それに、あの人にも知られてしまいました・・・
あれ?お姉様?先ほどまで私を追っかけていたのに・・・?
ひしぎはあの後、桃に疲れたから少し休憩するといい、自室まで
付き合ってもらい、彼女が生徒会業務に戻る事を確認した後、
居ない彼女に謝罪しながら気配を消し、セラフォルーの指定した
屋上へと向かった。
「おや、遅かったねー」
「お待たせしてすみません。まだ私は日中一人で行動しては駄目とクギを
刺されていましてね、抜け出すのに時間がかかりました」
既に屋上に居たセラフォルーの言葉に肩をすくめて答えるひしぎ。
「とりあえず、改めて自己紹介するね。私は4大魔王の一人、セラフォルー・レヴィアタンです」
「ひしぎです」
「よろしくね」
「ええ」
「──すみません、あまり時間がないので単刀直入に聞きます。
魔王である貴方が私に何の御用でしょうか?」
二人っきりで、盗聴の可能性がない事を確認した後、時間がないので話を切り出したひしぎ。
「うん、色々聞きたい事はあったんだけど──まず、ソーナちゃんを
守ってくれてありがとう」
魔王である前にソーナの姉なのだ、妹の危機を救ってくれた恩人に
まずはお礼がいいたかったのだ。
非公開だろうと魔王がただの人間に頭を下げるという事は、
悪魔界では許されない掟であり、通常は人間界に降りるというと監視の目があるのだが、
幸いにも今回は公開授業といって監視の目がなく人間界に降りる事ができる
日だったのだ。
そして彼女は行動を起こした。
今回の目的は、こちらの方が優先度が高かったのだ。
「魔王様が、ただの人間に対していいんですか?頭を下げて」
「良くないけど、私はソーナちゃんのお姉ちゃんだから、妹の危機を
救ってくれた恩人に頭を下げるのに、肩書きなんて関係ないよ」
「──そうですか」
一応彼女の肩書きを心配しての質問だったのだが、それは杞憂だった。
「貴方が居なければソーナちゃんは殺されていた。もちろんリアスちゃんも」
「確かに、力の差は歴然でしたね」
その言葉にセラフォルーは肯定すると、お互い無言になる
そして少し間をあけてセラフォルーが言葉を零した。
「少しだけ愚痴ってもいいかな?」
「ええ、私でよければ」
「あの時ね、本当ならすぐさま駆けつけたかったんだけど、魔王という肩書きが邪魔しちゃって
動けなかった──妹の危機に駆けつけることが出来ないなんて、
あの時本当に魔王の座を降りたいと思ったよ」
セラフォルーは手すりの背をもたれさせながら、顔を上げ空を見上げたまま
語り、静かにひしぎはそれを聴いている。
「・・・・」
「コカビエルクラスを相手にするのに、魔王以外だと最低でも上級悪魔クラスが
必要で、手が空いていてすぐさま救援に駆けつけてくれる悪魔を探すのに
時間がかかったの」
上級悪魔でもコカビエルの名を聞いて、答えを出し渋ったり、急用ができて
手が離せないといった輩は大勢いたのだ。
それ以外にも、シトリー家とグレモリー家の失脚を狙ってあえて出すといいながら
準備に時間をかけたりした悪魔貴族も居たのだと、語り、
それが、あの時救援が来るまでに掛かる時間の真相だった。
(なるほど・・・それで、アレだけの時間がかかったんですね
悪魔も一筋縄ではないようですね)
「魔王だからって一つ二つの家柄を贔屓せず、悪魔界全体の模範となるように
行動すべきって議員達に言われちゃった」
先ほどまでアレだけの騒ぎを起こした人物とは思えない程の雰囲気を
出しているセラフォルー。
「議員の中には、見捨てる選択肢を提示したおじいちゃんもいた。
救援が間に合わないのなら、そのままで──彼らがこちらに
攻め込むまで静観したほうがいいんじゃないかって・・・・」
起きてしまったものはしょうがないとして、下手に抵抗して長引かせるより
彼らが冥界に来るのを待てばいい、来るにしろ、来ないにしろ、堕天使側との
