響、クリス、未来が研究室に訪れた

 

「皆さん!ありがとうございます!」

 

「おいおい、またクマができてんぞ」

 

「先程仮眠をとったので大丈夫です!それに幸詞さんが好きに飲んでいいと言っていた大量のエナジードリンクもあるので!」

 

「明らかなオーバードーズじゃねぇかなに進めてんだあのバカ!!」

 

「ちゃんと寝ないとダメだよ?」

 

「は、はい・・・そういえば響さん、お体は大丈夫ですか?」

 

「うん、目が覚めた時からなんでか元気だったんだ・・・やっぱり弧仁のおかげなのかな」

 

「響・・・」

 

響が気を失う寸前、瞳に映ったのは綺麗だと思っていた白髪と優しい手と光

 

「なぁそれ本当なのか?弧仁が出てきたって」

 

「うん、なにも話してくれなかったけど間違いなかった、あれは弧仁だった」

 

「なんでなにも話さねぇんだよ・・・それに出てこれるんならもっと「弧仁はそんなことしないでしょ?」っ!」

 

「弧仁は今の幸詞君に全てを返したいって言ってたって師匠が言ってた・・・弧仁は幸詞君の幸せを本当に願ってた。

 

 今回は本当に危なかったから帰ってきてくれたんじゃないかな」

 

「・・・そうだな、悪い」

 

「ううん、弧仁に会いたいクリスの気持ちは分かるから謝らないで」

 

「あぁ・・・けど、いるんだな」

 

「うん、弧仁は本当に生きてたんだよ!

 

そうだ!幸詞君が起きたら少しだけお願いして弧仁に会わせてもらおうよ!」

 

「それはいいですね。幸詞さん、五条弧仁さんを響さん達に会わせてあげたいってよく話していましたし、きっと協力してくれますよ!」

 

「そ、それもそうだな・・・ちょっとくらい会ったって閻魔サマも許してくれるだろ」

 

「そうだね。ゆっくりその時間をとるためにも今は少し休憩しよう?お茶いれてくるね」

 

「なら私はたいやき暖め直してくるね!」

 

「つまみ食いすんなよバカ」

 

「しないよ~!!あ、エルフナインちゃんはその間に休憩しててね!」

 

そうしてあわただしく三人が給湯室へと向かっていった

 

それを見送ったエルフナインは・・・

 

「(進歩状況を見て少し休憩をいれても問題ない・・・けど想像より少しだけ遅れてる)」

 

その遅れの原因は

 

「(本当なら幸詞さんと共に修繕にあたるはずだったから)」

 

今彼がいないことは、エルフナインに多少の影響を与えてしまっている

 

彼が目覚めないと聞いた時は思わず泣いてしまったほどにだ

 

「(早く起きてくださいね幸詞さん、その間はボクが頑張ります!・・・だから起きたらたくさん頭を撫でてくれると・・・)えへへ」

 

きっと彼ならたくさん褒めてくれて、撫でてくれる・・・と笑みを浮かべる

 

それはキャロルから与えられた記憶や想い出ではなく、エルフナインが自身で得た幸せな時間だった

 

・・・そして翌日

 

遂にギアの修繕の進歩が89%を突破、ようやく終わりが見えてきた

 

エルフナインは少しだけ手を止めて、幸詞の元を訪れていた

 

「・・・あ」

 

そこにはマリアと奏がベットにもたれかかって眠っていた

 

「ここで寝ちゃったんですか?・・・幸詞さんもうすぐ終わりますよ」

 

眠る幸詞に声をかける、しかしあの優しい笑顔は返ってこない

 

・・・そこに

 

「おっはよーデス!」

「こーじ、今日は野菜サンド持ってきたよ・・・ってエルフナイン?」

 

切歌と調がやってきた

 

「おはようございます。お二人も幸詞さんのお見舞いですか?」

 

「お二人もってことはエルフナインもデスか?」

 

