プラモバトルマスターズ   作:幻宮 水希

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やっと時間が取れた――――!


第9話 決戦とそれから

「よし、これで準備完了」

 

「あんた、結構すごい事するわね……」

 

とりあえず、持っていた電子マネーをある程度使ってこの店のプラモデルを少し買い、中にPBMP入りのパテを入れながら大急ぎで組み立て、オレの支援機を作った。

 

「じゃあ、乗り込みますか」

 

そして飛びたとうとしたオレを、ヴェルヴィエッタが止める。その表情は、なぜか不安そうである。

 

「ねえ、ひとつ効いてもいいかしら?」

 

「何?」

 

「今からあなたが乗り込もうとしている相手は人間なのよ、しかも技術者。あなたが言ったところで、ジャミングか記憶消去されて終わりよ」

 

その言葉に、オレは少し引っかかった。

 

「それはつまり、オレは記憶転写された偽者だとか、そんなことが言いたいってわけか?」

 

「そうよ」

 

ここで物怖じせずに言うところが、彼女らしい。

 

「なんだ、なら大丈夫だよ。だって、オレ、さっき気になって一回試したんだよ、オレの意識が本物かどうか」

 

「え、どうやって……」

 

驚いた彼女に対して、オレは胸を張る。魔改造フィギュアと違って、この体は動きやすいから簡単にポージングが出来て、へたれる心配が無いが、いかんせん迫力が無い。

 

「近くの市民病院に近づくにつれ、オレの無線機器のタイムラグ、といってもかなり微妙な数値だったけど、確実に短くなっていたんだ。それを確かめようと、ラグが一番小さくなった病室を外からのぞいたら、何とびっくり、大掛かりなヘッドギアをつけたオレが要るではありませんか!」

 

ヴェルヴィエッタは、驚くと同時にあきれる。

 

「じゃ、何で中に入って自分を元に戻さなかったのよ」

 

「その理由もちゃんとある。あそこ、窓にPBMP吸収装置みたいなのがついてて、中に入れなかったんだよ、病院の看護師さんに頼んだけれど、オレ、身元確認できないし…………」

 

「なんか情けないわね」

 

彼女が脱力したような表情になる。結構表情豊かなんだよな、この子。

 

「まあとりあえず戦って、自白させることにする」

 

「勝算はあるの? 一応言っておくけど、生身の人間には勝てないわよ、違法な武装でも使わない限り」

 

その違法な武装は、オレの家にあるが、たぶん取り返すのは難しいだろう。

 

「それと、敵の正体が分かってないし……」

 

「そっちも大体見当が付いてる。いつぞやのときのオタク、アレがたぶん博士に見えてて、本物はたぶん風鳴翼にライドオンでもしていたんだろう、妹っぽかったのは多分、そいつが持っているアーンヴァル型。いつからオレがだまされていたのかは分からないが、多分最初からだろう」

 

よくよく思い返せば、オレがほとんど外出していないのに対して、二人はよく外出していた。モニターするためなんだろう。

 

行動範囲も、無意識的だが限定されてたし、いま大体の記憶が戻った状態で思い返してみれば、とんだモルモットだな。と自虐的にもなれる。

 

「オレは多分、そのオタクに利用されてこうなってる、それが邪魔されないってことは、そいつは多分オレの知り合いか、知り合いの知り合いだという考えがある。博士や妹が邪魔しなかったのは、多分うまいこと言われたんだと思う」

 

「そこでストップ! さっさとしないとその相手も対策してくるだろうし。早いとこ行って片付けましょう」

 

「ああ、そうだな」

 

 

そしてオレの家にたどり着く。

 

「今言うのもなんだけどさ、付いてきてくれてありがとな」

 

「え!? あ……。ああ~。ま。、良いって事よ、私もそろそろやばかったし……」

 

何がやばかったのか大体見当が付くが、そこにはノーコメントでいよう。

 

「じゃあ、乗り込もうか」

 

そういいながらすでに送り込んだビット(MK,3だけのオリジナル)で内側から窓を開けていて、鍵が開いたと同時に乗り込み、武装が入っているケースに近づこうとするが。

 

「やっと来たね。舞ってたよ」

 

本当に踊って舞っていた博士に見える人がその不思議な踊りを止め、そこからヴェールがはがれるようにホログラム(っぽいPBMP変装用キット)が剥離し、そのオタクになる。

 

「どうも、僕が君の友人、細川隼輝のお兄さん、細川俊太だ」

 

「博士にそんな兄さんがいたなんてな。もしかして引きこもりか?」

 