交渉のテーブルは有利に立つ事が出来ると考えての提示だったのだ。
あの時ただ誰一人として戦争の再会を望んでは居なかったが、
その後の悪魔側の立場の有利は確保しておきたかった考えである。
「あの時ほど私は魔王になったこと後悔した事はなかった・・・・
何もかも捨てて駆けつけたかった──でも、私はレヴィアタンの名を
受け継いだ責任は放棄は出来ない──もう、どうしていいか
分からない間に事件が終わっちゃったから」
だからこそ、セラフォルーは彼に会って「ありがとう」と伝えたかったのだ。
「──っと、ごめんなさい。行き成り愚痴を聞いてもらって」
空に向けていた視線をひしぎへと戻し、儚く微笑む。
立場上誰にも相談できず、ましてや妹にも心配かけたくなかった。
でも、目の前の彼ならば、事情を知っており尚且つ悪魔側と接点が
無かったから、つい零してしまったのだ。
「ただ、貴方にありがとうと云いたかっただけです」
その表情、言葉を聴いたひしぎは昔を思い出していた。
肩書きによって動く事を許されない歯がゆい思い、
立場上、公には動く事すら許されなかった事。
──だけと、あの者達と出会い、教えてもらったのだ。
「──そうですか。ならば私からも一つ。
貴方は貴方の思ったとおりに動けばいいと思います。肩書き?
そんなの所詮肩書きでしかありません。難しい事は考えずに、終わってから考えればいい」
そう、後悔するぐらいならば動けばいい、行動すればいい。
「私もそういう時期もありました──ですが、とある"バカ"に教えられたのです。
何を考え、どう生きようがそいつの自由であり、したいことして
何が悪い──とね」
死ぬ直前だったが、それでひしぎは救われたのだ。
「現状に安住して、案件を先延ばしにしている者に
ありません。ただただ堕ちていくだけ──と、その"バカ"は言ったんです」
あの者は常に未来を"先"を自身の確固たる信念で目指していた。
だからこそ、過去ばかり振り返っていた自分達は敗北したのだと
思い出した。
それを黙って聞いているセラフォルー。
「私自身はそれで救われました──ただ、気づくのは遅すぎたんですがね
だから、私のように後悔するより、貴方は自分の未来を自分で決め、
肩書きなどと云うモノに縛られずに自身の意思で動けばいいと思いますよ」
普段はこんなに語る事がないひしぎだが、ただ自分自身と同じような
後悔だけはしてほしくないと思ったから言葉を紡いだのだ。
「──うん、ありがとう」
優しく微笑むセラフォルー
(やはり似た姉妹ですね)
微笑む表情が瓜二つだったのだ。
「それはよかった」
その後は他愛もない雑談をはさみ、時間となったので
「これからもソーナちゃんの事よろしくおねがいします」
「ええ、微力ながらお手伝いします」
「じゃあ、最後に」
右手を差し出され、虚をつれたひしぎだが、優しく握り返した。
「また近いうちに会おうね」
「ええ、また」
セラフォルーはそういい残し、手を振りながら扉の向こうへ消えていった。
そしてその後、元気を取り戻したセラフォルーはソーナを見つけ、
再び逃走劇が再開となったのは余談である。
束の間の平穏を取り戻した彼女たち。
ソーナとその眷属達は普段どおり、学園が終わった後、擬似空間へ行き
ひしぎに修行を見てもらい
リアスは小猫以外の眷属達と、兄であるサーゼクスから今までの功績と力量を
認められ、旧校舎に封印されているリアスの眷属である『僧侶』
ギャスパー・ヴラディの説得に動いていた。
そして週末、約束の日を迎えた。
3勢力の会談場所となるのは、ここ駒王学園の新校舎に当たる職員会議室であり、
休日故に校舎には会場の設置を担当したソーナの眷属以外は
招待されている者はいなかった。
既に各勢力のトップとその護衛は宛がわれた休憩室で待機しており、
開始時間を待っていた。
外では、天使、堕天使、悪魔の軍勢が学園の周囲を完全に囲んでおり一触即発の雰囲気を
