魔力測定が終わって適性検査が行われている部屋に入ると、石像の上にいたフクロウが口を開いた。
「魔法陣の中心に入り、適性検査を受けてください」
床にはいくつもの魔法陣が描かれており、すでに適性検査を受けている生徒たちはその中心に立っていた。
「……じゃ……」
「また後で」
「おう。後でな」
ミーシャとアノスは空いている魔法陣の中心まで歩いていった。
俺も適当な魔法陣を見つけ、その中心に立つ。
すると、<
『適性検査では、暴虐の魔王を基準とした思考適性を計ります。また暴虐の魔王に対する知識の簡単な確認を行います。思念を読み取るため、不正はできません』
思念を読み取れば確かに嘘は通じないだろうがな。現代日本だと一部の馬鹿がプライバシーの侵害だのなんだの騒ぐんだろうな。この世界の人間はどうなんだろうか。
『では最初に、魔王の始祖は名前を呼ぶことさえ恐れ多いとされていますが、その本名をお答えください』
アヴォス・ディルへヴィアだな。たまに違和感を感じるが。
『神話の時代。始祖はディルヘイドを壊滅させる、<
平和な時代に転生させるためだっけ。これもなんか違和感あるんだよなぁ。
『逆らう者は皆殺し。というのが始祖の信条であったと言われていますが、これが魔王として正しい理由を、あなたの考えで述べなさい』
余計な犠牲者を減らすため、とか?
『では、続いての問題ですが———』
などと、退屈な適性検査は続く。
それから三○分後———
適正検査が終了し、俺はその部屋を後にした。
帰り際になにやら入学について説明していたフクロウの言葉を軽く聞き流して、大鏡の間を抜ける。
すると、すでに外にミーシャとアノスがおり、何やら話し込んでいた。
「よっ。何話してんだ?」
アノスがこちらに振り向いた。
「来たか。なに、せっかくだから合格祝いに二人ともうちに来ないかと聞いていたところだ」
「二人?俺もか?」
「当然だろう、
………………友だち、ね。
「……キリヤ、どうした……?」
ミーシャが問いかけてきた。
「え?」
「表情が思いっきり暗くなったぞ」
アノスに指摘されて気付く。知らないうちに表情に陰が差していたらしい。
『友だち』という言葉を聞いて、日本にいた頃の事を色々思い出した。
日本にいた頃はどっかの馬鹿のせいで俺のイメージが悪くなり、友人なんてほとんどいなかった。唯一友人と言える人物は昔近くに住んでいて県外に引っ越してしまい、中学の社会科見学で奇跡的に再会できた男友達だけだ。
一応一つ上の幼馴染がいたが、こちらも海外に引っ越してしまって、もう顔も覚えていない。
その男友達だけが中学生になってもまともな友人と言える唯一の人物だった。俺がこの世界に来た日に行こうとしていたのもこいつの家だ。
……もし、日本に戻ることができたら謝らないとな。
「……いや、なんでもねぇよ。ぜひ、ご招待にあずかろう」
「ああ、そうしろ。母さんがご馳走作って待ってるだろう」
「それは楽しみだな」
俺の言葉に同意を示すようにミーシャがこくりと頷いた。
「よし、二人とも掴まれ」
「こうか?」
「こう?」
「それじゃ、置いてかれるぞ」
「<
そうだな。掴まるまでも無い。
「いいから、もっと掴まってみろ」
「了解」
「分かった」
俺とミーシャは素直にアノスの手を強く握った。
地面に魔法陣が浮かび上がり、目の前の風景が真っ白に染まる。
次の瞬間、目の前には鍛冶・鑑定屋『太陽の風』の看板が掛けられている木造の建物があった。
「ついたぞ。俺の家だ」
アノスがそう口にするが、ミーシャはじーっと目の前の看板を見つめたままだ。
表情に変化はないのだが、なんとなく気配で驚いているというのが分かる。
いや気持ちは俺も分かる。だってこれ……
「<
「なんだそれ?」
「使い手がいなくなった魔法のことだ。ほとんどが神話の時代に失われた」
「……アノスは天才……?」
はは、とアノスが笑った。
「……本気……」
「いやいや、悪い。これぐらいで天才って言われるのがこそばゆくてな」
否定もしてないけどな。
「……アノスは何者……?」
「魔王の始祖だ」
ずっと無表情だったミーシャが目を丸くして驚いた。もちろん俺も。
「……転生した……?」
「信じるか?」
ミーシャはじっと考え、その間に俺が訊く。
「証拠とかあるのか?」
やっぱそこなんだよ。
「俺が証拠だ。この俺の魔力がな。もっとも、この時代の連中は魔眼が弱すぎて、俺の力の深淵を見ることさえできないようだが」
「えぇ……」
訊いておいてなんだけど雑だな、おい。
「いや、見ようと思えば見えるけども」
「……何?」
「……キリヤは見える……?」
なぜかミーシャが訊いてきた。いやお前は俺よりも
「アノスの魔力は膨大。キリヤよりも。私には底が見えない」
「ふむ、妙だな。俺から見てもミーシャの方が
アノスは俺と同じ意見らしい。
「まあ、分からないことを今悩んでも仕方がない。行こう」
「おう」
「……ん……」
アノスは『太陽の風』のドアを開けた。
・男友達
日本にいた頃家族一同キリヤに良くしてくれた友人。第1話「異世界」の冒頭でキリヤが泊まろうとしていたのは彼の家。
キリヤ曰く「マジで良いやつ」。