ハイスクール D×D 隠蔽された子   作:世界の果実

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第二部
蓮怒られる


「なるほど、それで強制転移を使って、死んだ兵藤一誠を残したまま帰ってきた……………と」

 

【強制転移】文字通り、強制的にその場から瞬時に転移することが可能な超難易度の魔法。

 

この魔法は、術者の約一日に蓄えられた魔力量の三分のニを消費するため、滅多に使用するものはおらず、デメリットしかないのが特徴。

 

また瞬時に膨大な魔力を失うため、魔力量が少ない術者は使用後、命を落とすこともある。

 

リアスから逃げ去り自宅の門の前に転移した蓮は、全身から大量の汗が流れ呼吸は荒く、立つのがやっとの状態になりながらも、意識は辛うじて保ちながら、アザゼルと向き合っている。

 

アザゼルは仁王立ちで玄関の扉前に立ち、眉間にシワを寄せ、険しい目つきを蓮に向けていた。

 

それは兵藤一誠を放置した事でも、素性がバレそうになったことでもなく、なぜ自分に助けを求めず、一人で解決しようとした事に怒りを感じているからだ。

 

呼吸が次第に落ち着き始め、疲労感は残っているものの、話せるぐらいには回復した蓮は早速、さっきまでの流れを一通り説明し始めた。

 

蓮の主観からではあるが説明を終え、アザゼルの表情を見ようと目線を合わせた。

 

「最近、兵藤一誠の監視を怠り、オカルト研究部の方ばかり気にかけていたようだが、それについて何かあるか?」

 

「っ!」

 

「兵藤一誠が家に着くまで監視をしていたら、少なくともこういう結果にはならなかったはずだが?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

しばらく沈黙がおとずれた。アザゼルに正論を言われ、それを言い返すことができず、言い訳としか捉えれない問いかけに、悔しさと腹立たしさが生まれ、無意識に拳に力が入る。

 

お互いに無言のさなか、先に口を開いたのはアザゼルの方だった。

 

「その理由は朱乃が目的か?」

 

堕天使の現ナンバー2の地位と強さを持ち、アザゼルの右腕であり一人娘姫島朱乃の父親であるバラキエルから、幼い頃に蓮と朱乃の仲が良すぎて、二人いつも一緒にいると愚痴を呟いていたことを、昔から今にかけて覚えていたのだ。

 

蓮が朱乃の事を、他の人とは違う特別な想いで見守っていたのは明白であり、任務そっちのけで気を取られていたのがバレていた。

 

彼女の名前を出した途端、蓮の肩がピクンと動いた。が、それでもまだ黙って下を向いたまま、沈黙を貫き通す。

 

「沈黙は肯定か?」

 

アザゼルは尚も質問するが、蓮の口は固く閉じたまま時間だけが過ぎる。

 

しかしふと、先程までの重々しい雰囲気は立ち去り、アザゼルの表情も普段と変わらない穏やかな顔つきに戻った。

 

「まぁ今はその話どうでもいいか。レイナーレについてはさっき部下からの報告で、堕天使側を抜けてはぐれになったことが確認された」

 

アザゼルは昔から和平を望み、人間や悪魔天使に対して不要に手を出した者は裁判にかけられる法律を作った。

 

しかし、それを気に入らない一部の者は、同胞を裏切り自らを正義として裏でコソコソと動いている。

 

堕天使達は、彼らをはぐれと称し悪魔以上に忌み嫌っている。

 

これまでにはぐれになった数は分かってはいないが、恐らく全体の一割程度とアザゼルは推測している。今回、一割程度と思っていたことが、仇になったが…………

 

「レイナーレの件は俺のほうで対処するとして、今後の任務についてだが………」

 

 

何かを考える素振りをしたアザゼルは一旦言葉を区切った。

 

そして、普段の父親の顔に戻った。

 

「お腹が空いてるだろ? そろそろ晩御飯にしてそれから話は」

 

しようと言いかけたその時、二階の方からドスンという音とともに、“家”がすこし揺れた。

 

揺れた原因は、地震でないことを二人は気付く。むしろ地震の方が何百倍もマシだったかもしれない。

 

「おい蓮、この上から感じる魔力量はまさか!」

 

「こっちに来る連絡はきてないけど、この魔力は多分....。」

 

二人同時に二階の窓を注目したが、何も変化はなく勘違いであるようにと、堕天使にもかかわらず、神にお祈りを心の中で捧げる。

 

「あいつしかいないぞ。おっおい蓮!いますぐ家に入って二階を見てこい」

 

「堕天使の総督ともあろう人が、なにビクビクしてんのさ?父さんが行ってきなよ」

 

「俺はあれだよ。晩飯のな!準備をしないといけないんだよ」

 

どちらが二階に行って様子を見るかの言い争いをしている間、だんだんこちらに近付いてきている音が、彼らにははっきりと聞こえている。

 

「とりあえず、ご近所様に迷惑だし家の中に入ろうか。な?」

 

「父さんにさんせー。」

 

二人はビクビクしながら急いで家の中に入っていった。

 

 

 

玄関のドアを閉めた途端、彼らはその音の正体を見づとも気付いてしまったが、蓮に至っては確信すらしていた。なんせ、音の正体の魔力量や質を半分も受け継いでいるのだから気付かないわけがない。

 

 

彼らは、リビングの中から大量の魔力を放出している部屋の前に立ち深い深呼吸をした。まるで、二度と生きては帰れない戦場に行くかのように。

 

恐怖と共にドアノブに手をかけたアザゼルは、ガチャという音ともに死を覚悟した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには、飛びっきりの笑顔を蓮だけに向けている彼の母親、ガブリエルが椅子に座って此方を見据えていたのだった。

 

 

 

 

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