「秋月さん・・・」
「ある程度はあり得るかなとは思っていたけど、まさかそこまでの爆弾を抱えていたとは・・・」
ようやく寮室に帰ってきた二人ではあったが、照月の話が頭から離れることはなかった。その時秋月は寮室にいなかった。おそらく日課のジョギングに行っているのだろう。
ただもくもと訓練に明け暮れている秋月。なぜ異常とも言えるほど訓練や勉強に打ち込んでいるのか。それは一刻も早く艦娘として海に出たいということである。
そしてなぜそこまでして早く海に出たいと考えているのか、なぜ人との付き合いを極力へらしているのか・・・。その答えは・・・、
「秋月は・・・、両親の元に行きたいのかな・・・」
「・・・だとしたら寂しいよね。でも私らからは何も言えないじゃん・・・。悔しいねぇ・・・」
両親の後を追いたい、そんな一心ではないだろうかという考えにたどり着いてしまうのであった。
今の秋月は世界や自分以外の人間に興味を持っていなかったのである。そして他人からの興味をそらそうと、自分から遠ざけようとしていたのである。
誰も悲しませることなく、ただひとり静かに消えたい、そんな思いしか今の秋月にはないのであろう・・・。そんな真実にたどり付いてしまったのである。
こうなってしまった以上朧も秋雲もなんとか救ってあげたいと思ってはいた。しかし幼馴染で訓練所に来る前から気に掛けていた照月ですら今の秋月を振り向かせることが出来なかったのである。ましてやまだ”他人”で”部外者”の二人がなにを言っても秋月には届かないであろうことは明白であった。
「・・・」
「・・・」
「(ガチャッ)」
「「!!」」
重苦しい空気が二人を支配している中、僅かに髪が濡れ、寝間着を着た秋月が帰ってきた。ジョギング帰りにシャワーを浴びたのであろうか、わずかに石鹸の匂いもしてきていた。
「・・・あ、秋月さん!。あのさぁ・・・」
「き、君の幼馴染がね、艦娘として来たんだってさぁ!。小山照恵ちゃんだって!」
「君の姉妹艦、照月として着任したって・・・」
「・・・、そうですか・・・」
秋月はそれだけを言うと、自分のベットに潜り、カーテンを閉めてしまった。
「・・・」
「・・・」
もはや二人にはかける言葉すら見つけることが出来なくなったのであった。
「・・・、秋月さん、どうしましょうか・・・」
「どうしたもなにも、ほっとけるわけないっしょ!」
「秋雲さんはなにかあるの?」
「・・・、ない・・・」
「・・・」
「「はぁ・・・」」
艦娘が海に出入りするために臨時で作られいた桟橋に腰掛けていた二人は、魂が出ていきそうなほど深い溜息をついていた。歳に似合わないほどの深い溜息ではあったが、二人の心情からすればそれでも浅いものであった。どんよりしている空もそれに拍車を掛けていた。
秋月の過去に触れて一週間、それだけの時間があっという間に過ぎてしまっていた。あれだけのことを知ってしまった以上、艦娘の矜持もあるのかほっけない、助けたいという気持ちが二人の中で日を追うごとに膨らんでいた。だがその一方で解決策は何も見つからない、そんな日々に嫌気を差していた。
あれからというもの二人、いや照月を含めた三人は秋月に色々な場面で話しかけてるものの、事務的に手短に交わされて終わってしまい、取り付く島すらなかったのである。
一方の秋月はその異常とも言える訓練への執着からの成果なのか、すでに訓練校の早期卒業と鎮守府への配置が近いという噂すら立ち始めていた。ここを出てしまえば、完全に自分たちが手を出せなくなってしまう。それから導かれる未来は火を見るよりも明らかであった。
「秋月さんには生きていてほしんだ・・・!」
「助かった命を粗末にするなんて、それこそ親不孝だもんねぇ・・・!」
三人は両親の後を追うかのように水面に沈む秋月を見たくない一心であった。
しかし解決策は見いだせない・・・。まさに手詰まり状態であった。
だが神様というものは3人を見捨てはしなかったのだろう。
「朧ちゃん!、秋雲ちゃん!!」
「うん?」
「どうしたぁ!?」
このタイミングで神様はあるものを再びもたらしたのである。
「はぁ、はぁ、今、両親から届いたんですけど・・・」
相当急いできたのであろう、なかなか息が落ち着かない照月にふたりは思わず立ち上がり歩み寄る二人。
「秋月姉の実家を、両親が代わりに片付けをしてきたら、こんなものが出てきたそうなんですよ」
手に抱えられたその大きな封筒、それを差し出された二人は中を覗く。そこに入っていたのはたくさんの手紙であった。
「やっぱり秋月姉は生きてないといけないんだよ!!」
封筒の中の手紙の内の一通を読んだ二人には、照月が何を言っているのかがはっきりと理解できた。この事態を打開する切り札がいきなり手元に舞い込んできたのである。
「・・・秋月さんに今すぐ見せよう!」
「はい!!」
一刻もはやく秋月に見せようと駆け出そうとする朧とそれについて行こうとする照月。
だが、
「・・・あ!。ちょ、ちょっとたんま!!」
「!」
「どうしたの秋雲さん!?」
秋雲だけは違っていた。
「秋月に見せる前にやることがある・・・!」
「「?」」
二人が何をしようとしているのか、秋雲も当然理解しており、自分もそうしたいのは山々であった。しかしそれを遮ってでもやらないといけないことがあると秋雲は確信していた。