漂わせていた。
万が一、この会議で交渉が決裂した場合、即戦争になってもおかしくない位の
戦力がここ駒王町に集中していた。
そして、時間となりソーナは各陣営のトップを眷属達に先導させ案内させる。
悪魔側からは
『魔王』サーゼクス・ルシファー
『魔王』セラフォルー・レヴィアタン
『護衛兼給仕係』グレイフィア・ルキフグス
の三人が出席
天使側からは、事実上トップである
『四大熾天使』ミカエル
『四大熾天使』ガブリエル
『護衛』紫藤イリナ
の三人が出席
堕天使側からは
『総督』アザゼル
『白龍皇』ヴァーリ
の二人
そして、今回の会議を開催する事となった事件の当事者であり、
最重要禁則事項である『神の不在』を知った者達
リアス・グレモリーとその眷属達
ソーナ・シトリーとその眷属達のみである。
ちなみに、紫藤イリナはあの当時、コカビエルの攻撃により気を失い
事件解決まで治療の為ソーナに寝かされていた事もあり、『神の不在』を
知らなかったのだが、ゼノヴィアの異端扱いの真相をミカエルに問い詰め、
自身も当事者である事を主張し、教えられたのである。
ソーナの眷属達もサーゼクスから直々に説明があり参加資格を得たのだ。
ひしぎは興味が無いと云わんばかりに自室でゆったりと読書を続けていた。
この前の公開授業時に、図書館へ案内されたときに、大量の本を
借りたため修行がない日は読書で一日を潰しており、
充実した毎日を送っているのである。
その事実を知っているのはソーナと眷属達のみである。
参加メンバーが全員宛がわれたイスに座るのを確認した
サーゼクスが口を開いた。
「全員が揃った所で、会談参加の前提条件である『神の不在』を
認知しているとして話を進めようか──では、私から」
このままサーゼクスが話しようと続けようとした瞬間──
「──その会談、ワシも参加させてもらおうかの」
突如として扉が開かれ、全員の視線を釘付けにした。
そこには、古ぼけた帽子を被り、白いひげを生やしており、
その長さは床に着きそうなぐらいであり、質素なローブに身を包んだ
隻眼の老人だった。
そしてその後ろには白銀の鎧を身にまとい、銀髪ロングストレート、
鎧を纏っているが物静かそうな印象を与える女性が控えていた。
その姿を確認したサーゼクスは思わず立ち上がってしまった。
「オ、オーディン殿なぜここに?!」
流石の兄の驚きようにリアスとその眷属達は目を丸くしていた。
「なに、古き友にこの会談の成り行きを見守って欲しいと──、
万が一決裂した場合に、仲介に入るように頼まれてのぅ」
「はっ!遠路遥々ご苦労なこった!北の田舎のクソジジイは暇人なのか?」
思わぬ登場人物によりアサゼルも一瞬と惑ったが、普段の落ち着きを
取り戻し、皮肉げに言い放つ。
「ふん、あやつの頼みではなければ、こんな若造共の会議など来るものか。
それこそ、若い乙女を追いかけていたほうが有意義に時間が使えるわい」
「へっ、いってくれるぜ」
皮肉の応酬に、オーディンの背後に居た鎧を着た戦乙女──ヴァルキリーの
女性が仲裁にはいる。
「オーディン様、抑えてください。でなければ会談がはじまりません」
「お主もお堅いのぉ、これた単なる挨拶じゃよ。もっと肩の力を抜け
ロスヴァイセよ。そんなんだから、彼氏居ない暦=年齢なんじゃ」
オーディンの何気ない一言にロスヴァイセと呼ばれた戦乙女は目に涙を
貯めて泣き始めた。
「ど、どうせ私はお堅いですよぅーだ!ううぅ!」
その言葉にオーディンもため息をつき
「すまんの、こやつはわしの現付き人であるんじゃが、器量はあるんじゃが、
お堅くてのぉ、男一ついないのが現状じゃ──と、冗談を言いに来たのではない。
会談には基本的には口は出さん。だが、決裂や"万が一"の事が起こった場合のみ
出させてもらう──異論は認めん」
先ほどまでの冗談が嘘だと云わんばかりに鋭い眼光を3勢力のトップに
