怪壊廻奇譚!   作:ぽっとでの急須屋

1 / 9
※注 このお話は試し書きであり、今後大幅改編するかもしれません。何卒ご理解ください。(でも、やっぱり読んでもらえたら嬉しいのでよかったら読んでってください)



メインストーリー(連載/時系列順)
第1話 語りたがり


《side:阿良々木暦》

 

 怪異という言葉がある。僕にとっては高二の地獄のような春休みから一年間関わってきた聞き馴染みも言い馴染みもある言葉だ。だが、ふと今更になって僕はこの言葉に疑問を持った。

 

 怪異とはなんなのか

 

 吸血鬼、蟹、猿、蝸牛、猫、蛇、蜂、不死鳥、付喪神。名前は違えど分類は一緒で、それらの事象は一絡げに怪異と呼ばれている。そう呼ぶようになったのはいつからなのか、また誰からなのか僕は知らない。

 

 怪しく異なると書いて怪異。

 それとも、異なる怪しさと書いて怪異なのか。

 

 胡散臭いアロハシャツを着た恩人のおっさんから語源も意味も聞いた気がするけれど、受験勉強により脳の記憶が塗り替えられたのか、自他ともに認める少しばかり頭のよろしくない僕はすっかり忘れてしまった。

 けれど、問題はない。

 今重要なのはその恩人である忍野メメから聞かされた内容を思い出すことではなく、僕にとっての怪異とはなんなのかを考えることだ。

 

 考えて決めることだ。

 

 とは言うものの、それを決めたところで何があるというわけではない。実際的になにかが変わるわけではない。そもそも、僕は自身が怪異になりかけていたときでさえ、怪異が怪異と呼ばれる理由に興味があるわけではなかった。

 

 そこに怪異がいたとき、出会ってきた人々が怪異と関わっていたとき、成り行きで理解したり知識を得ようとしたりしてきたけれど、その時も僕は怪異という概念に興味があるわけではなかった。その時々の目の前にある事象を見定めようとしていたにすぎないのだ。

 

 吸血鬼がなんなのか知ろうとしたことはあっても、吸血鬼がなぜ怪異と呼ばれるようになったのか考えようとしたことはない。つまりは、木を見て森を見ずになっていたわけだ。

 

 しかし、今でもそれが悪いとは思っていない。怪異とは一つ一つに違いがあるのだ。敵意の有無、有ったとして何が理由でどういう風に害があるのか、またその対策はなんなのか、といったように、怪異はその都度意義も意味も変わってくる。

 

 全ての人が悪人ではないからといって、目の前の人が善人だと言い切れないように、全体を見ることで判断がしづらくなることも往々にしてあるのだ。

 

 だから、これはある意味僕のわがままに近い。これから先に向けてあの一年間に僕なりのケジメをつけようというわがままだ。

 

 始まりは高二の春休みに鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼旧キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードとの出会いだった。彼女と出会っていなければ、今こうして怪異の定義について考える機会すらなかったに違いない。

 

 彼女に出会う前の僕は、都市伝説には人並みの興味を抱くもののそれをどこか冷めた目で、娯楽の延長線上としてしか捉えられなかった。妖怪や神などがいるかもしれないという意識は頭の片隅に薄くあるだけで、それらを完全に信じるほどの熱心さも純真さも持ち合わせてはいなかった。

 

 僕は見えないものにたいして掘り下げようとか、調べようと思えるほどの興味がなかったのである。

 

 今でもそれについて人一倍考えているかと問われれば、はっきり考えているとは答えにくい。僕は僕なりに怪異と関わってきたから、全く関わったことのない人よりは心構えがあると言えるだろうけど、上には上がいるという言葉があるように、所詮僕は素人なりに一年間関わっただけの高校生に過ぎない。

 

 何年も怪異から人を助からせてきた忍野メメや、何年も怪異を利用して人を騙してきた不吉な詐欺師や、何でも知っているお姉さんや、何でも破壊するお姉さんのような専門家達には見聞や見識において逆立ちしても勝てないだろう。

 

 深くなく広くない僕の知識で、一先ずにせよ僕の怪異に対する思想を決めることは正しいとは言い切れない。だけど、僕は絶対ではない正しさでも抱くことには意味があるのをこの一年間で学んだ。

