剣の皇は異界にて何を想う   作:天羽風塵

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んー、投票に星3が二つも付いたんだけど何がいけないんだろう……つってもまだ三人しか投票してもらえてないけど。
「HSDD要素あるって言うから読んだのに全くねぇじゃん!」って感じで怒ってんのかね。

てなわけでタグを一つ変更しました。

「HSDD要素はにわか(マジで)」→「HSDD要素は当分無し」

……でもお気に入り登録があるってことは、面白いと思って読んでくれてる人もいるってことなんでね(たぶん)。頑張るぞ!




第8話 魔王の実力の一端

数日後———

 

俺とミーシャはフクロウが届けてきた制服に身を包んで学院に来ていた。

 

魔王学院には制服が二種類あり、主に純血の魔族が着る黒い制服。もう一つは混血の魔族が着る白い制服で、それぞれの制服を着る者は黒服、白服と呼ばれている。俺とミーシャが着てるのは白いやつ。

 

制服の腕の肩付近に付けられた校章には三角形、四角形のように多角形の烙印が押されており、成績が高いほど角が多い。俺とミーシャはどちらも白服では最高の六芒星。

 

“白服で“と言ったのは、黒服にはまだ上の七芒星があるからだ。大方差別意識的なものだろう。七芒星のやつ一人も見かけなかったけど。

 

にしても……

 

「まだ来ないな、アノス」

 

「……ん……」

 

今俺たちは二組の教室である第二教練場でアノスを待っている。

 

掲示を見た限り同じクラスのはずだから、単純にまだ来てないかもしくは迷っているかのどちらかだろう。

 

試験の日の様子を見た限り学院内の構造は知らない可能性が高い。

 

ただ、もしもあいつが本当に暴虐の魔王だとしたら自身の居城であるデルゾゲート内で迷うとは考えにくい。

 

「当時とは構造が変わってるってことか?」

 

それか単純にそれぞれの試験をどこでやるのか把握していなかったかのどちらかだな。

 

まあこんな感じでだらだらと考察していたら教室の扉が勢いよく開いてアノスが入ってきた。

 

「みんな、おはよう! このクラスは俺が支配してやるからな! 逆らう奴は皆殺しだ!」

 

……満面の笑みを浮かべ、爽やかな声でわけの分からないことをのたまいながら。

 

俺たちを含めた教室のみんなの反応に納得いかないのか、何か考えるような素振りとともに俺たちの方に来た。

 

「よう」

 

「おっす」

 

「……おはよう……」

 

三人それぞれあいさつを交わす。

 

するとアノスが訊いてきた。

 

「今の冗談、どうだった?」

 

ミーシャは小首をかしげた。

 

「……冗談?」

 

「逆らう奴は皆殺しだってやつ」

 

「端的に言って誤解されるだろうな」

 

「……ん……」

 

ミーシャと二人で否定したらなんか悔しそうにしてた。

 

「く、やはりそうか……もう少しクラスに馴染んでからにした方がいいか?」

 

「……ん……」

 

え、それ関係なくない?

普通に怖がられると思うんだけど。

 

「ところで」

 

アノスが周りを見回す。

 

「さっきからずっと見られている気がするんだが、なにか知ってるか?」

 

「……噂になってる……」

 

「俺がか? なぜ?」

 

「……怒らない……?」

 

「こう見えて怒ったことはない方なんだ」

 

「……その烙印……」

 

ミーシャがアノスの校章を指す。

 

「魔力測定と適性検査の結果を表してる」

 

「ああ、そういうわけか。どういう仕組みなんだ?」

 

「多角形や、芒星の頂点が増えるほど、優良」

 

「俺の校章は芒星すらなくて、十字だが?」

 

おお、これまた珍しい。前例は無いって聞くが。

あとは俺が説明しよう。

 

「それは魔王学院創設以来初めての烙印だ」

 

「どういう意味なんだ?」

 

「不適合者……」

 

淡々とした口調でミーシャは言う。

 

「魔王学院は次代の魔皇を育てる学院。魔王族だけが入学を許可されるんだよ。これまで魔王族で魔王の適性がないと判断された者はいない。要するにお前は初めての不適合者ってわけだ」

 

そもそも十字の烙印自体眉唾ものの噂程度のものだったんだがな。まさか実在したとは。

 

「それで噂になったというわけか」

 

「そういうことだ」

 

まあ、魔力測定は計れなかったから分かるけどな。あとは適正検査ぐらいか。

 

「魔力測定は俺の魔力が大きすぎて計れなかったからわかるが、適性検査は満点のはずなんだがな」

 

「……自信がある……?」

 

「ああ」

 

ここまではっきり言うんだから、よほど自信があるのだろう。

 

だったらなぜこうなった?

