バーチャルライフオルタナティブ[無冠の王]獲得RTA挑戦記録   作:神仙神楽

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バトルロイヤル:3-EX

 少女の姿が速さによって一瞬完全に見失った。

 然し足音は聞こえるので、その足音の聞こえる先に大剣の切っ先を置くようにすることで後衛への進行を押しとどめる。

 

「ッ、このぉ!」

 

 進めようとした歩を切っ先によって阻害され、苛立ちの声と共に蹴撃が来る。それを伏せるようにして躱し、重めにオーダーメイドをしてもらった短剣で斬り返すが、反射神経任せに回避される。

 

 ただただ、速い。

 

「くっそ、こっち来いよおらァ!」

 

「へっへー、残念ペコねー!誰が好き好んで接近するペコか!」

 

 剣持さんが斬りつけようとする地点では既に隣接した間合いからすらも離れ終えている。ひたすら極められた、ヒット&アウェイ。現状こそ拮抗しているように見えるが、1VS5の地点でこれなのだ―――1人欠けた地点で一気に相手へ形勢が傾くだろう。

 

「もっちーさん、左っ」

 

「りょー、かいっと!」

 

 俺の方から抜ける事を諦め、剣持さんの方から抜けようと試みるが―――其方は俺より耳の良いゆうきが剣持さんの補助をしてくれる。机の無い最短距離を塞ぐように剣持さんが動き―――蹴りの間合いを見極めて後ろへ躱し、納刀していた刀を一閃させた。

 

「だぁ!?外したッ!」

 

「いや、アタシの髪数本斬ってるから当たってるって!高くつくペコよ…ッ」

 

「髪の毛数本と俺の命が等価とかマジで無いわー!!」

 

―――存外貴方方余裕あります、ねッ!

 

 剣持さんの移動した分を詰めるように踏み込みつつ、右手に持つ軽量化した大剣を力任せに振り下ろす。元々大剣の射程が長い為、剣持さんでは届かない距離でも此方は届く。だが、其れですらも少女は危なげなく回避しきった。

 一撃当たればあの軽装だ、それなりの致命傷となるはずだというのに―――その一撃が、あまりにも遠すぎる。

 

「よい、っしょ!」

 

「机投げるとか非常識過ぎないペコか!?いや、避けれるけど!」

 

「信者がお布施だけで生きていけると思ったら大間違いだよッ」

 

「うわぁ、すっごい世知辛い!」

 

 天音さんの机投擲に驚きながらも安定した回避を見せ、突っ込みを入れる少女。然して信者の金銭事情に思わずゆうきが反応し、微妙に緊張感が緩む。

 …まあ信者一筋でやれるのはそれでこそ半数いるかどうか、残りの半数は副業として何らかの職に就いていることが多い。後は裏お布施とか賄賂とかの黒い話になるのは黙っておく。

 

「こっち、窓開け切ったよ」

 

 葉加瀬さんの言葉に小さく頷き返しつつ大剣を背中の鞘に納める。然して短剣は持ったまま、少女の動きに備え―――

 

「…なら、ごりおす!」

 

―――剣持さん、こっちで受け持ちま―――

 

 風を切る音、直後に小柄な体躯から発せられたとは思えない衝撃が革鎧の上から突き抜けた。大きく、息を吐き出させられる。

 

「げんくんっ!?」

 

―――問題、ない!

 

 吐き出した空気を、噛み千切るように食いしばり。その最中に剣持さんが少女へ抜き身の刀を3度、きらめかせる。いずれもそれなりの精度を持つ一撃であり―――3撃目に少女がサマーソルトで刀を蹴り上げた。

 

「よぉ、やく見えてきたァ!」

 

「…、厄介ペコね…!」

 

「突き抜けてますからね、特に顎とか」

 

「この鋭い顎は東の俺、西の崩竜と伝わっている程度には誇りに思ってる!―――という事で泡沫、少し時間稼ぎ頼んだ!」

 

―――信用しますからね、その言葉!天音さん、回復頼みます!

 

 サマーソルトで下がるのに合わせ、少女の間合いで短剣を振るっていく。

 ―――行動の速さはだいたい少女>>>剣持さん>>俺>他3人だろう、剣持さんが3回目で相手に受け流しを使わせたことを考えると―――俺の場合は5回手数が必要だ。

 正直、スタミナの割に合わない。1度斬りつけるだけに留め、回避されたのを見送り―――

 

「少しばら撒くね、これで少しは耐えられると思う」

 

―――助かります。

 

「あざっす!」

 

 葉加瀬さんが振りまいた水膜の粉塵が表皮に着くと、うっすらと膜が出来上がる。水の力によって物理防御、特に打撃耐性を付与する効果は蹴撃に対して大きく貢献してくれる。

 その間、ゆうきは深呼吸をしている。恐らくは符歌*1の準備だろう。

 天音さんは先程の言葉を受けて、詠唱を始め―――少女が動く前に、自身に治癒の奇跡が施される。

 

「いや、ガチすぎないペコか!?」

 

―――仕留める、俺がそう言ったからにはとことん詰めてやりますよ。人任せなのが申し訳ないですけど!

