なるほど──何と無くは予想していましたが、
この魔の気配を持つ彼女達は本物の悪魔だったのですね。
まぁ、私自身もある意味"神"の血を引いているので驚きはしませんが──
あの日約束した通り5日後眷属たちに予定を空けさせ、リアスとソーナはお互いの眷属の
顔合わせを実行した。
リアスに授業が終わり次第すぐに部室に来るようにと言い渡された一誠は授業が終わると、
アーシアを連れすぐに部室へ訪れた。
「遅れてすみません!」
時計を見たら、予定より少し遅れ気味だったので一誠は扉を開口一番に謝罪した。
「大丈夫よイッセーまだ、彼女達は着ていないから」
リアスの言葉を聞いて部室内を見渡すと、紅茶の準備をしている朱乃、
ソファーでお菓子を食べて寛いでいる小猫、窓際で心あらずといった表情の祐斗、
そして部長であるリアスは自身の机で朱乃に入れて貰った紅茶を優雅に
楽しんでいた。
「よかった、ですー」
その言葉に、一緒に走ってきたアーシアはその場にへたり込み、息を整え始めた。
その光景を見た朱乃は微笑みながら、ソファー近くにあるテーブルに二人の分の
紅茶を置いた。
「あらあら、アーシアちゃん。そんな所に座っては服が汚れますわ──
さぁ、こちらであの人たちが来るまでゆっくりしてくださいね。
イッセー君もどうぞ」
朱乃に促され一誠はへたり込んでいたアーシアに手を貸し、立ち上がらせ
二人はソファーに座った。
「イッセー先輩、祐斗先輩に何かしたんですか?」
お菓子を食べていた小猫が一誠に小声で話しかけてきた。
「ええ?! ひどいょ小猫ちゃん。俺、何もしてないからね!?」
祐斗の様子がここ最近おかしい事に皆疑問を感じていた。
いつも、笑顔を絶やさず気配りの出来る彼だが、ここ数日間まったくと
言っていいほど無表情で、何かを考えている様子だった。
そして、みな心当たりが無く、直接本人に聞いてもはぐらかされるだけであった。
「──本当ですか?」
マスコットキャラの小猫にジト目で見られると、新たな価値観が湧き上がりそうになるが
必死に押しとどめる一誠。
「本当だよ!信じてよ、小猫ちゃん!」
──これ以上その目で見つめられると
「──わかりました」
そう言って小猫はお菓子に視線を戻した。
漸く視線から逃れた一誠は溢れ出た冷や汗をぬぐっていた。
(ふぅ──あぶなかった・・・!あれ以上見つめられたら、何か新しい価値観が
開けそうな勢いだった・・・・!!)
自身を決してロリコンでは無いと否定しながら、あらぶる価値観を治めに入り、
気を紛らわす為、祐斗の様子を観察し始めながら、ここ数日間の彼の行動を
思い出してみる。
(確か、うちに来てアルバム見てから雰囲気がおかしくなった気がするなー)
数日前に旧校舎が大掃除の為、一時部室が使えなくなり、一誠の家で
部活会議をする事になり、みんなで集まったのだ。
そして、会議の途中に一誠の母親が幼い頃の一誠のアルバムを持って
登場、勿論会議は中断し、みんなでアルバム鑑賞会を急遽開いたのだ。
一誠の今までの成長が赤裸々に皆に知られ、可愛らしい頃の写真で
リアスとアーシアは興奮状態に陥り、裕斗もすごく楽しそうに鑑賞していた。
何枚もめくっていく内に、一つの写真が裕斗の視線を釘付けにしたのだ。
それは一誠が幼稚園児の頃の写真で、当時の近所に住んでいて仲良かった
その子と一誠はゲームを片手で持ちながらカメラへポーズをとっており、
背景には暖炉と、古ぼけた西洋の剣が立て掛けてあったり、
模造品だとおもうが、写真を見る限りでも本物のような気がするほどの
品物であった。
「これに見覚えは?」
いつに無く真剣な表情を浮かべた裕斗、いつもと若干声のトーンが下がっていて
「すまん、ガキの頃すぎて覚えてない」
