ドリフティング・マイ・ウェイ   作:三途リバー

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気持ちも新たに、島津豊久を主人公に再出発です。
今回は特に見せ場もない導入ですが、よろしくお願いします。


Nice to meet you.

(いかん、舐めちょった)

 

四方八方あらゆる方向から視線が突き刺さる中、島津豊久は心中でボヤいた。ある程度は覚悟していたが、まさかこれほど露骨に好奇の視線に晒されるとは。

自分遠巻きにを取り囲んでヒソヒソと囁く少女達の方を向いてみれば、皆慌てたように視線を外してしまう。そちらから見てきた癖にと文句の一つも言いたくなるが流石にこの状況でそれを言うのは酷だろう。なにせ、豊久は今この場において唯一の男なのだから。

 

ここはIS学園、男子禁制である筈の女の園だ。

女性にしか扱えないと言われていたパワードスーツ、インフィニット・ストラトスの操縦、整備などを中心に学ぶ高等教育機関である。ISを扱えるのが女性だけならば当然生徒は女子のみ、そんな場に1人の男が放り込まれれば珍獣扱いされるのは自明の理であろう。

 

なぜ男である豊久がそんな女だらけの場所で針の筵になっているのか。理由は簡単、彼がISを動かしたから。

 

3ヶ月前のテロに起因する世界初の男性操縦者発見のニュースは尋常ならざる衝撃を世界に与え、それこそ天地をひっくり返す大騒ぎとなった。マスコミが自宅はおろか中学校まで押し掛けてきたり、サンプルを採集しようと怪しげな研究所職員が訪問してきたりとてんやわんやである。しまいには露骨に豊久の身体を解剖したがる連中まで出て来る騒ぎとなり、我慢の限界に達した豊久はそれらを尽くぶん殴って叩き返した。そこを日本政府に保護(管理)され、IS学園への入学が強制的に決まったわけだ。

 

(あんヒゲ眼帯…次()うたらぶん殴らんと気が済まん)

 

『喜べよ、全国どころか全世界の超エリート女子の綺麗どころを集めた女の薗に黒一点だぞぅ?選り取りみどりじゃわい、ちっとくらい乳揉んでも許されるわ』

 

唐突に入学を知らせ、最悪のジョークをぶちかましていった五十路のイカレ野郎を思い起こせば自然と拳に力が入る。なにが黒一点だ、客寄せパンダの間違いだろう。

そんなこんなで豊久が1人でイラついていると、隣に誰かが立つ気配。

 

「あ、あの……」

 

「はん?」

 

うわぁ、話しかけたー、出遅れた、という女子の声がソワソワと響く中、その原因たる1人の女子が声をかけてきた。この互いの牽制の雰囲気の中たった1人で特攻したのだ。勇気があろう。

 

「島津忠豊、だよな…?」

 

どこか恐る恐る、と言った感じの問いかけ。

何故(ないごて)(おい)の昔ん名ぁば知っちょる…と豊久は一瞬考え込んだが、その少女の顔を見て疑問は氷解した。

 

「箒か…!」

 

大和撫子と言うにふさわしい、黒黒としたポニーテールの美髪に、服の上からでもよく分かるスラリとした体。

彼女は篠ノ之箒。豊久…旧名忠豊の幼馴染にして剣友である。

 

「…!覚えていたか…!」

 

嬉しそうに顔を綻ばせ、顔をほんのり赤くと染める。誰が見ても一目瞭然な思慕の情が、そこにはみてとれた。

 

「当たい前でなか!なぁんが、お前ぁもこん学園に来たんか!久方振りじゃのう!大きゅうなったのう!」

 

「な、なっ!?どこを見て言っている貴様!」

 

「む?」

 

豊久としては身長の事を言ったのだが、ナニを想像したのか幼馴染は真っ赤になって指を差してくる。

 

「身の丈ぞ。何を怒っとる?」

 

「ッ~~~!」

 

当たり前と聞いて嬉しそうにしたり、大きくなったと言われて顔を赤らめたり、表情豊かな女子だ。都合6年ぶりの再会となるが、昔と何も変わらない。男一人の地獄のような空間で気が滅入っていたが、知り合いの存在は心強い。豊久の仏頂面も、知らずのうちに年相応の笑顔に変わっていく。

 

「島津くん、ちょっと怖い人かなって思ってたけど…」

「うん、なんかおっきな動物みたいだよね…」

「「「可愛い……」」」

 

そんな失礼な周りの声も耳に入らないほど、豊久と箒は旧交を温めて昔語りに花を咲かせている。転校先でどうだったとか、剣道は続けているのかとか。

因みに、豊久は中学2年生と3年生で剣道の全国大会を連覇している。大元の流派は異なるが、幼い頃は箒の実家が営む篠ノ乃流の剣道場で共に切磋琢磨したものだ。

 

「千冬さんも息災か?」

 

「おぉ、姉上なら死ぬ程似合わんこつやっちょるど。お(まぁ)も見たら笑うに(ちご)いなか」

 

 

 

「入学早々死にたいらしいなこの愚弟が」

 

 

 

 

背後で響いたのは地の底から湧くような声。確認するまでもないその声の主を振り返るより早く、豊久は咄嗟に両手を振り上げた。

ばしん、どころかズドン!くらいの勢いで振り下ろされた出席簿をなんとか頭上で白刃取りすると、そこに見えるは角の生えた鬼女。

 

「ほう、多少はできるようになったな」

 

「生徒殴るんは体罰じゃろが姉上ェ!!」

 

「学校では島津先生と呼べ、馬鹿者。それにこれは姉弟のスキンシップの一環だ、問題ない」

 

