テイオー様と俺   作:黒色エンピツ

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三話:ちょっぴり成長?

 

 

 

 

昨日は記事の内容にびっくりしたけど、せんせーがウマ娘にわざと怪我させる訳ないよね。

 

「ふぁ〜……。」

 

うぅ、やっぱり引きずってるのかなぁ。考え過ぎてあんまり眠れなかったし……。

 

「ダメダメ、ボクがせんせーを元気にさせるのにボクが元気じゃなかったら意味無いよ。」

 

ペチペチと頬を叩く。よし!

前を向くとせんせーの後ろ姿が見えた。早速元気よくあいさつしてみよっと!

 

「やっほー!せんせー!」

 

「ああ、テイオーか。おはよう。」

 

「ぴぃっ!?」

 

 

 

 

「やっほー!せんせー!」

 

テイオーの元気な声が聞こえた。

昨日のシンボリルドルフとの話で少しはやる気が出たし、少し昔の俺みたいにしてみよう。

話す時は笑顔笑顔。スマーイル。

 

「ああ、テイオーか。おはよう。」

 

「ぴぃっ!?」

 

……?おかしい。昔は彼女も笑顔であいさつを返してくれていたんだが。

 

「どうした?」

 

「ど、どうしたって……せんせーこそ何かあった?変な物食べた?」

 

「昨日はさば味噌だ。」

 

「じゃ、じゃあいい事でもあった?」

 

「まあ、いい事と言えばいい事だな。」

 

この反応もしかして……。

 

「そんなにも、変か?」

 

「えっ!?あ、ちょ、ちょっとだけね?」

 

今のテイオーに聞いても仕方ない。スマホのカメラを起動させて自分を写す。

 

「……酷いな。」

 

見事に引き攣っている、思っていたのと違うな……。

 

「急にどうしたの?いつもはムッスーって顔なのに。」

 

「変な顔をするんじゃない。

ただ、ちょっとな。」

 

眉を指で吊り上げさせて俺の普段の顔を真似するテイオーの額を突く。

 

「ふ〜ん、そっか!……良かった。」

 

「……ん、何か言ったか?」

 

「なんでもない!じゃあまた後で!」

 

「ああ。」

 

教室に走って行くテイオーを見送る。

さてと、俺もやるか。

 

 

 

 

「せんせー来たよ〜、ってあれ?」

 

せんせーのトレーナー室に入ると返事がない。

おっかしいな〜、いつもなら返事してくれるんだけど。

 

「あれあれ〜?」

 

せんせーの机に紙が山積みになって見えなくなってる。もしかしてこの中とか?

 

「わ、珍しい。」

 

せんせーが机で寝てるや。居眠りしてるの初めて見たかも。

 

「……せんせー、起きてー。」

 

耳の近くで小さな声で呼んでみても起きない。

 

「……。」

 

誰も見てない、よね?

そっと手を取ってゆっくりと頭に乗せてみる。

 

「……えへっ。」

 

手を動かしちゃうとバレそうだからボクが頭を動かせば……。

 

「えへへっ!」

 

せんせーが撫でてくれてるみたい。なんだかポカポカしてきた。なんでだろ?

 

「……ん。」

 

ぴえっ、起きちゃった……!急いで戻さないと!

 

 

 

 

「お、おはよー、せんせー。ぐっすり寝てたね。前はボクに居眠りするなって言ってたクセに〜。」

 

「……うるさい、お前のは授業中だったからだ。」

 

しまった、テイオーのメニューやこれからの出走予定を考えていたら寝ていたみたいだ。久し振りにこんなに集中して物事に打ち込んだ。

起きるとテイオーがにやにやしながら俺を見ていた。走って来たのか少し顔が赤い。……本当に走って来たのか?

 

「テイオー。」

 

「なになに?どうし……ぴぇぇ……。」

 

ウマ娘がここに来るまで軽く走ったくらいで顔が赤くなるなんて事は早々ない。

まさか、熱でも出たのかと額に手を当てると変な鳴き声を上げて更に顔が赤くなった。

 

「熱いな……。もしかして熱があるのか?

今日はもう帰って布団で寝るんだ。いいな?」

 

「う、ううん!別に熱なんてないよ、大丈夫!ボクは無敵のテイオー様だから!」

 

無敵のテイオー様でも熱は出すだろう。

 

「とりあえず体温を測りなさい。ほら、体温計。」

 

引き出しから体温計を取り出して渡す。

 

「……これってせんせーの?」

 

「そうだ。ああ、そうか。」

 

俺もいい歳だし、テイオーも女の子だから気になるのか。

 

「消毒出来るものは無いし、水で洗うか保健室の体温計を使うか?」

 

「大丈夫、これで良いよ。」

 

「わかった。そうだ、測りながらで良いから聞いてくれ。」

 

メイクデビューの日程やテイオーの目指す三冠までの予定とトレーニング内容を質問や相談を交えながら話す。

途中でピピッと電子音が鳴る。

 

「……平熱だな。」

 

「ね?だから言ったじゃんか。心配性だな〜。」

 

気のせいだったのか?