「なるほど・・・こんな事もあるんだね。思いもかけないこんな場所で
見かけるなんて」
苦笑する祐斗の表情を見た一誠は背筋が悪寒に支配されるほど、
彼の表情は憎悪に彩られた笑みだったのだ。
「これはね、聖剣なんだよ──」
そして、その時から裕斗の様子が何かに取り付かれたようにおかしくなった。
その事を思い出した一誠は、裕斗に聞こえないように小猫に話した。
「小猫ちゃん、当たりかどうかは分からないけど、この間うちでアルバム見たでしょ?」
「はい」
一誠の問いに頷く小猫。
「その時、一枚の写真に確か──本物かどうか分からないけど、聖剣が映っていて
それを見た瞬間にああなった気がするんだ」
「──聖剣ですか。でも、どうしてイッセー先輩の子供の頃の写真にそれが?」
その問いはもっともなのだが、覚えてない一誠。
「すまん、友達の家であった──と、云う事ぐらいしか覚えてないんだ」
「──肝心な所は覚えてないんですね」
トゲあるツッコミに崩れ落ちる一誠。
(でも、年下からコウ、辛辣な言葉が貰えると──何と言うか、
いけない気持ちになりそうっ!)
何事にも前向きで考える一誠は、逞しく、そして変な方向に生きていた。
その後祐斗の様子を気にしつつも雑談していると、ノックが響いた。
「どうぞ」
リアスが返事をすると
「失礼します」
扉から入ってきたのは、ソーナとその眷属たち──全て生徒会の生徒であり、
それを見て立ち上がる一誠達。
「ごきげんようリアス、皆さん」
「ごきげんようソーナ、遅かったわね」
「ええ、ちょっと球技大会の不備を調整していたら遅くなってしまったの
ごめんなさい」
生徒会役員である彼女達は、球技大会運営のサポートも兼用しているので
備品に少し不備が出てしまい、それの調査に奔走していて遅れたのだった。
「いいわ、この時期の生徒会も大変なのだから──さぁ、時間もあまりないから
さっさと始めましょうか」
「ええ」
ソーナはそういうと後ろに控えていた、匙の方に振り向き頷くと、
彼はソーナを追い越し前に出た。
それを見た一誠はリアスの方に向きなおり──
「部長──これは一体?」
「あれ?リアスさんはもしかして俺たちのことをまだ話してなかったんですか?」
その疑問に答えたのは匙であった。
「ごめんなさいね、驚かせようと思って会わせたい来客が来る──
としか説明してなかったの。」
してやったりの笑顔を作るリアスに、匙は苦笑いする。
「なら、私から説明させていただくと、お互い新しい眷属が増えたので
その顔合わせを──と、思って」
「眷属って──まさか?」
ソーナの言葉に驚く一誠、目の前に居る彼女達は同じ悪魔だと知らなかったのだ。
そしてその疑問に隣に来ていた朱乃が説明してくれた。
「この方の本当の名前は、ソーナ・シトリー様。上級悪魔「元72柱」シトリー家の
次期当主様ですわ。ちなみに、この学校はグレモリー家が実権を握っていますが、
『表』、いわば日中は彼女たち──シトリー家に支配を一任しておりますの」
その言葉に一誠は絶句し、
「もしかして、学園に他の悪魔もいてるんですか?!」
一誠は悪魔はリアスとその部員のみだと思っていたので、驚きの表情を
作っており、それを見た匙が付け加えた。
「お前が知らないだけで、他にもこの学園にはもっといてるんだ。
同じ悪魔なに気づかなかったのか?」
やれやれといった感じで答える匙に、ソーナが止めた。
「匙、私達は基本お互いに干渉しない事になっているの。兵藤君が知らないのは
当然です」
「会長と俺達が日中動き回ってるからこそ、平和で安定した学園生活を
送れるんだ。その事だけは覚えておいてくれ」
悪魔は外敵が多く、この学園も例外なく狙われているが彼女たちが日中の警備や、
不確定要素を予め排除しているからこそ生徒は安全な学園生活を送れているのだ。
