でも、話を聞く限り彼は自ら協力を申し出たらしい
匙、貴方はとっても優しい子ですから──ですが、罰は罰です
ゼノヴィアとの一騎打ちに負けた祐斗は、これから起こす行動でリアスにこれ以上迷惑が
掛からぬよう眷属を辞めると申し出、そのまま学園を後にした。
祐斗の目的は、コカビエルが奪ったとされる聖剣を持っていたフリード・セルゼンを
見つけ出し、彼が持っている3本の聖剣を叩きおる事。
球技大会後、夜な夜な道を歩いていたらフリードが教会関係者を斬り殺した現場に
出くわし戦った。
そして、その時フリードが手にしていたのは、奪われた1本、
懐には同じく奪われた2本の聖剣を隠し持っていたのだ。
戦闘は拮抗し、戦闘音に気づいた人が徐々に集まってきており、
祐斗はリアスに眷属を辞める宣言をしたのだが許可を貰えておらず、これ以上騒ぎを大きくする事は彼女の名に傷が付くと思い、戦闘続行は不可と認識し、
苦渋の決断だった。
フリードの方もある程度は自由に動いていいと、彼の"ボス"から言われていたが
行動を起こすまでは、神父狩り以外はあまり騒ぎを立てる事は禁じられていた事で、お互い思惑があり勝負を一旦預けた。
そして今日、聖剣の一つの担ぎ手であるゼノヴィアの力を目の当たりにした祐斗は、
フリードが完全に聖剣の能力を使いこなせる前に破壊しなければと思い、
行動を起こすべく、真夜中の暗闇へ姿を消していった。
次の日、リアスと祐斗のやり取りを見ていた一誠は、こっそりと同じ『兵士』である匙に連絡し、
彼を駅前に呼び出した。
「で、俺を呼び出した理由はなんだ?」
生徒会の仕事を一旦終わらせ、態々来てくれた匙。
「・・・・そうです、二人で何をしようとしていたんですか?」
一誠の服を掴み、逃がさないようにしている小猫。
偶々道中で出会い、様子がおかしかった一誠についてきたのだ。
逃げようとしたのだが、掴まり、そのままの状態であった。
「まぁ、呼び出した理由は──聖剣エクスカリバーの破壊許可をあの二人から
もらうんだ!」
その言葉に小猫と匙は目を丸くして驚いていた。
学校が昼から休みだったので、生徒会室でソーナは椿姫とひしぎの3人が居た。
ソーナと椿姫二人は元々球技大会後の事務処理があったので、生徒会業務を淡々とこなし、
他のメンバーは各自の業務終了後街に繰り出し、警戒の為巡回作業に入り
そして、リハビリがてら松葉杖無しでひしぎが廊下を歩いていた時、
ソーナが偶々職員室からの帰りでそのまま彼を招待したのだ。
椿姫に入れて貰ったお茶に口をつけた。
「いつ飲んでも椿姫さんが入れるお茶はおいしいですね」
「ええ、私も自分で入れるより椿姫の方が好きですね」
「ありがとうございます」
二人の賛辞に恐縮する椿姫──そう言ってもらえると、お茶係をしていたかいが
あったと、心の中で思った。
「さて、ソーナさん昨日あった話はもう貴方の耳に入ってますか?」
リアス眷属と教会側の手合わせの話だ。
「ええ、直接電話でリアスから聞きました──あと、もう私の事は呼び捨てで構いません」
彼の方が年上と知ったので、もう年下に畏まる事はしなくていい事と、
もうお互いの正体を知っているので他人行事では少しさびしく感じており、
そう思ったソーナは提案したのだ。
その言葉に、一瞬呆気に取られ、意図を理解したひしぎは頷いた。
「分かりましたソーナ。椿姫さんも呼び捨てで構いませんか?」
突然話を振られた椿姫も一呼吸置いて頷く。
ひしぎ自身も自身の事は呼び捨てで構わないと言ったのだが、
年上なのでと云い、拒否された。
「ひしぎさんはその話をどこで?」
ふと、学校関係者でない彼がなぜその話を知っているのか気になった為、話を戻した。
「実際私はあの場に居て、直接見ていましたので」