 

「まあいい。でも、今日は軽いトレーニングにしよう。」

 

「大丈夫だって。」

 

「念の為だ。」

 

不満そうなテイオーの頭を撫でる。今焦ってトレーニングをして体調を崩したりしたら意味が無いからな。

 

「し、しょうがないな〜。」

 

不満気な顔が一転して満足気な顔をする。

……なるほど、こうすればいいのか。

 

「よし、じゃあ━━━━━「新堂!こいつを見てくれ!お前ならこいつの良さがわかるだろ!?」……なんですか、先輩。」

 

「チーム勧誘のチラシを作ったんだけど、ゴルシのやつが嫌そうな顔をするから二人にも見てもらおうと思ってな。」

 

「はあ。」

 

とりあえず見てみるかと差し出されたチラシを見る。

 

「……なんですか、このク……個性的な内容は。」

 

「ぷっくくっ……。」

 

ナウイってなんだよ、バッチグーも今使う人いないだろう。

 

「少なくとも俺はこのチラシを見て入りたいとは思いませんね。」

 

笑いを我慢し過ぎてむせたテイオーの背中を撫でる。なんで我慢しちゃったんだ。

 

「くっ……!絶対に来る!覚えてろよー!」

 

ろよーろよー……と声を響かせながら走って行った先輩の背中を眺める。

 

「……大丈夫か?」

 

「えほっえほっ……うん。ちょっと笑い過ぎただけっ!」

 

「んじゃ、行くか。」

 

……あれで入ってきたら先輩のチームイロモノにならないだろうか。心配だ。

 

 

 

 

「新メンバー入ったぞ!!」

 

「嘘ぉ!?」

 

扉を開けてドヤ顔で入ってきた先輩に驚く。

後ろでテイオーも「せんせーの大きな声久しぶりに聞いた……」と驚いていた。そんな事はないはずだ。

 

「二人ともあいさつ!こいつが俺の後輩で二人も世話になるだろうチーム『スクール』の新堂 和樹だ。」

 

「ダイワスカーレットよ!」

 

「ウオッカだ。よろしくな!」

 

「あ、ああ、よろしく。」

 

まとも……だと?

それにテイオーともかなり歳上の印象が……。

失礼を承知で頭と胸に目を向ける。続けてテイオーを見る。

 

「……なるほどな。」

 

いつもより優しい目をしてテイオーを撫でる。

 

「ねぇ、今どこ見たの?」

 

「胸と身長。」

 

撫でていない方の手を思い切り握られる。

 

「……ッ!?」

 

「ボクだって女の子なんだよっ!」

 

「……ウマ娘と人の力の差を考えろ。」

 

「ふんだ!」

 

拗ねてしまったテイオーはそのままに準備を始める。

 

「先輩、こっちがやってる間のテイオーの事頼みます。」

 

「えっ、えぇ〜……マジかよ。」

 

「嫌そうな顔しないでくださいよ。今日は授業の日なんだから仕方ないでしょう。」

 

「そういえばそうだったか……。くっそ、やるか。」

 

覚悟を決めて、テイオーに向かって飴をチラつかせて気を引く先輩にため息を吐く。

 

「それじゃあ、少し手伝ってくれ。」

 

「手伝う?」

 

ダイワスカーレットが疑問符を浮かべる。

 

「人数分の机は一人だと無駄に時間が掛かるからな。……何も聞いてないのか?」

 

先輩から説明されていないのだろうか?

すると、二人して首を横に振る。

 

「全く……あの人は。」

 

昔からああだったもんな。

 

「まあいい。とりあえず机運ぶから手伝ってくれ。」

 

 

 

 

「はい、ここまでで質問は?」

 

先週と同じくターフにホワイトボードと、今度は人数分三つの机を置いた。

 

「こら、ゴルシ、ウオッカまで寝るな。

スカーレットを見てみろ。真面目に取り組んで……はいるけどグロッキーか。」

 

周りを囲うウマ娘やトレーナーの数は少し減ったがまだまだ結構な数がいる。

小学校の頃から不評だったが……そんなにか?少し凹む。

質問も無いようだし、そろそろ片付けるかと思っていると少し離れた位置のウマ娘が手を挙げた。

 

「ん、そこの子。名前は?」

 