匙は、その生徒会の仕事に誇りをもってしてるのだが──ただ、その事を
他の悪魔達にも知ってほしかったのだ。
感謝や、お礼が欲しいわけで言ったのではなく、ただ
と、言うことを。
「ああ、ちなみにお前名前は?」
「匙元士郎、お前と同じ二年生で会長の『
変態三人組で有名だから知っている、兵藤一誠。その、なんだ──
同じ『兵士』として、よろしく頼む。」
そう言って匙は一誠に右手を差し出した、
予めソーナは、余り言い印象を持ってないと聞いていので、自分の使った兵士の駒の数と
一誠の使った駒の数と、フェニックス戦での彼の活躍ぶり、一騎打ちで勝利した事を
予め聞かせ、恥をかくようなマネはしないように、紳士的な態度で
挨拶するようにと匙に伝えてたのだ。
そして、駒の数は違えど同じ『兵士』で『王』を圧倒した事を聞いた彼は
変態三人衆と呼ばれて居た一誠を嫌悪していたがその話を聞いて見直したのだ。
「よろしく頼む!」
ガッチリと握手を交わす二人、その光景を見てリアスとソーナは頷きあう。
そして、匙は一誠のもう隣に来ていたアーシアに向き直り、
「アーシアさんもよろしくお願いします」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。」
屈託の無い笑顔で答えるアーシア。
「兵藤一誠君、アーシア・アルジェントさん。うちの眷属は貴方達より実績が無いので
もし宜しければ、同じ悪魔同士仲良くしてあげてください」
微笑みながらソーナは二人にお願いをすると、二人は笑顔で頷いた。
「後、一応忠告しておきますが、私はこの学園を愛しています。
ですから、学園の平和を乱す人間、悪魔、たとえ親しい友、自身の眷属でも許しません。
"力"を持ったものは責任のある行動をお願いします」
と、今居る3人の新人悪魔に向けられた言葉である。
「これで、お互い新人の紹介は十分でしょう。そろそろ私は別件があるので
失礼します」
ソーナはそう言って身を翻し、扉の方へ歩いていく。
「会長──いえ、ソーナ・シトリー様、これからもよろしくお願いします!」
「よろしくお願いします!」
グレモリー眷属としての、リアスの友人であり上級悪魔への礼儀を忘れずに
挨拶をする一誠とアーシア。
「ええ、こちらこそよろしくお願いします」
その言葉にもう一度微笑みを返したソーナは眷属を連れ扉の向こうへ行き、
「球技大会楽しみね、リアス」
「ええ、今年こそ勝たしてもらうわよ」
その応酬を聞き、本当に仲のいい二人なんだと、グレモリー眷属、シトリー眷属の
皆が感じた感想である。
そうして彼女たちの姿が消えたのを確認すると、リアスは二人に微笑みながら言った。
「イッセー、アーシア、匙君と仲良くね。同じ学び舎で過ごすもの同士、
喧嘩はダメよ?」
「はい!」
二人は良い返事をし、
(俺たち以外に悪魔がいたなんて──まだまだ、この学園には秘密がありそうだ)
と、一誠は思ったである。
空は雲ひとつ無い青空で、天候に恵まれ絶好のイベント日和になり、
この日の為に練習し、成果を出すために待ちに待った球技大会が開催された。
そして球技大会当日、ソーナの提案により現代知識をより知って貰う為、
ひしぎも校内、屋上から観戦できるように、学園長に申請し、必ず監視は一人つける条件で
許可された。
最初は彼女たちの邪魔、忙しさを増やしてしまうため辞退しようと考えていた
ひしぎだが、ソーナの度重なる説得に漸く折れ、その厚意を受けることにした。
流石に校内から全体は見れないので、今日は球技大会の為立ち入り禁止にされている
屋上を選び、そこに陣取った。
屋上も毎日解放されている為、事務員さんによる清掃が行き届いており
綺麗な花を咲かせている花壇や、休憩用のベンチもあり、十分に