さらりと、爆弾を投下し絶句する二人。
椿姫もソーナから聞いた話なのだが、リアスと眷属、教会側の二人以外は
誰も居なく、結界も張って外部から遮断していたのに。
「──貴方は一体何者なのですか」
椿姫は彼の正体をまだ知らないので、その目に警戒の色が現れる──が、ひしぎは
まったく気にしておらず、心当たりがあるソーナは納得し、
椿姫を制止する。
「椿姫、私は彼の正体を知っていますが決して敵ではありませんよ。
ただ、まだ公表できないの」
「ええ、すみません椿姫。私もある確証を得るまではあまり公表したくないのですよ」
事情があり、正体を知っているのはソーナだけと知り、彼女が敵でないというのならば
眷属である自分はただそれに従い、信じるだけである。
「わかりました」
そしてひしぎは自分視点で見た感想を彼女たち二人に語りだした。
レーティングゲームの事も聞いていたひしぎに分かりやすく彼らの戦力評価を
教えた。
まず、兵藤一誠は煩悩が絡むと急激な戦闘経験の蓄積、行動の最適化を本能でし、
『神器』の能力も合って一番化ける可能性があると指摘。
そして木場祐斗に関しては、今回は冷静さが無くボロボロだったが、
本来の戦い方を取り戻すと速度が圧倒的なので、彼のスピードを追える
人物、対策が取れないと厳しくなる。
そして、最後は自身の弟子(正確には弟子ではない)小猫。
現在は同じランクの『戦車』を当てれば彼女を封じる事は可能だが、
移動しながらもあの1発が撃てるようになったら、一番の脅威になると教えた。
その戦力評価を聞き、頭の中でソーナは自身の知っている情報から更に修正を加える。
現在眷属の数では勝っているが、フェニックス戦後、数で勝っていても
それは無意味とその戦いを見て確信し、各自の能力アップを勤めていたのだが、
リアス側の眷属の成長の方が早いと感じたソーナ。
既に一誠の方はソーナの懸念通り成長スピードがおかしい、
本当に彼は素人だったのか、と思えるぐらいに成長していたのだ。
今、ソーナの眷属の中で勿論椿姫が断トツで強いのだが、彼女には
その3人よりまだ強い同じ『
いけないので、他の3人は相性で当てるしか現状いい手が思い浮かばない。
難しい表情をしているソーナを見て、何に悩んでいるか把握したひしぎは
ある提案を出した。
「──私が暇な時に、椿姫やほかの眷属の修行をお手伝いしましょうか?」
「──え」
「実際、塔城小猫さんには放課後修行を見て欲しいといわれまして、
フェアじゃないのでこちらも見ようかと」
一応彼女がいい、と言うまでは約束を守るつもりで居るひしぎは、
片方だけに教えるのはフェアじゃないと思い、言い出したのだ。
「──是非、お願いできますか、元々は私からお願いしようかと思っていたんですが、
本当にいいんですか?」
状況がもう少し安定してから彼にお願いしようとしていた事を
ひしぎの方から提案してくた事により、表情を緩めるソーナ。
「ええ、いいですよ。ただ、本当にアドバイスぐらいしか出来ませんので
あまり期待はしないでくださいね」
弟子を取ったことのない彼にとって本当に簡単なアドバイスぐらいしか
出来ないが、喜んでくれるなら、恩返しにもなると思った。
「ええ、宜しくお願いします」
眷属を従えるものとして頭を下げるソーナ。
隣で成り行きを見守っていた椿姫は、ひしぎの正体が分からないため
彼の実力が分からない──が、ソーナがそう云うのだから、ある程度の
実力者と認識したのだ。
ならば先に自身の眷属の事をもっと深く知ってもらう為にソーナは
まずは自分から一人ずつ説明した。
ソーナ・シトリー、ランクは『
水の魔法での攻撃を主体とし、近接はあまり得意でない。
真羅椿姫、ランクは『女王』であり、前線指揮官であり、