「いやいや、ちゃんっとB社に就職してるよ。まあ、弟はオレのこと隠したかったらしいけど」

 

「そんなオタクが兄だったら隠したくもなるわ。だってキャラTシャツ着てるし」

 

「そうか、それが原因だったのか。今後の参考にするよ」

 

そんなこんなの会話をしていると、ヴェルヴィエッタが割り込んできた。

 

「そんな話はいいから、さっさと私のマスターを元に戻しなさいよ!」

 

あ、忘れていた。

 

「いや、それは無理だ。だってキミ、本物じゃなさそうだし」

 

「な……………………」

 

オタクは愉快そうに笑い、オレを指差す。

 

「だってキミ、無線通信機器を外したまま自我を保っているんだもん。元々それで君の意識を転送していたって言うのに。今やキミは、キミの意識の残留体だ」

 

「そんな………」

 

「だから最後はせめて、その記憶ごとキミを抹消してあげるよ」

 

オタクは、手元からストラーフMK,2ラヴィーナフルアームズパッケージを、オレのフィギュア保管ケースから取り出す。

 

「この子でね」

 

彼の笑顔から悪意が感じられないことにも、打ちひしがれる。

 

「あんた! 私が出てった後にまた新しいの買ってたの!」

 

そんな彼女の怒号でさえ、今は心に響かない。

 

「畜生! こんなところで消えてたまるか!」

 

そしてオレは手を地面に置き、近くの隠しカタパルトから、この機体(アーンヴァルMK,3)の正式武装を呼び出す。このことはオタクは知らなかったらしく、少し驚く。

 

「ラムエアーブースト、起動。ヴェル! ラヴィを抑えておいてくれ!」

 

二人ともまだ正式な名前をつけていない(考えてもなかなか良いのが思いつかない)が、いちおうあだ名っぽい名称で呼んでみたが、二人ともちゃんとそれを認識したようで、ラヴィがこっちを抑えようとしたのを、ヴェルが止める。

 

ラムエアーブーストで勢いをつけて加速したオレは一直線にオタクに突進するが、それをアーンヴァル型の神姫に止められる。

 

「私のご主人様には指一本触れさせませんよ」

 

「じゃあ、それの処分、お願いね~」

 

「わっかりました!」

 

そして繰り広げられる連撃。

 

「なんか、思ったより強い」

 

「それは、あの時私が一人二役いていたからですよ」

 

「やっぱりか!」

 

「ええ!?」

 

オレの返しが予想外だったのか、一瞬気が緩んだところに、GNアームズの腕を小型化させた盾で腹を殴る。

 

「ごしゅじんさま~っ!」

 

そういいながら彼女はラヴィとヴェルが剣を対峙していたところに突っ込む。もちろん狙って送りつけた。

 

「えっ!」

 

ヴェルだけが驚き、ラヴィはそれを冷静に……、

 

「フンッ」

 

でかい日本刀で、ヴェルに向かって叩きつけた。

 

「「きゃあ~~っ!」」

 

そして壁まで飛ばされた両者がよろよろと起き上がりかけ、

 

「大丈夫ですかな?」

 

ビッグバイパーが突然変形し(そしてシャベッタアアアアアッ!)、それ以外の二人は倒れてしまった。

 

「私はご主人以外の機体を抑えていればいいんですな?」

 

「ああ、そうしてくれ」

 

そうして、問題は一個片付いた、残るは、

 

「ラヴィ、オマエだな」

 

「…………」

 

何もしゃべらない、というか目に光(っぽいPBMPエフェクト)がない。どここをいじられたってことか。

 

「ッ!」

 

ラヴィが無言で走りながらシールドガトリングを撃つ。

 

こちらはその威力を知っているので、全弾盾で受け止める。

 

相手が間合いに入ったところで、二種類の小型剣を抜き、外腕にガトリングと拳銃を構える。

 

生憎こっちにはサブアームが無いので、盾に仕組んであった爪を展開させ、それをレーザーでコーティングする。

 

「ギミック満載ってのがオレの流儀なんだよね」

 

爪の間に剣を挟み、急上昇。あいては剣を手から離すとともに大日本刀を取り、構える。

 

だが、それだけではオレの武装の火力は防ぎきれないだろう。

 

「ごめんな、ラヴィ」

 

武装の、アーンヴァルMK,2型の後ろに二本生えてるアレを改造したやつのほうを前に向け、GNアームズの主砲ギミックがあるためかなり威力があるレーザービームをラヴィに降らせる。一応盾などで防いだようだが、それすらも勢いで弾かれ、もろでダメージを受けてしまう。