くつろげる空間であった。
松葉杖で一階から屋上までリハビリがてらゆっくりと登り、一応ソーナは運営の方に
顔を出さないといけないので不在だったが、代わりに副会長である椿姫が
彼の監視兼、リハビリのサポートを担当していた。
「──お忙しい中、手を煩わせてしまいすみません」
見るからに忙しそうな彼女たちに申し訳なくおもうひしぎ
「いえ、私達は今回ただのサポート要員ですのでお気に為さらずに、それに
貴方のリハビリ、お世話は仕事の一環なので。」
ソーナと椿姫は、手が空いているほうが彼の監視兼リハビリを担当することに決め、
二人同時に仕事が出来た場合、ソーナは会長なので業務を優先し、副会会長の
椿姫の仕事は、他の眷属たち頼み、回している。
実際男でもあったらもっと回しやすくなるのだが、もし万が一の事が
起こってしまったら、生徒会唯一の男である匙にはまだ荷が重過ぎると判断し、
他の眷属も然り、故に対処できるソーナと椿姫でしているのだ。
そして、ひしぎが見ているなか、校庭でソーナによる開会式の挨拶が始まり、
盛大に球技大会が開始された。
各種目は時間差で行われると説明があり、出る選手は出場準備、出ない生徒は応援準備を
し始め、各自陣へ戻っていった。
「みなさん気合が入ってますね」
眼下の生徒の気合、テンションを見て苦笑しながらひしぎは呟き、
壬生一族では、水舞台ほか、子供達のみで強さを競い合う舞台を思い出していた。
「ええ、みんなこの日の為に楽しみに練習してきたので──これをどうぞ」
ベンチに置いていた荷物から、給すを取り出しお茶をコップに入れ、ひしぎに差し出す。
「ありがとうございます」
それを受け取り、少しづつ飲みながら視線をグラウンドへ向けると、見知った少女が居た。
──小猫である。
数名の仲間と円陣を組んで何かしていた。
「あれは、なんていう競技なんですか?」
「あそこで開始されるの学年別のドッジボールと云って、各決められた枠内に入り、
ボールを枠内の人に当てる競技です。ちなみに今は作戦会議をしているのでしょう」
椿姫の云ったとおり、円陣を組んでいた小猫たちは枠に入り、審判の声と共に
ボールの投げあい、応酬が始まった。
「中々、面白そうな競技ですね」
小猫が投げると、相手の男の子が吹き飛び黄色い歓声が沸き、
そして、数分後、小猫の圧倒的な攻撃により相手クラスは蹂躙され
ほぼ無傷で小猫所属のクラスが勝利を収めた。
その後、椿姫が一つ一つ競技の説明、ルールを解説してくれ有意義な観戦が
送れていた。
すると、生徒の団体がどんどん同じ方向へ向かっていくのが見れた──そこには
テニスコートを呼ばれる場所で、その周りを生徒達が囲っていたので、椿姫に
聞いてみると、
「そろそろ会長とリアスさんのシングル対決が始まるので、恐らくその応援かと」
この学園でトップの人気を誇るリアス、同じく大人気のソーナが試合するのだ、
リアス側には男子生徒の応援が多く、ソーナ側は女子生徒が多い。
ほとんどの生徒が彼女達の試合を応援するために駆けつけてきたのだ。
「お二人とも大人気なのですね」
「ええ、リアスさんは『二大お姉様』と称され、男子生徒の憧れの的で、
対する会長は、学内でも3番目の人気で、ああ云った雰囲気を纏っていますので
男子生徒より、女子生徒から人気が高いです」
「確かに、彼女はキツイ目つきも関係して怖そうな雰囲気を醸し出していますが、
実際は普通の女性だと思うのですが」
「はい、実際に話された方は分かりますが、会長はリアスさんと同じ、それ以上に
お優しい方なんですが、ただの見た目だけで判断する人が多いようなので──」
若干、ソーナびいきの意見であるが、確かに他者は見た目的には、見るからに