近接戦闘が主体で、武器は
所持、効果は自身の任意の場所に鏡を出現させ、その鏡が破壊された時その威力を倍化し、
壊した相手へ返す、カウンター用の『神器』である。
匙元士郎、ランクは『兵士』であり、近接攻撃型兼補助役。
彼の持つ『
接続した相手の力を奪う能力があり、戦闘補助役としても十分に活躍できる。
由良翼紗、ランクは『戦車』であり、近接攻撃型の武器は使わず体術を得意とする。
巡巴柄、ランクは『騎士』であり、近接攻撃型で武器は刀を使用。
退魔を生業とする一族出身であり、悪魔でありながらも一族の術も使える。
花戒桃、ランクは『僧侶』であり、後方支援型で防御結界や遠距離魔法が得意。
草下燐耶、ランクは『僧侶』であり、後方支援型、索敵や諜報を得意としている。
仁村留流子、ランクは『兵士』であり、近接攻撃型、主に足技を得意としている。
全体的に見れば近接戦闘型の方が多いのだが、十分にバランスが取れていると思うひしぎ。
そして聞いた感じだと、主力はソーナ、椿姫、匙の3人で他は実力的に
補助役であるが、ソーナは『王』なのでまず最初から前線に出る事はないので
実質2人である。
実際彼女達の実力はまだ全部は見ていないが、実践を経験していないと聞き
実践を経験しているリアス達相手にするのは現状分が悪いと判断したひしぎは
一つ提案した。
「とりあえず、今度私一人でソーナとその眷属全員を相手にして実力を測りましょうか」
そうすれば、全員の実力を知りどこをどうアドバイスすればいいかが分かると思ったのだ。
「──それは、会長と私達を全員相手にしても勝てると踏んでの言葉ですか?」
ひしぎの言葉に椿姫は少し憤りを感じたのだ──会長と自身達全員の力を合わせれば
最上級悪魔、伝説の龍達にも勝てる自信はあったのだ。
実際ソーナの実力は既に上級悪魔クラス、自身も中級の自信はあり、その他は
下級でも上位クラスと自負してるのだ。
故に、彼女のプライドに火が付ききつい言葉で返してしまったのだ。
「──椿姫おやめなさい」
「いえ、会長。これだけは譲れません──私達はただ遊んでるだけではありません
全員同じ夢があるからこそ今までのきつい修行にも耐えてきたのです」
ソーナは制止するが、椿姫は取り下げる事はしなかった、だって、ソーナの
初めての眷属が自分なのだ。
主と自分達の実力を"全員一辺に測る"と云う事は全員相手にして自身が推し量る
即ち、相手にしても勝てる自信がある──と、椿姫は捉えてしまったのだ。
「あ──言い方が悪くてすみません。ただ、一気に測りたかったもので」
椿姫に不愉快感を与えてしまった事に謝罪したひしぎ。
その言葉を聞いて冷静さを取り戻した椿姫も謝罪した。
「──すみません、私も頭に血が上ってしまったようです」
「ただ、修行を見る代わりに一つお願いがあるのですか」
気を取り直してひしぎは話を変え、修行に必要なものを思い出したのだ。
「なんでしょう?」
「刀──なるべく大刀を用意していただけると助かります」
そう、今自身は完全に丸腰なのであり、体術にも自信はあるのだが
やはり剣を持っている子にアドバイスするならこちらも持っていたほうが
見本で見せやすいと思ったのだ。
手元に『白夜』があれば、こんなお願いしなくてもよかったのだが、無いモノは
仕方が無い。
「それなら、昔私が使っていた大刀がありますので後で持ってきます」
昔は大刀を使っていたのだが、自身の戦闘スタイルにあわず長刀に変えた
椿姫、家に誰にも使われずに眠っているので調度いいと思ったのだ。
「──助かります」
一時は二人の関係が拗れるとおもったのだが、すぐに修復出来たので
内心ほっとするソーナ。
自身の信頼する二人が喧嘩するのは見ていて"心"が痛い。
(よかった──これで──っ!?)