「はい、時々こうしてこさせてもらってるんです」

 

「ありがとう、こーじも喜んでると思う・・・ってマリアと奏さん?」

 

「ボクが来た時からこの状態でした」

 

「うーむ、察するに弟トークで盛り上がった末にこうなったの推理するデス」

 

「だろうね、まだ早いしもう少し寝かせとこうか」

 

「ではボクは作業にもどります。幸詞さんのことよろしくお願いします」

 

・・・それから数時間後、マリアと奏起床

 

オペレーションルームにて切歌と調を除いたメンバーが集合し、現状の確認を行っていた

 

ギアの修繕率の確認、現状の戦力の確認の最中で弦十朗が口を開いた

 

「鳴届君が目覚めない以上暁君、月読君にも出刃ってもらわなくてはならなくなってしまった」

 

モニターにはイチイバル、アメノハバキリ、ガングニールの修繕状況が映されていた

 

三つのギアの修繕状況を統合した数値が89%なのだが・・・

 

「あの、ガングニールはなんでこんなに遅れてるんですか?」

 

現在修繕が行われているガングニールだが、しかしアメノハバキリとイチイバルはほぼ修復が終わっており、89%の残り11%はガングニールの修繕がほとんどを占めている

 

「そこは幸詞君がとりあえずの修復を行っていた分の差だよ。もしも幸詞君が修復を行っていたらもう少し進捗も進んでただろうね」

 

「でもとりあえず、とはいうけどあの破損状態からギアを纏える状態に修復するのはかなり大変なことなのよ?」

 

「そうだったんですか!?」

 

藤尭とあおいの説明を聞き、驚く響

 

「でもアイツ一晩でやったって言ってたぞ?」

「徹夜してまで行ってくれたことは感謝しますが・・・そこまで大変なのですか?」

 

「今でこそプロジェクトイグナイトに辺りそれぞれのギアの記録の参照や膨大なエネルギー供給の元で修繕を行えていますが・・・幸詞さんはそれらがない状況で修復を行っています」

 

「「!」」

 

緒川から告げられた言葉に二人も驚く

 

限られた環境で行われていたことは幸詞でなければできなかったことなのだ

 

「幸詞さんによりガングニールにもとりあえずの修復が行われていた、もしくは幸詞さんがいる状態でギアの強化修繕が行えていたら・・・今頃修繕は完了していてもおかしくありません」

 

「アタシらが思っている以上に、アイツは限界以上に手助けしてくれてたってことか・・・すげぇな」

 

技術でも、戦闘でも、彼は全力で助けてくれていたのだ

 

飄々とした態度のため、分かりづらいが・・・

 

「えぇ、自慢の弟だもの」  

 

マリアはよく分かっているので胸を張って自慢する

 

「いやぁ本当頭下がるわ」

 

「なんだか奏、マリアと随分仲が良くないか?」

 

「一晩中ベットで語り明かした仲、とでも言っておくわ」

 

「な!?」

 

嘘は言っていない・・・そして話を戻す

 

「とにかくギアの修繕が完了するまでは待機、もしも襲撃があった場合は暁君、月読君に出撃してもらうことになる・・・ということだ」

 

「幸詞が目覚めてくれれば・・・」

 

唇を噛み締め、悔しがるマリア

 

「ギアも復活、戦線復帰で一石二鳥ってか?」

 

幸詞の力を改めて感じたクリスがなだめる

 

「えぇ・・・だけどもう無理はさせたくない」

 

「多分アイツは無理だなんて思ってねぇだろ?」

 

「そうだとしてもよ。貴女にも分かるでしょ?クリス」

 

「っ!・・・まぁな」

 

それでもやっぱり、無理はしてほしくないと祈るのが姉心なのだ・・・

 

・・・しかしそんな気持ちを裏切るかのように

 

ヴィー!ヴィー!

