時間は戻り、皐月賞前まで戻る。
「トレーナーくん。皐月賞に出走するようだが…誰が出るのか確認しているのか?」
ハヤヒデが話しかけてくる。俺はトレーナー室で積まれた書類の影で答えた。
「一応は…だ。机の上にあるだろう?確認してくれ。それと、グラスどこいった。」
「グラスくんなら、今頃道場だと思うけどね。さてと、ゆっくり見させてもらおうかな。」
ハヤヒデは机の上にあった書類を持って椅子に座る。髪の毛を踏まないように何回も何回も座り直して。俺は書類の山で見れなかったが、音で大体座り直しているのはわかる。
「ふぅ。髪の毛が長いのも考えものだな。」
ハヤヒデは少しため息を吐きながら書類に目を通した。
「ふむ。タキオンくんにマルゼンスキーくんが出ると。厳しい戦いじゃないか?トレーナーくん。」
「間違えなく厳しいな。でも、ハヤヒデさんならできるでしょ。とりあえず、書類手伝ってくれない?」
「グラスくんより『トレーナーさんが絶対助けを求めますから、絶対に助けないでくださいね。』と言われたのだ。悪く思わないでくれ。」
「これは徹夜コース確定かな…。ハヤヒデこれ。本日のトレーニングプラン。オーバーワークしないように。」
ハヤヒデはトレーニングプランの紙を受け取り、目を通して「了解した。」と答えてトレーナー室を出ていった。
俺は「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!」と叫びながら書類を片付けようとしていた。
(ハヤヒデ視点)
トレーナーくんからトレーニングプランを渡してもらったが、スピードとパワー中心のトレーニングだと思っていなかった。スタミナも少し上げたりするらしいが、勝つために後ろから抜けるようにパワーを上げるのだろうか?それはそれでいい思う。さて、パワーを上げるためにトレーニングルームに向かう。色んなウマ娘が走ったり、歩いていたりする。
「バクシィィィィン!バクシンバクシン!バクシィィィィン!」
「バクシンオーさん廊下は走るものではありません。歩いてください。」
「ちょわ!学級委員長として失態!以後気をつけます。」
こんな会話も日常茶飯事でもある。私はスタスタ歩いて、トレーニングルームに行く。右見ても楽しそうな会話。左見ると教室の中で読書をするウマ娘。
トレーニングルームに行く前に着替えなければならないのを思い出した。だから、私は少し速足で更衣室に向かう。
「ほっほっ。トレーナー室から更衣室は意外と遠いのか。いつも外集合だったから遠いな。」
私が独り言を言いながら速足していると後ろから話しかけられた。
「やぁ、ハヤヒデくん君もトレーニングかな?」
「その声はタキオンくんか。君、皐月賞に出るのではなかったか?」
「そうだとも。今からトレーニングルームに向かっているんだか…いつも実験ばっかりでね。着替えるのを忘れていたのさ。」
「奇遇だな。私もだ。一緒に向かうとしよう。」
「いいとも。君のその髪のことも気になるからね。」
私はタキオンと速足で更衣室に向かった。
更衣室に着いてドアを開けるとカフェ君が着替えていた。
「あっ。ハヤヒデさんに…タキオンさんですか。」
「カフェ!私の顔を見る度にガッカリするのはやめた方がいい。それとも実験されたくてその顔なのかな?」
「やめてください。近づかないでください。にっこりしながら薬を出さないでください。どこから出してるんですか。」
「連続のツッコミ。君は相変わらず面白いね。」
「タキオンさんに褒められるのは嬉しくないです。」
タキオンくんとカフェくんの会話をしている間に私は着替えていた。
「また…小さくなったのだろうか?キツい気がする。」
私は体操服を着て思ったことを呟いた。すると隣で着替えていたスズカ君が「嘘でしょ…」と思っている顔でこちらを見ていた。私はどんな言葉をかければいいのかわからず更衣室から出た。外にはいつの間にか着替えていたタキオン君とカフェ君が話していた。
「ところでカフェ。君は皐月賞に出ないのかな?」
「はい。無理にきつい戦いに行く必要は無いとトレーナーさんより伝えられましたから。」
