ハイスクールD×D 銀ノ魂を宿し侍   作:イノウエ・ミウ

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気持ちの強さだけでは物事は上手くいかない

「ライザーの『女王』か!?」

 

一誠が空中に浮かんでいるユーベルーナを見上げながら叫ぶ。

 

「よくも小猫ちゃんを!降りてきやがれ!俺が相手だ!」

 

「落ち着けイッセー。一時の感情で動いて、状況が更に不利になったらどうすんだ?」

 

『陸兎の言う通りよ。戦闘不能になった者は別の空間に転送されるだけで、別に小猫が死んだわけではないわ。冷静になりなさい』

 

小猫を倒したユーベルーナに怒りを露わにする一誠だが、陸兎とリアスに落ち着くよう諭される。

そこに先程体育館を破壊した朱乃がやって来て、ユーベルーナと一誠の間に入った。

 

「お二人共、ここは私に任せて先へお行きなさい。私が全身全霊を持って小猫ちゃんの敵を取りますわ」

 

「一度貴方と戦ってみたかったの。『雷の巫女』」

 

「あらあら、それは光栄ですわ。『爆弾王妃(ボムクイーン)』さん」

 

お互いオーラを纏わせながら睨み合う朱乃とユーベルーナ。

その様子を啞然と見上げる一誠に、陸兎が肩を置いて話しかける。

 

「・・・行くぞイッセー。小猫の犠牲を無駄にすんな」

 

「くっ!・・・分かりました」

 

ユーベルーナを朱乃に任せることにした二人は、グラウンドに向けて走った。

その途中、グレイフィアの放送が聞こえてきた。

 

『ライザー様の『兵士』三名戦闘不能』

 

「向こうの『兵士』が倒された・・・木場がやったのか?」

 

「らしいな。っ!?止まれ!」

 

走っていた陸兎だが、倉庫の影から気配を感じ、足を止める。

すると、倉庫の影から木場が現れた。

 

「そっちは上手くいったみたいだな」

 

「まぁね。陸兎君たちは・・・そうでもないみたいだね」

 

小猫がリタイアしたのは木場も知っている。三人は一旦倉庫の中に入って作戦を立てることにした。

 

「小猫ちゃんの件は無念だよ。普段はあまり感情を表に出さないけど、これでも結構張り切ってたからね」

 

「そうなのか・・・木場、八神、絶対に勝とうぜ」

 

「勿論」

 

「当然だろ」

 

倉庫の中で、必ずゲームに勝利することを三人で誓い合っていると、通信機からリアスの声が聞こえた。

 

『聞こえる三人共、私はアーシアと本陣へ奇襲するわ。その間、できる限り敵を引きつけて時間を稼いでくれる』

 

「奇襲!?」

 

リアスの立てた作戦に驚きの声を上げる一誠。

 

『朱乃の魔力が回復するまで待機する予定だったけど、相手が『女王』を前に出した以上、やむを得ないわ』

 

「しかし部長、『王』が本陣に赴くなんて、リスクが高すぎます」

 

『それは相手も承知の上よ。いくらフェニックスの肉体が不死身でも、心まではそうじゃない。相手の戦意を失うまで攻撃を加えれば・・・』

 

「心が不死身じゃないのはあんたも同じだろ」

 

陸兎のその言葉にリアスは口を止める。

 

「あのボーボボ擬きがどれだけ強ぇかはよく分かんねぇが、ヤローが部長より強くて、先に部長がリタイアしたらどうすんだよ」

 

『・・・勿論、私一人ではライザーに敵わない可能性だって考えているわ。だから、残りの駒を全て片付けたら、すぐにこっちと合流してちょうだい。後は全員でライザーを倒してチェックメイトよ』

 

「ちょっくら、考えが甘すぎる気もするが・・・りょーかい。今回の指揮官は部長だ。今はあんたの命令に従ってやるよ」

 

リアスの作戦を聞いて、渋々納得した陸兎。

三人は作戦を実行するべく、倉庫を出て、グラウンドへ辿り着く。

 

「やい!ここにいるのは分かってんだ!正々堂々勝負しやがれ!」

 

一誠がグラウンド響く大声でライザーの眷属を挑発する。

すると、グラウンドが霧に包まれた。しばらくして霧が晴れて、そこから現れたのは、頭に布を巻いた甲冑を着ている少女だった。

 