 

「なあ、ミーシャ。始祖の名前って言えるか?」

 

ミーシャは無表情のまま、目をぱちぱちと瞬かせた。

 

「……始祖の名前は、恐れ多くて呼んではならない……」

 

「俺の名前は?」

 

「……アノス……」

 

「フルネームは?」

 

「アノス・ヴォルディゴード」

 

「キリヤは」

 

「アノス・ヴォルディゴードだろ?」

 

違うの?

 

「ふむ、少し失礼」

 

一言断りを入れると、アノスは俺たち二人の頭に手を乗せた。

 

「二人とも始祖の名前を思い浮かべてくれ」

 

「……ん……」

 

アヴォス・ディルへヴィアか?

 

「……誰だよ、それ……?」

 

「おかしい?」

 

「この名前は間違いだ」

 

ミーシャは首を左右に振った。

 

「……これが正解。魔王の名前を間違える魔王族はいない……」

 

「始祖の名前は恐れ多くて口にしたらいけないんだったな?」

 

ミーシャはうなずく。

 

「なるほど」

 

「剣皇と似たパターンだな」

 

要するに、だ。全員して恐れ多くて口にしないようにしていたせいで、二千年たった今、すっかり始祖の名前を忘れ、間違った名前が語り継がれたってわけだ。

 

なんとも馬鹿馬鹿しい。

 

「魔王の適性があるかどうかは、どうやって判断してるんだ?」

 

「暴虐の魔王の思考や感情に近い魔族ほど適性が高いんだ。冷酷さと博愛を併せ持つ、完璧なる存在。常に魔族のことだけを考え、己の身を省みず戦った。欲はなく、崇高な心を持ち、その暴虐な振る舞いも、余人には計り知れない尊き心からくるものだった。そんな人だったらしいな」

 

「何なのだその完璧超人は……」

 

「やっぱどう考えても盛ってるよな」

 

「当たり前だ」

 

自称暴虐の魔王はこう言うがな。

 

まあ、いい人だったかどうかはともかく、少なくともこんな完璧超人を絵に描いたような人物でないのはほぼ確実だろう。

 

「ところで、烙印の意味はわかったが制服が二種類あるのはどうしてだ?」

 

 この教室にも黒と白の制服を着た生徒は半々だ。

 

「黒服は特待生。純血の魔王族」

 

「というと、リオルグのようにか?」

 

ミーシャはうなずく。

 

「特待生は入学試験を免除される」

 

「じゃ、ゼペスやキリヤが叩きのめしたゼポスが試験を受けてたのはなんでだ?」

 

「受けたい人は受けてもいいんだよ。毎年一定数いるらしいぞ」

 

主に自分の力を誇示したいやつとか。

 

と、その時遠くの方で鐘が鳴った。

 

「皆さん、席についてください」

 

顔を上げる。教室に入ってきたのは黒い法衣を纏った女性だった。

彼女は黒板に魔法で文字を書く。

 

———エミリア・ルードウェル———

 

「2組の担任を務めます、エミリアです。1年間よろしくお願いします」

 

さすが、教員だけあって試験の時の雑魚どもよりは強いな。魔力もあいつらより多い。

 

「早速ではありますが、まず初めに班分けをします。班リーダーになりたい人は立候補してください。ただし、これから教える魔法を使えることが条件になります」

 

いきなり授業が始まったのか、エミリア先生は黒板に魔法陣を描いていく。

 

「初めて見たと思いますが、これは<魔王軍(ガイズ)>という魔法です。簡単に言えば、術者を王として、配下の軍勢に特別な力を与えるものです。実践は授業で行います。今日は魔法陣を描き、魔法行使ができるかどうかのみ判定します。魔法行使ができた人には班リーダーの資格があります」

 

説明を聞いた感じ、<魔王軍(ガイズ)>の魔法特性から言えば、ここで班リーダーになった者とそうでない者とで、魔皇を目指す資格があるかどうかが振り分けられるのだろう。

