ライザーの声が子安なのは間違っているだろうか
朝、朱乃と一緒に学園へ登校した陸兎はいつも通り教室に入った瞬間
「「死にさらせぇーーー!!」」
「ほい」
「「ふべぇ!!」」
いつも通りの怨念が籠った声に呆れながら、自分に向かって飛びかかって来ている馬鹿二人の顔面を思いっ切りアッパーした。
「やれやれ、毎日毎日ホント飽きねぇなお前ら。同じネタを三回もやれば、視聴者も飽きてくるってよく言うだろうが」
毎日のように飛びかかってくる元浜と松田にうんざりしながら、陸兎は席に着くと、一誠とアーシアが教室に入ってきた。
「うーす、イッセー、アーシア」
「おはようございます。陸兎さん」
「あぁ、おはよう八神・・・」
いつものように挨拶すると、アーシアはいつも通りの笑顔で返してくれたが、一誠は何処かぎこちない様子で挨拶を返すと、陸兎に話しかける。
「なぁ八神、少しいいか?」
「どした?彼女ができなさすぎて、とうとうホの字に進んだか?」
「違ぇよ!いいか、よく聞けよ」
一誠は一旦息を吸って、真剣な表情で喋った。
「部長が昨日、夜這いに来たんだ」
「・・・・・・」
一誠の言葉を聞いて、しばらくの間無言になる陸兎。
やがて、可哀想な人を見るような目で一誠を見つめながら喋った。
「イッセー・・・部長はVR彼女に登場しねぇぞ?」
「だから、VR彼女にハマってねぇよ!つーか、まだ続いてたのかよそのネタ!」
またもやVR彼女にドハマり中疑惑をかけられそうになった一誠は即座に否定した。
そして放課後、陸兎はいつもより遅れてオカルト研究部の部室にやって来た。
「今日は随分と賑やかだな。人もいつもより二人増えてるし・・・つか、一人マジでヤベーのがいるんだけど・・・」
いつもとは違うただならぬ気配を感じながらも、陸兎は部室に入る。
「ウイース、皆大好き陸兎パイセンが来たぞ~」
能天気に部室に入った陸兎が見たのは、オカルト研究部の部員に加え、チンピラホストみたいな雰囲気をした金髪の男とメイド服を着た銀髪の女性だった。
リアスと金髪の男が睨み合い、銀髪メイドが間を挟むような形で立っていたが、陸兎が部屋に入って来たことで全員の視線が陸兎に向いた。
「お嬢様、こちらの方は?」
「彼は八神陸兎。日本最強の退魔師の集団、十天師の一人よ」
「なるほど、彼がかの有名な・・・」
そう言いながら、銀髪メイドが陸兎の方を見る。
陸兎は銀髪メイドから感じるただならぬ力に内心警戒しながら喋る。
「なぁ、そっちのメイドさんとホスト擬きは誰だ?つか、このメイドめっちゃくちゃヤバそうな力を感じるんだけど」
「申し遅れました。私はグレモリー家に仕えているグレイフィアと申します。先程までの出来事を簡単に説明しますと、リアスお嬢様とあちらのフェニックス家の三男、ライザー・フェニックス様が婚約することになったのですが、それに対してお嬢様が反対し、お互い睨み合っておりました」
「ほほう、これはどうもご丁寧に。しかし、銀髪メイドと来たか・・・なぁ、あんた。この場の時間を停止させることができる魔法を使えたりするか?」
「時間停止魔法ですか?いいえ、できません」
「そうか。あんたから紅魔館の銀髪メイドの面影を感じたから、ひょっとしたらとは思っていたが・・・残念だ」
残念そうな顔をする陸兎に対して、「はぁ・・・」と何処か困ったような顔で返したグレイフィア。
すると、先程から自分の事を無視して話し続けてたからなのか、金髪の男ライザー・フェニックスが不機嫌そうな顔でリアスに問いかける。
「おい、リアス。さっきから俺を無視して話しているが、何なんだこの人間は?」
「!?」
話しているライザーの姿を見た瞬間、陸兎の目が大きく見開かれた。
驚愕の表情でライザーを見つめたまま動かなくなった陸兎に、リアスが話しかける。
「陸兎?どうしたのかしら?」
