いきなり介入してきた木場に、陸兎は不機嫌な様子で彼に話しかける。
「おい、木場ぁ。テメェ、他人の喧嘩に割り込むなんて、いい度胸してるじゃねぇか」
「悪いね。相手が聖剣使いである以上、黙って見てるわけにはいかない」
「・・・この喧嘩を先に売ったのは俺だ。んで、あの青髪が買った。それを横から奪い取ろうなんざ、物事に対しての筋道ってモンが通ってねぇよな?」
「分かるよ。でも、僕にだって譲れないものはある」
お互い睨み合う陸兎と木場のただならぬ空気に、オカルト研究部の面々はハラハラしながら見守る。
しばらく睨み合っていた二人だったが、先に折れたのは陸兎だった。
「・・・仕方ねぇな。先行はお前に譲ってやら。つーわけだ。俺を斬りたかったら、まずはこいつを斬るんだな」
「いいだろう。この男を断罪し、貴様を引きずり出してやる」
先に木場と戦い、勝てたら陸兎と戦える形でゼノヴィアは納得した。
その後、リアスの計らいの下、旧校舎の前にある芝生で殺し合い無しの決闘を行うことになった。
旧校舎を出た一同は、それぞれの立ち位置につく。
一誠の前にはイリナがおり、木場の前には宣言通りゼノヴィアがいる。そして、戦いの騒音が聞こえぬよう辺りにはリアスの結界が張られており、その端で他の面々は決闘の様子を見守っていた。
「では、始めようか」
ゼノヴィアとイリナは白いローブを脱ぎ捨て、黒い戦闘服の姿になった。
そして、ゼノヴィアは『破壊の聖剣』に巻いてある布を巻き取り、イリナも腕に巻いている紐を引っ張ると、それは日本刀のような形になった。
「兵藤一誠の『赤龍帝の籠手』、アーシア・アルジェントの『聖母の微笑』、そして君の『魔剣創造』・・・異端の神器が揃ったものだ」
「僕の力は同志たちの怨みが生み出した物でもある。この力でエクスカリバーを叩き折る!」
木場は己の憎悪を隠すことなく、『魔剣創造』を周囲に発動させる。
その中から二本の魔剣を握り、そのままゼノヴィアに攻撃を仕掛ける。
「燃え尽きろ!そして凍り付け!ハァーーーーーー!」
聖剣に対する怒りのせいなのか、普段の時とは違い、炎の魔剣と氷の魔剣を無我夢中に振るう木場。
それを見ていた陸兎は呆れた様子で呟く。
「おいおい、そんな駄々っ子攻撃で倒せると思ってんのか?」
「全くっだな!」
陸兎の呟きに応えるかのように、ゼノヴィアは木場の持っている二本の魔剣を一振りで粉々にした。
そして、『破壊の聖剣』を勢い良く地面に突き立てた。
ドーン!
その瞬間、地面が激しく揺れ出し、聖剣を突き立てた場所には巨大なクレーターができた。
ゼノヴィアは突き立てた『破壊の聖剣』を再び構えながら木場に向けて宣言する。
「『破壊の聖剣』は伊達じゃない!」
「七つに分けられて尚、この破壊力・・・七本全部を破壊するのは修羅の道か・・・」
そう呟きながら、木場は新たに巨大な一本の魔剣を作り出す。
「その聖剣と僕の魔剣の破壊力。どちらが上か勝負だ!」
木場はその魔剣を両手に持ちながら、ゼノヴィアに向かって突っ込んでいく。
「・・・決まったな」
「「「え?」」」
「勝敗分かったんですか?」
リアス、朱乃、アーシアの三人は驚き、小猫が陸兎に問いかけた。
陸兎は「あぁ」と言うと、目つきを鋭くさせながら口を開く。
「この勝負・・・」
「ハァーーー!」
陸兎が言うと同時に、木場が魔剣をゼノヴィアに向けて振るおうとした。
それに対して、ゼノヴィアは冷静に木場の動きを観察して、そして・・・
「木場の負けだ」
「ガハッ!」
木場の腹に『破壊の聖剣』の柄頭が当たり、木場は口から血反吐を吐きながらその場に崩れ落ちた。
「君の武器は多彩な魔剣とその瞬足だ。巨大な剣なんて持ってしまえば、その自慢の速さを封じることになる。そんなことも判断できないとはな・・・」
「怒りで頭に血が上っているとは言え、流石にアホ過ぎるだろ木場・・・」
何処か失望したかの様子でゼノヴィアと陸兎は、地面に倒れている木場を一瞥した。