向けた。
誰の差し金かは分からないが、ただ言える事はこの会談が決裂した場合、
戦争になりかねない──それの抑止力になる為に派遣されて来たのだと
全員が認知した。
万が一オーディンを巻き込んだならば、アースガルズの神々をも
敵に回す事になる。
現状この3勢力は、他2勢力を相手しながらアースガルズの神々をも相手にするには
かなりの戦力不足であった。
その意味を理解したアザゼルとミカエルは
「俺は異論はねぇ」
「私もです」
「わかりました──では、会談を続けようか」
サーゼクスも了承した。
ソーナの指示の元、オーディンとロスヴァイセのイスを並べそこに二人が
座るのを確認した後会談は再開された。
会談は順調に進み、一誠以外の人物は会談の内容をよく理解しており、
1人だけ理解できず取り残される一誠に、リアスと朱乃がよく噛み砕きながら
小さな声で説明している。
その光景を見つつ、話はちゃんと聞いているものの心此処に在らずといった
ソーナが居た。
予想外の人物の登場、外は一触即発の雰囲気であり、自分たちとは比べものに
ならないぐらいの強固な結界が学園を覆っている。
そしてこの場に居ないひしぎ──コカビエルの一件で彼に目を付けた者は
少なからず居る、そして今日は接触できる絶好の機会なのだ。
周りは3種族の気配が充満しており、誰がどう動いても不思議ではなかった。
本当ならば近くに居て、安全を保障したかったが魔王である二人に
事件の説明を頼まれていたので、欠席はできず
すると、会話が一段落したサーゼクスがリアスとソーナの方に
向き直り
「さて、リアス、ソーナ君。そろそろ先日の事件について
説明をお願いする」
サーゼクスに促され、二人とその眷属達は立ち上がりこの間の
コカビエル戦の一部始終を話し始めた。
前半部分はリアスが説明し、後半部分をソーナが説明した。
その二人の言葉を真剣に聞く3勢力のトップとオーディン
そして、例のひしぎの話となると、オーディンの眉がほんの少し
動いたのをソーナは見逃さなかった。
(やはり──オーディン様を呼んだのはあの人しか居ない)
明らかに予定のない彼の登場には何か裏があると踏んでいたソーナは
高い確率でひしぎの件だと気づいており、それが確信に変わる。
内心そう思いつつも話を続けるソーナ。
「──以上が、我々二人とその眷属悪魔が関与した事件の報告です」
「ご苦労様、もう座って良いよ」
サーゼクスは二人にねぎらいの言葉をかけ、座るように促した。
そしてそのままアザゼルの方に向き直る
「さて、アザゼル。この報告を受けて、堕天使総督としての意見を聞きたい」
その言葉にアザゼルは不敵な笑みを浮べたまま答えた。
この事件はコカビエルとその部下による単独で引き起こした事、
そして、事態の収拾に『白龍皇』であるヴァーリを派遣。
想定外のことが起きたが、もしその人間が現れていなくとも、
コカビエルを捕縛し、組織の軍法会議によって決まっていた
『
永遠にでて来れなくした、と、説明する
するとミカエルは報告書に書いてあるアザゼル自身が大きい事を
起こしたくないとあったので、言葉での確認を取ると
「ああ、おれ自身、戦争に興味はねぇ──コカビエルの奴もそういってただろ?」
肩を竦めながらそう説明した。
そして、その後もアザゼルがなぜ『神器』を集めているのか問いただし、
それは個人の趣味も含まれているが、『神器』研究の為と返した。
その後も何回か言葉のやり取りをしていると
「あーもう、まどろっこしいなお前ら──ならよ、和平結ぼうぜ。
もともとそのつもりもあったんだろう?悪魔も天使も」
アザゼルの唐突の言葉に全員が驚き──ミカエルがそれに同意した。
元々天界側も今回の会談で二つの陣営に和平を提案するつもりだったと話、
サーゼクスもそれに同意した。
これ以上3戦力で争っていても、
それを避けるための和平であると主張した。