 

アルカノイズ出現のアラートが艦内に響いた

 

「座標確認しま・・・!?」

 

あおいの声を遮って艦艇が大きく揺れる、それはつまり

 

「どうしたんデスか!?」

 

「!、このドックにエネルギーを供給してる施設が襲われてる!」

 

「それだけじゃない!周辺の施設も!」

 

モニターに写るのは艦艇の周辺を闊歩するアルカノイズと、破壊される発電所の数々

 

このままではこの艦艇に供給されているエネルギーが途絶え、ギアの修繕が行えなくなってしまう

 

「!それにメディカルルームも!あそこにはこーじがいるデスよ!?」

 

「大丈夫幸詞には手動の点滴とバイタルチェックのための機器しか繋がれていないから安心なさい」

 

「よかった・・・!、そうだ」スチャ

 

なにかを思いつきどこからとなくメガネを取り出した調がオペレーションルームをこっそりと脱走し、それに気づいた切歌も後をついていった

 

「ダンナ!アタシが出る!」

 

「!・・・発電所の周辺の警護にあたれ!決して前に出るな!」

 

「いくら物理攻撃が効きやすいといっても油断するつもりはねぇ!いってくる!」

 

「奏さん!」

「奏!」

「先輩!」

 

駆け出す奏に響、翼、クリスが声をかけたが

 

「大丈夫!お前らはギアの修繕が終わったらすぐに来いよ!!」

 

そして奏も戦線へ向かうのだった

 

・・・

 

警護にあたっていた軍隊と奏が協力し、発電所の周辺のアルカノイズを倒していく

 

「すごい!奏さん強くなってる!」

 

以前に比べて動きが洗練され、無駄な動きを一切せずにノイズを倒していく奏だが

 

「きっと欠かさず鍛練を積み重ねてきたのだろう・・・しかし」

 

「先輩一人じゃ限界がある・・・っ!」

 

通常のノイズよりも移送障壁が薄いため、分解機構を除いた部分への兵器の攻撃が有効なのだが、それでもたった一体のノイズから連鎖するように軍人が次々と死んでいく

 

「(クソッ、助けにいってやりてぇが・・・!)」

 

近くにオートスコアラーもいることを考えるとむやみやたらに呪力を消費するわけにはいかない

 

なおかつ奏が今いるのは発電所の近く、離れた位置にいる軍隊の方に向かったらこちらが手薄になる

 

「(アタシの呪力量自体は弧仁や幸詞に劣ってるんだ、終わりが見えない以上全力出すところを見極めねぇと)」

 

もう最後の最後で戦えないのは御免被る

 

とはいえ、ここままでは劣勢なのは確かだ

 

「しょうがねぇ、まずはノイズだけでも「「♪~」」!、これは」

 

全力の呪力を振るってノイズを一気に殲滅しようとした奏の耳に重なる二つの唄が聞こえた

 

その歌はギアを纏うために奏でる聖詠、今この情況でそれを唄えるのは二人だけ

 

「奏さん!助太刀に来たデスよ!」

「ここは私たちも一緒に!!」

 

「切歌に調!!無茶しやがって・・・」

 

イガリマとシュルシャガナを纏い、アルカノイズのと戦闘を開始した二人

 

ギアのバックファイアに加えてまだ修繕を行っていない二つのギアではバリアコーティングの無効化という弱点を抱えてしまうが、それを感じさせない二人の気迫と勢いにアルカノイズは次々と殲滅されていく

 

「(気合いにしちゃ動きが良すぎる・・・でも)正直ありがたい!!」

 

奏の今の戦闘スタイルでは広範囲を殲滅する方法がない、その分を機動力と連携に優れた二人が補っている

 

そして広範囲を気にする必要がなくなった分、奏も目の前のノイズの集中できる

 

槍に呪力を纏わせる。奏の呪力の性質上呪力は槍に渦巻くようにして纏わりついていく

 

そして槍先を下に向けて・・・突き刺す!!