「そうなのかい。なんだか意外な判断だね…君のトレーナー君は。」
「そうですか?あの人結構慎重派ですよ?」
「ふぅん。なかなか興味深い。次のレースは何を行くのかな?」
「まだ決まってません。多分GⅡと思いますけど。」
私は話の中に入れずに更衣室のドアの前で立ち尽くしていた。私は静かに壁沿いへトレーニングルームに向かうと「やぁ、待っていたよハヤヒデくん!」と話しかけられた。さっきまで空気にしてたのにいい性格していると思った。
「うんうん。そうだね。君のことを空気にしたことを謝らないといけないな。すまない。」
「いや、いいんだが…勝手に人の内心を読み取らないでくれ。」
「すまないと言う思いを見せるためにこの実験データを見せよう。」
「これは…?」
「グラスワンダー君が君のトレーナーくんに思っている内容だよ。」
「見せられてもどうすることできないだろうが!」
私は実験データを取り上げて床に投げつけた。タキオン君が少し悲しそうな顔をして歩いていった。私はトレーニングルームにカフェ君と話しながら向かった。
「先程はすみません。タキオンさん私と話してると周りが見えなくなるみたいで。」
「いや、大丈夫だよ。いつもこの髪の毛で存在感があった私からしたら新鮮だった。さて、トレーナー君曰く本日のトレーニングは…っと。ふむ…スタミナ系か。」
「トレーニング表用意されているんですか?」
「ん?いや、トレーナー君が事前に作っといてくれるんだ。それを私はトレーナー室に取りに行くことになってる。今日は室内だがね。」
「いいですね。私のところはトレーニング表ないんです。口伝えで終わりです。まあ、覚えれられますからいいですけど。」
「そうか。しかし、忘れることは無いだろうか?」
「大丈夫ですよ。私の友達が覚えてますから。」
「そ…そうか。」
「ところで、ハヤヒデさんの次のレースは皐月賞ですか?」
「突然だね。ふむ、そうだが?」
「そうですか。トレーナーさんの同期ほとんどが参戦するのに私だけ不参加って少し悲しいような気がします。」
「仕方ないことだと思うがね。言えば強いウマ娘が集まっているのだから、あえて回避する方針にするトレーナー君達も居るだろう。さて、トレーニングルームに着いた。」
深く話し合っているとトレーニングルームに着いた。さほど遠くない距離なのに長く話し合った気がした。トレーニングルームのドアを開けると器具が並べてあり、サンドバッグやサイクリングマシンなど色んなものが置かれている。これ全て理事長の自腹と言うのだから恐ろしい。理事長は何者なのだろうか。お嬢様って情報は聞いたことがあるが…。カフェ君があとからトレーニングルームに入る。
「今日は少ないですね。」
カフェ君が指摘するように、いつもなら大勢のウマ娘達が居るのに今日に限って居ないのだ。ほとんど外でトレーニングはありえない。絶対に5人以上居るはずが2〜3人しかいない。私はメガネを掛け直し、周りを見渡した。すると、大体の原因がわかった。
原因はタキオン君だった。
「あの情報集めるの大変だったのだけど…まあ、ハヤヒデ君には要らない情報だったかもしれない。やはり、ちゃんと謝るべきだろうか?いや、でも…うーん。」
壁の方を向いて空気を重くしていた。それを不審に思ったウマ娘達が去っていったのだ。今でも1人また1人とトレーニングルームから出ていく。トレーニングルームには私達3人しか残っていない。とりあえず、タキオン君を戻すことを第1目標としタキオン君に近づいた。
(ハヤヒデ視点一旦終わり)
書類に埋まる机を片付けながら書類を見ていく時間か1番の苦痛だと俺は思う。山になっているからこそ、もっと苦痛になる。1枚1枚書類に目を通しては、カゴの中に入れて無くさないようにする。こんな作業を早朝から昼までしている。他のやつはちゃんとしているのだろうか。まあ…そんなこと考えている暇があるのなら書類をさばこう。
俺は書類の束を掴み取り1枚1枚見ていく。不備がある場合俺の方で訂正する。何故かトレセンの運営費などの書類が混じっており、その金額に吹き出す時もある。まあ…今回は入ってなかったと思いたかったが、「領収書」と書かれた書類がでてきた。俺はそれを恐る恐る書類の束から抜き取る。