 

「………………」 

 

「ヴェル、そろそろ意識が戻っただろう。オレがオタク野郎を倒すから、そこでラヴィのことでも見てやってくれ……」

 

「あなた……」

 

今からオレがする事は、ただの腹いせになってしまうだろう。

 

「でもせめて、この意識が残り続けるのなら……」

 

そして、ふと、思い出す。

 

『頼りになるのは、キミの一番……』

 

「大切なもの」

 

それが何かは、大体見当が付いている。オレは、その子が一番最初に迎えた神姫で、一番愛情を注いだ……、

 

「テンペスタ!」

 

彼女だけは特別な方法で保管してある。が、もしあのオタクがアレを持っているとしたら……。

 

「何が何でも! オレがオレじゃないとしても!」

 

彼女だけは守る! 頼りにはなるが、あの子にはまだ自我を入れていない。

 

入れるのが怖かったからだ。自分のイメージと違う性格が生まれてくるかもしれないし、ヴェルのように突然出て行っては困るし、もし、自分の興味が薄れていった時に、彼女が悲しんでしまうから。

 

「待て!!」

 

リビングで、テンペスタを保管してある鉄製のギミックケースを何とか壊そうとしていたオタク野郎にたいして、叫ぶ。

 

「ありゃりゃ。君が勝っちゃだめじゃないか。君の元の体は起きていないらしいけど、それは多分君がずっと起動しているからだろうし」

 

「うるさい! さっさとその手をどけろ!」

 

オレはあの時手に入れた違法武器のレーザーガンを構え、放つ。

 

「うわあああっ! 君! 下手したら死んじゃうじゃないか!」

 

「そんなの知るか!」

 

とりあえずその箱から手を離せ! という感じで追いかけると、オタク野郎は何も無いところで転び、箱がその手から離れる。

 

「ちょっと待って! 僕にそれを撃ったら、キミは犯罪者になるし、元の体に…………ああっ!!」

 

「そうだよ、オレはもうオレじゃない。だったら元のオレに何も問題は起きない」

 

「ヒイイイイィィッ!!」

 

そのトリガーを引こうとした瞬間、外側を警備させていたメイヴ(店で作った)から、侵入者との情報が入る。

 

「それを引いちゃいけない!」

 

「そうそうだ!」

 

「博士、キラ、どうしたんだよ……」

 

「オマエはまだオマエのままらしいぜ! なあ博士!」

 

その言葉を聞き、オレは攻撃の構えをやめ、振り返る。

 

「それ……………どういうことなんだ?」

 

「ああ、キミは一応科学者だから、念のための保険として、PBMPの心理リンク技術を開発していたんだよ。だから今のキミは、元の君の通りだ」

 

「な、なんだって――! 僕が勤めてる会社も、まだそんな技術が無いのに」

 

「動くなよ」

 

「ぐえっ」

 

キラがオタク野郎を組み伏せる、体を鍛えないとシュミレーションを実践に移せないと言っている分あって、結構強い。

 

「この野望に気づかなかったのは僕の落ち度だ。すまなかったな。でも大丈夫だ。夏休み旅行中の僕をキラが電話で呼び戻したからね」

 

「いやあ~。訳も無くオマエが変な事になったりしないからな」

 

「そうか、そうだったのか……、じゃあ、あの翼さんのfigmaは……」

 

「それは俺」とキラ。

 

「イレギュラーめ……、ぐわあっ」

 

キラはオタクにとって予想外の存在らしく、それに気づいたキラがいろいろと助けてくれたらしい。

 

「で、兄さん。って呼ぶのもほんとは嫌なんだけどな。まあ、それで、僕の親友にこんな事させた動機は何?」

 

そう言うと、まだ組み伏せられたままのオタクが、喋る。

 

「これは僕が会社で生き残るための一大プロジェクトだったのさ。人間とプラモデルのリアルライドオン、それを完成させることによってこの業界に革新を、僕と家族に大金をって考えだったのさ」

 

「確かにお金はある程度いるから反論できないけど、兄さん。なぜ自分で試さなかったんだ。なぜ彼に了承を得なったんだ!」

 

「それは……、やっぱ……、怖いだろ?」

 

「このコミュ障がッ!!」

 

そう言い、博士はオタクのみぞおちに蹴りを一発。オタクは悶絶している。

 

