ハイスクールD×D 銀ノ魂を宿し侍   作:イノウエ・ミウ

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自己紹介は第一印象が大事

「それじゃあ裕斗は、そのバルパーを追っていったのね?」

 

「はい、ゼノヴィアとイリナと一緒に。何かあったら、連絡をくれると思うんですが・・・」

 

現在、一誠と小猫はリアスの前で正座させられ、説教を受けていた。その隣には、同じく匙がソーナの前で正座させられ、説教を受けている。

一誠の言葉を聞いたリアスは、目線を小猫の方に向ける。

 

「小猫、貴方までどうしてこんなことを?」

 

「・・・私も、裕斗先輩がいなくなるのは嫌です」

 

小猫の思いを聞き、リアスはため息をつきながら喋る。

 

「過ぎたことをあれこれ言うつもりはないわ。でも、貴方たちのやったことは、悪魔の世界に影響を及ぼすかもしれなかったのよ」

 

「はい、すみません部長」

 

「すみません」

 

リアスの言葉に頷きながら、一誠と小猫は彼女に謝った。

その時、隣で匙を説教していたソーナ達の方からパシッ!と音がした。

 

「貴方には反省が必要みたいですね。お尻叩き千回です!」

 

「ヒイイイイイ!ごめんなさい会長ぉー!」

 

振り向くと、ソーナが手に魔力を籠めながら匙の尻を叩いており、一発ごとに匙の悲鳴が鳴り響いていた。

その光景を見ていた一誠は、顔を青くしながらリアスの方に振り向く。彼女も尻叩き千回するのではないかと危惧していると、リアスは一誠と小猫の名前を呼んだ。

 

「イッセー、小猫」

 

「は、はい!」

 

緊張気味に返事する一誠だが、リアスは一誠と小猫を引き寄せて抱きしめた。

 

「馬鹿な子たちね。本当に心配ばかりかけて・・・」

 

「(ウッホー!お尻叩き千回かと思いきや、まさかの部長からの熱い抱擁!俺、部長の下僕で良かったー!)」

 

予想外の抱擁に、一誠はテンションが上がり、間抜け面を晒した(顔を赤らめた)

だが、現実は甘くなかった。

 

「さて、イッセー。お尻を出しなさい。貴方もお尻叩き千回よ」

 

「・・・え?」

 

抱擁を解いた後、唐突に言ってきた死刑宣告(お尻叩き千回)に呆然とする一誠。

しばらくして思考が戻った一誠は、驚愕の表情となって叫ぶ。

 

「えぇー!ここは許してくれて、お尻叩き千回は無くなるパターンじゃないんですか!?」

 

「そうはいかないわ。下僕の躾は主の仕事だもの。それに・・・」

 

リアスがチラッと視線を横に向ける。

 

「あれよりはマシだと思うけど・・・」

 

視線の先に映った光景は、めちゃくちゃ寒そうに体を震わせている陸兎がいた。パンツ一丁で尖った波形の板の上で正座しており、両手首は縄で縛られ、膝の上には大量の石が置かれている。

そして、彼の正面には笑ってない笑みを浮かべている剣夜がいた。

 

「それで、まだ何か言いたいことはあるかい?」

 

「人間って、こういう寒い状況下で風呂に入ると、めちゃくちゃあったかく感じるらしいぜ」

 

「麗奈、もうマイナス10度下げてくれ」

 

「かしこまりました」

 

剣夜の指示に従い、麗奈は氷をモチーフとした青白い色の銃を持つと、陸兎に向けて引き金を引いた。

すると、銃口からマイナス10度は軽く超えているであろう冷たい冷気が放たれ、ただでさえカチコチに凍っている陸兎の体を更に凍えさせる。

 

「おわぁぁぁぁぁぁ!!ちょ、死ぬ!流石に死ぬって!大体、依頼内容は別に秘密事項じゃねぇんだし、教会側に漏らしたって、そこまで問題ないだろ!?」

 

「・・・百歩譲って、依頼内容を教会側に漏らしたことはまだいい・・・でもね、僕は君にこう言ったよね?何かあったら、すぐに報告しろって。なのに、君は全然こっちに報告しないで、いつの間にか教会側に情報をばらしてるし。オマケに、ソーナ達の力を借りて、ようやく見つけたと思えば、肝心の犯人を取り逃すし、情報を持っているであろう教会側の人間とははぐれる始末。おかげで僕が上層部に報告した時に、どれだけ彼らにいらない愚痴を言われたか分かるかい?不必要な言葉を延々と聞かされた僕の心情が分かるかい?」