「え!?あ、えっと、ナイスネイチャです。

あの、アタシ、チームじゃないのに良いんですか……?」

 

「構わない。元々、スピカも別のチームだ。」

 

「じゃ、じゃあ、さっきの坂の所なんですけど。」

 

話をしながら思考を回す。

誰かが質問してこないかとは思っていたが、まさか本当にしてくるとは思わなかった。

ナイスネイチャか、少し注意しておこう。

 

「さて、他は?」

 

それから周りにいても質問していい事がわかったからか、何回か質問が飛んできた。

あまり質問をされるという事が無かったからか、少し掘り下げた事まで話してしまう。口が良く回る。

 

「それじゃあまた来週。」

 

ふふん、と機嫌が良い時のテイオーの様に鼻歌を歌いながら片付けを始めた。

 

 

 

 

「せんせー。」

 

片付けを終えてターフに戻ると少し気分が落ち込んだテイオーがいた。

 

「ん、テイオーか。」

 

耳が垂れ下がっているし、尻尾の動きも小さい。

 

「何かあったか?」

 

「……あの、ね。」

 

真剣な顔をするテイオーに目線を合わせるために少ししゃがむ。

 

「ああ、言ってみてくれ。俺に出来る事なら力になるから。」

 

「うん……せんせーって、胸が大きい人の方が好きなの?」

 

「……は?」

 

真剣な話じゃなかったのか。

 

「だっ、だってさっきスカーレットの胸がばっかり見てたじゃんか!」

 

「どうでもいい。そんなに大事な事なのか?」

 

何度も頷くテイオーに頭を抱える。

たったそれだけでこんなに深刻だったのか。

 

「先に言っておくが、俺は誰かと付き合った事は無い。ただ、そうだな。胸の大きさだけが女性の魅力じゃないって話はよく聞くぞ。」

 

テイオーも思春期の少女らしく体の悩みや恋愛的な悩みでもあるんだろうか。

これもトレーナーの仕事か。

 

「じゃあ、せんせーも?」

 

「ああ。」

 

「ふ〜ん……身長は高い方が良い?」

 

さっきからやけに俺の好みを聞いてくるな。

まあ、一番近くにいる異性が俺だからだろうな。

 

「それもあまり気にした事がないな。

これもよく聞くが、好きになった人が好みって言う人もいるそうだぞ。」

 

うんうんと頷く。

最初に見た時と比べて耳の動きが早くなった。

 

「そっか、じゃあそうすればいいんだ!」

 

「解決したみたいだな。聞きたい事はこれで全部か?」

 

「うん、ありがとうせんせー!早くトレーニング行こう!」

 

「ああ、先に行っててくれ。」

 

ターフの方に走って行くテイオーの背中を見つめる。

あいつも大人になってきたんだな。

 

 

 

 

「またメンバーが増えたぞ!」

 

「……先輩、またですか?」

 

「いや、違うんだって。今回はチラシじゃなくてスカウトだ!」

 

「まあ、いいですよ。

それで、新しい子は?」

 

「この二人だ。」

 

ん?片方見た事があるぞ。

 

「もしかしてサイレンススズカ?」

 

「え……?私の事、知っているんですか?」

 

「ああ、先日のレースもチェックしていたからな。ただ、妙に戦績が振るわなかった今までとじゃ動きが違っていたが、先輩が何かしたんですか?」

 

「俺は一言言っただけだよ。」

 

「それで優秀なウマ娘がスカウト出来たら世のトレーナーは必死でスカウトしてませんよ。

それでもう一人は?」

 

「スペシャルウィークです!よろしくお願いします!」

 

元気が良くて結構。物静かなサイレンススズカとは対称的だな。

 

「ん、よろしく。

俺は一応このチームのトレーナーの新堂 和樹。たまにスピカの練習も見ることがあるからよろしく。

こっちは担当のトウカイテイオーだ。」

 

「よろしくね〜。」

 

「あの〜、ところでお二人は何をしているんですか?」

 

「将棋だ。」

 

「……なんで?」

 

「今日がオフなのにテイオーが俺の所に来てな。トレーニングの代わりになる事を考えていたら、ゴルシがやっていたのを思い出したからやっている。」

 

「テイオー様は将棋の才能まであるぞよ〜。」

 

伊達メガネを掛けてホホホと笑う。と言うか、ぞよってなんだ。また変な影響受けて来たな?