「整地ローラー30万円及び花壇の工事50万円。支払い者秋山やよい…理事長80万も払ってる!?」
「どうしましたか〜?」
「おお。グラスか。いや、この書類見てくれ。」
「どれですか〜?」
「これだ。」
「はい。ちょっと待ってくださいね。えっと、これは領収書ですね。理事長さん凄いですね。」
「ほんとだよ。ところでグラス。手伝って。」
「んー…そうですね…。手伝ってもいいですけど、少し汗臭いかもしれせんよ?」
「気にしないから手伝って。これ終わんないよ。」
グラスの助けを勝ち取り、手伝ってくれることになった。
ハヤヒデに手伝ったらダメって言う癖には何気に優しいグラスだ。汗臭いぐらい俺は何も思わないと思いつつ、2人で書類を片付けていく。途中、松風が遊びに来たが追い返して書類を片付けた。だいたい、松風は元資本家だったらしく書類作業が得意中の得意らしい。資本家ってなんだよ。社長か?いや、あいつが社長ってありえないか。ほんと何者だろうか。
「トレーナーさん。これ、不備ですよ。」
「んー?あー、はいよ。これをちょいちょいと。はい。」
「ありがとうございます。」
「やっと半分かな?」
「そうですね〜。これ夜まで掛かりますね。」
「貯めてたわけじゃないんだが…なんでこうなった…」
「多分、発送忘れだと思います。たまにあるんですよ。各トレーナーに渡し忘れた書類を机の上に置いては放置していくらしいんですが…多分それかと」
「まあ。酷いですわね。全くですわ!」
「トレーナーさんふざけてますか?」
「いえ、ちゃんとやらさせていただきます。」
少しグラスに睨まれて俺は萎縮しながら書類に目を通す。グラスは俺が書類1枚に目を通す間に4枚見終わっていた。俺は「あれ?おかしくない?」と思いつつ、書類を見届ける。不備を直しながら書類を片付けた。何気に溜まっていた書類の山はもうなくなりつつあったのでグラスに休むように進めた。
「グラス。終わりそうだから休んでいいぞ。」
「それを言うのならトレーナーさんが先です。」
「いや、グラスだな。」
「トレーナーさんです!」
「グラスだ!」
「違います!トレーナーさんです!」
「グラスの方が疲れてるに決まってる!」
「どうしてわかるんですか!違うかもしれませんよ!」
「俺もグラスは以心伝心だからわかる!」
「それなら私もトレーナーさんと以心伝心ですから!」
「うん。こんなことで喧嘩って…一緒に休むか。」
「そうですね。仮眠室行きますか?」
「いや、寝たら完璧にやる気になれない。」
「そうですか。お茶入れてきますね。」
グラスはそう言って茶っぱを取りに行った。俺はトレーナー室から見える外を見た。外ではマルゼンスキーが走っていた。タイムを測っているのか早い。さすが『スポーツカー』が異名なだけはあると思いつつ、見続けた。2回目のタイムを測るのだろうか?中山と話している。俺は近くにあったストップウォッチを取り出し、マルゼンスキーの速さを測った。俺はその結果に絶句し、ハヤヒデの最終仕上げのトレーニング方法を考えた。
(ハヤヒデ視点にもどる)
タキオン君を元に戻し、トレーニングが始まった。ランニングマシンで走り、サンドバッグを殴り水分補給をしてまた同じことの繰り返し。タキオン君は紙を広げながらトレーニングをしていた。あれは自分に合ったトレーニング方法を探りながらやっているのだ。松風トレーナーはライス君に付きっきりでタキオン君は自分でトレーニング方法を考えると言ったらしい。なんとまぁ、すごいことを言ったことだと思う。私は理論しか組めないからその才能は欲しく感じる。カフェ君はと言うと、何ないところを見ながら話している。また友達だろうか?よく分からないが、仲良さそうだと思った。すると、生徒会長が入ってきた。
「やぁ、ハヤヒデ。ブライアンを探しているのかな?」
「いや、皐月賞に向けてトレーニングだ。」
「なるほど。そういえば、もうすぐだったね。あと…2週間後だったかな?」