 

「イヤー、あれはなんて言うかーほら、社会でよくある嫌いな上司からの嫌がらせみたいなモンよ。寧ろ、こういう嫌いな上司の嫌味にも文句を言わずに付きやってやるのが、リーダーの役目――」

 

「うるさい、黙って座ってろ」

 

「お前なんかキャラ変わってない!?」

 

陸兎たちを見つけた後、剣夜は一連の出来事を日本陰陽師協会に報告したのだが、返ってきた言葉の90%が嫌味やら愚痴などであり、剣夜はそれをただ黙って、それはもういい笑顔で聞いてた。

そして、報告をし終えた後に湧き上がってきた怒りのベクトルは、全て嫌味の原因を作った問題児の方の幼馴染へと向かい、彼は陸兎にストレス発散という名のお仕置きを実行していた。

その後、陸兎が言葉を発する度に彼の悲鳴が鳴り響き、剣夜によるお仕置きは数時間に渡り続くのであった。

 

「・・・部長、尻叩き千回受けます」

 

「素直でよろしい」

 

その光景を無言で見つめていた一誠は、大人しくリアスのお仕置きを受けるのであった。

 

 

 

 

数日後、陸兎は剣夜と一緒に駒王町を探索していた。

 

「はぁー、結局一から探す羽目になってんじゃねぇか。マジめんどくせー」

 

「どっかの誰かがきちんと報告していれば、君の言うめんどくせー事にはならなかったと思うんだけどね」

 

一人呟く剣夜の言葉を聞き、気まずそうに顔を逸らす陸兎。

この間の独断での行動以降、陸兎は監視の意味も込めて剣夜と一緒に行動する羽目になり、嫌々と聖剣に関する情報を集めていた。

 

「やはり、こうも情報が少ないと、探し出すのは容易じゃないか。この間、君が遭遇した聖剣使い達に連絡を取れたりできないのかい?」

 

「そうしてぇのは山々なんだが、あいつら電話しても一向に出る気配が無いんだよなぁ。木場も電話に出ねぇし・・・問題児共が」

 

お前が言うなと言いたげな顔を陸兎に向ける剣夜。

その時だった。

 

ドーン!

 

「「!?」」

 

遠くにある山の方から、突如激しい戦闘音が聞こえてきた。それと同時に、僅かだが強い気配を感じ取った。

二人は顔を見合わせると、すぐさま『神速』で移動する。

数秒も経たずに音がした方に着いた二人は、そこで倒れている人物を目にした。

 

「・・・遅かったか」

 

「みたいだね」

 

二人の視線の先には、ボロボロになったイリナが倒れていた。

黒い戦闘服は所々切り裂かれており、彼女自身も傷を負っている。そして、彼女が持っているはずの『擬態の聖剣』が彼女の腕に巻かれていなかった。

 

「聖剣使いなのに聖剣を持っていない。となると・・・」

 

「十中八九奪われただろうな」

 

そう結論付けながら、陸兎はスマホを取り出し、一誠に電話する。

しばらくすると、木場以外のオカルト研究部の面々が魔法陣から現れた。

 

「八神!イリナは!?」

 

「十門寺家の人間に頼んで、東京の病院に運んでもらったよ。心配しなくても、俺が見た限りじゃ命に別条はねぇよ」

 

陸兎の言葉を聞いてホッと安堵する一誠。

丁度そこに、剣夜から連絡をもらったソーナ(と匙)が魔法陣から現れた。

 

「連絡を受けて来たのはいいけれど・・・剣夜、どういう状況か説明してもらえるかしら?」

 

「勿論だよ。けど、その前に――」

 

リアス達に状況を説明する前に、剣夜は後ろに振り向くと、一本の木に向けて右手をかざした。

すると、彼の左右に二本の剣が現れ、猛スピードで木に向かって飛んでいった。

その時、迫りくる二本の剣を避けるかのように、木の影から一つの人影が現れ、剣夜が飛ばした二本の剣はそのまま目の前にあった木を切り裂いた。

驚くリアス達をよそに、剣夜は木の影から現れた人物に声を掛ける。

 