優しそうな雰囲気を出しているリアスの方が近寄りやすく、正反対の雰囲気の
ソーナは会長と云う肩書きもある所為か、近寄りがたいと、認識されやすいのだ。
そう言ってる間に、テニスウェアを着た二人が現れると、男子の興奮した声援が飛び交い、
両者は苦笑している。
その後、運営から注意され声援が一瞬鳴り止むと両者は互いのコートに入り
睨み合う。
「今日こそ決着をつけるわよ──ソーナ」
「ええ、望む所です──リアス」
笛の合図が鳴ると共に試合が開始された。
リアスが軽快の動きで左右に打ち込み揺さぶりを掛けるが、ソーナは難なく対処、
お返しとばかりに、球にスピンなどを掛け翻弄していく。
お互いが球の応酬を繰り広げているなか、フェンスの向こうで一際目立つ『生徒会』の
刺繍が入った旗を振り、大声で気合の入った応援している匙の姿があった。
「会長ぉぉぉぉぉ! がんばってくださいぃぃぃ!」
その声は周囲の視線を集め、隣で同じく応援していた生徒会メンバーが恥かしさのあまり
顔を赤面していた。
そして、屋上にまで届き、
「彼、とても元気ですね」
苦笑するひしぎの隣で、あの場に居なくて良かったと安堵する椿姫。
凄まじい間での接戦でどちらもゲームを制することが出来ず、長い戦いを
強いられ、結果、お互いのラケットのガットが耐え切れず切れる結末になり、
再戦は流石に時間的に無理と判断し、決勝試合であったが両クラスの
同位優勝と言う事で試合が終了した。
その後、いくつか球技の観戦をしているとお昼の時間となり、生徒は各クラスの
持ち場へ戻りお弁当を食べ始めた。
ひしぎ達もベンチへ戻りお弁当の準備をしていると、ソーナが扉を開けて入ってきた。
「お疲れ様です、会長」
「ええ、やはりリアスは手強かったわ」
椿姫はタオルと水を持ち、彼女の元へ駆け寄り労わった。
それを受け取りタオルで汗をふき取りながら、もう一つの手で受け取った水を飲み干した。
「優勝おめでとう」
「ありがとうございます」
ひしぎの賞賛に笑顔で答え、空いているベンチに腰を掛けた。
「午後からは私が出る球技はもうありませんので、交代します──椿姫、負けてはダメよ?」
「はい、必ずや朱乃さんに勝ってみせます」
午前での球技参加は無かった椿姫だが、午後からのテニス個人戦に登録してり、既に対戦相手は
抽選で決まっていたのだ。
奇跡的な確率で当たった抽選、お互いのランクは『
リアス、ソーナと同じようにライバル同士である彼女たちにとっても負けられない
一戦であったのだ。
その後3人は他愛も無い雑談をしながら昼食を取りながら時間をすごしていると、
白髪のウェーブの掛かった女子生徒が飛び込んできた。
「か、会長!」
ソーナは声がした扉の方向へ視線を向けると、呼んだ人物を把握した。
「桃、そんなに慌ててどうしたんですか?」
桃と呼ばれた女子生徒は、彼女たちと同じ生徒会に在籍し、勿論ソーナの眷属であり
ランクは『
彼女は体操着のままで、息を切らしていた。
「あの、あのっ!」
言葉の先をいいたいのだが、息が詰まって先が言えず、
ソーナは近く間で駆け寄ると、彼女の背を優しくさすってあげ、
その隣には水を用意した椿姫の姿もあった。
「落ち着いて、先に水を飲み──一度呼吸を整えなさい」
言われるがままに桃は水を飲み干し、深呼吸をして息を整え始めた。
彼女が落ち着くまでソーナは優しく撫で続け、椿姫も持っていたタオルで
彼女の額に流れている汗を拭いてあげていた。
その光景を微笑ましく観察するひしぎ
(やはり彼女は、誰よりも厳しい反面、それ以上に優しい心を持った子なんですね)
心の中でそう考えていると、扉の向こう側──まだ、視界には入っていないが
また、違った"気配"を持つ二人組みがゆっくりと下からこちらに迫ってきてるのを
感知していた。