「そうだ。しかし、会長がどうしてここに?」
「私だってウマ娘だ。トレーニングだってするさ。」
「ふむ。そうだったな。」
私と会長で話していると、戻ってきた他のウマ娘達がヒソヒソ話し出した。
「会長とハヤヒデさんが話してる。珍しいことあるんだね〜。」
「ね〜。1番相性悪そうだよね。」
「わかる〜。」
相性悪そうに見えるだろうか?逆にブライアンもの方が悪そうに見えるのは私だけだろうか?まあ…周りの意見など個人の考えの一つなのだから気にするだけ無駄だも思いつつ会長と話す。
「皐月賞に勝ちたいのなら、ある人を紹介してもいい。」
「?それは誰だ?」
「私のライバルである意味先輩でもある『ミスターシービー』だ。」
「生徒会長戦で票を取り合った相手か。ふむ、また会ってみよう。」
私は会長に言われた通りミスターシービーを探す。どこにいるのか分からないが会長曰く「シービーなら多分グラウンドに居るだろう」と言われたので向かってみた。
(ハヤヒデ視点一旦終わり)
何事も、全ては当日の天気による。芝の様子でトレーニング方法も変えなければならない…はずだ。だからこそ、今天気予報を見ている。皐月賞の日、天気は曇りのち雨。そうなるとだいたい芝は稍重になるか重になるかどちらかになる。さすがに不良にはならないと思う。俺は天気予報は時に変わるので確認を怠らない。その時ドアをノックされた。
「はい!どうぞ〜。」
俺は少し残ってる書類を見続けながら答えた。中に入ってきたのは会長だった。
「やぁトレーナーくん。」
「会長…?どうされました?」
「いや、先程ビワハヤヒデと話していてね。皐月賞に勝ちたいのでどうすればいいと相談を受けたのだが…」
「それで…なんて答えたんですか?」
「私のライバルを紹介してみたんだ。」
「ライバル…ですか?会長のライバル?」
「ああ。ライバルだ。ふふふ…悩んでいるようだが、私のライバルは1人だけだ。それは外を見てみるといい。」
「外ですか…?どれどれ。えっ…あのウマ娘は…」
俺は外を見てハヤヒデと話してるウマ娘を見て会長の方を見直した。会長はニコニコと笑っている。
「待ってください。あのウマ娘は『ミスターシービー』さんですよね!三冠ウマ娘の!『ミスターシービー』さんですよね!」
「トレーナーくん。何興奮しているのかな?」
「いや、だってあの『ミスターシービー』さんですよ!俺がトレーナーになろうと思ったのも『ミスターシービー』さんに会うためなんですから!」
「夢が叶ってよかったじゃないか。良かったら下に行ってみたらいいよ。」
「行きたいですけど…この書類が…」
「ふむ。これは…あはは。これは無理だな。」
「ですね…とりあえず、今回の用ってなんですか?」
「ああ。それなのだがね。今、小等部が見学に来ているのだ。それで今暇だろうと思って来てみたんだが…タイミングが悪かったかもしれないな。」
「いえ、大丈夫ですよ。どうぞ、見学するなら。」
「さすが今葉トレーナー君だ。じゃあちょっと呼んでくるよ。2人だけだから、気を使わなくていい。」
「わかりました。」
会長はそう言ってドアを閉めた。小等部が見学をしていると話は全然知らなかったが見学に来ているのなら拒絶するのも悪いことだ。頼むから松風のところには言って欲しくない俺がいた。会長がまたドアを開けた。
「じゃあトレーナー君。5分ぐらい説明と見学をさせてもらってもいいかな?」
「はい。大丈夫ですよ。んで、どなたが来たのでしょう?」
「小等部の『キタサンブラック』と『サトノダイヤモンド』だ。将来のトレセンの学生だから丁寧に扱ってくれたまえ。」
「わかりました。」
俺は後ろからこちらを覗いている2人の小さいウマ娘に話しかける。
「黒髪の君が『キタサンブラック』で栗毛でダイヤの模様がある君が『サトノダイヤモンド』かな?」
俺は2人の特徴を見て名前を確認した。2人の小さいウマ娘はお互いに顔を見合わせて頷いた。初々しくて可愛いものだ。俺は説明をした。
「ようこそ、今葉トレーナー室へ。さて、俺のことはわかってるかな?」
俺はわかりやすいように質問を受けながら説明する方針を固めた。サトノダイヤモンドが俺の質問に答えた。
