繋がれた親子の絆   作:マツケン-2

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第六章、エピローグ

「(ずぅ・・・)えぇっと・・・、その・・・、す、すみませんでした!」

 

「こちらこそ、うまく手を差し出せなく・・・。ごめんなさい・・・」

 

「その手紙がなかったら、さすがの秋雲さんでもなかなか踏み出せなかったからねぇ・・・」

 

「汐里ちゃんが元気になったから、いいんですよ!」

 

「ほ、ほんとに・・・、すみません・・・」

 

鼻水をすする音ともに充血した目をして、申し訳無さそうに頭を下げる秋月に、3人の方が申し訳なってきていた。秋月のそばには先程読んでいたあの手紙の原本が丁寧に重ねて置かれていた。

 

秋月たちの狭い寮室の中心に、4人は円陣を組んで座っており、それぞれ僅かな湯気とシャンプーのいい匂いを纏っていた。

 

あのあとしきりに泣いて少し落ち着いた秋月達は、小雨とはいえ冷えてしまった体を温めるためにお風呂に入ったのであった。ただその時から秋月の行動には明確な変化が出ていた。

いつもなら脱衣所の隅で手早く脱ぎ、体を洗ったらすぐに脱衣所に戻ってしまっていたが、今回は4人が並んでゆっくり服を脱ぎ、体を洗って、また4人並んで湯船に体を委ねていたのである。湯船に浸かる秋月を初めて見た朧と秋雲はその変化に安心しきった表情をしたであった。

 

「まぁさぁ、せっかく人生に前向きのなったんだからさぁ、とりあえず人生の目標を決めない?。そんな細かくなくてもいいから、今後の方針というかこれだけはしたいこととか」

 

「これだけはしたいこと・・・」

 

「やっぱり目標があると、それだけ頑張れるますから。多分!」

 

「そうかぁ・・・」

 

「なにがしたいの?、汐里ちゃん?」

 

3人はこの時秋月、もとい汐里に大した意図もなく聞いていた。返答も年頃の女の子のような「とりあえずスイーツが食べたい」と言った超短期的な”目標”であろうと予想すており、それにツッコミを入れて笑い合うというのを想定していたのであった。

 

しかし秋月が出した答えは・・・、

「・・・、お家のローンを早く返したい、と思います」

であった。

 

「へぇっ!?・・・、い、家!?!?」

 

「そ、それはどうして?・・・」

 

あまりにも想定外の回答に朧と秋雲は困惑し、照月も「心当たりはあるけど・・・」という感じの引きつった表情をしていた。

「そういえば汐里ちゃんの家、去年建てた所だったよね・・・」

 

大層立派とは言えないと父親が言っていた秋月の家ではあったが、一生に一度といえる高い買い物であった以上、そのローンも相応のものであった。

 

「い、いや!、あれは何十年も掛けて返すものでしょ!。そんな急いで返さなくても!!」

 

「今は国がローンの肩代わりをしてもらってますから・・・。他の人に迷惑を掛けているので早く何とかしたいんですよ!」

 

「(さっきまで他の人のこと、なんにも考えていなかったじゃん・・・)」

 

心の底から言いたかったことをなんとか押し込んだ秋雲の顔は、訓練所に来てから一番モヤモヤしていた。

 

「それにお父さんの会社がどうなるかもわかりませんし・・・、それに備えて置きたいですね!」

 

「ま、まぁ秋月さんが前向きになったから、いいんでしょう。・・・多分」

 

「あははは・・・」

 

汐里の変化ぷりに3人は、色々な感情が入り混じった表情を浮かべる他なかったのであった。

 

 

 

「あれから随分たったけど、あの目標は達成できたんだね・・・」

 

「いやぁ・・・、家のローンは返したい!って、いくつなんだい君は、って感じだったけど。本当にやりきるとはねぇ・・・」

 

そして話は現在の時間軸に戻る。あのときのことは未だに思い出すたびに苦笑いを誘うものである。

 

「そういえば、秋雲はどうしてあの時手紙をコピーしようって言い出したの?」

 

「あぁ、まぁあくまでも個人的なこだわりなんだけど。あの時、この手紙をそのまま渡すとさグシャグシャになると思ってさぁ。遺品なんだからきれいに置いておきたいじゃんとかんじてさ」

 

「・・・、よく考えついたね、秋雲」

 

「絵描きという人種は、細かいことがどうしても気になってきちゃんだよ。自己満足だしねぇ・・・」

 

「いや、秋雲の考えは良かったと思う。大切な思い出だからね」

 

「そう言ってもらうとありがたいよ。・・・さて、そろそろ部屋に帰って明日の準備をしないと」

 

そういうと秋雲は立ち上がる。

 

「そういえば”コミケ”てのがあるんだよね、明日」

 

「そう!!。忘れもんすると風雲がうるさいからねぇ~」

 

「・・・あっ、頑張って!」

 

出張者用の部屋に戻ろうとする秋雲の背中に朧はそう言い、秋雲も振り返ることはしなかったが左手をあげて答えていた。

 

こうしたやり取りはすでに何年も続いている。こうしたことができなくなっている現在も形を変えて続いている。あの日小雨が降る中、育まれたかけがえのない”絆”は今後も変わることなく続いてゆくのだろう・・・。

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