「あ……、あと、そうそう。この箱の中にあるテンペスタ……、隠しカメラで見ていたら、夜な夜な勝手に動き出していてね……、それも気になったんだ。おーい。もしよかったら、出て来てくれないかい?」

 

「え……」

 

オタクが喋った後、鉄製のケースが自動で開き(中からは開けれる構造にしておいた、もし何かあった時のために)、中からテンペスタが出てくる。

 

「オタクさんは見ていらしたんですね。私のこと」

 

それはオレにとって衝撃的だった。衝撃的過ぎた。

 

「え…………、だってオレ、PBMP入れてないし…………」

 

「ああ、それは……」

 

彼女はあまり表情が変わらないが、それでもこちらが気づく程度の笑顔となり、ときめかせる。

 

「私にも分かりません。あなたが私を購入してから半年たった時にはすでにこうなっていましたよ?」

 

まさか、そんなことが。とオタクもオレも博士も驚く。

 

「正に、愛の成せるワザ。ってか?」

 

「キラは黙って」

 

「ええ~」

 

そう言ったものの、内心ドキドキしている。

 

「愛……、か。まあ、そういうのも有るかもな」

 

妙に納得したところで、テンペスタが話を仕切る。

 

「マスター。あなたが私に残したものって覚えていますか?」

 

「え、何かあったっけ」

 

かなりあった気がするから特定しづらい。

 

「もし、今のような状況になったときのために、元に戻る方法です!」

 

「「「「そんなもの残してたのか! 俺(君)!」」」」

 

「はい、じゃあ長話は元の体に戻った後で、ゆっくり続きをしましょう」

 

そう言い彼女はオレに近づき、おでこにキスをした。

 

「えっ、そんな方法で………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んんっ」

 

やはりオレは、目論見どおりの病院の部屋にいた。

 

看護師さんが来て、博士や、キラが、テンペスタが来た。

 

そのあとはめんどくさい長話なので、割愛しよう。

 

あとそうそう、妹は友人と一緒に旅行したあと、いろいろ事件があって(大体オタク野郎のせい)帰るのを長引かせられたらしい。

 

あのオタク野郎は色々と犯罪を犯してはいたが、オレと博士の了承と、企業へ擬似的に発言できる権利、そして実際にお金を稼いだ実績から、罪に問うことはしなかった。

 

まあ、精一杯の謝罪は見物だったけどね。

 

そして現在(といっても、復活して4日立った程度だけなんだけど)

 

「よし、MK,3の改修完了。これでこのヘッドデバイス装着時だけオレがライドオンできるようになった」

 

「終わりましたね。マスター」

 

自分の部屋でコツコツやっていた作業が終わる。テンペスタも、色々と手伝ってくれた。彼女を調べたところ、すべてのパーツにPBMPの残留粒子が付着、融合しており、さらには体内に、今まで見たことも無い結晶体が存在した。

 

「不思議なこともあるもんだな」

 

「? どうしたんですかマスター」

 

「いや、ちょっと思い出しにやけ」

 

「もう、マスターったら」

 

神姫持ちの人って、ずっとこんな生活を送っているのか。という満足感が湧いてくる。

 

「マスター、一応私もいるのだが……」

 

「もう、私も少しはかまってよ!」

 

「すまんすまん、ラヴィ、ヴェル」

 

まだ仮称の段階だが、二人ともそのままでいいと思っているので、本名を考え付くのは当分先になりそうだ。

 

「じゃあ、みんなであのお店行って3対3でもやるか」

 

オレのプラモバトルは、まだこれからの様である。

 

 

 

 

 

 

 

 




やっと一区切り着いた。
と思ったらいつもの三倍ぐらいの量になってしまった!

これなら前のお話もそれなりの量は書かないといけないのでは……、とおもいましたが、暇なときにたまにやっておこうかなと思います。
ついでの情報として、翼さんが最後に言ったセリフ、アレは、キラの意識が元のに戻った後に、テンペスタが割り込んでああなっています。


さて、文の最後に書いたとおり、まだ続かせる予定です。まだ出してない機体がいっぱいありますしね。

感想とか書いてくれたら、遅れはしますがちゃんと返信します。
これからもこの作品をどうぞよろしくお願いします。


あと、一区切り付いたという事で、ほかのやつも書きたいな~。と思っています。
その案は、デュエマとか、オリジナルでは、人間型の植物と引きこもり少年作家の物語か、自分がかなり力を入れて書いているパワードスーツ系のバトル物があります。

何か気になるものがあったら。感想に書いてください。
それではまた、新しい更新とかが出来たそのときまで。
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