(今度は魔──では無く、正反対の気配ですね──さしずめ"神"いや、
"聖"の雰囲気ですね──こちらもどこかで)
前回はすんなり思い出したが、今回は思い出せなかった──
扉の近くにいてる彼女達はまだ、気づいていなく、
そして、漸く桃が呼吸を整え話し始めた。
「大変です、教会の者が突然来訪してきて──」
「邪魔するよ」
桃の言葉を遮る様な形で、遂に来訪者が扉の向こうに姿を現した。
数は二人、白のローブで頭部からひざ下まで隠しており、1人の背中には
布で巻かれた大きな何かを背負っており、発せられる気配で自身達の天敵、
天界からの使者と分かった。
咄嗟の来訪者に3人は一瞬で後方に下がり距離を取り、ソーナと桃を庇うようにして
椿姫が前に出た。
「最近の悪魔は、警戒心はが薄すぎる──私達の接近をこうも許すとは」
背に物を背負った方が一歩前にでて、彼女達に指摘する。
それを聞いたソーナはなぜ、ここまでの接近を許したのか一瞬思案し、状況を整理してみた
(この状況は間違いなく"ありえない"──学校には簡単な感知結界が張っていたはず
なのに、何も反応しなかった)
シトリー眷属で学校を囲うようにして、簡単な術式で感知魔法を掛けていたのに
引っかからず、そしてそれ以上におかしいのが、ここに来るまでに
何人もの"悪魔"と出会っているはずなのに騒ぎ立てられた気配がない。
故に、慎重に相手の気配を探ってみると、少しずつだがどんな手口を
使ったのかが把握できた。
「──良くもまぁ、巧妙に存在感を"擬態"させておいて、妙な言い掛かりですね」
相手の二人から感じる気配の半分以上は、校舎や物、空気と一体化していて
"意識"せずに見ると脳がには建物や空気と認識してしまっていたのである。
「へぇ、もう私達の"カラクリ"を見破ったの──流石はシトリー家の次期当主様」
何も持っていない方が素直に賞賛を送る。
「"カラクリ"を見破っても、ここまで接近できれば勝負は付いたも同然だが──
今日は戦いに来た分けではないんだ」
そう言って先に前に出ていた一人がフードを取る──緑色のメッシュを入れた青髪短髪で
鋭い目つきの美少女であり
「少し貴方達に聞きたいことがあって来たの」
もう一人も同じくフードを取ると──中からは、亜麻色のツインテールをした
とても活発そうな性格をしてそうな美少女である。
「"教会"の使者が私達に一体なんのようです?」
いつでも対処できるように、魔力を手に集中させながらソーナは問うた。
「先日、カトリック教会本部ヴァチカン及び、プロテスタント側の正教会側に
保管、管理されていた聖剣エクスカリバーが奪われました」
説明しだしたのは、亜麻色の髪をした少女──紫藤イリナだった。
「貴女方もご存知の通り、本物の『原点』であるエクスカリバーはもう、
この世には現存していません」
「確か、その折れた『原点』の破片を集めて、錬金術で7本の聖剣が作られたって
話ですよね?」
イリナの説明にソーナが付け足すと、彼女はそこら辺の説明が不要と感じ、
頷き続けた。
「ええ、ですので彼女の分を含めてカトリック教会側に2本、プロテスタント側は
私の分と含めて2本、正教会側に2本、そしてもう1本は、先の大戦中に行方不明となり
現在我々は6本を保管していたのですが、先日強奪事件が起こり各陣営から
1本ずつ盗まれたんです」
隣で同じく説明を聞いていた青髪の少女と自身を今後に指をさしながら説明するイリナ。
青髪の子は背負っていたモノを前に出し布を取、見せ付けた
(あれが7本のうちの一つ)
「これはその内の1本『
持っているのは『
二人はそれぞれ持っている聖剣を彼女たちに見せるとソーナ達は、畏怖──恐怖──戦慄──が
一瞬で体中を駆け巡り、悪寒を感じた。
(本物のようですね──!)