「私はライザー様に仕える『騎士』カーラマインだ。堂々と真っ正面から出てくるとは、正気の沙汰とは思えんが、私はお前らのような馬鹿は大好きだ」

 

「僕はリアス様に仕える『騎士』木場裕斗。『騎士』同士の戦い、待ち望んでいたよ」

 

フェニックス眷属の『騎士』の登場に、同じ『騎士』である木場が前に出る。

 

「良くぞ言った。リアス・グレモリーの『騎士』よ!」

 

お互いに剣を構えた二人は、そのまま素早い速さで剣戟を繰り広げた。

 

「スッゲー・・・つか、これ俺らの出番無くね?」

 

「そうでもねぇぞイッセー、見ろ」

 

『騎士』同士の戦闘に圧倒されている一誠の横で、陸兎はグラウンドを見渡す。

すると、グラウンドの隅から次々と少女たちが姿を現し、二人に近づいてきた。

 

「カーラマインったら、頭の中まで剣で埋め尽くされているんですもの。どんくさいったらありはしませんわ。しかも、せっかく可愛い子を見つけたと思ったら、そちらも剣バカだったなんて・・・全く、ついてませんわ」

 

独特なツインテールをした金髪の少女が代表して陸兎たちの前に出て喋った。

 

「おうおう、残りの皆さん全員集合ってか。随分と張り切ってんな」

 

陸兎が眷属全員の登場に呟く中、金髪の少女は二人をまじまじと見つめていた。

 

「それにしても・・・そちらの銀髪の方は見た目はマシみたいですけど、そっちの方は見た目も中身も悪そうですわね」

 

「分かってんじゃねか。こいつは年中おっぱいとエロしか考えてない、頭から体まで全てエロでできてる全女子の敵ことエロス一世だ。それを一目見ただけで見抜くとは・・・貴様できるな」

 

「売ったな、今絶対喧嘩売っただろイケメンゴラァ」

 

さり気なく一誠を侮蔑している陸兎に、拳をプルプルと震わせながらキレる一誠。

その時、仮面を被った女性が一誠に殴り掛かった。

 

「うわっ!?」

 

「私はイザベラ。ライザー様にお仕えする『戦車』。行くぞ、リアス・グレモリーの『兵士』よ!」

 

そう言うと、イザベラは再び一誠に殴り掛かり、そのまま戦闘となった。

残った陸兎は金髪の少女に話しかける。

 

「んで、俺の相手はお前らか?」

 

「ごめんあそばせ、(わたくし)は戦いませんの」

 

「あぁ?」

 

少女の言葉に疑問を浮かべる陸兎。

すると、二人の会話を聞いていたのか、イザベラが一誠と戦いながら答えた。

 

「あの方はライザー様の妹君、レイヴェル・フェニックス。『僧侶』としてゲームに参加しているが、実際は観戦しているだけだ」

 

「そう言うわけですので、私の代わりにこちらのニィ、リィが相手して差し上げますわ。二対一になりますけど悪く思わないでいただきますわ。これはお遊びではなくレーティングゲームですので」

 

「関係ねぇよ。相手が二人だろうが、十人だろうが、俺のやるべき事は変わらねぇよ」

 

二対一という不利な状況でも、陸兎は文句を言うことなく、手元に『洞爺刀』を出現させて構える。

 

「悪ぃが、うちの馬鹿部長が、今からそっちの『王』に挑むみてぇなんだ。さっさと援護に行きてぇから・・・すぐに終わらせるぞ」

 

「随分と威勢がいいですわね。ですが、たかが人間相手にこれだけの相手が務まるとも?」

 

小馬鹿にしてるかのような顔で言うレイヴェルに対し、陸兎は表情を変えることなく喋る。

 

「一つ訂正させてもらうが、俺はたかがじゃねぇ。護るべきモンを護り、テメェの道をテメェの剣で切り開く侍だ。それと、あんまり他人を見下す発言はしねぇ方がいいぞ。そのたかがに負けたとなりゃ、恥ずかしくて表にも出歩けなくなるぜ」

 

「言ってくれますわね・・・ニィ、リィ、やってしまいなさい!」

 

レイヴェルが隣にいた『兵士』二人にそう命令すると、『兵士』の二人は陸兎に襲い掛かった。

対する陸兎は、普段のだらけきった目を鋭くさせ、両腕を動かして何らかの構えを取る。

 

