怪壊廻奇譚!   作:ぽっとでの急須屋

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予想以上に多くの人に読んでもらえたので早めに書きました!
評価、お気に入り、しおり、してくださった方々ありがとうございます!!
本当に嬉しい!!!
頑張って書きます!!!!

【前回のあらすじ】
暦と忍は呪術の世界へ旅立った。
何だか嫌な雰囲気……。


第2話 山の麓

 「ふむ、行くのは危険じゃろうが、行かないわけにもいかないの」

 

 「忍もそう思うか」

 

 忍は見事僕の阻止に成功し、ベッドの布団で僕を簀巻きにしたかと思えば、ドスンと音を立ててその上に座った。封印である。

 

 「罠の可能性はどれくらいだ?」

 

 「考えたところで無駄じゃろうが、まぁ十中八九そうじゃろうな。タイミングが悪すぎる、狙い済ましたかのようじゃ。というか、狙っておるじゃろうな。間違いなく」

 

 「それって、影縫さんみたいな専門家が僕たちを狙ってるってことか?」

 

 「分からん、何とも言いきれん。もし、仮にお前様の知人達が襲われたことによって連絡が取れないのだとしたら相手の規模が大きすぎる。無理ゲーじゃ。潔く首を差し出し泣いて詫びるか、海外に高跳びでもするかの」

 

 忍でも分からないことはあるんだなぁ、なんて小学生も欺くやと言わんばかりのアホな感想を抱きつつ、段々と事の次第を僕は理解し始めていた。

 しかし、まだ考えれば分かりそうなことは多そうだ。Yahooシノブクロで調べてみるか。

 

 「相手の目的はなんだろう…」

 

 「さあの、それも分からん。お前様かもしれないし、儂かもしれない。あるいは両方に用があるのかもしれないし、もしくは儂らを人質にするつもりかも」

 

 「ん…? でも、相手が強いんだったらそんな回りくどいことをしないで直接僕達を拐えばいいんじゃないのか?」

 

 「ふむ、まぁ確かにそうじゃな。となると、相手は儂らを自らの意思で動かさせたいのかもしれんの。もしくは儂らに暴れられると困るか」

 

 「というか、そもそもなんで手紙を出すのが忍野なんだ? 手紙を偽造して届けたにしろ、僕を誘きだしたいのなら他にやりようはあったんじゃないのか?」

 

 ピタッと、忍の動きが止まる。はて、何かおかしなことを言っただろうか?

 

 「………。他の方法が思い付くのか? お前様はお前様を誘き出す他のやりかたがあると言うのか?」

 

 「え?」

 

 何を言ってるんだ、忍は。何の事を言っている? そんなの何でも思い付くじゃないか。それこそ、ドラマや小説なんかでよくある。

 

 「例えば、誰かが人質にとられてるとかさ」

 

 「誰がじゃ?」

 

 「…?」

 

 誰が、だって? さっきから質問の意図が分からない。忍は何を聞こうとしているんだ? 僕に何を答えさせようとしている?

 誰が、なんて、そんなの分かりきっている。僕と親しい人物だ。人質にして意味があるのは、僕が命を懸けてでも助けに行きたいと思える人物じゃないといけないわけだからな。

 親しい人物、そんなの沢山いるさ。「人間強度が下がるから」と、人付き合いを避けていたのはちょうど一年前だぜ。そのあと色々あって僕は友達が増えたんだ。

 

 「思い付かない」

 

 思い付かない。

 

 親しい人物? 誰の事だ、それは? 命を懸けてでも助けに行きたいと思える人物? そんな人が沢山いるわけないだろう。

 僕は孤独だった。確かに、この一年間関わってきた人は沢山いる。でも、それらは忍野メメというただ一人を除いて、僕の心を動かすことのない有象無象に過ぎなかった。

 いてもいなくてもいいやつ。

 彼女達にとって僕はそういう印象を抱かれていただろうし、僕からしてみてもそうだった。

 友情なんてうわべだけだ。人付き合いなんて言葉だけ。中身は違う、心までは交わさない。僕は確固たる意思をもってそれを徹底してきた。それは忍の知るところだろう。

 

 「悪い、忍。よく考えたら忍野の手紙以外で僕を誘き出す方法なんてなかったな。考えなしに言って悪かったよ」

 

 忍は僕の考え足らずの発言に苛立ったのだろう。それなら謝ったほうがいい。わざとでなくても、人を不快にさせたら謝罪をするのが人の道理だ。しかし、忍は僕が頭を下げた後も眉をしかめたままだった。

 

 「まだ、そうなのか…」

 

 まだ…?