 

「二人とも避けろよ!!巻旋槍(かんせんそう)・・・(じん)!!!」

 

「えっ?」

「デェス!?」

 

ガキィィンッ!!・・・それと同時に奏を中心に呪力の渦が巻き起こる

 

ビュオォォォ!!ズバババババババッ!!!

 

刃とも言えるその呪力は周囲のノイズを一気に切り裂いていった

 

「・・・うし、この辺一体のノイズは終わりか?」

 

「えー・・・」

「私たちが助けに来た意味デス・・・」

 

あっという間に全てを倒してしまった奏に愕然の切歌と調

 

「んなこと言うなって、二人のおかげで無駄な力使わずに打てた・・・!?あぶねぇ!!」

 

呆然とする二人に奏が声をかけたその時、切歌の上から迫る影

 

「ッ!?」

 

ガキィィンッ

 

「おぉ!?よく受け止めたゾ!!・・・けど今回もアタシ一人じゃないゾ!?」

 

間一髪、その影の主であるミカからの高圧縮カーボンロッドの一撃を防げた切歌だったが・・・

 

「脇腹がら空き・・・もらった!」

「切歌ちゃんッ!!」

 

その背後に突如現れたカースにより放たれる拳

 

完全な死角からの攻撃を防ぐ手立てはない

 

ドゴォッ!!!

 

肉を抉るような鈍い音、しかしそれを受けたのは切歌ではなく・・・

 

「ガハッ・・・」

 

その間に入った奏だった、呪力の乗ったこぶしをまともに受け、血を吐いている

 

「!!、奏さん!?「怯むな!!来るぞ!」!?」

 

「その通りっ!!そりゃぁっ!!」

 

心配する切歌を叱咤したがミカはもう片手にもカーボンロッドを出現させ切歌を、そしてその背後にいた調諸ともふっ飛ばした

 

ドガァァンッ!

 

「!、切歌っ調っ!「お前のことは記憶しているぞ天羽奏」っ!?」

 

ガキンッ!!

 

「五条弧仁の師である五条悟擬きの弟子の呪術師、先程も最低限とはいえ私の攻撃に合わせて咄嗟に呪力でガードするとは、流石だな」

 

「ほー・・・よく調べてんじゃねぇか」

 

今度は槍で拳を受け止められた、互いに呪力で身体強化を行い競り合う

 

自身に匹敵する奏の実力にニィッと口角を上げたカース

 

「ミカ!あの二人を任せる!天羽奏は私が!」

 

「それは適任ダゾ!けどカースはお仕事済ませたのカ?」

 

「あぁバッチリだ、しっかりと覚えてきた」

 

「あ?仕事だ?お前何しやがった!?」

 

「それは内緒だ、さぁ天羽奏・・・お前は私の友となり得るか!?」

 

グググッ・・・奏を押し込むカース、しかしそれに対して奏は・・・

 

「っざけてんじゃぁ・・・ねぇぞ!!」

 

ガツンッ!

 

槍を振り払い、カースを後退させる

 

「お友達ほしいんならよそでやれ!ここは!この世界は!アイツが守った世界だ!そこにはな!一つの争いもいらねぇんだよ!!」

 

「アイツ・・・五条弧仁か」

 

「あぁそうだよ、それからも一個記憶しとけ、アタシは弧仁のお姉ちゃんだってな!」

 

切歌と調のことが気がかりだが、幸詞を圧倒した呪力を使うカースを相手にできるのは奏しかいない・・・しかしその奏も先程の一撃がかなり効いている

 

「(それでもやるしかないよな・・・先生!)」

 

されど気力は衰えず、鋭く構えた視線と槍・・・そして二つの呪力が激突した

 

・・・

 

一方、ミカにぶっ飛ばされた調と切歌

 

「お前らの相手はアタシがするゾ~!けぉ面白くしてくれないと~すぐ分解しちゃうんダゾ?」 

 

おちゃらけた様子で挑発してくるミカ、それに対して当然怒りの感情が湧く

 

「子ども扱いして・・・」

「目にもの見せてやるデスよ!」

 

そうして二人が構えたのは黄緑色の液体の入った無針注射器、それは

 

「っ!あれは!?」

 

奏にとって見覚えがあり、身に覚えのある薬品である・・・ギアの適合率を上げる薬品、リンカー

 

ガキィンッ!