ふと、通信機器から連絡が入ったのだ
『大変です会長!──街の東の方で魔力の波動を探知しました』
街で巡回していた桃からの連絡であった。
それと同時に携帯電話も鳴り──着信相手はリアスだった。
『花、少し待っててください』
とりあえず、花の話を聞くためリアスに掛け直すと伝えるために着信にでると
『ソーナ大変よ、東の街で私の眷属と貴方の眷属の匙君がはぐれエクソシストと
戦闘を始めたわ!』
「──なんですって」
「──会長?」
電話に出たと思いきや驚きの表情を浮かべたソーナに椿姫は首をかしげた。
「わかりました、転移ポイントを送ってください。──すぐに行きます」
そう言って電話を切ると花に指示を出した。
「事情はこちらでも把握しました。貴方はほかの子たちと合流し、一旦戻って来て下さい」
『了解しました』
通信機器から電波が途切れると、ソーナは意識を切り替え、椿姫とひしぎに
向き直り
「緊急事態が起きました、東の街でうちの匙とリアスの眷属の子がはくれエクソシストと
戦闘を開始したようです」
「すぐに準備します」
椿姫はそう言うと席を立ち、転移の準備を始めた。
「話の途中すみません、私達は匙を回収してきます」
話の途中で申し訳なく思ったソーナが頭を下げる。
「いえ、気にしないでください」
それを笑みで返すひしぎ。
そして携帯に転移先の情報が添付されて来るとそれを椿姫に見せ、数秒で準備が
整い、二人は魔法人の中に消えていった。
「匙、これは一体どういうことですか?」
二人が到着と同時にリアスも朱乃をつれて到着し、状況を把握すると、
既に戦闘は終了し、聖剣破壊同盟を結べた一誠の所にゼノヴィア達が加勢に駆けつけた
途端、はぐれエクソシスト──フリードは撤退した。
それを祐斗とゼノヴィア、イリナが追い、残りの3人は出遅れ彼女たちに捕まり
現状の報告と、勝手な行動をしてお叱りを受けている最中である。
「すみません会長──どうしても、俺、木場の力になって上げたかったんです!」
最初は手伝うことを拒否していた匙は木場の生い立ちを聞き、心から
彼の手伝いをしたいと思ったのだ。
ソーナから怒られる事を確信しながらも彼は手伝い──後悔はしていなかった。
生徒会の人間として、一人の人間として、困っている生徒、友達を
見捨てる事は彼には出来なかったのだ。
「だから俺はこの事件が解決するまで彼らの力になりたいんです!お願いします!」
匙はそう言って土下座しソーナに許可を求め──ソーナは椿姫と一瞬顔を合わせ、
微笑むと、匙の方へ向き直り言った。
「──解りました、今回は特別に許可します」
額を地面に擦り付けていた匙はソーナに許可が貰えた事に安堵するが、
ソーナの言葉は続いていた。
「ありがとうございます!」
「ただし、勝手に動いた罰はキチンと受けてもらいます──お尻叩き1000回です」
彼らの取った行動は決して良いとは云えない。
逆に今の三竦み状態に亀裂、崩壊に繋がる恐れもあったのだ。
本当は友達を助けるために力を振るった事に怒る事はせず、誉めてあげたかったが、
今回の状況はあまりに軽率だったため、叱らねばならなかったのだ。
(匙、本当に貴方を眷属にしてよかった)
そう言って彼のお尻をたたき始めた。
1時間後、ソーナは正式に協力を申し出、快く受け入れたリアス。
まずは使い魔を使役できる眷属悪魔は全員街に使い魔を放ち、情報収集と祐斗達の
探索を指示──そして、彼らの位置を把握でき次第動くという事で、
それまで各自自宅待機となり、現地解散した。
匙は少なからず戦闘で消耗していたので先に帰宅させ、ソーナと椿姫は
