死神?滅却師?大丈夫!僕、最強だから。   作:瓢さん。

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キルゲと黒崎との戦いのどこに、五条ぶち込めばいいかめっちゃ悩んだ……。


交戦

「そうはいっても、どうやって虚圏に行くんだ?」

 

 

 

 五条がそう言うならもう言うことはないと結論付け、無事五条の虚圏行きが決定したわけだが、問題はまだあった。

 

 そもそも虚圏にどうやって行くんだ?という問題である。五条はもちろん、黒崎たちも自分たちでは虚圏に行く手段はない。

 

 しかし、その問題は意外とすぐに解決した。

 

 

 

「そんなの簡単でしょ」

 

 

 

 おもむろに五条が窓に近づいたかと思うと、思いっきりカーテンを引いた。

 

 そこには、

 

 

 

「げっ……」

 

 

 

「う、浦原さん!?」

 

 

 

 黒崎が驚愕する。

 

 そこには、奇妙な帽子を被り、ステッキを持った男が窓の外で立っていた。

 

 

 

「この人、最初からここにいたよ。呪力とかは隠してたっぽいけど、僕に言わせればまだまだ甘いね」

 

 

 

「最初から、気付かれてたわけっスか……。食えないお方だ」

 

 

 

 浦原と呼ばれた男はバツが悪そうに頭をポリポリ書いていたが、黒崎たちは浦原がいたのとは別の意味で驚愕していた。

 

 黒崎たちは浦原がそこにいるのが全く気付かなかったのだ。それこそ、気配を微塵たりとも。

 

 しかし、五条はそんな浦原に容易に気付いた。これだけでも、五条が相当の実力を持つことがうかがえる。

 

 五条が自らのことを「最強」と呼称するのも、あながち間違いではないのかもしれない、と思った。

 

 

 

「五条さん、あんた実は……」

 

 

 

「そんなことよりも、一刻も早く虚圏に行かないと。何か方法はあるんでしょ?浦原さん」

 

 

 

 黒崎の質問を軽く受け流し、五条は浦原に視線を向ける。

 

 

 

「ええ。黒崎サン、五条サン。虚圏旅行、ご手配しましょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 黒腔。

 

 霊力によって舗装された道を、五条ら一行は走っていた。

 

 

 

「へぇ。こんな感じで呪力を応用できるとはね。僕も出来るかな?」

 

 

 

「五条サンならできると思うっスよ。霊力の扱いも上手だし」

 

 

 

 走りながらも、五条と浦原は何気ない会話で盛り上がっていた。

 

 

 

「それにしても、まさか五条サンがここではない、異世界の出身だったとはね」

 

 

 

「あ、信じてくれたんだ」

 

 

 

 穿界門から黒腔を通る前に、五条は簡潔に自分に今降りかかっている事態について説明した。

 

 なぜかこの世界に飛ばされてしまったこと。元の世界では呪霊と呼ばれる、虚とは似て非なるものを祓っていたこと。

 

 はたから聞くと頭がおかしいとしか思えない内容だったが、みんなはすんなり納得した。

 

 

 

「隠れているアタシを見つけるなんて容易なことじゃないっス。加えて、その霊力。軽く隊長格一人分はあるっスよ。そんな人間が、今まで誰にも見つけられないとは思えない。だけど、異世界から来たなら話は別っス」

 

 

 

「僕的には、君たちの話も十分驚きだけどね」

 

 

 

 黒腔内を移動している中で、五条は黒崎たちからこの世界について、簡潔ではあるが聞いた。

 

 尸魂界、虚圏、死神、斬魄刀や鬼道、滅却師、完現術師など。

 

 簡潔なのに、説明が五条の二倍ぐらいあった。情報が多すぎた。

 

 

 

「それにしても、あの石田君て子は来なかったね」

 

 

 

「仕方ねえよ。あいつは滅却師だからな」

 

 

 

 そう、今回、石田雨竜は来ていない。

 

 

 

『すまないが、僕は今回同行できない』

 

 

 

 そう言って、石田は黒崎たちとの動向を拒否したのだ。

 

 

 

「滅却師は虚を滅却するために居るんだからな。適材適所ってやつだ」

 

 

 

「さ、出ますよ!」

 

 

 

 そんな会話をしていると、目の前に光が見えてきた。ここから先は虚圏である。

 

 黒腔から一歩踏み出す。と、そこは空中であった。

 

 

 

「わわっ!おそらっス!おそらに出たっス!!」

 

 

 

 突然の浮遊感にネルが慌てる。

 

 

 