 

 だから、今回も僕は考える。いつものように、正しくない正しさを求めて。それを考えることは不毛なのかもしれない。僕の考えが決まったところで、結局僕のできることは限られている。その過程で僕の方針はあまり変わらないと思う。ただし、やろうと思えること、つまり手段はもしかしたら増えるかもしれない。

 

 この望まずして訪れてしまった怪しく異なる世界において、僕は呪霊と怪異の違いを決めなくちゃならない。それがたとえ、元の世界へ戻る方法を失う決断だったとしても僕は選んでいくだろう。

 

 それが高二の春休みから一年間、怪異に向かいあってきた僕なりの阿良々木暦の正しさなのだから。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 「なぁ、忍。つまりお前はここが僕たちのいた世界ではないって言いたいんだな?」

 

 「言いたいというよりは、そうとしか考えられないと言っておるのじゃ。我が主様よ」

 

 見渡す限り木、木、木と森があるばかりで、人っ子ひとりいる気配がしない山の中に僕たちはいた。

 

 僕は背中にちんまりとした金髪の美少女をおんぶしながら、焦りを隠しきれずにその少女へと話しかけた。彼女の名前は忍野忍。残念ながら、忍の字が2つもあるのに忍者とはなんの関係もない。ちなみに、旧キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードその人である。

 

 「忍者のう。儂も全力を出せれば影分身くらいはできるんじゃが」

 

 「えっ、マジで!? 嘘だろ、どうやるんだよ、教えてくれ! それって僕にもできるのか?!」

 

 「うぉっ、どんだけ食いついておるんじゃ。嘘じゃろお前様。まぁ、忍者はかっこいいから憧れる気持ちも分からんでもないがの…。でも、影分身ってそんなにしたいものなのかの? てっきりお前様は火遁とかが好きなのかと思っとったが」

 

 「そりゃそうだろ、何てったって影分身だぜ! まぁ、火遁もなかなかかっこいいけどさ。結局あれって火を使うんだろ。派手で威力が高くたって、街中や室内で使うには少し危なすぎるじゃないか。その点、影分身は使いやすいし安全だろ。戦闘時は身代わりにして『ハズレだ…』って攻撃を避けて返り討ちにしたり、普段時だって便利だぜ、一人は家事しながらもう一人は勉強したりとかな」

 

 「忍術に普段使いとか求めだしたら終わりな気がするんじゃが」

 

 「まぁ、そう言うなって。ほら、筋力だって戦うとき必要になるけど、日常で全く使わないってことはないだろ。本当にかっこいいものは普段使いもいいもんだよ」

 

 「そういうものかのぉ。儂にはかっこいいものに憧れているというよりは、近々始まる大学生活から逃避しているようにしか見えないがの」

 

 「うぐっ…」

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 僕こと、阿良々木暦は晴れて春から大学一年生になる。親からはアパートを借りた一人暮らしを勧められており、僕自身はうるさい妹達から離れられるということもあり、喜んでその勧めに従った。卒業式も終わり、大学生活が始まる前からその部屋に慣れておこうと、そこで暮らし始めて一週間も経つ。だが、そうして分かったことは、一人暮らしは夢に描く程には素晴らしくなく、案外寂しいという現実だった。

 

 寂しいのである。

 

 朝起きて見渡すと誰もいない。窓から入った日の光が照らすのは、6畳程のリビング兼寝室だ。そこには騒がしく僕を起こす妹達はおらず、あるのはただテレビとその前にあるローテーブルだけである。

 ベッドを見下ろすとやけに掛布団が重く感じる。何かが乗っているわけでもないのに。自分で捲る掛布団はこんなにも重かったのかと驚くばかりだ。

 学校もないので、家族どころか友人に会う機会もない。運転免許を取りに自動車学校に通いはするものの、教官以外は知人とすら呼べないほどのうっすい関わりしかない人達ばかりだ。