3勢力全ての同意が得られ、すぐさま各陣営の戦力や、兵力、勢力図に
ついて協議した。
そしてひと段落ついた所へ、ミカエルが一誠の方に振り向き話しかけた。
元々一誠はとある件で先にミカエルと会ったときに一つ疑問があると伝え
話がしたいと言い、ミカエルもそれに了承し、それが今となったのだ。
一誠は隣に居たアーシアに許可を取り、なぜアーシアが追放されなければ
ならなかったのかを質問した。
その質問に全員が「今更なにを・・?」という顔をしたが、
一誠は聞いておきたかったのだ。
──あれほど神を信じていた彼女を、教会から追放した理由を。
すると、ミカエルは真摯な態度で答えた。
神が消滅したあと、慈悲と加護と奇跡を司る『システム』だけが残り、
その『システム』はミカエル達すら手に余る代物で、神以外の人物では完全に
制御ができなかった。
そして、その『システム』に不具合が生じ、天界側の『
総動員して何とか起動させる事には成功したが、外部からの影響が
受けやすくなり、『システム』に悪影響を及ぼす物は教会から
遠ざける必要があったのだ。
そして、アーシアの持つ『
悪魔も堕天使も癒してしまう『神器』なので、信徒の中にそれがあるだけで
周囲の信仰に影響が出てしまう。
信者の信仰は天界の住む者の源であり、それに影響してしまう為
追放せざるえなかったのだ。
そして、他の例として『神の不在』を知ってしまった者。
『熾天使』と上位天使以外で『神の不在』を知った者が本部に近づくだけでも
悪影響がでるために、かなりの痛手であるが、ゼノヴィアも異端という
形になったと説明し。
自身達の不手際の為に、彼女たちに不幸を与えてしまったとミカエルは
謝罪した。
イリナの場合は『神の不在』を知る前にミカエルが直接『熾天使』の加護を与え
上級天使でないが、本部に戻っても『システム』に悪影響が出ない様になっている。
その答えに、アーシアとゼノヴィアは納得し、微笑を作っていた。
ミカエルに続きアザゼルもアーシアが転生悪魔になったのは、
自分の部下の暴走によりと、謝罪した。
そして、その後話を切り替えるようにアザゼルは一誠と
ヴァーリに意見を求めた。
「俺たち以外に世界に影響を及ぼすほどの力を思ったお前さん達二人は、
この世界をどうしたい?」
その問いにヴァーリはすぐ答えた
「俺は強い奴と戦えればいい──最強を目指すだけだ」
「赤龍帝は?」
「俺、頭悪いからどう答えたらいいか分かりませんが、正直、後輩を
見るのが精一杯の俺に世界がどうこう言われても、実感がわきません」
そう、一誠は新しくできた後輩、ギャスパーの面倒を見るだけで一杯一杯なのだ
他に考える余裕などなかった。
「なるほど、確かにお前さんはまだ悪魔に成り立てだから分からな事も理解できる
だが、お前の持っている力は世界を動かすほどの物なんだ。
だから、選択を決めてもらわないと俺たち、各勢力のトップが
動きづらいんだ」
そして恐ろしいぐらいに説明を噛み砕いたアザゼル
「まぁ、要するに戦争になれば主であるリアスを抱けない。
和平になるとリアスを抱ける──簡単だろ?」
一誠意味を理解した瞬間、即答した。
「和平でお願いします!」
と、理由が理由なだけに皆は呆れていたが、一誠のお陰で会談は和やかに成った。
「とまぁ伝説のドラゴン達の意見も聞いた事だし、最後の議題に移ろうか」
アザゼルはそう言い懐から一枚の写真を取り出し、テーブルの真ん中においた。
「・・・っ」
ソーナは一瞬息を呑み
(ついにきてしまった)
「正直、今日俺は和平の為に開いてもらった会談だが、この件もお前たちに
問いたかったんだ」
アザゼルはソーナの方に視線を向けながら言葉を続ける。
「この人間の詳細は不明であり、現状情報では名は「ひしぎ」と云い
この学園の自室を一つ借りて住んでる所までしか分からなかった。
こいつの強さは尋常じゃない──恐らくサーゼクス、お前と同等か