「さっきからずっと殺気を出しながらこっちを見つめてたみたいだけど、僕たちに何か用かい?奇妙な悪魔祓い君」

 

「いんやぁ、人がちょっくらエクスカリバーを試し斬りしたい衝動に駆られてただけだってのに、いきなり攻撃してくるとはねぇ。人にいきなり蹴りを入れやがったそこの死んだ魚の目をしたクソ人間といい、退魔師ってのは血の気が多い連中の集まりかねぇ?」

 

木の影から現れたのはフリードだった。彼はいきなり攻撃して来た剣夜を不快な表情で見つめていたが、自身を見つめているアーシアと目が合うと、一転して笑みを浮かべた。

 

「おやおやー?クソ悪魔共に寝返ったアーシアちゃん。クソ悪魔ライフ、楽しんで――」

 

「『錬成』」

 

「オワッ!?」

 

アーシアへの皮肉を言い切る前に、誓約神器を発動させた剣夜が、自身の周りに先程よりも数が多い剣を作り出し、フリードに向けて飛ばした。

突然の攻撃に、さっきまで笑みを浮かべていたフリードは驚きながらも何とか躱した。

 

「あっぶねー!おいコラ、イケメン野郎!喋ってる最中の人間に、いきなり刃物を飛ばすなんざ、どういう教育してんだテメェ!」

 

「悪いけど、僕は無駄なことが嫌いなんでね。あまり時間を掛けている暇もないし、君の持っているエクスカリバー、さっさと破壊させてもらうよ」

 

文句を言うフリードに対して、剣夜は聞く耳を持たず、更なる攻撃を加えようと新たに複数の剣を作り出す。

それを見たフリードは、慌てながら待ったを掛ける。

 

「ちょちょちょ、ちょい待ちちょい待ち!俺は別に戦いに来たわけじゃないんだ。ちょっくら、そこの赤毛のお嬢さんに話があるんだって!」

 

「私に?」

 

フリードに用があると言われて、リアスは疑問符を浮かべる。

 

「そう・・・うちのボスがさぁ!」

 

笑みを浮かべながら上を見上げるフリード。

その直後、辺り一帯が結界で覆われ、フリードに釣られてリアス達も上を見る。

すると、十枚もの黒い翼を広げている男が空に浮かんでいた。

 

「初めまして、グレモリー家の娘。我が名は――」

 

「剣夜!」

 

「分かっている!『錬成』!」

 

「ウオっ!?」

 

空に浮かんでいる男が自己紹介する瞬間、陸兎に名を呼ばれた剣夜は、周囲に何十本もの剣を作り出し、それら全てを男に向けて飛ばした。

咄嗟の攻撃に男は驚きながらも、翼を広げながら無数に迫る剣の雨を躱していく。

その隙を狙うかのように、間合いに入った陸兎が『洞爺刀』で男に斬りかかる。

 

「くっ!小賢しい!」

 

男は咄嗟に光の槍を作り出し、『洞爺刀』を防ぐと、反撃と言わんばかりに作り出した槍を陸兎に向けて投げた。

陸兎は槍を『洞爺刀』で弾き飛ばすと、剣夜の横に立つ。

男もまた、先程と同じ位置に浮かび、ぜぇ、ぜぇと呼吸を整えながら陸兎と剣夜を睨んだ。

 

「貴様ら!人が名乗ってる途中で攻撃してくるとは!堕天使どころか悪魔でもそんなことする奴は滅多にいないぞ!」

 

「すまないね。君の顔がどう見ても敵の顔をしてから、つい反射的に動いてしまったよ。そうだろう?堕天使の幹部、コカビエルさん」

 

「やっぱ見た目って大事だよな。人との関係は第一印象から決まるって言うし」

 

怒る男改め堕天使コカビエルに対して、悪びれる様子もなく喋る剣夜と陸兎。

 

「そもそもお前、俺らがここに着いた時からずっと上にいたよな?なのに、イッセー達がここに来るまでの間、一言も喋りもしないって、何お前コミュ障なの?それとも、自分から人に話しかけれないタイプ?何千年も年取ってそうなおっさんが今更コミュ障を患っているって・・・恥ずかしくないの?」

 

「貴様・・・!下等生物如きが、至高の存在である俺を馬鹿にするか・・・!」

 

「ちょっとボスぅ。目的はご挨拶で、こいつらとやり合うのはもっと先じゃないんすか?まぁ、俺様としては、今すぐここでやり合うのはありなんですけどね」

 