学園に残っている眷属達に指示を出し、自分達も身を休める事にしたのだ。
この場に残っていても、重要拠点でないので彼らが戻ってくる確立はゼロに等しく、
誰かに嗅ぎつけられる前に、退却したほうが良いと判断したのだ。
そして、その日の深夜に事態は急変し加速した。
リアスの使い魔が東の丘の公園に続く道端でイリナを発見した──
使い魔から連絡を受け取ったリアスはすぐさまソーナと眷属達を現地招集した。
向かう途中で全員合流でき目的地へ付くと、使い魔が人間に変身し彼女を
介抱していた。
イリナは見るからに無残な姿で放置されており、大きな出血はないが全身に傷があり、
ローブの中に来ていた真っ黒の戦闘スーツは無残に引き裂かれ、
肌を晒しており、意識はなかった。
そして、突如強大なプレッシャーが彼女たちを支配し、空を見上げてみると
月を背にして、黒い翼を十枚はやした堕天使がそこに居た。
装飾に凝ったローブで身を包み、空から全員を見下している若い男だった。
目は赤々と禍々しく光っており、見たもの全てに畏怖を与えるような
瞳であった。
「初めまして、グレモリー家の娘よ。貴様の紅髪を見ると、忌々しい貴様の兄を
思い出して反吐が出る」
挑発的な物言いにも応じず、普通に返すリアス。
「ごきげんよう堕ちた天使の幹部さん──いえ、コカビエル。
私の名前はリアス・グレモリーよ、お見知りおきを」
乗ってこないリアスを詰まらないと思い、鼻を鳴らした。
「──そういえば、土産は気に入ってもらえたかな?他の二人は、
逃がしてしまったんだが、態々俺の根城まで攻めてきたから歓迎してやったのだ」
使い魔の腕の中で意識を失っているイリナに視線を向けるコカビエル。
そう、彼女はフリードにやられたのではなく、彼と直接戦闘して負けたのだ。
裕斗とゼノヴィアはイリナを助ける余裕もなく、一瞬でやられてしまったので、
ここで3人全員やられる前に苦渋の決断をし、撤退したのだ。
そして、彼──コカビエルは語ったのだ。
政治的話し合いをする為に着たのではなく、彼はこの三竦みの状態を崩壊させるために
この街に来たと。
この街に巣食う悪魔は現魔王サーゼクス・ルシファーの妹であるリアスと、もう一人の
現魔王セラフォルー・レヴィアタンの妹であるソーナ。
彼女たちが支配している学園で暴れたらこの緊迫した状態が破壊され戦争が
起こると踏んだのだ。
彼の望みは──戦争の再開。
この停戦状態になってから彼は退屈で退屈で仕方なかったのだ。
だから、求めたのだ──血を、戦を、戦争を。
彼にとっては戦いこそが快楽を得られる唯一の喜び──故に今の状況に我慢の
限界が達したのだ。
最初は聖剣を盗む事で天使、神側との戦争再開となると思っていたのだが、
自身の所に来たのは聖剣使いたった二人だけ、その他の戦力はまったく来ない事に
気が付き、計画を変え、この街にやってきたのだ。
そしてこの街に来て、事態は彼の思うままに運ぶ事ができ、あとは学園で
暴れるだけとなったので姿を現したのだ。
「この戦闘狂め──」
一誠が忌々しく呟く。
「ああ、戦闘狂で結構。俺は俺自身の欲望を欲するままに行動し、戦争を再開させる
──誰にも邪魔させない、漸くアザゼルの目を掻い潜ってここまで来れたんだ。
──だから、お前達の学園は俺が貰った」
アザゼル──『
彼は、自身のボスであるアザゼルが戦争を再開させる気が無いと知り、
今の行動に出たのだ。
そう言って彼は学園のある方向に体を向けた。
「おれっちも参加させて頂きやすね。もう4本の聖剣を手に入れた俺様に死角無し!