「その目ん玉でしっかり見やがれ。鬼をも斬り殺すことができる侍の剣を・・・!」

 

明らかに強くなった陸兎のプレッシャーに怯みつつも、『兵士』二人は左右から陸兎に攻撃を仕掛ける。

そして、『兵士』二人の拳が陸兎に当たろうとしたその時、『洞爺刀』が猛威を振るった。

 

「夜叉神流!本来なら二刀だが、今は一刀!『鬼嵐(おにあらし)』!」

 

『洞爺刀』と陸兎の左腕が勢いよく振られた途端、その刃風は瞬く間に竜巻となった。

 

「「ニャーーーーーー!!」」

 

「きゃーーーーーー!!」

 

荒れ狂う斬撃の竜巻は『兵士』の二人を飲み込み、更に、和服を着た『僧侶』も巻き添えにした。

竜巻に巻き上げられた三人は、そのまま地面に落下し、光となって消えた。

 

「そ、そんな・・・!人間相手に一気に三人もやられるなんて・・・!?」

 

あっという間に三人を倒した陸兎に戦慄するレイヴェル。

 

「うわぁーーーーーー!!」

 

その直後、女性の悲鳴が聞こえ、振り向くと、一誠がイザベラを倒していた。

 

『ライザー様の『兵士』二名、『僧侶』一名、『戦車』一名戦闘不能』

 

グレイフィアの放送がフィールドに響く。

眷属が一気に四人もやられた事に啞然とするレイヴェル。そんな彼女に陸兎が話し掛ける。

 

「一つ聞きてぇんだけどよ。この世界で人間のオリ主が必殺技も無しに、己の体と刀一本で戦うって無理があるんじゃね?そりゃ、銀魂の世界の奴らは必殺技とか特に無くて、刀一本で天人とハイスペックな戦闘ができるけどよ」

 

「? 意味が分かりませんわ?」

 

「でもさぁ、ハイスクールD×Dって言う天人よりもヤベー異形がわんさかいる世界で、悪魔ならまだしも人間のオリ主が必殺技の一つや二つ持ってないと、絶対に大した活躍ができねぇだろ?」

 

「だから、貴方は一体何をおっしゃっておりますの!?」

 

メタい発言をする陸兎に、訳分からんといった顔でツッコミを入れるレイヴェル。

 

ドーン!

 

その直後、新校舎の屋上が爆発した。

 

「部長!?」

 

『大丈夫。今、ライザーと交戦中よ。私のことよりも、今は目の前の敵に集中しなさい。このリアス・グレモリーの下僕の力、見せつけておやりなさい!』

 

自身を心配する一誠に対し、リアスは自分の事より、目の前の敵に一誠の力を見せつけてやれと力強く命令した。

その思いに応えるべく、一誠は『赤龍帝の籠手』を構える。

 

「そうだ・・・俺は部長の下僕。赤い龍帝さんよ、俺に力を貸してくれ。部長の思いに応えるために・・・あいつらをぶっ倒す力を!」

 

DragonBoosterSecondLiberation(ドラゴンブースターセカンドリベレーション)!』

 

一誠の思いに応えるかのように『赤龍帝の籠手』が形を変えた。

しばらくの間、形が変わった『赤龍帝の籠手』を見つめていた一誠は、木場と陸兎に向けて叫ぶ。

 

「木場!お前の神器を解放しろ!八神はグラウンドから離れてくれ!」

 

「解放・・・分かった。『魔剣創造(ソード・バース)』!」

 

「うわー、なんかヤバそうな予感」

 

一誠の言葉と己の勘が働き、陸兎は速やかにグラウンドから離れた。

その間に、木場は自身の神器『魔剣創造(ソード・バース)』の力を解放し、地面に剣を突き立てると、『魔剣創造』の力が地面を突き進み、一誠の下へ迫る。

一誠はその力が自身の足元に近づくと、地面を『赤龍帝の籠手』で殴りつけ、『魔剣創造』の力を受け取った。

 

Transfer(トランスファー)!』

 

その直後、グラウンドの地面から無数の魔剣が生えてき、ライザーの眷属たちを襲った。

 

「きゃーーーーーー!!」

 

「あぁーーーーーー!!」

 

「私の・・・負けだ・・・」

 