 

「あ、それなら試合終了後に打ち上げのお金持ってね!」

 

―――20位以内に俺が入ったら考えてもいいですよ!

 

「うっし言質は取ったからな!」

 

「げんくん、全く別の所から言質取られてるけど…」

 

 剣持さんに言質を取られたがこの際必要経費である、しっかり出させてもらおう。天音さん、葉加瀬さん、蒼乃さん全員含めて。…ギルドで稼いでいてよかった、内心で安堵する。

 但し20位以上等凡人未満の俺に行ける気はしないが。

 

「うぅーっ、勝った気になるなペコぉ!」

 

 横蹴り、踵の返し、地面に手を付いてのミサイルキック。2撃迄はどうにか回避しきるが―――本命であろうミサイルキックは回避しきれず、直撃して吹き飛ばされた。革鎧、水膜の粉塵のお蔭でどうにか耐えきれたが―――口端から血が流れる。

 ミサイルキックの反動で転倒していたが、即座に少女は手首のスナップを聞かせて跳ね起きる。

 

―――効きました、結構痛いです。

 

「水膜貫通したけど、大丈夫?」

 

―――寧ろ水膜のお蔭で生き残れました。天音さん、回復をお願いします。

 

「ん、分かった!」

 

 元気な声と共に奇跡の詠唱が始まる。剣持さんは呼吸を整えつつ―――瞑想をしているようだ。ゆうきも準備ができたのか、周囲に聞き耳を立てて警戒を再開してくれる。

 

「それじゃ、もう少し強化しよっか」

 

 葉加瀬さんが呟きの後、赤い粉塵を剣持さんの刀にかける。

 

―――材料費は俺の方から補填します…

 

「俺としちゃ助かるけどさ…これ、過剰火力じゃね?」

 

「大丈夫、これを見て逃げてくれれば御の字だし」

 

「「(ぼく・俺)の準備の意味ッ!?」」

 

「あ、あはは…泡沫さん、治癒入るよっ」

 

 苦笑いと共に、再度自身の肉体から痛みが抜けていく。

 

―――助かります、天音さん。

 

「…じり貧ペコね…勝負は預けさせてもらうペコ!」

 

―――「「「「あっ」」」」

 

 脱兎。

 その文字通り教室の扉から姿が消えるのを、俺達は見送る事しかできなかった。準備をわざわざしていたゆうきと剣持さんが両手を床に付け、負の感情を揺らめかせている。

 

―――ま、まあ…生き残れたのは御の字ですから…此処に長居するのもあまりよくないですし、窓から別の場所に行きましょう。

 

「りょーかいっ」

 

「ん。2人はどうする?」

 

―――勝手についてきてくれると信じましょう。

 

「「この鬼!?」」

*1
魔術的な効果を保有する歌。[スタミナ]を用い続ける間効果を発揮できる




ラウンド数にして5、経過時間は1R6秒*6人の行動なので180秒(3分)。
行動はだいたいこんな感じですね
戦闘開始

第1ラウンド
兎田さん:通常移動(スピードホリックで隠密付与)で後衛へ突撃→幻夜が割り込みで移動阻害→蹴りによる攻撃→回避後クロスカウンターでスタミナバー1本消費→回避+跳躍で距離を取り直す
剣持さん:納刀。
幻夜:待機(スタミナ回復)。
天音さん:バリケード作成の為に机投擲。
蒼乃さん:待機。
葉加瀬さん:脱出路の窓開放

第2ラウンド
兎田さん:通常移動で後衛へ再突撃→蒼乃さんが聞き耳で位置指定→剣持さんが割り込みで移動阻害→蹴りによる攻撃→回避後クロスカウンターでスタミナバー1本消費。刹那の攻勢+カウンターで反撃超火力→回避+跳躍で距離を取り直す
剣持さん:納刀。
幻夜:通常移動後、大剣で攻撃→兎田さんが回避+跳躍で距離を取り直す
天音さん:机を投擲→兎田さんが回避
蒼乃さん:聞き耳による割り込みで主行動不可。
葉加瀬さん:脱出路確保完了。

第3ラウンド
兎田さん:主行動の全力移動でソニックブーム→幻夜が移動妨害で受け止め、ダメージ
剣持さん:技術/霞三段による瞬間的な3回攻撃→兎田さんが回避2回、回避レベル<剣持さんの武器術レベルとなった為に蹴りで受け流し。
幻夜:短剣による攻撃→兎田さんが回避
天音さん:幻夜に奇跡:治癒
蒼乃さん:待機(スタミナ回復)。
葉加瀬さん:水膜の粉塵を前衛組に投擲、打撃耐性+20

第4ラウンド
兎田さん:蹴りによる連撃、最終のみミサイルキック→幻夜が回避2回、ミサイルキック直撃→兎田さんが転倒→兎田さんが登攀技能によって転倒を回復
剣持さん:瞑想。
幻夜:待機(スタミナ回復)。
蒼乃さん:聞き耳で周囲警戒
葉加瀬さん:鋭利の粉塵を剣持さんの刀に付与。斬撃属性+25。

第5ラウンド
兎田さん:臨戦態勢解除→全力移動による逃走

戦闘終了
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