「えっと…無敗伝説を作ったグラスワンダーさんのトレーナーさんです。」
「ダイヤちゃんしっかり勉強しているね。2人とも走るの好きかい?」
「「はい!」」
「こりゃ元気がいい。トレーナーの俺もこんな元気なウマ娘欲しいよ。っと、時間が無いから早足で説明していくね。」
「「お願いします!」」
「まず、ここは担当ウマ娘と作戦会議をする場所でもある。特に、今置いているホワイトボード。あれは皐月賞のことを書いている。俺の担当は次皐月賞だからな。もしかしたら、君たちも走るかもしれないね。そして、トレーナーの仕事はトレーニング方法を決めたり、オーバーワークをしてないかをしっかり確認すること。」
「し…質問いい…ですか?」
「はい。ダイヤちゃんどうぞ?」
「オーバーワークってなんですか?」
「小さい子には少し難しいかな。簡単に説明すると…んー…疲れているのに無理に走ったりすることかな。疲れているのに走ったらもっと疲れるだろ。それに怪我にも繋がるかもしれない。体を休めるためにも監視もしている。まあ…これでわかった…かな?」
「はい!ありがとうございます。」
「それと、トレーナーは担当と絆がないとダメだ。絆がなければ言うことを聞かないからな。んで、次だが…キタちゃんとダイヤちゃんには追いつきたいウマ娘はいるかな?」
俺はタラタラと説明するのは違うと思い、夢や理想の人を聞いてみることした。最初に口を開いたのは『キタサンブラック』だった。
「私は!テイオーさん!テイオーさんの走ってる姿がかっこいいんです!」
「確かに、帝王様の走りはみんなを魅了する力があるな。次の帝王様のレースは未定だったか。どのレース走るんだろうな。ダイヤちゃんは?」
俺はキタサンブラックとの話が終わったのでサトノダイヤモンドに話を振った。
「私はマックイーンさんです!マックイーンさんも走ってる姿がかっこいいからです!」
「マックイーンか。天皇賞を2度も邪魔されてるが、弱くはないな。2着に付けてることは強者ではあるな。じゃあ夢はあるかな?」
俺は追いつきたいウマ娘を聞いたので、次に夢を聞いてみた。先に答えたのはサトノダイヤモンドだった。
「私は…ジンクスを破ることです。」
「ジンクス?」
「はい。私の家系は『GIが勝てない』や『ヤギの呪い』と言われるジンクスがあります。それを破ることです!だからマックイーンさんみたいに勝ちたい!」
「なるほど。なら、中等部に来た時に俺がトレーナーになってあげたいな。必ず、勝たせてあげるよ。まあ…その時には居るか分からないけどね。」
「ありがとうございます。私の夢を聞いてくれて。」
「いやいや、聞くのは当たり前だよ。だって、グラスもウマ娘の頂点に立つって言う夢があったからね。夢には色んなものがある。キタちゃんにはあるかな?」
「私は…天皇賞春秋連覇です!」
「おっ!大きく出たね。」
「はい!テイオーさんを超えたいとずっと思ってますから!」
「大きく夢を持つことは大事だ。しっかり、それを忘れずにずっと持たせて闘志を燃やすことがレースに勝つことだよ。って感じでいいですか?会長」
俺は一通り話終わり、会長に話しかけた。会長は俺の話をしっかり聞いていたようで笑って返事してきた。
「ああ。いい説明にいい鼓舞だったよ。まさに、拳を上げて鼓舞する感じだった。」
俺は会長の洒落に気づき、冷や汗を流した。小等部の2人はよくわかってなかったのが幸いだったが会長は何か言って欲しそうにこちらを見ている。俺はどうするべきなのかと考えた。
「そ…そうですね!鼓舞するのなら拳を上げなくてはなりませんね!あははは…」
乾いた笑い声が静かなトレーナー室内で響く。会長は満足そうに「じゃあ、2人とも行こうか。」と言って出ていった。俺はその場でしゃがみこみ、数十分間落ち込んだ。
(ハヤヒデ視点)
私はミスターシービーと話している。掴みどころない本当に走るのが好きなんだろうと話していると伝わってくる。
「皐月賞は直線が短いから第3コーナー入る前に勝負を仕掛けるのがいいと思うよ。」
「なるほど。しかし、コーナーだと速度が落ちてしまうがそれはいいのか?」