 疑問に思った僕が頭を上げると、忍の瞳が目に映った。金色のそれは、夜空の月のように美しく、そして冷たかった。吸血鬼の瞳は人を虜にする力があるというが、彼女の瞳はいつにもまして僕の心を引き付けた。どこか朧気で、見ておかなければ今にも霞となって消えてしまいそうだった。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 「こうしてみると結局、罠だったってことだよな」

 

 山の麓を目指して僕たちは歩いていた。忍はおんぶに飽きたようで、今度は僕にお姫様抱っこをさせていた。つまり、実質的に歩いているのは僕たちではなく、僕だけである。いくら忍の体重が軽いとは言え、普段の僕なら人を担ぎながら山道を下るのは骨が折れる。だが、僕は暴力沙汰を危惧して少し吸血鬼化していたので疲労の心配は無用だった。

 

 「ふーむ、まぁ結果から見ればそうだったのじゃろう。儂らが吸い込まれた平行世界へと続く穴は明らかに意図的に開けられたものじゃったし、それに吸い込まれる瞬間、儂は確かに何かの気配を感じた。正体までは掴めなかったがのう」

 

 僕は藪をかき分け、道なき道を歩み続ける。山の中で目印もないままに進むには忍耐が必要だった。歩けども歩けども木、木、木。代わり映えのしない光景にうんざりするが、進むより他はないため仕方がない。幸いなのはこれまた吸血鬼化した恩恵であまり腹が減らないことか。

 

 「何か引っ掛かる部分があるのか?」

 

 「結局、相手の目的が分からなかったじゃろ。儂らを平行世界に送って一体何がしたいのやら」

 

 「うーん、まぁ確かになぁ」

 

 平行世界に送られたからといって、僕たちに元の世界へ戻る方法がないわけではなかった。忍によると夏休みの時間旅行と同じで、大量の霊的エネルギーさえあればいつでも戻れるらしい。用意周到に僕たちを誘きだした相手がまさかその事を見落としているはずはない。だとすれば、相手は僕らの抹消が目的ではなく時間稼ぎが目的なのか? あるいはこの世界で僕たちに何かをさせたいのか。

 

 「まー、当面は人里を探すしかないな」

 

 忍が言うには、龍脈を利用するのも一つの手らしいが、あまりにも自然が旺盛だと霊的エネルギーも大地に取り込まれてしまって取り出しにくくなるんだとか。なので、僕たちは人里を見つけ祠を借り龍脈の力を取り出しやすくすると同時に、村人に話を聞くことでこの世界の情報を手に入れようと考えていた。

 

 「ん、なんだこの臭い…?」

 

 「ふむ、これは煙の臭いじゃな。どうやらようやく見つけたようじゃぞ」

 

 忍が指差す方向を見ると、確かに灰色の煙が上っていっているのが見える。よくよく眼を凝らすと、燃えているのは建物のようだ。他にも近くに住居だと思われる木造の建物がある。忍の言う通り、あれが目的の人里で間違いないようだ。

 

 「なぁ、僕の気のせいだったら悪いんだが、あれ燃えてないか?」

 

  「燃えておるのう。早く消さないと燃え移って山ごと燃えてしまいそうじゃ」

 

 「やばいよな?」

 

 「やばいのう」

 

 僕は山道を駆け出した。おいおい、冗談じゃないぞ。やっと見つけた村だって言うのに、目の前で燃えてなくなるなんて冗談じゃない。

 さっきまで視界を覆っていた木々が飛ぶようにして僕の後方へと消えていく。強引に走っているので、少なくない数の枝や草が僕の体を切っていく。だが、四の五の言っていられない。事態は一刻を争うのだ。どうせ、吸血鬼化しているのだから、傷なんて放っておけば勝手に治る。

 

 「我が主様よ、どうするんじゃ?」

 

 「決まってる。火を消すんだ」

 

 「ほう、まさかお主がそんな力を持っているとは知らなかったのう」

 

 「いや、忍に大量の水を具現化してもらう」

 

 忍野忍は阿良々木暦の瞳に固い意思があるのを見てとると、暦から見えない角度で微かに笑った。

 (まさか、具現化するのに霊的エネルギーを消費すればするほど、元の世界に戻るのが遅くなるのを知らないわけでもないだろうに。この世界の情報源を失いたくないからかの? いや、それだけじゃないじゃろう。……変わらぬ部分もあるのじゃな)

 

 「仕方がないの。であれば急ぐのじゃ!」

 

 「ああ!」




読んでいただきありがとうございました!
呪術の登場人物まだ出ません。
あと2.3話で出るはずなので、もうしばらくお待ちください。

○独自解釈ポイント
・龍脈のくだり

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