 

「それでは、立候補したい方は手を挙げてください」

 

スッ、とアノスが手を挙げた。

こいつ白服が立候補できないの知らないのか。

 

案の定というべきか、クラスメイトたちの反応は芳しくない。

ぎょっとしたようにこっちを見ている。

 

「白服は立候補できない」

 

ミーシャが小声でアノスに教えた。

手を挙げているのは、アノス以外はみんな黒服だ。

 

「アノス君でしたか。残念ですが、あなたには資格がありません」

 

「なぜだ?」

 

「あなたが混血だからです」

 

「混血だからといって、純血に劣る理由にはならないな」

 

そう言うと、エミリア先生はムッとしたように言った。

 

「それは皇族批判ですか?」

 

「くだらんことを言ってないで、純血が混血に勝ることを証明してみるんだな。できなければ、立候補させてもらうぞ」

 

ふう、とエミリア先生はため息をつく。

 

「それはまったく逆です。証明は我らが魔王の始祖が行いました。もしも、混血が優れているというのでしたら、あなたが皇族に勝ることを証明することですね」

 

「ふむ。ではそれができれば、立候補しても構わないということだな?」

 

「できれば、の話です」

 

ふっとアノスは笑った。

 

「その言葉、<契約(ゼクト)>させてもらったぞ」

 

「え、そんな……いつの間に……魔法行使を……?」

 

アノスは立ち上がり、黒板まで歩いていく。

 

「この<魔王軍(ガイズ)>を開発したのは皇族か?」

 

「ええ」

 

「術式の欠陥を見つけた」

 

「まさか。ありえませんね。<魔王軍(ガイズ)>の魔法術式は二千年もの間、この形で伝えられています。誰も欠陥など見つけたことがありません」

 

「ちょうど二千年前に見つけたんでな。転生している間は修正できなかった」

 

アノスは黒板に描かれた魔法陣の三箇所を書き換えた。

 

「これが完璧な形だ。教員だと言うのなら見ればわかるだろう?」

 

エミリア先生は信じられないといった表情で魔法陣を見つめている。

 

「そんな……たった三箇所書き換えただけで、これは、魔力効率が一割も良くなって……魔法効果が一・五倍……? こんなことって……」

 

教室中からどよめきが漏れる。

 

「……あいつ……何者なんだよ……?」

 

「初めて見た魔法陣の欠陥を指摘して、書き換えるなんて……そんな話、聞いたこともないよ……大体、学生は魔法研究の基礎にだって触れてないのに……」

 

「しかも、魔力効率が一割増しで、魔法効果が一.五倍って……」

 

「世紀の大発見だろ、これ……」

 

おー、すごいすごい。

 

と、感心していると、ミーシャがちょいちょいと俺の服の裾を引っ張った。

 

「キリヤ、本当に理解できてる?」

 

「ああ、大丈夫大丈夫「キリヤ?」嘘です。正直言うと半分ぐらいしか分かんないので帰ったら教えてください」

 

「分かった」

 

ミーシャ怖い。

魔法は苦手分野なんだよ。

 

「惜しいな」

 

アノスが言った。一・五倍じゃないのか?

 

エミリア先生がアノスの方を振り向く。

 

「魔法効果は二倍だ。この魔力門が、三つの魔法文字と干渉を起こし、根源へ二度働きかける韻を踏む」

 

「あ……」

 

ようやく気がついたのか、エミリア先生は恥ずかしそうに身を小さくした。

 

「なんなら、俺が代わりに教師をやってもいいぞ」

 

「……り……」

 

「ん?」

 

「立候補を許可します……席に戻ってください」

 

エミリア先生は小さな声でそう言うのがやっとの様子だった。

 

ヤベェな。エミリア先生がすごくカッコ悪い。

よく分かんなかった俺も俺だけど。

……帰ったらマジで勉強しよう。




・多角形の烙印

作者(ハバキリ28)は白服には七芒星の烙印は無いと思っている。主に差別的な理由で。実際どうかは知らんけど。原作だと七芒星なんてレイしかいないし。


・魔法は苦手分野なんだよ

周り(ミーシャ&アノス)のレベルが高すぎるためそう思ってるだけで、一般人とは天と地ほどの差がある。
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