「秒で矛盾しちょっど!やっぱい教師など向いとらんわこんお人…」

 

「そしてこれが教師の教育的指導だ」

 

「いでぇ!?」

 

手が塞がっている状態でまともに拳骨をくらい、流石の豊久も机に伏す。教壇へ向かう姉に恨みがましい視線を向けるが、当の本人はそんなもの何処吹く風とSHRを仕切り出す。

 

「入学おめでとう、諸君。私がこの1年1組を受け持つ事になった島津千冬だ。」

 

島津千冬。ISの世界競技大会「モンド・グロッソ」の第一回優勝者にして、島津豊久の姉である。

 

「「「「キャァァァァァァ!!!!」」」

 

「本物の千冬様よ!」

「お姉様って呼んで良いですか!?」

「私、千冬様に会うためにここに来たんです!北海道から!」

 

爆発的に広がる黄色い悲鳴。思わず耳を防いでしまうほどの凄まじい人気だ。

しかし世界中のIS操縦者が憧れる最強の称号を冠している日本、いや世界のブリュンヒルデが目の前にいるのだ、はしゃぎも騒ぎもするだろう。

 

「私の役目は諸君を1年間で使い物になる操縦者に育て上げる事だ。私の言うことはよく聞き、そして素早く実行しろ。私の命令にははいかイェスで答えろ。無茶だろうがはいかイェスだ。」

 

暴君もいい所だ。そんなんだから24にもなって浮いた話のひとつも……

 

「何か失礼な事を言われた気がしたが…まぁ、良いだろう。そこの馬鹿、とっとと起きろ。各々の自己紹介の前に、副担任を紹介する。では山田先生、お願いします。」

 

「はいっ!」

 

元気よく答え、千冬の隣に立ったのは緑髪の女性だ。小柄な身長とあどけなさが残る童顔が相まり、ある一点(胸部)さえ見なければ生徒と言っても通用する。

 

「副担任の山田真耶です。皆さんとは普段のSHRやISの稼働で関わって行くことになります。1年間、皆で協力して楽しいクラスにしていきましょう!」

 

そんなのんびりとした雰囲気の副担任だが、豊久はこの女性に見覚えがあった。というよりガッツリと記憶に刻み込まれている。

思い起こされるのは今から約2週間ほど前、IS学園への入学が決まった後に執り行われた実技試験(という名のデータ取り)のこと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『首置いてけ!大将首だ!大将首だろう!!なぁ大将首だろうお前!!』

 

 

『ギャーーーーーッ!!殺されるーーーッ!妖怪首置いてけだーーーッッ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「年上じゃったんか…」

 

何を隠そう、ISを用いた初の実戦にテンションが上がり、つい張り切ってしまったテストの際の試験官だ。顔立ちから同い年くらいだろうと思っていたが、まさか自分より上、しかも教師とは露ほども思わなかった。だが同時に、取り乱しながらも終始冷静だったISの立ち回りに年季を感じたのも事実。幼い頃からISに触れている女子はやはり違うと思っていたが、驚きと納得が同時にやって来たおかしな感覚である。

 

「今年はちょっとイレギュラーなこともありますが、皆さんが快適に、そして有意義な生活を送れるよう頑張りますので、よろしくお願いしますね。ではまず自己紹介から始めていきましょう。出席番号順に……」

 

そして始まる自己紹介だが、豊久の意識は完全に先の()に向いている。勝ちを手中に収めはしたが、ISを相手取るとなると対人のように一刀で決着というのは中々難しかった。今後はより技に磨きをかけ、誰の目にも明らかなように首を奪って勝ち名乗りを──

 

「あ、あのー…島津くん?島津豊久くんっ」

 

「む?」

 

「ご、ごめんね。大きい声出しちゃって、驚いたかな?でもごめんね、自己紹介の順番、『あ』から始まって『し』の島津くんの番なんだよね。だから、ね?自己紹介お願いできるかな…?」

 

不安そうにペコペコと頭を下げる真耶に、豊久の意識が呼び戻された。どうやら生徒にシカトされたかと勘違いしているらしい。申し訳ないことをしたと頭を下げ、立ち上がる。

 

後ろを向けば無遠慮に向けられる数多の視線に、好奇に彩られた表情。より一層強くなるそれらをゆっくりと見渡すと、豊久は深く息を吸う。この手の連中には、()()()に限るのだ。

 

 

「島津中務少輔豊久!よろしゅう頼んど!!」

 

 

雷鳴の如く響き渡ったこの一言から、豊久の波乱万丈の学園生活が始まった。

 

彼が何を成し、その存在が世界に何を齎すか。その場の誰もが、今はまだ知る由もない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

島津豊久

世界初のIS男性操縦者。宮崎県出身、鹿児島県在住の16歳。

幼い頃から剣道を学び、中学時代には全国大会で二連覇を果たすほどの腕。とある事件に巻き込まれ、ISを起動させたことから日本政府に身柄を保護された。全ての勝負事を「戦」という概念で認識しており、勝利=功名を得ることに尋常ならざる執着を見せる。

初代ブリュンヒルデ・島津千冬とは姉弟の関係。

 

 

 

 

 




そんな訳で、ドリフターズ×ISのクロスオーバーです。今後ドリフターズ側のキャラクターも順次出していく予定ですので、お楽しみに。

因みに筆者の一番好きなキャラクターはドリフターズではお豊、ISではシャルです。

そしてドリフターズもISもいつになったら新刊出るんですかね……?ISに至っては次最終巻なのに3年くらい音沙汰無しな気がするんですけど…
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