「・・・まさか、ここであなた様に会えるなんて思いもしませんでした」
「八神?」
普段はあまり使わない敬語を使って話す陸兎に一誠が疑問に思っていると、陸兎はペンを取り出し、ライザーの前に差し出しながら頭を下げた。
「ファンです。握手とサイン貰ってもよろしいですか?」
『えぇーーー!!?』
思いもよらぬ行動にオカルト研究部の部員は一斉に声を上げて驚いた。
事の成り行きをグレイフィアは真顔で見つめ、ライザーは突然サインを求められた事に動揺するも、すぐさま平常心を取り戻して言った。
「ふ、ふむ・・・まさか人間界に俺のファンがいたとはな。しかも、悪魔ではない下等な人間・・・だがまぁ、例え下等な人間であろうと、その思いに応えてやるのが上級悪魔の務めだ」
サインを求められたからなのか、ライザーは上機嫌に言うと、ペンを受け取り、陸兎の方を見た。
「どれ小僧、特別にサインをしてやろう。何処にサインすればいい?」
「ありがとうございます。じゃあ、ここに『八神君へ、ボボボーボ・ボーボボより』ってサインを――」
「誰だそいつはぁーーー!?俺はライザー・フェニックスだぁーーー!!」
別人のサインを書かれそうになったライザーはペンを陸兎の額に投げながらツッコんだ。
ペンを額に当てられた陸兎は後ろに倒れそうになるも、ギリギリ踏みとどまり、その勢いのまま、驚愕の表情でライザーに詰め寄る。
「えぇー!ば、馬鹿な!その金髪アフロ!作り込まれた体にボーボーの胸毛!何よりも、その立派な子安ボイス!どっからどう見ても、ボボボーボ・ボーボボさんじゃないですか!」
「なわけないだろ!どっからどう見ても、そいつの特徴と俺の容姿が一致してないだろ!合っているとしたら、最後の子安ボイスぐらいだろ!」
ライザーの言葉を聞いて、「メタいわよ、ライザー・・・」とリアスが呟いた。
苦笑い、或いは呆れた表情で見つめるリアス達をよそに、二人の口論は続いていく。
「大体なんだ!如何にも適当に付けたような名前をしてる奴は!?ただの馬鹿にしか見えんぞ!」
「貴様!あの伝説のハジケリスト、ボボボーボ・ボーボボさんを侮辱するとは、なんと無礼な!」
「無礼なのはどう見ても貴様の方だろう!そんな訳分からん金髪アフロと俺を一緒にするな!」
「ボボボーボ・ボーボボさんを馬鹿にすんじゃねぇ!一度はP○Aから苦情が沢山来て、ほとんどの放送局で放送打ち切りになったけど、そこから二十年掛けて再び注目を浴び、更には今年のエイプリルフールでグランブルーファンタジーとコラボを成し遂げた偉大なお方だぞ!」
言い争いは徐々にデッドヒートしていき、ライザーは炎を、陸兎は霊力を出し、部室は完全に二人の発する圧に飲まれていた。
「そこまでです。もし、この場で暴れるとなれば私が相手しましょう」
一触即発の空気になっていた為、一人無言で成り行きを見守っていたグレイフィアが二人を止めた。
言い合っていた二人だったが、グレイフィアの凄まじい魔力のオーラを感じ、ライザーは勿論、十天師である陸兎も素直に従い霊力を収めた。
「話を戻しますが、お嬢様はライザー様と婚約する気はないと考えてよろしいですか?」
「勿論よ」
「分かりました。ならば、レーティングゲームで決着をつけることにしましょう」
レーティングゲーム。上級悪魔が己の眷属同士で競い合う冥界のゲーム。
グレイフィアが言うには、レーティングゲームでリアスが勝てば婚約破棄できると言うことだ。
そのことにライザーは首を縦に振り、リアスも渋々納得した。
その後、ライザーはリアスの眷属の少なさを鼻で笑うと、自身の眷属全員をこの場に呼び出した。
眷属はライザー以外の全員が女であり、それを見た一誠は何故か号泣していた。
「おい、リアス。そこの下僕君はなんで俺を見て号泣しているんだ?」