無数の魔剣はレイヴェルを吹き飛ばし、体に突き刺さった『騎士』二人を戦闘不能にさせた。

 

『ライザー様の『騎士』二名戦闘不能』

 

「あの金髪はギリギリ助かったみてぇだな」

 

グレイフィアの放送を聞いて、レイヴェルは戦闘不能にならなかったと悟った陸兎だったが、どのみち戦わないのなら追撃の必要はないと考え、一誠の下に駆け寄る。

 

「随分派手に暴れたなイッセー」

 

「おう!これが『赤龍帝の籠手』の新たな力、『赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)』だ!」

 

新たな力を手に入れた一誠は、陸兎に向かって叫んだ。

 

ドカーン!

 

その直後、体育館から巨大な爆発音が聞こえ、陸兎たち三人は、驚きながら爆発がした方へ振り向く。

 

「あ、朱乃さん!?」

 

そこには、ボロボロになりながら下に落ちていく朱乃の姿が見えた。落ちていく朱乃は地面に体が付く前に光となって消えた。

戦闘不能になった朱乃を呆然と見つめる三人。

その時、三人の足元に魔法陣が置かれた。

 

「!? 離れろ二人共!」

 

いち早く気づいた陸兎が二人に向かって叫ぶ。木場は咄嗟に動いたが、反応が遅れた一誠は陸兎に襟首を掴まれて魔法陣から離れる。

その直後、三人がいた場所に巨大な爆発が起きた。

陸兎は爆発が起きる前に『神速』で爆心地から素早く離れ、一誠も陸兎に襟首を掴まれながら離れた為ダメージは無かった。

 

「がっ!」

 

「木場!」

 

だが、逃げ遅れた木場は爆撃をもろに食らい、そのまま戦闘不能になった。

 

『リアス様の『女王』一名、『騎士』一名戦闘不能』

 

「またテメェかよ・・・ミス紫」

 

グレイフィアの放送が聞こえる中、陸兎は鬱陶しそうに上を見上げる。

そこにいたのは、朱乃と戦っていたはずのユーベルーナだった。

 

「テメェ!朱乃さんと戦ってたんじゃねぇのか!?」

 

「えぇ、戦ってたわよ。流石は『雷の巫女』と言うだけあって、中々手強かったけど、これのお陰で逆転できたわ」

 

一誠の疑問に答えるかのように、ユーベルーナは一本の小瓶を見せた。

 

「これは『フェニックスの涙』。如何なる傷も一瞬で直すことができるフェニックス家の秘宝よ」

 

「なっ!?そんなのありかよ!」

 

「ゲームでの使用は二つまで許されているわ。フフフフフ、これで形成逆転ね」

 

そう言いながら、ライザーのいる新校舎に向かって飛ぼうとするユーベルーナ。

 

「!?」

 

だが、目の前に放たれた白い斬撃によって遮られた。

ユーベルーナは斬撃が放たれた方へ振り向くと、『洞爺刀』の刃先を彼女に向けている陸兎がいた。

 

「・・・行け、イッセー」

 

「八神・・・!」

 

ユーベルーナの前に陸兎が立ち塞がり、一誠に先に行くよう促す。

 

「俺がこいつの相手をする。その間にお前は部長と一緒にケリをつけろ。お前が・・・あのボーボボ擬きを倒せ」

 

「でも!こいつは皆を!」

 

「何度も同じこと言わせんな。一時の感情で動くんじゃね。今お前のやるべきことはこいつをぶん殴ることか?違うだろ。こいつに怒りをぶつける暇があんなら、さっさとテメェの『王』を助けにいきやがれ。一主の『兵士』なら、テメェのやるべきことを見失うな」

 

「!?・・・分かった。やられんなよ!」

 

陸兎に健闘を祈りながら、一誠はリアスを救うべく新校舎へ入っていった。

残った陸兎は宙に浮かんでいるユーベルーナを睨みつける。

 

「それで、貴方一人が残ったみたいだけど、悪魔でもない人間が空を飛んでいる私に勝てるのかしら?」

 

「へっ!お前も相手が貧弱な人間だったから、油断してたら斬られたってパターンがお望みみてぇだな」

 

「まさか、貴方が他の子たちを倒してきたのは私も知ってるわ。だから・・・油断はしない。確実に仕留めてあげるわ!」

 