小馬鹿にするかのような態度を取る陸兎に、殺意を募らせていくコカビエルだったが、フリードに宥められ、冷静になると再び笑みを浮かべた。

 

「俺の目的はただ一つ。リアス・グレモリー、お前の根城である駒王町で暴れようと思ってな。そうすれば、嫌でもお前の兄であるサーゼクスが出てこざるをえない」

 

「なんですって!?そんなことをすれば、堕天使と神、悪魔との戦争が再び勃発するわよ!」

 

「ククク、エクスカリバーを奪えば、ミカエルが戦争を仕掛けてくると思ったのだが、寄こしたのが雑魚の悪魔祓い共と聖剣使い二匹だ。つまらん、余りにもつまらん!」

 

ここに来るまでの間に倒してきた相手の事を思い出し、興醒めと言わんばかりの顔で叫ぶコカビエル。

一方でコカビエルの言葉を聞いた剣夜は、納得したかのような顔をする。

 

「なるほど。つまり君たちは、始めから天使と堕天使と悪魔による三つ巴の戦争を引き起こす為に行動してたということかい?」

 

「その通りだ!退魔師・・・いや、十天師の小僧!俺は三つ巴の戦争が終わってから退屈で退屈で仕方なかった!アザゼルもシェムハザも次の戦争に消極的でな。アザゼルに至っては、神器とか言う訳の分からん物を集め出して、研究に没頭し始める始末だ」

 

「アザゼル・・・確か、堕天使の組織『神の子を見張る者』の総督だったね」

 

「そう言えば、貴様と隣の小僧が持っている物。アザゼルはかなり気にしていたぞ。確か、人工的に作られた神器らしいが・・・」

 

「悪いけど、僕らが宿している物を君に、ましてや堕天使の総督にも教えるつもりはない。聞きたかったら、力づくで聞くんだね」

 

「フンッ!まぁ、アザゼルが夢中になっているだけで、俺はそんな物に興味は無い。堕天使、神、悪魔・・・それぞれがギリギリの所で均衡を保っている。俺はこの状況を完全に破局させ、この手で戦争を引き起こす!」

 

三つ巴の戦争を引き起こすことを堂々と語るコカビエル。その顔は狂気に満ちていた。

 

「完全な戦争狂ね」

 

リアスはコカビエルという堕天使を一言で表した。

 

「だから、今度は貴様ら悪魔に仕掛けさせてもらう。ルシファーの妹、リアス・グレモリー。レヴィアタンの妹、ソーナ・シトリー。そして、最強の退魔師、十天師よ。それらが通う学び舎なら、さぞや魔力の波動が立ちこめて、混沌が楽しめるだろう!戦場としては申し分あるまい!」

 

「イカレてやがる・・・」

 

コカビエルの狂気に、言葉を失う匙。

 

「うちのボス、このイカレ具合が素敵で最高でしょー!俺もついつい張り切っちゃうわけさ。こんなご褒美まで頂いてくれちゃうしさぁ!」

 

フリードは笑いながら上着を広げた。

広げた上着の中には、複数の聖剣と思われる剣が仕舞っていた。

 

「エクスカリバー・・・」

 

「!? まさか、あいつの持ってるの全部!?」

 

「そのようですわね」

 

小猫が呟き、驚いている一誠の疑問に朱乃が答えた。

 

「無論勿論、全部使えるハイパー状態なんざます!俺って最強!アハハハハハハ!」

 

一人笑うフリードをよそに、コカビエルは翼を広げ、更に上空へ飛び立つ。

 

「俺たちは一足先に貴様らの学び舎へ行く。そこで戦争をしよう。魔王サーゼクスの妹、リアス・グレモリーよ!」

 

そう言いながら、コカビエルは手元に魔法陣を展開させると、そこから大量の光の槍が降ってきた。

 

「させない!『八咫鏡(やたのかがみ)』!」

 

剣夜が両手をかざすと、彼の手元に巨大な鏡が出現し、大量の光の槍を全て跳ね返した。

 

「スッゲー、やるじゃねぇか十門寺!」

 

あれだけの槍を全て跳ね返した剣夜を一誠が称賛した。

しかし、槍を跳ね返した本人はあまり良い顔はしておらず、目線を駒王町の街並みが見える高台の方に向ける。

 