「そんなこと大丈夫だよ。その足はなんのために走っているのかな?君を勝たせるためじゃないのかな?」
「なるほど。気合いを入れて前に出ろってことだな。ありがとう。参考になった。」
「いいよいいよ。強いウマ娘が出ることは私も嬉しいから。皐月賞絶対に勝ってよ。」
「もちろんだ。では、失礼する。」
私はそのアドバイスを試すために翌日グラスくんと併走した。もちろん、タイムを測っているから手は抜けない。トレーナーくんが「よぉいスタート!」とコールをして私とグラス君はスタートする。並ぶように走るが私が先頭に立つ。グラスくんはどうやら差しで勝負にするらしい。スタートする前に周りを見ているとミスターシービーがこちらを見ていた。少し遠目ではあるが、確実に見ていた。私はミスターシービーのアドバイス通りに第3コーナー前に勝負を仕掛けた。しかし、後ろから殺気と言うか睨まれている感じがした。グラスくんだ。グラス君が私…ではなく前を睨んでいるのだ。どこで勝負をかけるのか分からず、速度をあげる。それが仇となり、スタミナが無くなっていく。グラス君はそこと言わんばかりに私を外回りで追い抜いていく。どんどん距離を開けられ、グラス君に負けた。
「はぁはぁ…さっきのはなんだったんだ…はぁはぁ。」
「グラスの睨みに負けたか。見ててわかったぞ。」
「ああ。あれは確実に、王者の覇気ではなく…差し切る為の殺意だった。」
「グラスが無敗になった理由も少しはわかったか?それと、勝負所変えたな?いい場所だと思う。中山は直線短いからな。」
「ミスターシービーに教えてもらったのだ。今回のレース。第3コーナー前で勝負をかけさせてもらう。」
「ああ。頑張ってくれ。」
私たちは翌日が早いため早めに寮に戻った。
(ハヤヒデ視点終わり)
俺は全ての仕事を終わらせ、部屋に帰る。しかし、後ろから誰に付けられている感じがする。校舎内、校門前、寮通路。もうあいつらしかいない。バッと後ろを向くとびっくりしてすぐ隠れた影が2つ。堂々といる影一つあった。俺はその影たちに話しかけた。
「あのさ。着いてくるなら話しかけたらどう?同期の皆さん?」
「すまないね!さすがにこんな夜に話しかけたら不審者かと思われると思ってやめていたんだ。」
「大丈夫だ。お前は元から不審者だ。」
「ははは!今葉は面白いツッコミをしてくれるね。気に入ったよ。」
「お前に気に入られても困る。酒か?話か?発情か?いや、発情は困るな。それになんでおまえは隠れねぇんだよ」
「堂々とすべし、と前の仕事で習ったからね!」
「はぁ…いいや。とりあえず入れよ。」
俺は3人を俺の部屋に入れた。そして、酒飲みが始まる。
「今回の皐月賞雨らしいな!」
「…そうか。」
「お?どうした?坂本。お前のところは出ないんだろ?そんな落ち込むことないんだぞ★」
「…落ち込んではない。誰が勝つのか考えていた。」
坂本は酒を飲みながら、出走するウマ娘を見ていた。
「そりゃ、ビワハヤヒデよ!」
俺はそうやって答える。もちろん、中山は「いやいや、うちのマルゼンスキーだからな?」と言う。松風は「そんなぐらいで私のタキオンが負けると思っているのかな?」と言う。無駄に火花が散り、一触即発状態になる。こうなったら俺のすることは1つ。こいつら3人追い出すのみ。
「俺の部屋で喧嘩するなら出ていけ。」
と言ってポーンっと追い出す。俺はドアを直ぐに閉めて、鍵を閉め、チェーンをした。あとは風呂に入って寝るだけなので本日は終わり。
翌日、直ぐに中山競馬場に向かう。新しくデビューする子達を見るためだ。もしかしたら、この先対峙するかもしれないからこそ視察だ。レースを見て次は9レース目だった。ハヤヒデは控え室に向かった。松風もタキオンを送り出し、中山はマルゼンスキーと最後の作戦会議をしていた。俺は勝つことを信じているので、あえて作戦会議をせず。ハヤヒデの考えで勝ちに行くことにした。