「浦原さんのは大体いつもこうだよ!」

 

 

 

「流石良くご存じで♪」

 

 

 

「流石じゃなくてちゃんと降りようよ」

 

 

 

 空中でも緩み切った会話をする三人。もう少し真剣になってほしいものだ。

 

 

 

「落ちるっス―――――!!」

 

 

 

「三天結盾!」

 

 

 

「落ちなかったっス―――――!!」

 

 

 

「うるせえよ!!」

 

 

 

「いや一護の声が一番うるさいよ」

 

 

 

 井上織姫の能力により危なげなく着地する。

 

 しかし、騒ぎすぎたと本人たちも思ったのか、即座に近くのがれきに隠れた。

 

 自分たちがばれなかったのを確認すると、五条は周りを見渡した。

 

 そこは、ひどい有様だった。

 

 破面や虚の死体が所々に転がり、建物の破片と思しきがれきが広範囲に散乱していた。

 

 生存者は、いそうになかった。

 

 

 

「ひどいもんだね。誰がこれをやったのやら」

 

 

 

 そこら一帯を確認した後、五条は黒崎たちの元に戻った。

 

 しかし、そこにいたのは浦原喜助とペッシェだけだった。

 

 

 

「あれ?一護たちはどうしたの?」

 

 

 

「謎の集団に連れ去られた破面を助けに行きました。アタシたちはドンドチャッカを助けに行きます」

 

 

 

 黒崎が助けに行っているなら、当面は安心だと五条は思った。

 

 黒崎の呪力――霊力は、五条からしても目を見張るものがある。重心の取り方からして、体術などにも精通している。たとえ相手が特級呪霊だとしても、黒崎ならば生き残れるだろうと、五条は踏んでいた。

 

 他の三人も、なかなかに実力がある。特にネルというあの少女。見た目こそあれだが、あの子は黒崎に次ぐ実力者だ。不安要素は限りなく無いと言っても過言ではない。

 

 なら、自分は本来の目的であるドンドチャッカとやらの破面を救出するのが最優先と五条は判断した。

 

 

 

「なら、ちゃっちゃとそいつを助け出して、加勢に行こうか」

 

 

 

「全面的に同意っス」

 

 

 

 こうして、五条、浦原、ペッシェの三人でドンドチャッカを探すことになった。

 

 五条は、自身の六眼ですぐ見つけられると踏んでいたのだが、虚圏にあるものはすべて霊子――つまり呪力でできている。上も、下も、右も左もすべてが呪力。たった一つの呪力、ましてや会ったこともない者の呪力など、到底わかりそうになかった。

 

 

 

「うーん、これは予想外」

 

 

 

 地道に探すしかないと、五条はため息を吐いた。

 

 

 

「ドンドチャッカとネルと君はどんな関係なの?」

 

 

 

 探しているさなか、不意に五条がペッシェに聞いた。

 

 最初に落ちてきたときも、道中も、ペッシェはネルのそばにいた。二人の会話を聞くに、ドンドチャッカも一緒に行動しているのだろう。

 

 そんな三人に、五条は興味がわいた。

 

 

 

「私とドンドチャッカは第3十刃(トレス・エスパーダ)であるネル様の従属官(フラシオン)だ。争いを好まぬ主のため、我等は陰ながらネル様をお守りしているのだ」

 

 

 

「ふーん。第3十刃ね」

 

 

 

 破面の中でも特に殺戮能力の高い十体にのみ与えられた称号、それが十刃である。

 

 五条は六眼により、ネルの実力が十刃レベルなのではないかと予測していたが、その予想は当たったようだ。

 

 

 

「私たちは生涯ネル様を守り続ける。たとえどんな障害があろうとも」

 

 

 

 ペッシェの声からは固い決意が感じられた。その姿が、かつて、非術師を守ると言ったかつての友に重なって見えた。

 

 その友は今や何者かに操られている。友人の身体をいいように操るあの者を一刻も早く倒したいが、別の世界にいるのなら、どうすることも出来ない。

 

 現状、五条は彼のためにできることは何もないのだ。無力感を五条が襲った。

 

 

 

「……頑張ってよ。守りたいものを守れなかった僕みたいにはならないでね」

 

 

 

「……?ああ」

 

 

 

 ペッシェは首を傾げながらも、五条の言葉にうなずいた。

 

 

 

「おおーい!いたっスよ、ドンドチャッカさん!」

 

 

 

 足音がしたかと思うと、何やら大きいトーテムポールのようなものを背負った浦原が五条たちのもとに向かって走ってきた。

 

 

 