また競り合いながら奏は弦十朗に連絡を取る

 

「どうなってんだダンナ!?」

 

『アイツらは奏君が残していたリンカーを無断で持ち出したようだ』

 

「アタシの置き土産ってことかよ!」

 

カァンッ!、ズンッ!!ガシィッ!!

 

カースの腕を振り払い、槍を付き出したが片手で掴まれた

 

ググググ・・・またも拮抗する二人

 

「リンカー・・・ギアの適合率を上げる薬品だったな」

 

「よく知ってるじゃねぇか。アイツらの動きがやたらいいと思ったらそういうことかしかも連チャンするつもりかよ・・・おい!今すぐやめろ!!」

 

自身の身体にあったリンカーであってもオーバードーズの危険性がある

 

更に今二人が打とうとしているのは奏に合わせて作られていたリンカーだ

 

危険でしかない

 

「ごめんなさいデス奏さん・・・でもこうするしかないんデス!」

「これはあの日道を間違えた私たちにできる償い!だから!」

 

そうして向かいあった二人は互いの首に注射器を向ける

 

「っ!おい!「よそ見をしている場合か?」ッ!?」

 

ドンッズザザザッ・・・

 

カースの攻撃で今度は奏が後退、その衝撃も容赦なく痛みとして身体を走る

 

「くそ『お願い奏、やらせてあげて』!マリア!?」

 

『これはあの日道に迷った臆病者たちの償いでもあるの』

 

「っ!けどあれの危険性はアタシがよく知ってるんだ!このままじゃ勝とうが負けようがあの二人は!『それでも誰かを信じれなかったあの時とは違う』!」

 

『迷ったまま独走したあの時とは違う、エルフナインがギアを甦らせてくれると信じて戦うことこそが私たちの償いなの!』

 

「っ!」

 

通信越しに感じるマリアの後悔と信じて戦うこれからに向けた覚悟

 

きっとそれはあの二人も同じだ

 

二人が手に持つリンカーは幸詞が眠るメディカルルームに置いてあった

 

そこで二人は約束した

 

「こーじが動けない今は私たちがこーじを守る」

「弧仁がしたみたいに勝手にこーじと約束するデスよ」

 

自分達を守ると決めた(幸詞)のように

 

自分達を守ってくれた(弧仁)のように

 

そしてその約束を守るために溢れる恐怖は

 

「二人でなら」

「怖くないデス!」

 

プシュッ・・・ドクンッ

 

同時に打たれたリンカー、高鳴る鼓動

 

少しの流血と溢れる力!!

 

「いこう切ちゃん・・・一緒に!!」

「切り刻むデスッ!」 

 

そうして始まる二人の猛攻!!

 

それはミカの射出するカーボンロッドを砕き、更に攻撃を加えていく

 

「ギアの出力も上がってる・・・だけど」

 

それが時限付きの諸刃の剣であることは奏がよく知っている

 

「全くこちらに集中できていないな・・・やる気はあるのかッ!?」

 

「・・・ハァ」

 

よそ見ばかりの奏に痺れを切らし、猛攻をしかけるカースだったが・・・それに対して奏はため息を一つの溢し・・・

 

ズシャッ!!!

 

「!?」

 

「お前なんかと遊んでる暇はない、やる気なんか出るわけないだろ」

 

本気を出した奏による目にも止まらぬ槍の一突き、それがカースの身体を貫いた

 

「な、に・・・」

「お前が攻撃する時に今槍を刺してる箇所を中心に呪力が広がるのが見えた、そこが核なんだってまるわかりなんだよ・・・にしてもお前呪術師としてまだまだだな」

 

ズッ・・・ガタッ!