時間は流れて次が11レース。皐月賞になった。パドックが始まり、ハヤヒデが肩に羽織っていたマントを掴んで飛ばした。周りの観客からは「おー!!」と言う声が聞こえる。次にマルゼンスキーが出てきて同じようにする。そして、声もまた同じ。アグネスタキオンも同じようにする。やはり、この3バがこのレースの鍵になるとファンたちからは理解されているのだろう。そして、本バ場入場。タキオンとハヤヒデが話しながら出てくる。気分は悪くなさそうだ。マルゼンスキーもファンたちに手を振っている。俺はハヤヒデを見ていた。すると後ろから話しかけられる。
「今日は一雨ありそうだね。君がハヤヒデのトレーナーかな?」
「あなたは…」
「走るのが大好きなウマ娘…と言いたいけど顔がバレてるから無理かな。」
「み、み、み、『ミスターシービー』さん!?」
「さん付けとはびっくりしたよ。」
「だだだだだって、俺…私?僕?『ミスターシービー』さんに会いたくてトレーナーになったんですから!」
「それはそれは。握手でもしてみる?」
「えっ?良いんですか?」
「もちろん。はい、初めましての握手だよ。」
俺は夢まで見たミスターシービーと握手をする。この手は必ず洗わない。そう誓う。
「さて、今日は一雨ありそうだね。少しさっき降ったから芝は不良。一波乱ありそうな展開だね。」
「ですね。」
俺とミスターシービーが話している時グラスはハヤヒデの入るゲートを見ていた。
「トレーナーさん。ハヤヒデ先輩は4枠です。」
「はい。4枠。チェック完了。さて、そろそろ始まるかな。」
皐月賞のファンファーレが始まり、クラシック三冠が始まったと理解する。これからのハヤヒデのレースがどうなるか期待する。
(またレースと実況を入れます。しかし、今回はしっかりと改変無しのやつですのでご安心を。)
実「最も『はやい』ウマ娘が勝つという皐月賞!成長を見せつけるのは誰だ!」
実「さぁ、1番人気の紹介です。ビワハヤヒデ。」
実「続く2番人気はマルゼンスキー。」
実「注目のウマ娘アグネスタキオン。現在3番人気です。」
解「気合十分。いい顔してますね!」
実「各ウマ娘ゲートに入って体勢整いました。」
実「さぁゲートが開いた。各ウマ娘綺麗なスタートを切りました。」
解「誰が抜け出すか注目してみましょう。」
実「先行争いはマルゼンスキー、アグネスタキオン、14番。」
実「期待通りの結果を出せるかビワハヤヒデ。」
実「マルゼンスキー快調に飛ばしていきます。先頭はマルゼンスキー単身で飛ばしていきます。」
実「2番手の位置で先頭を伺うのは2番」
実「1コーナーから2コーナーへ向かう。」
実「先頭集団を見てみましょう。」
実「ハナを奪っていったのは五番。続きましたマルゼンスキー。激しい先頭争い。内から14番。1番並びかけてくる。1バ身差18番。内から内から!8番。ビワハヤヒデここにいた。内から行く10番。アグネスタキオン追走。そしてその外から行ったのは17番。内12番。その後から3番。後ろ2番。少し後ろから9番。内から内から!7番。その後6番。」
実「2コーナーまわって向こう正面。」
実「現在1番手は14番。続いて5番。3番手にマルゼンスキー。少しうしろから1番。10番追走。1バ身離れて8番。それを見るようにアグネスタキオン。少し離れて18番。その内並んで12番。外を通りまして17番。その外並んでビワハヤヒデ。そしてその内まわって2番。少し後ろから9番。少し離れて7番。少し後ろから3番。そしてその後方には6番。後方2番手11番。13番最後方だ。」
実「まもなく第4コーナーだ!」
解「勝負所最後の直線へと駆けていきます!」
実「まだ先頭は変わらない!果たして抜け出すのは誰だ!?」
実「アグネスタキオン前を狙っているぞ!」
実「中山の直線は短いぞ!後ろの娘達は間に合うのか?」
実「並んでくるアグネスタキオン!アグネスタキオン!ここで抜け出した!アグネスタキオン、脚色は衰えない!」
実「残り200」
実「アグネスタキオンリードは2バ身。ビワハヤヒデ食い下がる。2番手争いはマルゼンスキー、ビワハヤヒデ。」
実「お見事!アグネスタキオン!着差以上の強さを見せた見事な勝利です!」
実「中山2000m!まず道を繋ぎました!アグネスタキオンまず1冠!」