それ以上かと推測している」
その言葉に黙って聞くサーゼクスとセラフォルー
「こいつも世界のバランスを傾けるぐらいの力の持ち主だ。
だから、こいつの情報を知ってる限りで良いから
堕天使側にくれ」
「それは天界側としても同意見です」
アザゼルと同様にミカエルもひしぎの強さに危険を感じていたのだ。
二人の視線を浴びながら、サーゼクスは静かに口を開いた。
「──ふむ、正直私もこの人間の思想、思惑など一切把握していない。
唯一つだけ言えるのは、彼はここに住んでいるが悪魔側ではない事。
そして知っている情報はアザゼル、ミカエル、君たちと同じ程度しか
得ていないんだ──それに、この人間に関してはソーナ君に
一任され、僕達魔王でも干渉不可なんだよ」
「な・・・」
流石のアザゼルもサーゼクスの言葉に絶句した。
「じゃあ、なんだ。このまま核爆弾をこの学園で飼い続けるって事か?」
アザゼルの言葉の使い方にソーナは一瞬口を挟もうとしたが、
サーゼクスの言葉の方が早かった。
「ああ、言い方は好きじゃないが、そうなる──これは悪魔側の総意と取ってもらった方がいい」
元々自分自身も提案した件であったため、サーゼクス自身は
ソーナを支持する派なのだが、実際反対意見が多かった事により
複雑な心境だった。
「なんと・・・」
ミカエルさえも唖然としていた。
「ただ、何もしないって事はないよ──万が一の対策は考えてある」
その言葉に渋々引き下がる二人──すると、ソーナが立ち上がり
「サーゼクス様一つ宜しいでしょうか」
「ああ」
ソーナは一度だけ深呼吸する、緊張で震えている体に渇を入れ
(ここで、私が言わないと彼に迷惑がかかってしまう)
その一心で、3勢力のトップに言葉を投げかけた。
「彼は我々悪魔や天使、堕天使と敵対するつもりは無いと、明確に話していました」
「ほう」
「彼については悪魔側に出した同じ資料を皆様方にお配りします──椿姫」
「はい」
そういって予め用意されていたひしぎに関する報告書をソーナは
各勢力のトップに渡し簡単に説明した。
何らかの事故で転移してきて、帰る場所がないために自室を借りている事、
今回の件については恥ずかしい事なのだが、自身と弟子である小猫を守るために
コカビエルを討ったと言う事。
行く当てのない自分を保護してくれたお返しに自分達に修行の稽古を付けてくれると約束した事。
ひしぎの正体を伏せながら、彼がしてくれた事を明確に読み上げ、
彼らに説明した。
「ただ、身に降りかかる火の粉だけは振り払うと──そう伝えて欲しいと言われました」
「なるほどね──敵対はしないが、自身に手を出してくるなら容赦はしない
──と、言う意味で受け取っていいのかなシトリー嬢」
言葉を皆に分かり安いように言葉を砕き今一度確認を取るアザゼル
「はい、彼の事を私にお任せください──シトリー家の名にかけて
彼が我々に敵対しないように導きます」
ソーナはそのまま
「ソーナちゃん・・・・」
それを心配そうに見つめるセラフォルー
難しい顔を作るアザゼル、ミカエル、サーゼクス。
「個人的には賛成だが。堕天使側の総督としては反対だな──不確定要素が多すぎる」
「ええ、私もアザゼルと同じです」
アザゼルはそう答え、ミカエルも同意する。
個人的には賛同したいが、自分たちは組織の頭なのだ。
和平を結ぶにあたり、危険な芽は速めに摘みたいと各々が考えており
ひしぎが最重要危険人物に各勢力にピックアップされているの。
特に世界のバランスを変えてしまうほどの力の持ち主故に。
──すると、思わぬところからソーナに援護が来た。
「わしはソーナ嬢を支持しよう」
「オーディン様?」
「くそじじい・・・」
「オーディン殿・・・・」
今の今まで静観していたオーディンがこの状況に苛立ちを覚え
3勢力のトップを一喝した。
「若造共、こんないたいけな少女が頭を下げているんじゃぞ?
