剣の皇は異界にて何を想う   作:天羽風塵

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第2話 魔王との邂逅

魔王学院。

正式名称を魔王学院デルゾゲートと言い、暴虐の魔王の血を引く者、すなわち魔族の中でも王族に位置する者たちを育成し、魔王に最も近き者、すなわち魔皇として君臨させるために設立された学院である。

 

そして、今。

その学舎に三人の男女が入ろうとしていた。

 

「フレー、フレー、ミーシャッ! ファイト、ファイト、キリヤッ!」

 

「がんばれ、がんばれっ、アノスっ! がんばれ、がんばれ、アノスっ!」

 

……恥ずかしい声援をバックにしながら。

 

さすがに恥ずかしいぜ、義父(とう)さん……

 

あの日、ミーシャに助けられてから一年ほど経つ。

あの後、俺はミーシャの家の養子となった。

ミーシャや養父たちとは結構仲良くやってる。

 

ちなみに祠にあった剣は今でも持ってて魔法陣に収納してある。

こっちに来てから分かったことだが、どうも魔剣の一種らしい。

折れててどんなものかは分からなかったが。

 

さて、話を戻すが、俺は今魔王学院の入学試験を受けに来ている。

ん?何で人間のはずの俺が来てるかって?

それが全く分からん。

前に少し調べたんだが、何故かこっちの世界に来てから俺の体は()()()()()()()()

 

まあ、いくら調べても分からなかったことに執着しても仕方ない。いつか分かればそれでいい。

 

それで、魔王学院の正門前まで来たのだが、俺とミーシャみたく保護者らしき人物から声援を受けているのがいた。

 

あ、どうもミーシャと目が合ったらしい。

 

「お互い苦労するな、二人とも」

 

「……ん……」

 

「全くだ」

 

そういえばこいつ誰だ?

ここにいるということと、親らしき人物を見た感じ、人間よりの混血だとは思うが。

ていうかこいつ……

 

「すごい魔力だな、お前」

 

「ほう、分かるのか。お前は?」

 

「キリヤだ。キリヤ・ネクロン」

 

「ん?キリヤだと?」

 

「どうかしたのか?」

 

「……いや、何でもない。ただ、昔の知り合いに同じ名前の男が居てな。それで懐かしくなった。俺はアノスだ。アノス・ヴォルディゴード。それで、そっちのお前は?」

 

「……ミーシャ……」

 

ミーシャが静かに名乗る。

 

「……ミーシャ・ネクロン……」

 

ここ一年共に過ごして分かったことだが、ミーシャは別に人見知りってわけじゃない。

ただ静かなだけだ。

 

しかしアノス、ねぇ。

どっかで聞いたことあるような、無いような……

 

この世界に来てからずっとこれだ。

外を歩いて有名な場所を訪れたり過去の有名人の名前を聞いたりするとほぼ確実に既視感を覚える。

実はこれが個人的に今一番気になる謎。

 

何せこの既視感、ありえないほど強い。

まるで一度この世界に来たことがあるような気までする。どういうことなんだか。

 

「よろしくな、キリヤ、ミーシャ」

 

「おう」

 

「……ん……」

 

そのまま正門をくぐろうとすると、目の前に男が立ちはだかった。

浅黒い肌をしており、全身を鋼のように鍛えてある。白い髪を短く切り揃えており、外見年齢は二十といったところか。

 

その男は見下すような底意地の悪い笑みを浮かべ、俺たちに言った。

 

「はっ。親同伴で入学試験たぁ、いつから魔王学校は子供の遊び場になったんだ?」

 

…………誰?