実「2着はビワハヤヒデ!3着はマルゼンスキー!」
(実況終わり。実=実況、解=解説)
ハヤヒデは見事にタキオンに負けてしまった。しかし、タキオンは走りきったあと…蹲っている。俺と松風が駆け寄るとタキオンは笑ってこう言った。
「すまない。モルモットくんとハヤヒデくんのトレーナー君。肩を貸してくれないかな?足が痛くてね。」
足が吊ったのかと思いつつ、肩を貸す。普通負けた担当ウマ娘の方を優先すべきだが、同期の担当がこんな状態だと仕方ないと皆思うはずだ。医務室に運び、翌日病院に行ったらしい。
(松風視点)
さて、タキオンのあの痛がりようは吊ったのではない気がするのだが…とりあえず、検査待ちをしよう。病院内で私はその辺の紙を見る。そして、呼ばれ診断室の中に入る。そして、タキオンの骨のレントゲン見て驚く。骨密度が低い。医者から言われる言葉は容易に想像出来る。医者は重い口を開いた。
「アグネスタキオンさんの骨は…とても折れやすいです。昨日のは多分、骨に圧がかかったことによって痛みが出たのでしょう。これ以上の圧は掛けない方がいいでしょう。」
「つまり…どうゆうことかな?」
「これ以上走らないでください。次、走ったら二度と歩けなくなります。薬でどうにかする次元ではありません。現役を引退した方が身のためでしょう。」
「そう…ですか。」
私の口からは何も言えない。タキオンも静かに診断を聞く。私はとりあえず、今葉に電話する。
「やぁ…今葉少しいいかな?」
「そのトーンの暗さから的に悪かったんだな。とりあえず、理事長がお呼びだ。俺もどうやら呼ばれてるらしい。早く帰ってこい。」
「わかったよ。」
私は言われるがままトレセンに戻った。そして、理事長室に向かった。もちろん。タキオンを連れて。
「失礼します。」
「うむ!よくぞ来てくれた!今回のレースの結果聞いておるぞ!感謝ッ!またURAの人気も上がるだろう!しかし、アグネスタキオンの調子は悪いようだな。診断書も来ている。松風トレーナーに聞きたい。どうしたいのだ?」
この時の理事長はいつもの理事長ではなく、私を睨むような目だった。私はタキオンの夢を壊したくない。でも…どうすればいいのか。分からない。
「ふぅん。次走れば歩けなくなる。なんてスリルだと思わないかい?実験にはスリルが付き物さ。それに、理事長如きで私の実験を邪魔しないでもらいたいね。」
タキオンが理事長を睨んでいる。私はそれを見てこうゆった。
「私がほかのトレーナーに勝ったらダービーに出してもいいかい?」
理事長は私の目を見て答えた。
「肯定ッ!その覚悟しかと受け取った!するがいい!トレーナーダービーを!」
こうして、トレセン内でトレーナーダービーと言われる私とタキオンの最初で最後の大勝負が始まろうとしていた。
いつも読んでいる方。ありがとうございます。
初めての方。初めまして。
飽きたって方。ちゃんと出してるんだから読んで。
綾凪九尾です。
今回の遅れた理由を説明します。
理由は「艦これ」です。
私が艦これの小説を書いているのことはご存知ですか?
ご存知なくてもいいんですが、その艦これ小説に8990文字を書いてしまい。見事にウマ娘に向けるはずのやる気が艦これに使われました。これは私の責任でもあります。
すみませんでした。
謝罪ははこれぐらいにして。
今回は皐月賞…はほとんど最後。視点移動が多く、少し変わった感じになったと思います。そして、キタサンブラックとサトノダイヤモンドの登場。何か伏線のある会話。そして、あんまり出ていないグラスワンダー。
今回は色々とイレギュラーを混ぜこみました。私も初めてです。12000文字だなんて。私も書いたことないですよ。
えっ?なかったかな?あったっけ?まあいいや。
とりあえず、今回はここまでです。
次回はまた3週間後です。
来週は天皇賞・秋ですね。
一応、菊花賞が終わったあとは同じように天皇賞・秋の話になりますが、まだまだ先なのでお待ちください。
あと20話ぐらいこの小説は続きますので応援お願いします。
それでは締めさせて頂きます。
次回もよろしくお願いします!
綾凪九尾でした。