木場は立ち上がろうとしたが、聖剣のダメージが大きいことによってそれは叶わず、ゼノヴィアはそんな木場をもう見向きもしないで、目線を次の・・・というより、本来の目標に向けた。
ちなみに、一誠VSイリナは案の定イリナが勝ちました。
「おい!案の定ってどういうことだ!?つーか、俺らの戦闘シーンカットかよ!そりゃねぇぜ!」
「そうよ!不公平だわ!」
一誠とイリナが戦闘シーンカットに対して抗議する中、ゼノヴィアは結界の端で決闘を見物していた陸兎を睨む。
「さぁ!約束通り次は貴様の番だぞ!」
そう言いながら、ゼノヴィアは『破壊の聖剣』を陸兎に向けた。
陸兎は「はぁー」とため息をつきながらも歩き、彼女の前に立つと、『洞爺刀』を手元に出現させて構えた。
「ゼノヴィア、私も加勢しようか?」
「必要無い。たかが異端者の人間。イリナの手を借りるまでもない」
イリナの加勢を断ると、ゼノヴィアは『破壊の聖剣』を構え、陸兎に怒りをぶつける。
「神聖なる主の教えを理解しようとしない野蛮な異端者め!神の名の下に貴様を断罪してくれる!」
「・・・俺が異端者なら、テメェらはなんだ?神と言ういるかも分かんねぇモンにすがり、善悪の判断も付けれねぇ狂信者か?それとも、何も考えることができず、与えられた命令にただ黙って従うだけの操り人形か?」
「!? 貴様!」
陸兎の発言に、ゼノヴィアは更に怒りを込み上げる。
だが、次の瞬間
ドクン!
「!?」
目の前にいる陸兎が、凄まじい闘気を体中から溢れ出させ、この場にいる者達と周りの草や木々を震え立たせた。正面にいるゼノヴィアもそうだが、見ているリアス達も陸兎の急激な変化に顔を強張らせる。
「(なんだ!?先程まで何も感じなかったオーラから一転して、急激に強まったこの男の凄まじい
先程までの怠そうな雰囲気から一転して、目つきを鋭くさせながら、強い殺気を出している陸兎を見て、ゼノヴィアは怒りを忘れ、目の前にいる男に対して恐怖を感じ出した。
「悪ぃが、今の俺は機嫌が悪いんだ。だから・・・一瞬でケリを付けてやるよ」
「な、何・・・?」
陸兎の力強い闘気に圧倒されながらも、ゼノヴィアは冷や汗をかきながら彼を見据える。
対する陸兎は、ゼノヴィアのことをジーと見つめていた。長い時間彼女を見続け、周りがただならぬ緊張感に包まれている中、ようやく足を一歩前に出した瞬間
スゥ
その場から消えた。
「な!消えた!?」
「後ろよ!」
イリナに声を掛けられ、ゼノヴィアは慌てて後ろに振り向くと、陸兎は既に『洞爺刀』を持っている手が下に下がっている状態だった。
驚きつつも、ゼノヴィアはすぐさま『破壊の聖剣』を構え直したが、ゼノヴィアに背中を向けている陸兎が顔をゼノヴィアの方に向けながら口を開いた。
「一つ言っとくが、早くそこから離れた方がいいぞ・・・もう手遅れだけどな」
「なんだと!?」
陸兎の言葉に疑問符を浮かべたゼノヴィアだったが、次の瞬間、彼女は自身の体が突如浮かび上がる感覚を感じた。
「!? あああぁぁぁ!!」
それは一瞬で大きくなり、瞬く間に彼女の体を上空へ吹き飛ばした。
学園の三階くらいの高さまで飛ばされた彼女は、そのまま落下し、地面に激突した。
「う、うぅ・・・」
呻き声を出しながらも何とか立ち上がろうとするが、突如彼女の周りに発生した斬撃の竜巻と地面に大きく叩き付けられたダメージによって上手く立ち上がれない。
突如上空に吹き飛ばされたゼノヴィアを見て、オカルト研究部やイリナは驚いている。
「い、今何が起きたの・・・!?」
「な、なんて凄まじい剣技なんだ・・・!」
「今の見えたの裕斗!」
「確証はないですけど・・・」
先程の出来事が僅かに見えていた木場の言葉に皆が耳を傾ける中、木場は先程陸兎が繰り出した神業について語る。