聖剣使いで歴代最強じゃね?!つーわけで、いっちょ派手にやりやしょうや!」
それに続き、フリードが懐から丸いボールのような物を取り出し、地面へ叩きつけた。
その瞬間閃光が彼女たちを襲い、視力が回復したことには既にコカビエルと
フリードの姿はなかった。
「くっ!みんな学園へ急ぐわよ!」
戦争を止める為に彼女達は彼を止めるしか方法はなかった。
一斉に学園へ向かう中、ソーナは学園で寝泊りしているひしぎの顔が
脳裏に過ぎった。
彼の正体は知っている──本当に彼が『鬼神』の一族ならばコカビエルにも
引けは取らないと思うのだが、彼は今身体機能が著しく低下しているのだ。
だから、本来の力を出せないまま彼と対峙すれば、ひしぎが負けると思い、
手に冷や汗が流れた。
(──お願い、無事で居てください)
「学園を大きな結界で囲みました──よほどの事がない限り、外へ被害は
出ません」
ソーナが眷属を召集し、桃を筆頭に全員の力で学園を覆えるほどの防御結界を展開したのだ。
上級悪魔でさえも簡単には破れないほどの強固さを誇るが、相手はコカビエルであり、
悪魔にしたら最上級クラスの力を持っている。
この結果はあくまでも"被害"を最小限に抑える為のものとなり、
彼が本気になり、結界を直接攻撃すれば一瞬で崩壊し、街も消滅させられる恐れはある。
だからこそ、結果に手を出される前に彼を倒すか、消耗させるかで、
結果が変る。
「既に、コカビエルが校庭で力を徐々に解放してきています。
私達は会長と一緒に結界を外から維持します──正直、学園を壊されるのは
悔しいですが、学園の犠牲だけで彼を止めれるのなら堪えなければなりません」
悔しそうな表情をしながらリアスへ情報を通達する椿姫、彼女自身もソーナと同様に
学園を愛している──苦渋の決断だったのだ。
「わかったわ、ありがとう──ソーナはどこへ行ったの?」
周りには椿姫と匙、他の眷属しかおらずソーナの姿はどこにも見当たらなかった。
「会長は彼の安否を確認するために一人で学園の中へ入って行きました」
「──なんですって?!」
そう、既にソーナは現場指揮を椿姫に託し、ひしぎの元へ走っていったのだ。
それを知っているのは椿姫だけであったが、中で戦闘をするリアスの耳に
入れておきたかったのだ。
「わかったわ」
ソーナならきっと大丈夫だと──リアスは信じた。
「リアスさん、相手は古の化け物です。現状我々の実力では勝機はゼロです」
「ええ、そうね──でも、やるしかないの。朱乃がさっきお兄様に勝手に
打診したらしく、援護が来るのは一時間後らしいわ。
それまでどうにかして持たせないと──」
自身の根城で起きた事件なのでリアスがサーゼクスに迷惑を掛けたくなく、
独自で処理しようとしていたのだが、実力差を知っている朱乃はもう、この件は個人で
解決できるレベルじゃないと判断し、独自に連絡を取っていたのだ。
そしてこの件で不満を漏らしたリアスを叱り、納得させたのだ。
「一時間ですか──分かりました。会長の名に掛けて我々シトリー眷属は全力で
結界を張り続けます──ですので、よろしくお願いします」
「ええ、任せておきなさい。さぁ、行くわよ私の可愛い眷属たち!