たとえ『原点』でなくとも、対悪魔には絶大な効力を発揮する。
恐らく彼女達は話を信用してもらうために見せたのだと判断し、
そして、話の展開の先が読めたソーナは無意識に呟いた。
「まさか、この地にその強奪犯が逃げ込んだ──と、云う事ですか?」
「ああ、その通りだ」
その問いに青髪の少女──ゼノヴィアが頷く。
「ちなみに奪った犯人は『
その名前を聞いたソーナ達に衝撃が走る。
「コカビエル──まさか、古の戦からの生き残る堕天使側の幹部──まさか、
聖典や書物以外からその名を出されるとは」
先の大戦で生き残った堕天使側の幹部であり、実力は相当なモノで
実際に聖書や普通の書物でも名前がのる大物であった。
そんな彼が動く──と、云う事は通常の戦力だけでは歯が立たない。
(話を聞くに彼女達は聖剣使いですか──確かに堕天使相手にも聖剣があれば後れは取らないと
思うけど──コカビエル相手では戦力不足だわ)
ゼノヴィアとイリナはソーナの目から判断しても、相当な実力を擁していると
分かるが、古の化け物を相手にするにはそれでも戦力不足と判断したのだ。
「先日から、我々が派遣したエクソシストが悉くこの地に入ったとたん
音信不通になったので──捜索と、この地で戦闘する許可が欲しくて、
訪ねてきたわけだ」
「なるほど──ですが、私の一存で決められません──一応話しておきますが
私の管轄はこの学校のみなので、校外の許可を取りたくばリアス・グレモリーと
協議しなさい」
実質、グレモリー家がこの地を統括しているのでソーナ自身が決められることでは
なかった。
「ですので、明日の夕方もう一度ここへ来てください。リアスにはこちらから
話を通しておきます」
学業が終わり次第事実確認の為、眷属を総動員して情報収集に当たらせ、
自身はリアスへ事情を話しにいかねばならなくなった。
「了解した──では、明日また訪ねよう──行こうかイリナ」
「ええ、では悪魔の皆さんまた明日ね」
そう言って教会側の二人組みは身を翻し、また来たときと同じような"擬態"を
発動させ姿を消していった。
「会長──これは」
「ええ、相当厄介なことに巻き込まれそうですね。桃、貴女は皆に連絡して
業務が終わり次第情報収集に」
「分かりました」
「椿姫、貴女はその情報の統括を──私は直接リアスの所へ向かいます」
「了解しました」
「あのー会長ひとついいですか?」
「なんですか桃?」
桃は彼女達の後ろでお弁当をつまんでいるひしぎに指をさし
「あの人は一体誰なんですか?──と、云うか今の話聞いてても大丈夫だったんですか?」
「──っ!」
ソーナと椿姫はその言葉に──ゆっくりとひしぎの方に振り向くと
彼は用意してもらったお弁当を食べながら、
「とても面白そうな話でしたね」
新しい興味が出てきた──と、いった表情をしていた。
話の途中に完全に気配を消し、そのまま普通に聞いていて、彼の中に
あった問いの答えが得られたのだ。
(なるほど、彼女達の正体は"悪魔"だったのですね──本当に退屈しなくて済みそうです)
──と。
こんにちは、夜来華です。
そろそろ原作と乖離した部分がちょこちょこ出てくると思いますが
お許しください。
あと、キャラの性格も少し変っている部分も今後あると思います。
感想、質問、一言頂けると嬉しいです。
では、また次回にお会いしましょう。