「ドンドチャッカ!生きていたのか!」

 

 

 

「ペッシェー!生きていたでヤンスか~!」

 

 

 

 二人は再開をかみしめているようだが、五条は違っていた。

 

 

 

「ドンドチャッカを見つけたことだし、僕先に行っちゃっていい?」

 

 

 

「どうぞどうぞ!加勢に行っちゃってくださいっス!」

 

 

 

 裏原からの了承も得たことだし、五条は己の身に刻まれた無下限の術式、その内の一つを使う。

 

 それは、無下限の術式を強化することで、「収束」を現実に発生させる術式。

 

 

 

 術式順転――蒼

 

 

 

 五条の身体が掻き消える、と同時に

 

 

 

「ぶわっ!?」「うげっ!?」「むばっ!?」

 

 

 

 すさまじい衝撃波がその場に発生した。その衝撃により、大量の砂が広範囲に飛び散り、至近距離にいた三人を砂まみれにした。

 

 

 

「見つけた」

 

 

 

 五条は黒崎が戦っている相手を発見した。眼鏡をかけたおかっぱ頭の男で、呪力で全身を武装している。

 

 黒崎と男は鍔迫り合いをしている。

 

 

 

「……そうか。お前らの昔話は知らねえが要すr「はいドーン!」

 

 

 

 黒崎が何かを言っていたようだが、五条はそんな空気も読まず、男の顔面にドロップキックをくらわした。

 

 

 

「ガっ!?」

 

 

 

 男は五条の不意打ちを喰らい、男の口からうめき声が漏れる。

 

 蒼で勢いのついた蹴りを喰らったためか、男の身体は遠くに吹っ飛んだ。

 

 

 

「……五条さん、空気読めって言われたことはねえか?」

 

 

 

 額に青筋を浮かべた黒崎が、五条に聞く。その声は怒りを孕んでいた。

 

 

 

「さあねー。覚えがないや」

 

 

 

 五条が知らん顔をする。とその時、

 

 

 

「あなた、何者です?」

 

 

 

 空中から声とともに幾条もの光の矢が五条に降り注ぎ、いくつもの爆発を引き起こした。

 

 

 

「五条さん!」

 

 

 

 黒崎が叫ぶ。

 

 

 

「私を吹き飛ばすとは何者かと思いましたが、どうやらまぐれのようですね。この程度で死ぬとは」

 

 

 

 男が地面に降り立つ。

 

 男の顔はひどい有様だった。眼鏡は割れ、顔は膨らみ、見るもマヌケな顔になっていた。

 

 

 

「この顔の代償を払わせようと思いましたが、この程度ではその必要もありませんね」

 

 

 

「ねえねえ、名前を聞いてんのに攻撃するってどうなの?」

 

 

 

「何……?」

 

 

 

 男が顔をしかめる。

 

 煙の中から、無傷の五条が姿を現した。

 

 

 

「五条さん!生きてたのか」

 

 

 

「当たり前でしょ、一護。あんな間抜けな一撃でこの僕が死ぬわけないじゃん。あ、攻撃が間抜けなのは本人の顔が間抜けだからか~。アッハッハッハ!」

 

 

 

 五条が男を滅茶苦茶煽る。黒崎がその煽りにちょっと引いた。男の顔が怒りに歪んだ。

 

 

 

「……いいでしょう。私の本気の一撃、我が完聖体(フォルシュテンディッヒ)、『神の正義(ビスキエル)』の力を食らいなさい!」

 

 

 

 男が右手の軍刀(サーベル)を掲げる。

 

 すると、虚圏に存在する、木や砂や建物が、呪力となって男のもとに降り注いだ。

 

 

 

「へえ」

 

 

 

 五条が声を漏らす。

 

 浦原から聞いたところによると、滅却師は呪力――霊子を吸収し戦う存在。

 

 その噂は眉唾物ではなかったらしく、現に男の軍刀からは特級相当の呪力を感じる。

 

 それでも五条にとってはなんともないが、黒崎がそれを喰らったら無傷ではすまないだろう。

 

 

 

「私は虚圏(ウェコムンド)狩猟部隊(ヤークトアルメー)統括狩猟隊長、キルゲ・オピー!あなたなど、この一撃で消し炭にしてやりますよ!」

 

 

 

 キルゲと名乗った男が光を纏った軍刀を五条に向かって振り下ろす――その直前、

 

 

 

 その光が何者かによって粉砕された。

 

 

 

「な……!?」

 

 

 

 キルゲが瞠目する。

 

 その一瞬の隙を逃さず、キルゲの顔面に巨大な拳が叩き込まれた。

 