「彼は一瞬にも満たない速度で高速移動して、移動してるすれ違い様に彼女の周りに刀を振って、強力な斬撃の風を起こしたんです。ただ、それを繰り出したスピードが速いなんてレベルじゃない。スピードもそうですが、技の繊細さも凄かったです。一切のブレや無駄な音の無い完璧な動きでした。普段の彼の『神速』すらも凌駕するスピードで、一転の狂いも無く繰り出された完璧な動作。これら二つが合わさることで、彼が刀を振ってから技が発動されるまで、数秒のラグがありました。まるで・・・技が彼のスピードに追いつけなかったかのように・・・」
木場の解説を聞いたリアスは啞然と陸兎を見つめる。
強いことは知っていたし、陸兎がまだ力を隠しているのも薄々感じていたが、まさかここまでとは思っていなかった。しかも、これで本気だとは思えず、彼にはまだ上があると、リアスの悪魔的直感が感じていた。
いったい彼は自分たちに、どれだけ本当の実力を隠しているのだろう。どれだけ強くなれば、彼の至る境地まで届くのだろうか。
そんなことを思っているリアスをよそに、陸兎は『破壊の聖剣』支えに立ち上がろうとしているゼノヴィアに決闘を続行するか問いかける。
「んで、まだ続ける気か?」
「よくもゼノヴィアを・・・!」
「やめろイリナ!私たちの目的は奪われた聖剣の回収。そして、それを奪った堕天使・・・『
同じ教会の仲間を痛めつけられ、激昂したイリナをゼノヴィアは制止した。
だが、彼女たちをやり取りを聞いてた一部の者は驚愕の表情となる。
『
そんな相手をたった二人で倒すなど、ほぼ不可能と言える。
驚いているリアス達をよそに、ゼノヴィアは脱ぎ捨てた白いローブを再び纏うと、リアスに話しかけた。
「勝負は私の負けだ。だが、最初の約束は守ってもらうぞ、リアス・グレモリー」
「ちょっと待ちなさい!『神の子を見張る者』の幹部コカビエルですって!?そんな大物相手にたった二人で挑むつもり!?」
「無論、危険なのは我々も承知している。だが、聖剣を堕天使に利用されるくらいなら、この身を引き換えにでも消滅させる・・・無駄話が過ぎたな。それじゃあ、失礼するよ」
「イッセー君!裁いて欲しかったら何時でも言ってね!アーメン!」
そう言い残し、ゼノヴィアとイリナは去っていった。
それと同時に、聖剣のダメージからようやく回復した木場が、どこかへ立ち去ろうとした。
それを見たリアスが、慌てて木場を呼び止める。
「待ちなさい裕斗!私の下から離れるなんて許さないわ!貴方はグレモリー眷属の『騎士』なのよ!はぐれになんてさせないわ!」
「・・・すみません部長。でも、あの時あそこから逃げ出すことができたのは、同志たちの犠牲があったからなんです。だから、僕は復讐を果たし、彼らの怨みを晴らさないといけない。そうでないと・・・僕は前に進むことができません」
そう言って、木場は再び歩き出したが、彼の行く手を遮るように、陸兎は木場の正面に立った。
「・・・邪魔しないでくれ。僕は復讐を果たすまで止まれない。止まるわけには行かないんだ」
「んなことしねぇよ。前にも言ったが、お前が前に進むために、その復讐を必要とするなら、俺はお前を止めやしねぇ。けど、復讐を続けるつもりなら、せめて復讐が終わった後のことも考えておくこった。お前の人生の終着点は、お前の復讐が終わった時じゃねぇだろ?」
「・・・・・・」
陸兎の言葉に、木場は何も返さず、彼の横を通り過ぎていった。
「ってな事が昨日起こったぜ」
翌日の放課後、陸兎は人気の少ない場所で剣夜と報告を兼ねた電話をしていた。
『まぁ、僕たちの目的はバレてないみたいだし、ギリギリセーフってことにしよう。とりあえず、こっちでも分かったことがあってね。昨夜、街外れの廃教会で神父の遺体が見つかったんだ。それで、その遺体を解剖した結果、神父の遺体には僅かだけど聖剣の因子が・・・聖剣で斬られた痕があったんだ。だけど、盗んだ犯人であるコカビエルは堕天使だから、聖剣なんて使えるはずがない。つまり・・・』