そう言いながら、ユーベルーナが杖を陸兎に向けて途端、陸兎の足元に魔法陣が置かれた。

陸兎は魔法陣が発動される前に地面を力強く蹴って空中へ跳び、そのままユーベルーナに斬りかかる。

しかし、ユーベルーナは更に上空に飛んで、陸兎の剣から離れた。

 

「確かに、ここまで剣を届ける実力はあるみたいね。でも、翼が無い人間では、空を飛ぶことはできない」

 

その言葉通り、背中に翼が無く、飛行魔法も使えない陸兎は、重力によって下に落ちていく。

その隙を狙ってユーベルーナが杖を再び構えたその時、彼女の表情が驚きに変わった。

 

「なっ!?くっ!」

 

本来なら下に落ちるはずの陸兎が、再度上空へ上がって、ユーベルーナに斬りかかったからだ。

ユーベルーナは咄嗟に杖を前に出して防ぐが、次の瞬間、陸兎の姿が消えた。

 

「消えた!?どこへ!?」

 

消えた陸兎を探そうと辺りを見渡し、上を見上げた瞬間、ユーベルーナの目が見開いた。

 

パシュン!パシュン!

 

なぜなら、陸兎は空中の空気を何回も蹴り続けることで空中に留まっており、まるで空中そのものに立っているかのようにユーベルーナを見下ろしていたからである。

そう、陸兎は空を飛んでいたわけではない。強靭な足で空気を蹴って空中を高速移動していたのだった。

驚くユーベルーナを尻目に、陸兎は再び空気を力強く蹴り、それを何回も繰り返しながらユーベルーナの周りを高速で飛び回る。

驚いてたユーベルーナは何とか冷静さを取り戻し、魔法で陸兎を下に落とそうと杖を構える。

 

「目で追い切れない・・・!」

 

だが、空中を自在に高速移動している陸兎のスピードは、悪魔であるユーベルーナの目ですら、追いつくのは容易でなかった。

そして、ユーベルーナの目が陸兎のスピードに追いつけなくなった瞬間、陸兎はその瞬間を見逃さず、腰に『洞爺刀』を当てながら彼女に接近した。

 

「夜叉神流一刀『牙王静流(がおうせいりゅう)』」

 

そして、一瞬のすれ違いざまに居合の一撃を放った瞬間、ユーベルーナの体から血が飛び散った。

 

「あぁ!?」

 

体を斬られたユーベルーナはそのまま下へ落ちていき、地面に当たる途中で消滅した。

 

『ライザー様の『女王』一名戦闘不能』

 

「うちの部員に迷惑掛けんじゃねぇよ爆弾野郎」

 

光となって消えたユーベルーナを一瞥すると、陸兎は宙を蹴って、どこかへ飛んでいった。

 

 

 

 

「まさかライザー・フェニックスの『女王』を単独で倒すなんて・・・」

 

「だから言ったでしょ。今回のレーティングゲームで一番厄介な駒は陸兎だって」

 

モニターを見ながら呟くソーナに、剣夜は自慢げに言った。

 

「これで後はライザー・フェニックスだけね。リアス達の残りの駒はリアスに兵藤君にアルジェントさん、それと八神君」

 

「現在、リアス様と兵藤君がライザー様と戦闘中ですが、どちらも苦戦中。そこに十天師である八神君が加わるとなると、流石のライザー様も手には負えないでしょう」

 

「まぁ、陸兎の場合、三人じゃなくても、一人でライザー・フェニックスは倒せるけどね」

 

「それは言い過ぎ・・・でもないかしら。朱乃を破った『女王』を無傷で倒したし・・・」

 

そんなことを呟きながら、ソーナは再び画面を見つめる。

そして、予想だにしてなかった陸兎の行動に目を丸くした。

 

「彼は一体何をしているのかしら?」

 

「これは・・・まさか・・・!?」

 

この行動は剣夜も予想しておらず、驚きながら画面に目を向けた。

 

 

 

 

一方、新校舎の屋上では、一誠とリアスがライザーと対峙していた。

 

「「はぁ・・・はぁ・・・」」

 

「ククク・・・随分と辛そうに立っているじゃないかリアス」

 

笑みを浮かべる余裕のあるライザーに対して、二人はボロボロであり、何とか立っている状態だ。

 

『ライザー様の『女王』一名戦闘不能』

 

