バーチャルライフオルタナティブ[無冠の王]獲得RTA挑戦記録 作:神仙神楽
おかゆのおにぎり屋で雑談に花を咲かせている3人を見る。
最後に会った5年前と比べ成長した姿の細部に面影があるお蔭か、そこまで大きな違和を覚えない。ころねとかなたはこれから遊びに行くのか予定を話し合ってるし、おかゆはそれを微笑ましそうに見守っている。
「…?」
おかゆが此方の視線に気付いたのか、此方に向いて首を傾げた。それに対して「皆の姿を見たのは久々だが、昔と変わってない等と思っていた」とだけ返し、3人の様子を話が終わるまで見ていた。…おかゆは俺の言葉を聞いて気恥ずかしかったのか、ちらほらと視線を向けてきていた事は此処だけの話である。
話が終わったところを見計らい、「宿屋を探してくる」と3人に伝えておにぎり屋から出る。…あの共同墓地に入った時から此方の様子を伺っている影があったが、特に行動を起こさないのは何故だろうか。監視者であることを知っているのであれば、それこそおかゆやころね、かなたを人質にすれば無力化は容易であるはずだ。俺が人質を見限れる性格をしてないのは、るしあの時で明らかとなっているだろうし。
…分からないなら、此方からコンタクトを取ればいい。此方を追跡してきていた気配のある場所に意識を向け。瞬間的に2回ステップを踏むことで相手の視線を振り切り短剣を突きつけながら話しかける。刃先は首の皮一枚すれすれに。
―――俺に何の用だ?
「あー…、何時から気付いてた?」
暗い緑の迷彩服を着た男性が、両手を上げながら此方に聞いてくる。背中には大弓と―――恐らくだが、時空魔術によって空間を拡張したと思われる巨大な矢筒。腰には細工の為のツールが不可解なほど大量についている。…最悪なのはまほろば内部に派遣された―――
―――諜報員でないなら答えよう。
「んー…まあ、後のこと考えんなら此処で嘘を吐くわけにはいかないなぁ…人魔戦線*1のグルート*2隊所属、第18隠密部隊長のゾムーク。グルッペン総司令から戦力確保の為にまほろばの白上嬢と話を付けに来てた。んで、特徴と一致するあんたを見つけて追跡してた」
眼を見る。
…所属については嘘ではなさそうだが―――、それ以外が怪しい。
―――共同墓地に侵入する前から。
「…マジかー、それなりに自信はあったけどなぁ…流石は監視者の長様、ってところか」
―――ヒュトレイ総司令の情報網程ではない。それにその肩書は既に返上済みだ、世間で俺は死人だしな。
「ま、そりゃそうだ。とはいえうちの総司令が戦力を遊ばせるという事をする気はさらさらない。―――滅びと相討った旅団"監視者"の元長なら総司令に対するいい手土産にはなるだろうしな」
…顔を顰めながらも、彼の首筋にあてていた短剣を下ろす。…正直に言うのであれば、状況は最悪だ。情報漏洩を恐れてゾムークを亡き者にしたらまほろばが危機に陥る*3。かといってゾムークをここで逃せば―――
「…まぁ、総司令も悪いようにはしないと思うぜ?ただ、スース*4の戦線が切り崩せないのもあって、奇襲を仕掛けられるだけの即戦力を求めているのも事実だ。俺の休暇という名目でまほろばに来ているだけだしな…あれ、これガチで休暇扱いになってねぇよな…?」
―――一度、まほろばの長に話を通させてもらうが構わないか?
「構わねぇよ、此方としても再度白上嬢と話ができる可能性が出来そうだしな―――じゃ、
―――
…然し、ここでまた彼女達―――否、彼女を悲しませたくはない。そうなると、中立性を失ってでも"まほろば"に所属し―――人魔戦線へ派遣されるか。
或いは。彼女だけを連れてまほろばから去り、隠れ里でひっそり過ごすか。
―――ままならないな…
"世界が続く限り、滅びは避けられない。せいぜい、足掻くと良い"
脳裏に、マキナの淡々とした声が反芻する。
―――死ぬまでは、そうさせてもらおう。
今は、フブキに話を通して―――彼女への、答えを返すことを考えなければ。