「そいつの他にも共犯者が。それも聖剣が使える奴がいるってことか。堕天使の幹部に加えて、聖剣使い・・・そんな奴らをたった二人ぽっちの戦力でなんとかしろって・・・教会ってやっぱ馬鹿の集まりか?」
呆れるように言う陸兎に、「気持ちは分からなくないよ」と返す剣夜。
『それと・・・少し問題が起きたんだ』
「問題?ひょっとして、こっちの動きが向こうにバレたとか?」
『いや、調査に関しての問題じゃないんだ。問題って言っても、それほど大したことはないんだけど・・・』
どこか言いづらそうな様子の剣夜に、疑問符を浮かべる陸兎。
しばらく空白の時間が続いたが、剣夜は意を決するかのように言った。
『もし、任務に時間が掛かるようであれば、本部は東北の十天師に救援を要請するつもりなんだ。しかも、向こうも既に救援に応じることを承諾済みなんだ』
「・・・どっちが来るんだ?」
『・・・'彼'の方』
「問題だらけじゃねぇか!」
剣夜の言葉を聞いた途端、陸兎は一転して怒り声になる。
「ふざけんなテメェ!あの野郎がこっちで暴れてみろ!学園どころか町一帯が吹き飛ぶぞ!」
『だ、大丈夫だよ。コカビエルの実力がそんなに大したことなければ、彼もそこまで本気は出さないだろうし、もし戦闘になっても、結界で囲めば辺りに被害は・・・』
「結界でどうにかできたら苦労しねぇことぐらいオメェも知ってんだろ!頭の中が嫁とカレーと戦闘だけでできてるあの馬鹿は!」
十天師はそれぞれ各地方ごとに配属されており、陸兎と剣夜と麗奈の三人は関東(関東、中部地方)を担当している。それ以外では、東北、北海道に二人。関西(近畿、中国地方)に二人。四国、九州、沖縄に二人ずつ担当することになっている。
その中でも、東北、北海道を担当する二人、特に剣夜が言っていた'彼'は、陸兎は勿論、剣夜ですら頭を悩ませる人物である。
ちなみに、これまでの説明を聞いて、あれ?一人足りなくね?と思っている方がいるかもしれないが、残りの一人に関しての説明は、また別の機会とさせていただく。
『とにかく!彼がここに来る前に、僕たちは何としても聖剣を回収し、コカビエルを除霊すること!僕の方でも調査は進めておくし、少しでも目ぼしい情報があったらすぐ伝えるから、そっちも何か進展があったら、すぐに報告してくれ。それじゃあ』
そう言うと、剣夜は電話を切った。
「たく、簡単に言ってくれるぜあのチートイケメン」
文句を言いながらも、陸兎はスマホをしまうと、その場で考え込む。
「(闇雲に探しても無駄に時間を食うだけだしな・・・心当たりがあるとすりゃ昨日の連中だが・・・)」
考え込む中で、陸兎は昨日戦った教会の人間であるゼノヴィア達のことを思い浮かべた。彼女たちも目的は聖剣の回収であって、同じ目的を持っているのなら共闘できる可能性だって無くは無い。
しかし、彼女たちは教会の人間で、陸兎は教会の人間に最低限接触することを禁じられている。だが、あくまで最低限であり、仮に彼女たちに任務の内容がバレても、上層部の人間がエクスカリバーを
しばらく悩んでいたが、駒王町が先程述べたある男によって滅ぶよりかはマシだと結論付け、彼女たちと接触し、共闘を申し出ることにした。
「仕方ねぇ。昨日決闘したばっかで気まずいが、あの青髪に聞いてみるか・・・」
気まずい感情を抑えながらも、陸兎は昨日決闘した
「えー、迷える子羊にお恵みを~」
「天の父に代わって、哀れな私たちにお慈悲を~」
「・・・・・・」
陸兎はここに来るまでの間、内心彼女たちと関わりたくないと思っていたが、任務だから仕方ないとある程度割り切っていた。
しかし、今目の前に映っている光景を見て、彼はこう思った。
任務とかどうでもいいから関わりたくねぇと。
余談だが、決闘の際に陸兎の機嫌が悪かった理由は、人の決闘を横から奪い取った挙句、頭に血が上ってたとは言え本来の力を出さないまま負けた木場を見たからです。しかし、その後のゼノヴィアとの戦いでほとんど発散されました。