これは、フェニックス戦と違って命を賭けた『戦闘』になるわ。
絶対に死ぬ事は許さない!生きて普通の生活を取り戻すのよ!」
リアスの号令と共に彼女達は結果以内へ突入を開始した。
それを見守るシトリー眷属達。
「リアスさん──ご武運を」
無事に帰ってくることを祈りつつ、各自持ち場に着き結界を維持し始めた。
「サーゼクスの妹とその眷属がこの学園へ侵入してきました。
一方レヴィアタンの眷属どもは周りに被害が出ぬよう、結界を展開しています
ただ、レヴィアタンの妹は先ほど一人でこの学園に侵入した形跡があります」
空に玉座は浮いており、月光を浴びながら優雅に佇むコカビエルの周辺に
8人の堕天使が姿を現し各自報告をしてきた。
彼らはコカビエルの考えに賛同し共に暗躍していたのだ。
そして彼ら自身もコカビエルの様に聖書や様々な書物に名は載っていないが、
大戦の経験者であり、十分な力を有している。
「そして、元々学園内部に人の気配が合ったので先に2人向かわせています──どうも、
レヴィアタンの妹はその人間の所へ向かってるようです。
ですので、その人間を見つけ次第殺害し、あの娘に見せてあげようかと。
──さぞ、お喜びになると思います」
一人で助けに向かうという事は、さぞ重要な、大切な人間なのだろうと
思い──自身の無力さを親切に教えてあげようかと画策したのだ。
「ハハハハハ!中々面白い余興だ──無力さを知った娘の表情は良い酒のつまみになる」
部下の凝らした趣向に上機嫌になるコカビエル。
「いいぞ、もっとやるんだ──ああ、お前達手分けしてレヴィアタンの娘を生け捕りにして、
結界前に行き、術を展開している眷属を全員嬲り殺しにしてやれ。
お前達にもう一人の魔王の妹殺しの功績をやるよ──ああ、その時娘がどんな表情で泣き、
叫んでいるかは後で俺に教えてくれよ?──出なければ戦争前に景気付けが
出来なくなってしまう」
その言葉にニヤニヤと面白そうな表情を皆浮かべ、了承した。
「サーゼクスの妹の方は、俺とフリード、バルパーでやる」
彼の視線の下では、校庭の中心に
その下の地面には、魔方陣が描かれておりその中心にはバルパー・ガリレイと云う
初老の男性が立っていた。
彼は教会が行っていた『聖剣計画』の責任者で、聖剣が大好きであり、自身の欲望を
満たすためだけに人体実験を繰り返し行い、それが遂に発覚し天界、教会から
追放され、コカビエルが暗躍して戦争を起こそうとする事を知り、協力を申し出、
追放した彼らに復讐をしようとしているのだ。
「バルパーその魔方陣はいつごろ出来上がる?」
その言葉に初老は視線を上げ答えた。
「4本ぐらい統合するだけならばもう5分もいらんよ」
彼は、コカビエルが奪取した4本の聖剣を統合し、一つの聖剣を作ろうとしていた。
3本の聖剣はフリードが使用していた物で、残りの1本は先ほどイリナから
奪った聖剣だったのだ。
「そうか──その後の術式は?」
統合後に、4本の聖剣の力を収束させもう一つの術式が稼動するのだ。
「そちらは、剣の完成後約20分だ」
「なるほど──楽しみだな」
「ああ、私としても願いが成就する」
二人は高らかに笑い──
「そろそろやつ等が来る──お前達は見つからぬように先ほど話したとおりに
動け」
「了解しました」
そう言って8人の堕天使の姿はコカビエルの周りから陽炎のように消えうせた。
「──漸くだ、ああ、待ち望んでいた戦いが再開できる──その前の余興に
俺を楽しませてくれよ?──サーゼクスの妹よ」
彼の眼下に到着したリアス達を歓迎するコカビエル。
堕天使の幹部、古の化け物との大決闘が始まろうとしていた──。
こんにちは、夜来華です。
そろそろ原作との乖離が目立つようになってきました。
次話は漸く彼が動きます、主人公らしく書けたら良いのですが。
感想、誤字脱字、質問、一言頂けると嬉しいです。