8時10分
蓮は、学校へ向かうため家の玄関を開け、外に出た。
そのまま最短距離のルートに向かうと思いきや、わざわざ遠回りの道を使い、辿り着いた場所は住宅街のごく普通の一軒家。
ここに、兵藤一誠という変態三人衆のうちの一人の家がある。
蓮と一誠はクラスメイトの仲だが、互いに一度も話したことはなく、ほとんど赤の他人に等しい。むしろ、どちらとも関係を持つことを避けてる印象が強い。
ではなぜ、兵藤家に向かう必要があるのか。それは、高校入学と同時にアザゼルからある任務の提案をされたことから始まる。
その任務とは
「近い将来、大きな存在になるであろう兵藤一誠及び、グレモリー眷属の学園内での監視」である。
グレモリー眷属
魔王の娘であるリアス・グレモリーを筆頭に、聖魔剣使いとして知られる木場祐斗、姫島朱乃、塔城小猫で構成されている。
全員オカルト研究部に所属しており、表向きは駒王学園の歴史とミステリーを中心に活動する同好会である。
グレモリー眷属を監視する理由はただ一つ、悪魔側の最新情報を収集することだが、蓮の魔法に対する修行の一環でもある。
アザゼルは、技術面、精神面の上達に努力不足を知る必要があると、笑いながら言っていた。
兵藤一誠に関しては、一年前から彼の体内で、微弱ながら神器の反応をキャッチすることに、成功したとしか聞かれていない。
神器の調査が趣味の変態親父に、一誠と歳が近いという理由だけで半強制的に、任務の一部に監視が加えられてしまったのだ。
ふと、どんな方法で神器の反応を掴んだのか質問したが、親父曰く勘と言っていた。まぁ要するに、俺に教えるのはまだ早いと言いたいのであろう。
ちなみに母ガブリエルには、内緒にしてくれと頼まれた。これがバレたら神の一撃(比喩ではない)が落ちるとか落ちないとか。
親父は当初、魔王の妹が部長のうえ、魔界で一番期待され注目を浴びている眷属が対象とのことで、どちらかに絞ってもいいと言ってきた。
が、変態だがこれまで育ててくれた親父に、少しでも見返したい思いと、成長を一番楽しみにしている母さんのため、即承諾の返事をした。
自分がどれだけの力を持っているのか、という疑問が昔からあったことで、むしろようやく実力を知るチャンスだと、その場で武者震いが出るほどワクワクしていた。
しかし、今になってこの任務を受けたことを、かなり後悔している。
兵藤一誠を一年間観察して分かったことが、スケベで馬鹿な高校生以外にこれといった特徴がなかったからだ。
兵藤一誠
運動神経はまぁまぁで成績は中の下。顔はそこそこだが、脳内いっぱいのスケベが、彼のいいところを全てダメにしている。
友達というか悪友が二人おり彼女は最近出来たばかりの天野夕麻。父親は極普通のサラリーマンで母親は普通の専業主婦。
日頃、女子をエロイ目で見ているためかなり有名である。悪いほうの意味で。
時に驚くべきことを発揮するがすぐに調子に乗って、結果全てがダメに。
本当に大きな存在になるのか疑問である。
これまでのメモを見ていると、兵藤一誠を監視している自分が、馬鹿に見え頭が痛くなる。
家の門から兵藤一誠が出てきたことで、その日の任務は開始となる。道中、大きな欠伸をしている姿を見ていると、そのまま永遠と眠らせてあげようかという衝動に何回駆られたことやら。
蓮はいつもどおり何事もなく登校して学校に着き、そのまま自分の席に座りイヤホンを耳にあて、ホームルームが終わるまで目を覚まさなかった。
時は過ぎて放課後のオカルト研究部の部室。
一旦兵藤一誠からリアス・グレモリーの方に監視対象者を変更した。
どうも最近、オカルト研究部の活動が活発になっている気がしてならないためである。
姿はもちろん、音や気配を完全に消す事が出来る能力〈クリア〉を発動し、聞き耳を立てる。
〈クリア〉の有効範囲は、蓮の今の実力ではせいぜい半径二十メートルとかなり限られている。
アザゼルやガブリエルクラスだと、半径五キロはくだらないだろう。
昨日はあまり有力な情報は出てこなかったが、今日のリアス・グレモリーの怒りに満ちた顔を見ると、かなりいい情報が聞けそうだ。
「朱乃、昨日の夕方にあった出来事に関して詳しい説明をお願い」
「はい、部長。昨日の夕方、帰り道の途中にある第6公園に向かっていましたところ」
ここで一旦言葉を区切った。
「偶然二年生の兵藤一誠君と彼女らしき人が、一緒に仲良く手をつないでベンチに座っていましたわ!」
朱乃とリアスに言われた人は、オカルト研究部副部長を務めている三年生で苗字は姫島。
二大お姉さまの一人で、大和撫子という言葉が一番似合う女性。
リアスは容姿端麗で運動神経抜群という、完璧すぎる上に異国の女性ともあって、男子から絶大な人気を持つ。
対して姫島朱乃は、大人っぽい仕草や温厚な性格から男子もそうだが、教師たちからも評判はいい。
朱乃はどうやら、好きな人がいるらしく、告白を受けた際に必ず
「ごめんなさい。好きな人がいるの」
と毎回、頬を染めながら断っているので、自分ではないかという自意識過剰な輩が、最近一段と増えてきている。
イケメンやブサメンに限らず、他校からわざわざ告白する人も少なくは無いが、今まで成功した人はいない。
話を戻そう
「初めのうちは、単なる仲のいいカップルと思っていたのですけれど、帰り際に彼女さんの顔を見て思い出しましたわ……。」
「その彼女、現在この町で確認されている堕天使レイナーレにそっくりでしたわ」
この言葉にリアス・グレモリーと姫島朱乃以外の眷属たちは驚いていたが、一番驚いているのは蓮のほうであった。
レイナーレは今、この街の管轄ではなく、隣町の方で別の任務を任されているはずだからだ。
蓮は早急にオカルト研究部を去り、急いで兵藤一誠の元へと向かうため、走りながらアザゼルに電話する。
とりあえず俺は、兵頭一誠の安否を確認するために学校を飛び出した。
しかしその日の夕方、今まで止まっていた歯車が静かに動き出した。