繋がれた親子の絆   作:マツケン-2

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プロローグ

「朧~、お疲れちゃ~ん~」

 

「あぁ、秋雲。お疲れ」

 

それはまだ大陸からやってきた見えない疫病神で世の中が大きく変わる直前の年末のことであった。

 

「いやぁ、対空戦がすんごいことになってたけど~。よくあそこまでできるねぇ~」

 

「これも日々の訓練の結果です。そういう秋雲も負けてないと思うけど?」

 

「まぁ、コーチがいいからねぇ~」

 

貿易の要所である東京湾、その玄関口を守っている横須賀鎮守府。その港の端で二人は先程終わった演習の結果を語り合っていた。

 

秋雲は舞鶴鎮守府所属ではあるが、オタクたちにはお馴染みの冬の祭典に参加するため、舞鶴鎮守府の提督で艦娘でもある敷島提督と掛け合い、その結果秋雲と秋雲のサークルの責任者である夕張はその年最後の仕事を共に、横須賀鎮守府への出張としてもらったのであった。こうして最短の労力でサークル参加する日に会場入りができるようになっていた。

 

なお、風雲も参加するのではあるが秘書艦の仕事があったので、当日に現地で合流する予定である。余談ではあるがいつも文句を言いつつも原稿を手伝ったり、わざわざ会場直行の深夜バスで会場入りする風雲の姿に巻雲は呆れ、夕雲はニヤニヤしているという。

 

そんな朧と秋雲の年内最後の仕事は総合演習であった。この演習は駆逐艦に求められるすべての任務が盛り込まれおり、船団護衛に始まり、対潜哨戒、対空戦闘、そして艦隊戦が連続的に続く大規模な演習である。その中で二人共非常に高い撃墜スコアを叩き出しており、防空の重要性が高まる中、二人の成績は頼りなるものであった。

 

しかし、

「でも、やっぱり敵わないね。秋月には・・・」

 

「まぁ~・・・、対空にステータスガン振りしてんだから。しゃーないしょぉ~」

 

「でも秋月だけに任せておくわけにも行かないから!」

 

「真面目ちゃんだね~、朧は」

 

それでも秋月の撃墜スコアには遠く及んでおらず、二人の顔はどこかスッキリとしていないものがあった。

二人は艦隊型駆逐艦である以上、対空、対潜よりも艦隊決戦、もっと言えば駆逐艦の本文とも言える夜戦に重点を置かれている。艦隊の防空を担うという任務が与えられている秋月型には敵うはずがなかった。それでも朧は対空の訓練を積み重ねていたのである。

 

「秋月に生きなきゃだめだって言ったんだから!。それに答えられないと!!」

 

「対空だけじゃないよ~、朧くん。対潜も意識しないと足元がおぼつかないよぉ~」

 

「うぅっ・・・。そ、それもしっかり訓練してますよ!。・・・多分」

 

秋雲の指摘通り、驚異なのは空だけではない。深海のハンターは夜、漆黒に染まった世界から突然襲ってくる。それは場合によっては空のハンターよリも厄介なものである。

 

「まっ、そっちは秋雲さんにまかせなさんな。しっかり影を残して帰れるようにするからさぁっ!」

 

「あ、秋雲だけにはやらせませんから!」

 

要領のいい(なぜそれを趣味の方で活かせないのだろうか・・・)秋雲は、秋月にはどうやっても敵わない対空よりも対潜の方に注力し、艦隊の仲間、そして自分の足元を守れるように志していた。もっとも本当に意識していたのは駆逐艦の本文である対艦能力であり、それが後の改二改装での対艦、対潜能力に結び付いてゆくのであった。

 

「そういやぁさぁ、秋月なんだけど~。ついにあの借金を完済したんだってさ」

 

「ついにですか・・・!」

 

「というか、とっくの昔に耳揃えて返してたらしんだけどぉ・・・。本人はまったく気づいていなくて、その分貯めに貯められた口座の額見てにひっくり変えたんだってw。物理的にw」

 

「・・・秋月って、真面目なんだけどどこか抜けてるよね・・・」

 

「(それを君がいうのかぁ~・・・)」

 

話題は代わり、秋月が背負っていた(と本人が勘違いしてた)多額の借金を完済した、という話になっていた。二人はこの借金を昔から案じており、朧はもとより秋雲もその話し方以上に安堵した表情をしていた。

 

「でも・・・、そんな貯金を秋月はどうしてゆくのでしょう・・・?。あの秋月が豪遊するはずもないし・・・」

 

「まぁ、「もしものために置いておきます!!」とは言いそうだよねぇ・・・。・・・でももう少しは使ったんだよねぇ」

 

「なんにですか?」

 

「両親のお墓だってさ・・・。まったく秋月らしいよ」

 

「そうですか・・・、よかったですね・・・」

 

「もう少し自分に使ってもいいとおもうだけどなぁ~。あんなに顔もスタイルもいいのさぁ!」

 

「それが秋月なんだから、秋雲だって解ってるでしょ」

 

「まぁ、いやってほどにねぇ・・・」

 

知らず知らずに溜め込まれた貯金の使い道に二人は呆れたような、安心したような表情で語り合っていた。

なぜそういう顔になったのか、それは3人が初めて艦娘訓練所で出会い、一緒の部屋で生活を始めた頃にまで遡ることができる。

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