 

「……おい、あれ?」

 

「ああ……まずいな……。傍若無人なゼペスに目をつけられたら、あいつ、五体満足で帰れるかどうか……」

 

周りが騒いでいるな。小物感凄いけど有名なのか?こいつ。

 

「なあ、ミーシャ、アノス。お前らこいつのこと知ってるか?」

 

「いや、知らんな」

 

「……魔公爵ゼペス・インドゥ……それなりに強いけど性格が悪いのもあっていい噂は聞かない……」

 

ああ、なるほど。

 

「要するにチンピラか」

 

「……おい、貴様ら。謝るなら今のうちだぞ」

 

ひどく冷たい声だった。

ゼペスは容赦のない視線を向け、ぐっと拳を握る。魔力の粒子が集い、そこにいくつもの魔法陣が描かれる。

 

……五つの多重魔法陣に…… <魔炎(グレスデ)>か。その程度の魔法に魔法陣が多すぎるだろう。

 

ぱっと彼が手の平を開けば、闇を凝縮した漆黒の炎が召喚された。

 

「な……!?」

 

アノスが横でなぜか驚いている。いや、この様子だと呆れているのか。

 

「ほうら、驚いたか。いいぞ。命乞いをしろ? 俺の靴を舐めれば許してやる。でなければ、神々すら焼き尽くすと言われたこの闇の炎、<魔炎(グレスデ)>で、そのお嬢ちゃんの顔を骸骨のようにしてやってもいいんだぜぇ。ひゃはは「うざい」ははは…はぁ?」

 

おっと、つい声に出しちまったか?あまりにもうるさいもので。

 

「貴様、今何と言った?」

 

「うざいって言ったんだよ、魔公爵サマ」

 

そんな低次元の魔法で威張らないでほしい。それともこれが標準なのか?いや〜でも公爵って言うぐらいだからなぁ。最悪これでもトップレベルって可能性すらあるな。

 

「あー、まあ、とりあえずだ」

 

俺は右腕に魔法陣を展開。軽く手を振ってこいつ、正確には<魔炎(グレスデ)>の魔法陣に対して魔法を使った。

 

「<(セツ)>」

 

瞬間。<魔炎(グレスデ)>の五つの魔法陣全てが見えない斬撃に両断された。

 

「……は?」

 

「何をそんなに驚く?お前の魔法をただぶった切っただけだぞ?」

 

「ほう、なかなかやるな」

 

「……普通はできない……キリヤはその辺の感覚がおかしい……」

 

聞こえてるぞ、ミーシャ。

 

「貴様ぁ……これほどの侮辱……生きて返すと思うな……!!」

 

えぇ、面倒臭いのに絡まれたな……。

 

「ちょっと待て」

 

唐突にアノスがそう声を発すると、途端に金縛りにあったようにゼペスの体が硬直した。

 

「……どうした?」

 

「な……う、動かな……な、なにをしやがった……!?」

 

今のアノスの言葉、魔力が込もっていたな。言霊ってやつか。あとで教えてもらおっと。

 

「まあ、しばらくそこで反省しろ」

 

アノスに言われた途端、ゼペスはひどく申し訳なさそうな顔をした。

 

「俺はなんということを……初対面の人間に対する口の利き方ではなかった……ああ、穴があったら、入りたい……なんと申し訳ないことをしてしまったのか……」

 

案山子のように突っ立ったままゼペスは反省を続ける。

 

それを見た先程の受験者が驚いたような声を発した。

 

「……すごいぞ、あいつ。あのゼペスを謝らせてやがる……」

 

「もう一人の方も見たか。<魔炎(グレスデ)>の魔法陣を両断しやがった。相当な魔法の使い手だぞ……」

 

「……見ない顔だが、混沌の世代のダークホースになるかもな……」

 

大袈裟だなあ、こいつら。

……あまり本気は出していなかっただろうな。こいつの魔力だったらもっと魔力を込められたはずだ。

 

「待たせて悪いな。行こうか」

 

俺たちを待っていてくれたミーシャに、アノスはそう声をかけ、歩き出した。

 

「……キリヤ……アノス……」

 

小さな声で、彼女が俺たちを呼ぶ。

 

「なんだ?」

 

「……キリヤもだけど……アノスも強い……?」

 

は、と思わず一緒に笑い声が漏れた。

 

「否定はしないがな」

 

「この場合は適切じゃない」

 

今の一連の流れで一つ、分かったことがある。

 

「……なにが適切?」

 

「「あいつが弱すぎるんだ」」

 

こいつとは気が合いそうだ。

 

 

 




(セツ)

キリヤのオリジナルの対象を切断する魔法。
斬撃を同時に複数発生させることも可能。
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