時刻は夕暮れ。
部活動や勉強などで放課後に残っている生徒たちが下校する時、駒王学園から3キロ程離れた住宅街の真ん中に位置する公園に、一誠と女子生徒がいた。
二人の影が、重なり合うように地面に映っている。その光景は、決して恋人達特有の甘酸っぱいものではない。なぜなら……
「えっ・・・・」
一誠の恋人である天野夕麻の右手に握っている槍が、一誠の心臓を一直線に貫いていたからだ。
一誠の上着の制服は、徐々に血が滲み出し手足はガクガクと震えはじめた。
一瞬何が起きたか分からない一誠は、痛みがもっとも激しく感じる胸に、動かせる右手で状態を確認する。
徐々に視界は歪みはじめ、瞼が重くなり倒れそうになる。
ゆっくりと一歩踏み出したり、下がったりと必死に意識を保ち、立ち続けようしたが、やがて地面に倒れた。
「ごめんね私の遊び道具君。貴方が私たちにとって危険因子だから、殺さないといけなかったの。恨むのなら神を恨んで頂戴」
えっ、俺死んじゃうの?まいったなぁ、まだ親孝行も出来ていないのに…。
てか俺死んだら松田と元浜きっと驚くだろうなぁ。母さんは号泣して父さんは馬鹿野郎って怒鳴るだろうなぁ。
てか何で最愛の彼女に殺されかけてんの?あぁそうか。 これは夢なんだ。 そうだよ。 きっとこのまま目を閉じたら、明日の朝になっていて、夕麻ちゃんとラブラブ出来るんだよ。そしていつか結婚して子供を産んで……
そう思っていた時、天野夕麻ではない男の声が耳に聞こえてきた。
?「おま な 殺し 」
その声はかなり怒気を含んでいるのがわかる。
しかし、一誠の意識は既に限界に達しており、もはや誰が叫んでいるのかも考える気力も失せていた。
そしてとうとう全身の感覚を失った一誠は、うつ伏せの状態になりながらも、表情は笑っていた。
明日が来ることを望んで……
疲れたから目を閉じようとした時、視界いっぱいに広がる自分の血をみて、最後にリアス・グレモリーの事を思い出していた。あのストロベリーよりもさらに鮮やかな紅の髪の美女と一回でもいいから話をしたかったと。
その思いを最後に兵藤一誠の、【人間生活】としての役割は18年で消滅した。
× × ×
蓮が公園に着いたとき、ちょうどレイナーレの槍によって、兵藤一誠が殺されている場面だった。
「来るのが遅すぎましたわね、蓮様」
兵藤一誠の心臓に刺さっている槍を、愛おしそうな表情を浮かべながら彼女は語る。
心臓から槍を抜き取ると、蓮の方に顔を向けた。
彼女の制服に、血の斑点が全身に広がっている。
「レイナーレ!!お前の管轄は隣町のはずだ。しかも俺の標的の兵藤一誠を手にかけやがって……。これはいったいどういうつもりだ!!!」
彼はかなりの量の殺気を、レイナーレに向けていた。
しかし、彼女はどこか不敵な笑みを浮かべている。
「お久しぶりですわね。積もる話もございますでしょうが、ここは一旦逃げさして頂きます。ではまたの機会に」
突如、彼女の足元から眩しい光の紋章が現れた。それは彼女の肩幅サイズまで広がり、彼女全体を包む。
やがて光が収まり目を開けると、彼女はそこから消えていた。
蓮は追いかけたい衝動に駆られたが、ひとまず兵藤一誠の手当が最優先任務に切り替え、彼の所まで行き安否を確かめた。
彼の全身は氷よりも冷たく冷え切っており、安らかな表情で目を閉じてる。
自分じゃ対処に終えない、そう判断した蓮はアザゼルに連絡するべく、携帯を取り出した。
しかしタイミングが悪かったのか、それとも運が悪いのか…
彼の後ろからは、聞き覚えのある声が聞こえた。
「これはどういうことなのかしら?」