 けたたましい音をしとともにキルゲが吹き飛ばされる。

 

 そこには、異形の存在が立っていた。

 

 それは、鹿の角とヒヅメ、ライオンのタテガミ、大蛇の尾を生やした巨大な獣人のような姿をしていた。

 

 

 

「……なんです?その化け物は?」

 

 

 

 キルゲが立ちあがる。唇が切れたらしく、端から血が流れていた。

 

 

 

「……もう戦えねえと思って油断したろ?」

 

 

 

「舐めないでと申し上げたはずですわ……」

 

 

 

「このノボせたメガネザルに見せてやれ、てめえの力をな!!アヨン!!!!」

 

 

 

 三人の破面の女がその場に現れる。彼女たちは確か、井上達のところに寝かされていた者たちだ。

 

 キルゲにやられていたのか、傷だらけだった。全員、左腕を失っている。

 

 呼びかけに応じたのか、アヨンと呼ばれた化け物は、首を捩り、三人の破面のほうを向いた。

 

 

 

「……何見てんだよ」

 

 

 

「……あたし達を心配してる訳でもないでしょうに……」

 

 

 

「………………コッチ気にしなくていいんだよ。行け、アヨン」

 

 

 

 その声がきっかけとなったのか、

 

 

 

「オオアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

 

 

 

 アヨンが吠えた。タテガミから目と口が出現する。

 

 その叫び声はすさまじく、叫び声だけで一帯の空気がビリビリと震えた。

 

 

 

「アヨンはあたしらの左腕を融合させて作ったバケモノだ!!パワーはあるが見境はねえぞ!!今回の敵はてめえらじゃねえんだ。死にたくなけりゃ手ェ出さずに逃げてろよ!!死神!!!」

 

 

 

 破面の女が五条たちに向かって忠告する。

 

 確かに、あのアヨンとかいうバケモノは脅威だが、五条にしてみれば、あれよりも、かつて自身の生徒であった、乙骨に憑りついていた特級過呪怨霊である折本里香のほうが何倍も恐ろしいと感じていた。

 

 そのままアヨンがキルゲに向かって襲い掛かる。

 

 

 

「あなたのような化け物に……我が完聖体が敗れるわけが」

 

 

 

 キルゲの言葉は途中でアヨンの拳に遮られた。

 

 そのままアヨンは何度も何度も男を殴り、終いには男をその巨大な手でつかみ、何度も何度も地面にたたきつけた。

 

 

 

「……………」

 

 

 

「やりすぎだ……無茶苦茶じゃないか……」

 

 

 

 その光景を見て、井上は口をおさえ、茶渡は呆然と呟いた。

 

 アヨンが攻撃をやめる。そこには、地面にめり込んだキルゲの姿があった。呪力の鎧も粉々に砕け散っていた。

 

 

 

「あ~~~~~~~らら、ちょっとやりすぎたかァ?」

 

 

 

 先ほど五条たちに忠告した女が勝ち誇ったようにキルゲの死体に近づく。

 

 

 

「しっかし硬てぇ奴だなァ。アヨンにあんだけ殴られてここまで原形とどめて……」

 

 

 

 瞬間、五条の六眼が、キルゲの死体から呪力が発されるのを捉えた。

 

 奴は、死んでいない。まだ生きている。

 

 脳が理解した瞬間、自然と五条は叫んでいた。

 

 

 

「近づくな!」

 

 

 

 しかし、その警告をしたころには、もう遅かった。

 

 死体から出現した光の刃が、女の胸を貫いていた。

 

 

 

「が……!?」

 

 

 

 女の身体がくずおれる。

 

 男が起き上がる。キルゲの首は滅茶苦茶に折れていたにもかかわらず、生きていた。

 

 

 

「成程……これ程の力は報告にはなかった……」

 

 

 

 キルゲが自らの手を自分の頭にやった。

 

 

 

血装(ブルート)の強度調整を、陛下に進言しなくてはなりませんねえ」

 

 

 

 そのまま、ボギリ、ボギュ、ゴキュと言った音を立て、キルゲは折れた首を平然と戻した。

 

 

 

「うわ……」

 

 

 

 その所業に、五条が分かりやすく顔をしかめた。

 

 折れた首を戻すなど、普通の所業ではない。

 

 

 

「そしてその前に……」

 

 

 

 キルゲの頭についていた円盤、光輪(ハイリゲンシャイン)が煌めいた。

 

 

 

「お前たちには速やかに、死んでもらい(ます)




次回、キルゲは死ぬ!
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