 

「残念、これで詰みだ。」

 

「あっ!?」

 

何度も何度も将棋盤を見て呻く。

 

「うぅ〜!ズルだ!せんせーがズルしたんだ!」

 

「ズルなんてしてないって。」

 

机の下から潜り込んで懐に入ると軽い力で叩いてくる。

 

「鬱陶しい……ほら、キャラメルやるから怒るなよ。」

 

「あ〜ん。」

 

お前もう中学生だってのに……。

 

「はぁ。」

 

口にキャラメルを入れてやると嬉しそうに食べる。

 

「な、慣れているんですね。」

 

「ああ、まあ、付き合いもそれなりに長いからな。」

 

さっきまで不機嫌だった癖にもう膝の上でご機嫌だ。

 

「ねぇねぇ、せんせー。後でハチミー買って?」

 

甘えた声で頭を胸に乗せてくるが。

 

「ダメ。」

 

「えぇ〜!!?なんでなんで!?」

 

「自分で買いなさい。」

 

「だって〜結構高いんだよ?せんせーお願いっ!」

 

「……明日、授業中に寝ないか?」

 

「うん!」

 

「仕方ない、今日だけだぞ。」

 

「やったー!」

 

要領が良いのは知っているが、成績が落ちたら俺がテイオーの両親に顔向け出来ないからな。ハチミーで済むなら安いものか。

 

「……親子?」

 

「違う。」

 

俺はまだそんな歳じゃない……はずだ。

 

 

 

 

次の日、先輩から呼ばれてテイオーとターフに向かっていると変なものが見えた。

 

「……先輩。何やってるんですか?」

 

「ツイスターゲームだ。」

 

「……はぁ。」

 

頭痛を感じてキャラメルを口に入れる。

 

「せんせー!ボクもあれやりたい!」

 

「ああうん、後でやらせてもらったら良いんじゃないか。」

 

「せんせーもやろ?」

 

「なんで俺が……。」

 

「ね〜、いいでしょ〜。」

 

テイオーが手を取って左右に揺らす。このままじゃまともにトレーニングも出来ないか。

 

「一回だけだぞ?」

 

「うん!」

 

「お前、テイオーには甘いよな。」

 

「ガキを調子に乗らせるにはこのくらいが丁度いいんですよ。」

 

「うわ……。」

 

ドン引きしている先輩を横目にツイスターゲームが始まった。

 

 

 

 

「……おい、ゴルシ。」

 

「おー?どしたー?」

 

「お前、わざとやってるだろう?」

 

「ゴルシちゃんわっかんなーい!」

 

先輩からルーレットを受け取ったゴルシが指示を出していたが、どうにもおかしい。ツイスターゲームはもっと意味不明なポーズだったりするはずなんだが……。

 

「ぴっ、ぴえっ……ぴぇぇぇ……。」

 

いつの間にかブリッジする様に仰け反ったテイオーに覆い被さるような姿勢になっていた。

最初は普通だったんだがな。

テイオーも難しい姿勢だからか顔が赤くなっている。

 

「大丈夫か、テイオー。辛そうだ。」

 

「ぴっ!?え、えへへ、だ、大丈夫大丈夫。心配しないでよ!せんせーよりボクの方が体柔らかいんだから。」

 

……それもそうか。こいつ異様に体柔らかいからな。

 

「ん、次はこっちか。……難しいか。すまない、テイオー。」

 

ブリッジをしているテイオーの脇の下から手を伸ばす。……この姿勢は大丈夫なのだろうか。何か誤解が生まれそうだ。

 

「……。」

 

顔と声は聞こえないが、震えているという事は怒っているのだろうか。体が多少触れている程度だが、重いのか?

 

「な、なあ、あれってトレーニングって言っても破廉恥過ぎだよな?」

 

「あ、アタシに聞かないでよ。アタシだってよく分かってないんだから……。」

 

「おーし、次行っくぞー!」

 

「お、お母ちゃん、都会は進んでるべ……。」

 

「……走りたい。」

 

「何やってんだよ……。」

 

外野が色々言っている。こっちとしてもそろそろ終わりたい。

 

「先輩、これそろそろ終わっても良いですか?時間が結構過ぎてますし。」

 

「そうだな、あまりお前らのトレーニングの時間を奪うのも悪いしが。」

 

「おいおい、まだどっちも崩れてないんだからダメだ。あ、わざと崩れたりしたらゴルシちゃん特製罰ゲームだゾっ!」

 

「……だそうだ。」

 

「はぁ……。テイオー、まだ大丈夫か?」

 

「へぁっ!?う、うん!だだだ大丈夫だよ!なんなら後一日くらい出来るかな!」

 

「そ、そうか。」

 

まあ、テイオーが言うなら大丈夫なんだろうな。

 

「んじゃあ次は〜。」

 

それよりも、これは一体どれだけ続ければ効果があるのだろうか?

 

 

 

 







因子が……因子が……

ウマ娘二次創作の辛い所は年齢と学年と呼称。
それとアニメの時系列どこかに纏められてると楽なんですけどね。



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