大鏡の間に移動すると、すでにミーシャとアノスがいた。
俺が一番最後か。
「ずいぶんと派手にやったな、キリヤ」
「手加減はしないタイプだ」
ミーシャを傷つけるって言った時点で探し出して殺すことを即決したからちょうど良かったし。
「……キリヤ……」
「はい、何でしょうか」
「……やり過ぎは良くない……」
ごめんなさいとしか言えねぇ……。
「……でも……ありがとう……」
……恥ずかしいな……。
「……どういたしまして……」
俺はそう言いながらミーシャの頭を撫でた。
「……ん……」
ミーシャがくすぐったそうに目を細めた。
そういえば自然と流していたが、なんでこいつら俺がやったこと知ってんだ?あとさ………
「何で俺ら避けられてんの?」
「……私たちと言うより……」
「俺だな」
何やったんだよ。
お、決闘の記録映像見れるのか。ああ、なるほどね。
「これで俺の試合を見たのか」
「ああ、そうだ。それにしても焔華剣と言ったか。いい魔剣だな、あれは」
「そりゃどうも」
手持ちの中でも特に火力が一品だ。
……俺が魔法陣に収納している魔剣は非常に多い。数十本はある。
ただし、おかしな点が一つ。
俺は魔法陣にものを収納する技術をネクロンの家にある本で知った。
ミーシャは使えなかったみたいなのでなんとか独学で使えるようになったが、ここである問題が発生。
なんとすでにものが、それも大量の魔剣が収納されていた。
ミーシャが言うにはどれも一級品どころではなく、中には神々の時代のものであろう魔剣も入っていた。
そして、これらの魔剣に対しても覚えるのだ。
そう、
それも今までとは比べ物にならないほどの強いものを。
あろうことか今の時代では貴重どころの話ではないレベルの魔剣
それこそアノスと会った時と同レベルで。
ていうかあいつも何なんだろうか。
ホントどうにかならんのかこれ。そろそろ気持ち悪いんだが……はぁ……。
まあ、今はそんなことはどうでもいい。それよりもアノスの試合…を……。
「……何これ?」
二つ疑問がある。まず一つ。
「このゼペスそっくりのやつ、誰?」
映像の中のアノスは先程殺したゼペスに瓜二つの魔族と戦って、いや、一方的に攻撃していた。
「ゼポスとかいうやつでな。なんでもゼペスの双子の弟らしい」
兄の仇討ち、ってか。
「美しい兄弟愛だこと」
「まあ、俺に負けたあとさらに上の兄に殺されていたがな」
えぇ………。
映像の中ではそのゼポス?とか言うやつがまた新しく出てきたやつに殺されていた。こいつがそのさらに上の兄とやらか?
ていうか………
「……何、この魔法?」
ゼポスは何度もアノスに殺されては
「<
「知らないし、何でそのネタ知ってんだよ」
使い方違うけど。
映像内ではさらに上の兄だと言うリオルグに殺されたゼポスが突然蘇生されて、リオルグに拮抗していた。ただし蘇生の様子が今までと違う。
<
「悪趣味だなー」
「む、まだまだ序の口だぞ?」
「アノスは鬼畜外道。だから避けられる」
「それは先程撤回しただろう」
ミーシャもアノスに対して中々に辛辣だった。
「て言うかミーシャは怖くないわけ?」
「キリヤは?」
「俺は気持ち悪いって思うぐらいだな」
「私も。怖いものはない」
ミーシャが怖がるところは想像がつかない。ぼんやりしているとも言えるが、基本的に物怖じしない性格だからな。
そう考えているとフクロウが飛んできた。
「只今より、魔力測定を行います。魔力水晶の前にお並びください。測定後は隣の部屋に移動し、適性検査を行います」
「キリヤ、魔力水晶とは何だ」
「名前の通り魔力量を計測する魔法具だ」
「ほう、今の時代はそんなものがあるのか。で、それはどこにあるんだ?」
「知らん」
「こっち」
ミーシャが歩き出したので俺たちはそれについて行くことにした。
……待て。今こいつなんて言った?
あの魔力量と言い、一体何者なんだ?
