今現在も広がりつつある大宇宙。その中に存在する太陽系から三番目に近い惑星ー地球。
約十個の火星サイズが衝突し合って形成されたこの星は、古来より複数の世界が存在することを、人間界の人々は知らない。
その複数の世界を大きく二つにまとめるとするならば、悪魔や魔王が存在する魔界と、天使と神様が存在する天界に分けられる。
まずは、この魔界について説明したい
魔王を筆頭に名門貴族ー上級貴族ー下級貴族ー奴隷と貴族社会で成り立っている。
人間界からみれば、魔界の住人たちが血や肉に餓え人間を食料として食い殺し、魔王は魔族を率いて人間界に降り立って土地や女を略奪しては奴隷にするなど、残虐で恐怖のイメージがあるが実際はそうではない。
確かに中にはそういう輩もいるにはいる。しかし、基本的に好奇心旺盛でで温厚な一面も持つ種族である。
珍しいものやイベント事には目が無く、人見知りという言語が存在しない程、初対面からフレンドリーな接し方をしてくる。それによって少し問題が起こしたりするが、他人には優しく自分には厳しい傾向がある。現在では、人間界に干渉しつつある。
次に天界について
大神ゼウスを先頭に四大熾天使ー大天使ー天使ー転生天使と弱肉強食社会である。
全体としては非情に生真面目な性格の持ち主で、自分に厳しく他人にも厳しくがモットーな種族である。が、実際はそんな考えは古くさいし今の時代はパーリィピーポじゃん?と思っているチャライ天使が最近増加しつつある。
そのため殺人や窃盗行為、人の恋路を邪魔したりと人間と同じような行動も最近見られ始めている。
しかし、あまりにも度が過ぎる行動をしてしまうと堕天使となりその際、天使の証である背中の純白な羽が漆黒に変わってしまい、永久的に天界を追放されてしまう。
この物語の主人公新条蓮は、生まれ故郷は天界でありながら、父親は大神ゼウスの元親衛隊隊長で現堕天使トップに君臨するアザゼル。
そして母親が四大熾天使の中でも断トツの美女であり、また天界一の強さを持つガブリエルの一人息子である。
ガブリエルの父つまり蓮の祖父は、天界で隠居の身でありながらトップの権力と力を持つ大神ゼウスであり、蓮はゼウスの跡を継ぐ最も有力な候補であったが、立場や環境が複雑になったことで、将来の後継者については誰も検討がついていない。
また、蓮の存在が色々と邪魔になる者や組織が形成されると、天界内外で戦争がおきかねないというアザゼルの意見が、天界最高諮問委員会で許可され、蓮が成人を迎えるまで身分を隠して生活することになっていた。
それなのになぜ、蓮が天界ではなく人間界でしかも高校生として生活しているか?それは蓮の六歳の誕生日前日まで遡ることになる……。
その日の夜、アザゼルとガブリエルとの間で痴話喧嘩が勃発していた。
「今回は俺がケーキを選んで買ってくるから、お前は夕食の準備でもしといてくれ」
「貴方の選ぶケーキはサイズが大きすぎるのよ!だから、前に私がケーキを買ってくるって約束したでしょ!!」
そう、我が子から褒められたいその一身で、どっちがケーキを買ってくるかで争っていたのだ。
第三者から見れば、誕生日のケーキなど別にどっちが買ってきてもと思うだろうが、当時の二人は、毎日の仕事が忙しくあまり蓮と触れ合える時間が無かったため、少しでも親らしいことをしたかったのだ。
結局痴話喧嘩が、彼らにとっての初めての大喧嘩となりアザゼルはまだ仕事着であったが、そのまま家を飛び出してしまった。
「ママァ、どうしたの?」
大喧嘩でかなりの言い争いをしていたらしく、寝室で眠っていた蓮が目を覚まし起きてしまった。
「あら?起きちゃった?ママね、パパと喧嘩しちゃったの」
ガブリエルは、正直にまだ小さい蓮に喧嘩したことを話した。それを聞いた蓮は
「ママ、しゃがんで」
と、頭を蓮の肩まで下げるように要求した。ガブリエルは何だろうと思いながらも、息子の要求を受け入れ、その場で座り頭を低くした。
「よしよし」
どこで覚えたのか蓮はガブリエルの頭に手を置き、小さい手で撫でた。急なことにびっくりしたガブリエルだったが、息子の優しさと成長したことに感極まり、涙をボロボロ流しながら、思いっきり抱きしめた。
その後再び蓮を寝かしつけ、アザゼルの帰りを待っていると、一本の電話がなる。
「ガブリエル様、アザゼル様が……アザゼル様が…………堕ちることになりそうです。」
堕ちる=天界永久追放並びにその家族も同罪と見なされ、天使の称号を永久剥奪され、種族さえも堕天使に変わってしまうということなのだが、アザゼルは、天界のご法度とされている色欲の種類の中で、浮気の罪に問われてしまったのだ。
その後ガブリエルは、四大熾天使ということで特例に堕天は免れ、お咎めはなかったが、息子の蓮はアザゼル同様有罪となってしまい、即刻退去を命じられた。
悲しみやら怒りやらをどこにぶつけていいか分からないガブリエルは、ゼウスに息子だけは、と頼みに実家に戻って直談判をするも却下されてしまう。
「ワシだってな、ガブリエルよ。孫をそんな可愛そうな事をしたくないんじゃ。じゃが、ワシの親族だからといって特別扱いにはできんのじゃ。許しておくれ。」
ふと顔を上げて父親を見ると、滅多に見せない涙を流し俯いていた。思えばゼウスにとって蓮は、たった一人娘の孫。蓮をこの家に連れてきた時だけ、常に仏頂面で強面な父が頬を緩めて連を可愛がってた時の事を思い出した。
「ただ、蓮坊自体に罪はないから天使の資格は残せるはずじゃ。まぁ、会うことが出来るのは年に数回しか機会はないがの」
「それでも蓮に会えるんだったらいいわ!私の大切な息子ですもの」
そうガブリエルは父に告げると、ゼウスはそれを見て微笑んでいた。