 

槍を引き抜くと同時にカースが地に伏した

 

「一流の呪術師ってのは呪力の流れが読みづらいもんなんだ、記憶しとくんだな」

 

聞こえてるか知らねぇけどな・・・そう言ってカースから呪力が消えたのを確認し、切歌と調の方を向きなおしたが・・・ドガァァンッ!!

 

「!?」

 

上空で爆発が起きた

 

「ッ!切歌!調!!」

 

二人の猛攻をものともせずミカの攻撃によって切歌と調が地面に叩きつけられた

 

それでも諦めずミカに挑むが・・・パキィィンッ!!

 

ミカの一撃により切歌のギアペンダントか砕かれた

 

「ッ!!」

 

二人が吹き飛ばされて時点で駆け出していたが、この距離では間に合わない

 

それでも急ぐ奏、その奏の肩を・・・グィッ!

 

「なるほど呪力を読みにくくするのが一流なのか・・・勉強になる」

 

「!?」 

 

ガッ!ズサッ・・・ガシィッ!!

 

カースが手で肩を引き寄せ、転ばせて馬乗りになって奏の首に手を添えた

 

「しかしマスターの改造は見事だ、コアの位置を変える機能(・・・・・・・・・・)などなんの意味があるのかと思っていたが・・・こうも作戦通りにいくとは」

 

「お前、なんで動けんだよ」

 

地に押し付けられた姿勢からでもカースの胸の位置に風穴が空いているのが見えるのに、確かにそこに核があり突いたはずなのに・・・

 

「さっきいった通りだ、お前が刺した位置に確かに私の核はあった。しかしその寸前で核の位置を変えた。今私の核は別の箇所にあるのは見えるだろう?」

 

「ブラフ張ってたって訳かよ」

 

「いや、それでもここまで的確に狙われるとは思わなかったぞ?実に見事、もしも私が人間だったらこの時点でアウトだった

 

しかし残念ながら私はオートスコアラー、胸を突かれたくらいでは止まらないし、おまえの瞳に映らないレベルで呪力をオフにすることくらいはできる・・・そして、私に触れたな」

 

「っ!?呪力が・・・」

 

奏の首に添えた手から呪力が抜かれていく

 

「冥土の土産というやつだ、これこそが私の術式、接触吸収、だ。能力は簡単、私が接触した対象から呪力などを吸い付くす」

 

余裕なのか、わざとなのか、ゆっくりと自分の力を話すカース

 

その間にも呪力はどんどんと抜かれていく

 

カランッ、手から槍が落ちる

 

「シンプルながら厄介だろう?・・・ちなみにだがフォニックゲインや想い出なども吸収可能のおまけ付きだ・・・このままお前の想い出も抜かせてもらっておく」

 

「!?」

 

想い出を抜かれる?

 

「自身、または吸収した他者の想い出を焼却することで錬金術として扱うことができる・・・が、天羽奏お前の想い出には個人的に興味がある、研究させてもらうぞ」

 

「や、めろ・・・」

 

嫌だ、そんなの嫌だ

 

辛い想い出も幸せな想い出も全部自分のものなのだ、奪われてなるものか

 

「落ち着け、後そこからでは見えないだろうから教えてやる。ミカと戦っていた暁切歌と月読調だが現在は暁切歌に続き月読調のギアも破損、アルカノイズに囲まれているぞ」

 

「っ!!」

 

「恐らくだが月読調は計画に必要ないと判断された・・・このままノイズに分解されるだろうな」

 

「ふざけんなっ!!んなことさせてたまるか!!」

 

グググッ!!怒りの感情で呪力を沸き起こして抵抗する奏だが・・・

 

「!?まだ呪力が!?だがもう・・・遅い!」

 

グッ、ダンッ!!力付くで地面に押さえつけられた

 

「誰かぁーっ!!!」

 

切歌の叫びが聞こえる・・・このままでは!!