そんなことを考えている間にも、他の受験者たちは俺たちと違って場所を知っているようで、どんどん進んで、しばらくして数本の列が形成され始めた。
……アノスのことは後回しにしとこう。
魔力水晶はいくつもあり、各箇所で測定が行われている。
さっきもアノスに説明したが魔力水晶とは魔力量を調べる魔法具だ。
魔力水晶は紫色の巨大なクリスタルで、大鏡とセットになっており、クリスタルに触れると魔力を検知し、その結果が大鏡に映し出されるようになっている。
「126」
「218」
「98」
「145」
大鏡の前にいるフクロウが数字を口にしている。それが測定した魔力というわけだ。
魔力測定は数秒で結果が出る。列はみるみるうちに進み、ミーシャの番だった。
「がんばれよー、ミーシャ」
「結果は同じ」
確かに頑張ったところで魔力が増減するわけでもないけどな。
「気持ち的な問題だよ。まあ、とにかく、がんばれ」
ミーシャは無表情で俺をじっと見る。
「……ん……」
そう返事をして、彼女は魔力水晶に触れた。
数秒後、大鏡に結果が表示される。
「100246」
さすがとしか言えないな。
「すごいな、ミーシャ」
アノスが褒めると、少し照れたのか、彼女は俯いた。
「……キリヤ……」
「すごくないって言える人いるのか?」
「……ありがとう……」
「おう」
「キリヤも、すごい」
まだ何もやってないんだけど。まあ、次俺の番だけどな。
そう考えながら俺は魔力水晶に触れる。すると———
バキッ、という嫌な音とともに魔力水晶に今にも壊れそうなほど大きなヒビが大量に入った。
「26335004」
「ほう、すごいな」
「……そりゃどうも」
「水晶を交換しますので、次の方は今しばらくお待ちください」
フクロウが飛んできてひび割れた水晶を交換した。
「……アノスは、もっとすごい……?」
「ああ」
アノスがそう口にしながら新しい魔力水晶に触れた。
「0」
フクロウが言うのと同時、バシュンッと音を立てて魔力水晶が粉々に砕け散った。
「全員分の計測が終了しました。受験者の皆様は適性検査にお進みください」
魔力水晶が壊れることってあるのか……初めて見たわ。音がすごかったな。バキッ、とかピキッ、とかですらなくバシュンッ、だからな。
「そう言われても、0はありえないと思うぞ……」
そりゃそうだ。それでは魔法は使えない。考えればわかることだが、フクロウは言った。
「計測は終了しました。適性検査にお進みください」
つっかえねぇ使い魔だなぁ。だが———
「使い魔はこういうもんだからなぁ」
「使い魔は命令に従うだけ」
俺とミーシャがそう言う。
「まあ、そうみたいだな」
じーっとミーシャがアノスの顔を見つめる。
「どうした?」
「……初めて見た……」
「なにがだ?」
「魔力が強すぎてヒビを入れるならともかく、魔力水晶が壊れるところは初めて見た」
魔力水晶の構造としては触れた者の魔力に反応して水晶を肥大化し、水晶の体積がどれだけ増えたかを計測して、それを数値に変換している。
しかし、一定以上の魔力になると限界を超え、体積を増やすどころか、激しい魔法反応により粉々に砕け散ってしまう。
「俺も限界ギリギリだったってことか?」
「だろうな。しかし、そういうことなら0じゃなくて、測定不能ってことにしておいてくれればいいのにな」
「無理」
ミーシャが速攻で否定した。
「なんでだ?」
「魔力水晶は壊れない」
「ヒビを入れたやつがお前のすぐ隣にいるし、俺が壊したぞ」
「キリヤとアノスは規格外」
「でも、ミーシャには分かったわけだろ?」
「魔眼は得意。他の人には無理」
魔力がデカすぎて使い魔には何も分からないだろうな。誰かが直接見ていなければいけないだろう。
そもそも全ての試験を使い魔に任せっきりにするのが間違っていると思うが。
「キリヤみたいに分かる人には分かる。でも、大体無理」
そもそも入学試験で俺やアノスみたいに魔力水晶にダメージを与えるほどの魔力の持ち主が来るとは想定していないだろう。そもそも壊れたという前例が無いしな。
「まあ、お前たち二人でも分かるならいいか」
「そう?」
「おう。ありがとな」
無表情で考えた後、ミーシャはアノスに言った。
「どういたしまして」
・大量の魔剣
魔法陣の中に収納されていた大量の魔剣。
一つ残らず全てが神々の時代における魔剣と同等レベル、または当時の代物である。
キリヤは全ての魔剣に既視感を覚えた。
・ゼポス・インドゥ
ゼペスの双子の弟。双子の兄であるゼペスを尊敬しており、兄の顔に泥を塗ったアノスの相手をしたが瞬殺された。
試合の大まかな流れは原作のゼペスを参照。
・交換された水晶
キリヤの場合ただ破損しただけで、無いだろうとは思いつつも準備していたので交換されたが、アノスの完全に破壊されるというパターンは想定されていなかったためフクロウには命令されておらず、水晶も交換されなかった。
幸いにも測定するのはアノスで最後だったので後続の者たち全員評価0ということには至らなかった。