 あぁ、僕はもっと話したい。人と会話をしたい。欲を言うなら、かわいい女の子と話したい。もっと言うなら、女の子の体を遺憾なく嘗め回したい。昼となく夜となく女の子の甘い芳香を鼻腔いっぱいに堪能したい。願わくはそう、両手に余すことなく羽川のおっ○いを乗せていただければ…。

 なんて、孤独と情欲の間に僕の精神をサンドイッチしていると、一つの手紙が届いた。差出人は忍野メメ。僕の恩人のアロハシャツのおっさんである。

 

 「拝啓

 もうすぐ春だね。春と言えば始まりの季節と言うけれど、阿良々木くんは無事進学できたかな? まぁ、落ちたにせよ、受かったにせよ、君ならこの先一年を楽しく過ごせるだろうから心配はしてないさ。

 さて、本題に入ろう。阿良々木くんは長々と男の手紙なんか読んでも嬉しくないだろうしね。頼みごとがあるんだ。と言っても難しい話じゃない。この手紙に同封された札をある祠に貼ってきてほしいんだ。こう書くと、君はいつかの撫子ちゃんの件を思い出すのかな。あの時は大変だったらしいじゃないか。ほんと、阿良々木くんの周りでは苦労話が耐えないよね。というよりは阿良々木くんが苦労話に目がないのかな。はっはー、なんて冗談だよ。君のそのお節介のおかげで救われた人がいることも、君自身がそれに対して思うことがあるのも僕は知っている。だからこそ、僕は今の君を信用しているんだ。

 こんなことを頼めるのは君しかいない。だが、忙しいなら断ってくれてもいい。無理強いはしないよ。やってもらえるとちょっとだけ僕の肩の荷が下りるってだけの話さ。やってくれるのであればくれぐれも気をつけて、頼んだよ。

                         敬具

忍野メメ」

 

 久しぶりの恩人からの便りだ。頼りにされているという便りだ。嬉しくないと言えば嘘になるが、何故か不穏な気配がして素直には喜べなかった。

 そもそも、あの忍野メメは本人こそ認めないもののかなりのお人好しだ。なんだかんだで困っている人を放っておけず、手を貸してしまうくらいにはお人好しだ。

 そんな忍野は子どもを無関係の事件に巻き込むことを良しとしないはずなのだ。前回、神原と行った北白蛇神社の件だって依頼とは名ばかりで、半分は僕が撒いた種に対する予防策で、もう半分は神原に対する罰だった。

 つまりは、請負人の問題を依頼という形で解決させてくれたのだ。それ以外の依頼といえば、高三の夏休みに忍と行った別時間軸でのキスショットを無力化する依頼だ。あれは僕達にしかできないことだったから頼んでくれたのかもしれない。適材適所ということで託してくれただけかもしれない。

 でも、今回に関しては違う気がする。そう、気でしかないが、本当はあってほしくないが、あの時間軸で手紙に書かれた依頼が届いた時、忍野は暴走したキスショットを仕留めるために決死の特攻を行っていた。あの手紙にはこう書かれていた「最後の特攻をするつもりだけれど、多分無駄に終わるだろう」と、その上で「これは君たちにしかできない」と、僕達に後を託していた。

 それを踏まえて考えるのなら、今回書かれていない思いを前回の手紙と照らし合わせながら読み取るのなら、滅多に頼みごとをしない忍野が僕達に依頼をするということは、つまりはそうしなければいけない程に忍野がピンチだということなのだ。危機的状況に陥ってしまっているということなのだ。

 早計かもしれない。ただ単純に忙しく、僕でもできる簡単な依頼だから頼んでいるだけかもしれない。もしくは、僕を子ども扱いせず頼れる一人前と認めてくれたからかもしれない。

 だけど、もしかしたらという可能性もある。警戒するにこしたことはない。万全を期してことにあたった方がいい。とりあえずは何でも知っているお姉さんこと臥煙伊豆湖さんに連絡を取ろう。あの人なら忍野の近況やこの手紙に記されている祠についても詳しく教えてくれるはずだ。

 

 

 そう考えて僕は電話をかけた。が、予想に反して聞こえてきたのは『お掛けになった電話番号をお呼びしましたが、お出になりません』と、よくあるアナウンスだった。

 「私は何でも知っている」と豪語し、その発言に恥じぬとおりまるで未来予知でもしてるんじゃないかというくらい適切なタイミングでいつも現れるあのお姉さんに連絡ができないことがあるなんて。