 

「離せ!!」 

「離さない!!これで終わり「それはお前だな」!!」

 

「この声は・・・」

 

もがく奏を完全に押さえ込んだカースの背後から聞こえる声・・・そして

 

「誰かだなんて・・・つれねぇこといってくれるなよ」

「あぁ・・・振り抜けば風が鳴る剣だ」

「遅くなってごめんね、けど届いたよ!」

 

「!、翼!クリス!響」

 

三人の声が聞こえた、声の方向からして切歌と調の方にいるのだろう

 

そして三人がここにいるということはギアの修繕が間に合ったということだ

 

「一人予想外の人物がいるが・・・遅くなってすまない奏、おかげでギアは甦った」

「先輩、それに後輩が頑張ってくれたから間に合ったぜ」

「だからここからは私たち四人が引き継ぎます!!そうだよねっ」

 

そして響がカースの後ろにいる4人目の名前を呼ぶ!

 

 

 

「幸詞君!!」

 

 

 

「!!、あの子いつの間に!」

その言葉にSONG艦艇内のマリアも驚く

 

「もちろん!!とりあえずまずは・・・この間の礼だこの野郎!!!」

 

ドゴォッッ!!!

 

そして響く打撃音、それは名を呼ばれた幸詞によって繰り出された音

 

それによりカーズは奏から手を離してぶっ飛ばされた

 

「さてどうしてくれる先輩?」

「反撃では生ぬるい、逆襲するぞ、いけるな立花!」

「はいっ!もうこの拳を相手に向けることを迷いませんっ!!その上で私は手を繋ぐッ!!」

 

そして響、翼、クリスは再度召喚されたアルカノイズと戦闘を開始した

 

「槍のねーちゃん大丈夫ですか?」

「お前、それ・・・どうなってるんだよ」

「?なんのことです?」

「それ、だよ。この短期間、しかも寝てたんじゃねーのかよ」

 

奏が指差すそれ、それは幸詞の身体全体を包み込み沸き上がる呪力

 

以前のように弧仁に纏わせてもらっているのではない、幸詞自身から生まれ溢れている

 

それは既に呪術師として至高の領域に達していた

 

「んー・・・まぁ修行?してたってことで!早速なんですけど立てます?離れててくれたら嬉しいんですけど」

 

「どういうことだよ。ったく・・・とりあえず任せていいんだな?」

 

「はい、アイツには個人的に借りしかないんで・・・燃えないゴミにしてやりますよ」

 

「なら後は頼むわ。呪術師として、弧仁の意思を継ぐものとして・・・思いっきり暴れてこいッ!!」

 

「はいっ!!」

 

遂に完全復活した幸詞はカースへと雪辱を果たすべく、その身に呪力を滾らせ・・・駆け出した




しないふぉぎあさんぽ!

ー槍のねーちゃんとー

ガンッ!ズガガッ!・・・ドスッ!!

今から少し前、奏と幸詞が訓練中に幸詞が吹っ飛ばされた

「ッ!?」
「脇が甘い・・・けど少しは堪えろよお前」
「俺痛覚鈍いんで」
「あー実験の影響だっけ?」
「はいっス」
「だからって手は緩めねぇぞ、むしろ厳しくするからな」
「えぇー・・・俺研究員なんですけど」
「・・・最低限の力は持っておけよ」
「へ?」
「お前に死んでほしくないって人が山ほどいるんだろうが・・・だから自分のこと守れるくらいには強くなれよ」
「はぁ・・・まぁその通りですかね」
「ほら、構えろよ」
「はーいっス」

そして現在

「強くなれとは言ったけど・・・ここまでなれとは言ってねぇのに・・・ったくよ」ニィッ

少しだけとはいえ師弟のような関係だった幸詞、その強くなった姿を見るとなんだか嬉しくなった

・・・きっとこれは先生も感じていたこと

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