「ほう、あの人間、ユーベルーナを倒したか・・・だが、こちらが優勢であることには変わりはない。そうだろうリアス?」

 

『女王』がやられて尚、笑みを崩すことなく、そう問い掛けるライザー。

対するリアスは、ボロボロで息も絶え絶えといった状態でライザーを睨む。

 

「ぐぅ・・・!」

 

「イッセーさん!」

 

これまでの戦闘の疲れとライザーから受けたダメージによって膝を付いた一誠に、既に何度目かも分からない回復を行うアーシア。

そして、回復を終えた瞬間、突如アーシアが倒れた。

 

「アーシア!」

 

何回も神器を使い続けたことによって、彼女の体は既に限界を迎え、立つことすら精一杯になっていた。

 

「すみません・・・イッセーさん。私・・・まだ・・・」

 

「もういいわ。貴方はここで休んで」

 

これ以上、彼女の神器『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』を使わせるのは危険だと判断したリアスはアーシアを下がらせ、再びライザーを睨みつける。

 

「リアス!君はもう詰まれている。諦めてリザインしたらどうだ?」

 

「誰がリザインするもんですか!詰まれているですって!?私はまだ健在よ!そうでしょう、イッセー!」

 

「はい!俺、馬鹿だから、詰みとかよく分かんないですけど、俺はまだ戦えます!行くぞ!Boost(ブースト)!」

 

一誠は自身を強化しながら、ライザーへ迫る。

ユーベルーナの不意打ちが無かった為、ダメージが原作より少し減った一誠は倒れることなく、その拳をライザーに向けて振るう。

 

「無駄だ」

 

しかし、それを簡単に食らってやるほどライザーという男は弱くない。突撃する一誠の僅かな隙を見つけたライザーは、一誠の拳が自分に届く前に、その隙をついて彼の腹に蹴りを入れた。

 

「ガッ!」

 

ライザーに腹を蹴られた一誠は屋上から二階の屋根へ転げ落ちた。

 

「ライザー!」

 

それを見て、激情したリアスがライザーに向けて滅びの魔力を放つ。

しかし、ライザーは滅びの魔力が当たった箇所を炎に変えて再生した。

 

「リアス!君だってもう限界のはずだ。素直にリザインしたらどうだ?」

 

「誰が・・・!」

 

リザインするよう促すライザーに、険しい顔をしながらも断るリアス。

その時、二階の屋根に倒れた一誠が立ち上がろうとした。

 

「大丈夫っすよ部長。俺・・・どんなことしても勝ちますから・・・!最強の『兵士』になる。部長とそう約束しましたから・・・!」

 

既に限界を迎えているであろう体を無理矢理動かし、ふらふらと立ち上がる一誠。

 

「俺はまだ戦えます・・・約束守りま――ガハッ!」

 

リアスに向けて喋り続けてた一誠だが、ライザーの蹴りによって遮られた。

 

「こうも俺にたてついた根性だけは認めてやろう。だが、所詮は下級悪魔。いくら気持ちが強かろうが、それに見合った実力なければ、何も守ることはできんよ」

 

そう言いながら、ライザーは既に瀕死の一誠を何度も殴ったり蹴ったりする。

しかし、一誠はライザーに殴られながらも、その闘志を消すことなく、ひたすらに喋り続ける。

 

「俺、まだ戦えますから・・・勝ちますから・・・!」

 

「イッセー!下がりなさい!なんで私の命令が・・・!?」

 

リアスが下がるよう一誠に命令するが、一誠は決して引くことはせず、薄れていく意識に残っている僅かな闘志を燃やし続ける。

ひたすらに一誠をボコボコにしたライザーは一誠の頭を掴み、反対側の手に炎を出現させた。

 

「不愉快だな。口先だけの下級悪魔が、しつこく吠える姿という物は・・・!」

 

直後、僅かに聞こえた一誠の呟きと、未だに消えない闘志がライザーの目に映った。

 

「部長・・・俺・・・カチマス・・・ブチョウノタメナラ・・・」

 

「・・・レーティングゲームで万が一死者が出た場合、それは事故として扱われ、出した側は何の咎めも無しに終わる。良いだろう。実力の違いを見せつけて尚、まだこの俺にたてつこうというのなら仕方あるまい・・・」

 

そう言いながら、ライザーは手元の炎を肥大化させた。

 