貴様らもっと器量を見せんか!それでもトップの器か!
家名を出してまで願い下げてるのに、なぜその想いを考えぬ!」
「し、しかしこの人物は危険なのですよ?とてもシトリー嬢
1人では荷が重過ぎると思うのですが」
ミカエルはオーディンの行き成りの一喝に驚きながら反論した。
確かに誰が聞いても、彼女1人では荷が重いと思う
その意見はリアス達も同意していた。
「オーディンの爺さんさっきも言った通り、何も俺たち個人の意思で、
反対を出している訳じゃない──彼女の命の安全と、各勢力を守るためだ」
「乙女心を分からぬ小童共──少なくともこやつはソーナ嬢を
守るためにコカビエルを討ったと報告書に書いてあるではないか!」
「ええ、ですが、それが本心なのかが我々にはわかりません」
尚も食い下がるミカエル
「ならば、こやつが敵に回った場合わしが先頭に立って貴様ら
わしの要求を飲まぬと言うならば、わしにも考えがある」
「オーディン様・・・」
なぜここまで自分自身を援護してくれるのかが、今一理解が
追いついていないソーナ
そして、今まで黙って聞いていたセラフォルーはあの時の事を
思い出していた。
(何を考え、何を決めるかは自分の自由。したい事をして何が悪いのか)
あのときの言葉一つ一つを思い出し。
(肩書きなど云うモノに縛られず、自分の意思で動けばいい──か
そっか、今がその時だよね──ひしぎさん)
胸に決意を抱いてセラフォルーが口を開いた。
「私からもお願いします。彼の事はソーナ・シトリーに任せてください!」
「えっ・・・・」
今までとは全然違った口調で言葉を発した彼女に、ソーナは勿論
全員が呆然としていた。
「まかせて。万が一の時は私も一緒に責任を取ってあげるから」
「お姉様・・・・?」
「大丈夫。私は貴方のお姉ちゃんなんだよ? 信じて」
いつになく真剣で優しい姉の心遣いに、心が温まり目に涙を溢れさすソーナ。
姉妹のやり取りを見たオーディンは一呼吸すると、口調を柔らかく発した。
「アザゼル、ミカエル、お主らはこれでもまだ反論するか?」
「はっ・・・わかったよ」
「ええ、乙女を泣かしてしまったら皆に怒られてしまいます」
「元より、僕は彼女の提案に賛同していましたし、悪魔側の総意ですから」
それぞれが彼女の主張を認め、ひしぎの事を一任した。
「ありがとうございます」
もう一度頭を下げるソーナ──そして、世界は止まった。
「──ソーナ?」
ぼんやりと部屋を明るくさせるランプの下で、壁に背もたれさせながら
ゆったりと読書をしていたひしぎに変な感覚が襲った。
「これは、時間停止のたぐいですか──」
窓の外を確認し、世界が"止まっている"と感じたひしぎはそう推測した。
そして、傍らにおいてあった『夜天』を腰にぶら下げると、その部屋から
姿をかき消した。
こんにちは、夜来華です。
休み中にがんばったので、早めに投稿できました。
ただ、今日から仕事が始まったので、どこまで維持できるかは・・・わかりません
妹を溺愛しているなら、これぐらいの行動はとった・・・はずと、
妄想をフル回転させながら書きました。
お陰で原作とはかなりかけ離れたセラフォルーになってしまいました。
そして、まさかのオーディンとロスヴァイセの登場です。
3勢力のトップを納得させるにはそれ相応の人物を用意しないと
いけなかった事もあるのですが、今後の話しの展開により
早期出演が決まっていたお二人です。
かなり原作乖離になってきましたが、これからも頑張ります。
感想、一言頂けたら、とっても嬉しいです・・・!