ライザーは自身を見て大号泣している一誠を引き気味に見つめる。
「気にしないで。この子の夢がハーレムなの」
リアスが説明している横で一誠はうんうんを頷いていた。
一方、ライザーの眷属たちは汚物を見るような目で一誠を見ていた。
「キモいですわ」
「そう言うな。ユーベルーナ、こっちに来い」
ライザーはユーベルーナと呼ばれた眷属の一人を自身の近くに呼び出すと、その場でディープキスをしだした。
「なっ!?」
「あらあら」
「はわぁ!?真っ暗です!」
「陸兎先輩、見えません」
「お前にはまだ早い」
あまりにも大胆な光景に一誠は目を見開き、朱乃はアーシアの、陸兎は小猫の目と耳を塞いだ。
ディープキスし終えたライザーは勝ち誇ったような顔で一誠を見る。
「お前にはまだこのステージは早すぎるどころか一生できまい。下級悪魔くん」
「何だと!?」
ライザーの小馬鹿にしたかのような発言に一誠は怒りだし、『赤龍帝の籠手』を出現させた。
リアスが「やめなさい!」と一誠を止めようとするが、一誠はライザーに向けて怒鳴り出す。
「お前なんか部長とは不釣り合いだ!この女たらし野郎!」
「・・・お前、その女ったらしに憧れているんだろう?」
「ぐっ!・・・それとこれとは別だ!」
「うわー、開き直ったよこいつ」
論破されたにも関わず開き直った一誠に、陸兎は軽くドン引きしていた。
そんな陸兎を無視し、一誠はライザーに嚙みつく。
「英雄色を好む。人間界の言葉らしいな。中々いい言葉だろう」
「なにが英雄だ!テメェなんて、焼き鳥だろ!」
焼き鳥と言われ、ライザーの顔に青筋が浮ぶ。
「威勢だけはいいようだな。下級悪魔が・・・!」
「ゲームなんて必要ねぇ!全員この場で倒してやらぁ!」
ライザーに殴り掛かる一誠に対して、ライザーは焦る様子もなく、眷属の一人に命令した。
「ミラ、やれ」
「はい、ライザー様」
ミラと呼ばれた少女が棍棒を持ちながら、一誠の前に立ちふさがる。
一誠は戸惑いつつも、棍棒を叩き落そうと拳を振るったが、ミラは拳を出そうとしたことで隙だらけとなった一誠の脇腹に棍棒を叩きつけようとした。
「ハーイ、そこまで」
だが、ミラの棍棒が一誠の腹に当たる直前に、陸兎が間に挟み、棍棒を素手で受け止め、一誠の拳を『洞爺刀』で防いだ。
「なんで止めるんだよ八神!」
「馬鹿野郎、一時のテンションに身を任せやがって。ここで騒ぎを起こしてみろ。最悪レーティングゲームが中止になるぞ」
「八神様の言う通りです。ここで暴れるとなれば、私も力づくで止めさせていただきます」
陸兎とグレイフィアに諭され、一誠は渋々『赤龍帝の籠手』を収めた。
一誠が落ち着いたのを確認した陸兎はグレイフィアの方を向いて問い掛ける。
「一つ聞きてぇんだけどよ。そのレーティングゲーム、眷属以外の奴が参加しても大丈夫なのか?」
「公式なら眷属以外の参加は禁じられておりますが、今回行われるのは非公式のレーティングゲーム、ルール上は問題ないかと思われます。後は相手から許可を取る必要がありますが・・・」
そう言って、グレイフィアはライザーを見ると、ライザーは答えた。
「俺は構わん。散々甞めてくれたツケ、払わせてもらうぞ人間」
「テメェこそ、ボボボーボ・ボーボボさんを名乗った罪、償わせてやるよ」
「それは貴様の勘違いだろうが!・・・まぁ、いい。リアス、ゲームは十日後でどうだ?」
「それはハンデのつもり?」
「そうだ。今すぐ始めてもいいが、何せ君たちにとって、始めてのレーティングゲーム。これぐらいのハンデがあってもいいだろう。まぁ、それでも俺たちが負けることなど万が一にも有り得えないがな」
ライザーはリアス達を嘲笑うように言うと、眷属たちの下に歩み寄る。
「それじゃあリアス、次はゲームで会おう」
そう言い残して、ライザーは眷属たちと共に炎の魔法陣の中へと消えていった。