 まぁ、今まで全くそういうことが無かったかと言われればそうでもない気もするけど。

 これも臥煙さんの計画のうちで、心配する必要はないのかもしれない。しかし、忍野の手紙の件も相まって、このタイミングの悪さには不気味さを感じずにはいられなかった。

 いい方向に考えることはできる。忍野は無事で、臥煙さんに連絡がつかないのは彼女の計算の内。そうだったらどれだけいいか。ただ、そう断言できるほどの判断材料がなかった。

 ならばここで前向きに捉えることは考えていると言えず、正しくは思い込みにすぎない。

 そうだ、羽川だ。世界に飛び立った我らが委員長、彼女なら僕の知らないことを教えてくれるはずだ。久しぶりに声も聞きたいしな、と思い、半ば意気揚々と電話を掛ける。が、『お掛けになった電話番号をお呼びしましたが、お出になりません』とまたもアナウンスが流れるばかりだった。

 どうしたことだろう。神の掲示が聞こえなくなってしまった。信仰心が足りないのかもしれない。

 

 「さっきから何をしておるんじゃ?」

 

 物音も立てず、いつの間にか忍は僕のベットに腰かけていた。彼女が僕の気づかぬ間に近くにいるのは珍しいことではない。

 

 「見てわからないか? 神との交信をはかっているんだよ。どうやら最近の僕の行いが悪かったせいか繋がりが弱くなっているらしくてさ。この程度で贖いにはならないかもしれないけど何もやらないよりはましだろ? だからこうやって祈っているんだ」

 

 僕は主神ハネカワと心を近づけるためにカーペットの上で正座をし、僕を囲むようにして御神物を並べた。いつかの神より賜りし純白の輝きを放つパンツ、これまた賜った深淵より出づる黒ニーソ、そして委員長によく似た美女が写されし淫靡な本。これらをもって我が神の三種の神器としトライアングルと並べ座を固定、我が神へと続く門を開くべく陣を構築する。

 

 「いやいやいや、嘘じゃろお前様。流石の儂もそれにはドン引きじゃ。心を近づけるどころか、離れていくじゃろうて」

 

 「大丈夫、僕を信じろ」

 

 「いや、かっこよく言っても無駄じゃぞ?」

 

 「悪い、違ったな。正しくは僕の信じる神を信じろ」

 

 「ああ、もう無理じゃ。この会話壊れておる」

 

 「閉じれ、閉じれ、閉じれ、閉じれーーーーーー」

 

 「詠唱するでない。というか、それ戦争が始まっちゃうやつじゃから!」

 

 「ーーー来たれ。天秤の守り手よ!!」

 

 眩い光が部屋を包み込んだような気がし、果たして願いは形となり一条の霊魂を呼び出してるように見え、辺りは普段とは違い神秘的な空気が漂い始めたらいいな。

 

 「もう最後感想じゃもん」

 

 「ーーーくそ、どうしたんだ。祈りは完璧だとういのにっ!」

 

 「…もうツッコまんよ、儂。相手できんからなこんなん」

 

 「やはり、御神物が足りなかったか。供物になるとも思えないけど、質より量を確保するか。よし、忍はここで待っててくれ。僕は少しパンツ狩りに行ってくるから」

 

 「待て、儂が悪かった! 紅葉狩りみたいに言っておるけどそれ犯罪じゃから! 供物とか言ってるけど、このままだとお前様がお巡りさんに差し出されちゃうから!」




ここまで読んでいただきありがとうございました!
拙作ではありますが、今後もボチボチ書いていこうと思います。
お気に入り、評価、感想などしていただけると、大変励みになります。よかったらお願いします。
次回はようやく山を下るのかな? 村にたどり着けたらいいんだけど…。

短編何読みたいですか? ※お気軽にお答えください!

  • 東京校女子が忍と茶会
  • 東京校女子が暦&忍と任務
  • 七海がしゃべくり007を見る
  • 東京校女子が忍とパジャマパーティー
  • 東京校男子が暦とウマ娘一期を視聴
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。