「ここで死ね!くだらない忠義心と共に!」

 

「やめてライザーーーーーー!!」

 

ライザーの炎が一誠の体を焼き尽くそうとしたその時、リアスがライザーに抱きついた。

 

「私の負けよ。リザインします」

 

「ぶ、部長・・・」

 

一誠が最後に見たのは、涙を流しながらライザーにリタイアを求めるリアスの姿だった。

 

『リアス様のリザインを確認。このゲームはライザー・フェニックス様の勝利となります』

 

その直後、一誠は意識を失い、グレイフィアの声がフィールド中に響いた。

 

「・・・・・・」

 

そして、その光景を少し離れた建物から見守る陸兎であった。

 

 

 

 

レーティングゲームの審判を務めたグレイフィアは、ある人物がいる部屋へ入った。

 

「レーティングゲーム、終了致しました。サーゼクス様」

 

「あぁ、お疲れ様グレイフィア」

 

如何にも高級そうな椅子に座りながら、審判を務めたグレイフィアに労いの言葉を掛ける赤髪の青年。

彼こそが、冥界の現魔王であり、リアスの兄でもある悪魔。『紅髪の魔王』サーゼクス・ルシファーその人である。

 

「それにしても、彼はどうしてリアス様たちの戦いに手を出さなかったのでしょうか?」

 

グレイフィアが思い起こすように呟く。

先程のレーティングゲーム、ライザーの『女王』ユーベルーナを単独、それも無傷で倒す実力がありながらも、陸兎は一誠たちの救援に行くことなく、新校舎より少し離れた建物の上でただ戦闘の様子を見守っていた。レーティングゲームを観戦していた大半の者達は、陸兎がライザーに怖気づいたとがっかりしたり、笑ってたりしていたが、同じ『女王』の身であるグレイフィアは、最強の退魔師の一人であり、『女王』を無傷で倒せる実力を持つ人間が『王』相手に怖気づいたとは思えず、何か別の理由があったのではないかと予想していた。

思案するグレイフィアの隣でサーゼクスが答える。

 

「それは簡単なことだよ。もし、彼が戦いに介入したら、確かに勝負には勝ってただろう。だけど、リアスには婚約を破棄するが為に十天師を雇った卑怯者みたいな汚名を着せられるだろうね」

 

「!? まさか、不名誉な評価を全て自分に着せて、リアス様の名誉を守る為に、ライザー様との戦いの時だけ敢えて手を出さなかったと?」

 

「或いは、それ以外の理由があるとか・・・フフフ、中々食えないね。彼は」

 

そう言って微笑むと、サーゼクスは席を立った。

 

「さて、私も行くとしようか」

 

「婚約パーティーが行われるライザー様のお屋敷にですか?」

 

問いかけるグレイフィアに、サーゼクスは顔だけをグレイフィアに向けて答える。

 

「決まっているだろう。噂に聞く白鬼(しろおに)君に会いに行くんだよ」

 

そう言いながら笑みを浮かべるサーゼクスは、これから悪戯を仕掛けるいたずらっ子のようだと、グレイフィアは思った。




夜叉神(やしゃがみ)
陸兎が扱う剣術。鬼をも斬り殺すことができると言われ、刀一本と二本で繰り出す技が複数個あり、刀の本数ごとにそれぞれ一刀、二刀と技名が変わる。

・夜叉神流二刀『鬼嵐(おにあらし)
二刀の刀を左右に構え、勢いよく振って、周りにいる敵を薙ぎ払う技。刀を振るった時に生まれる旋風は凄まじく、近くにいると、刃風に巻き込まれて上空へ吹き飛ばされる。余談だが、陸兎は威力こそ弱まるが一刀、更には両腕だけで旋風を起こせる。

・夜叉神流一刀『牙王静流(がおうせいりゅう)
『神速』で一気に詰め寄って相手を斬る居合の技。作中では空中で繰り出したが、空中に蹴りを入れるたびに、蹴った際の空気音が出るから、地上の方が無駄な音を出すことなく一瞬で相手を斬れる。


ちなみにレイヴェルは、吹き飛ばされて以降、戦いの様子をずっと傍観してました。ただし、ユーベルーナを倒した陸兎が、兄の下に向かわず、戦いの様子を眺めていた事には、流石の彼女も目を丸くした。
次回で第2章終わりです。
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