「連中、逃げたな。どこに行った?」

 

「恐らく、駒王学園だろうね。さっき、そこで戦争をすると宣戦布告してたしね」

 

陸兎の質問に答えながら、駒王町の街並みを見つめる剣夜。

その横で、一誠が拳を震わせながら呟く。

 

「あいつら、本気で学園を滅ぼす気か!?」

 

「いいえ、あのクラスとなると、学園どころかこの町自体、滅ぼすことなど容易いでしょう」

 

「そんな・・・!そんなこと・・・絶対にさせてたまるか!」

 

ソーナの言葉を聞いて、決意を固める一誠。

他の面々も同様であり、コカビエルの野望を阻止すべく、陸兎たちは急いで駒王学園へと向かうのであった。

ちなみに、駒王学園に向かう途中、リアスはさっきの出来事で一つ気になったことを陸兎に問う。

 

「ところで陸兎。さっき十門寺君が出したあの鏡。もしかして・・・」

 

「ご察しの通り、あれは日本神話が誇る『三種の神器』の一つ『八咫鏡』だ。あいつの誓約神器は、そんなヤベーモンすらも簡単に作り出すことのできる代物だ」

 

「・・・さりげなく、とんでもないことを言ってる気がするけど、今はコカビエルの方が優先だし、彼の話はまた今度にしましょう」

 

とんでもないことを聞いたリアスだったが、今優先すべきことはコカビエルの野望を阻止することであると、気持ちを切り替えるのであった。

 

 

 

 

そして数時間後、陸兎たちは駒王学園の校舎前に集まっていた。

 

「リアス、学園全体を結界で覆いました」

 

「こっちの方も結界の構築が終わりました」

 

結界を張り終えたソーナと剣夜がリアスに報告する。

現在、学園の周りにはシトリー眷属の面々が張っている結界に覆われており、更にリアス達が待機している場所の外側には、日本陰陽師協会によって派遣された一般退魔師たちが張っている第二の結界に覆われている。

結界を二重に張っているのは、万が一が起きた場合、町の被害を最小限に抑える為である。これは剣夜が日本陰陽師協会にコカビエルの件を報告した際に提案し、陰陽師側もそれを承諾し、結界を張るために近くの陰陽師局に所属している退魔師たちに緊急の派遣要請を下した。

 

「リアス、できるだけ結界は維持しますが、外に被害が出ないとは限りません。ましてや、相手は堕天使の幹部」

 

「本来でしたら、町の人達を遠くに避難させたかったんですが、この町に住まうほとんどの人間は、貴方たち異形の存在を知らない。それどころか、退魔師や陰陽師の存在すらも」

 

「仕方ないわね。堕天使がこの町を滅ぼそうとしているから早く逃げなさいっていきなり言っても、何も知らない人達から見れば、私たちは異常者にしか見えないわね」

 

ソーナと剣夜の言葉を聞いたリアスは、この町を治める者として、やるせない気持ちになりながらため息をつく。

悪魔という存在が、人間社会に隠れて存在してる以上、そうなることはリアスも分かっていた。

ならば、自分たちができることはただ一つ。裏に住まう存在として、表で平穏な暮らしをしてる者達を護り切ること。

決意を固めるリアスを見た剣夜は、目線を陸兎の方に移して、真剣な表情で彼に話しかける。

 

「さて、陸兎。知っての通り、僕と麗奈は他の退魔師たちと外の結界を維持するために、ここに残る必要があるから、戦線に出ることができない。だから、コカビエルの討伐は君に任せるよ」

 

「分かってら。心配しなくとも、果たされた依頼はきちんと果たしてやるよ。無論、誰一人犠牲にするつもりはねぇよ。オカルト研究部の皆(あいつら)結界を張っている者達(お前ら)もこの町の連中もな」

 

「フッ、そう言うと思ったよ・・・死ぬなよ?」

 

「あったりめぇよぉ。少しデケェカラス如きにやられてちゃ、主人公は名乗れねぇよ」

 

お互いに微笑みながら、拳を突き付けた。

その横でリアス達が魔王を呼ぶか呼ばないかで話し合っていた。

兄である魔王サーゼクスを呼ぶことに消極的であったリアスだったが、朱乃が既にサーゼクスを呼んでいると言う。最初は朱乃を非難していたリアスだったが、彼女に論されたことで納得し、一時間後にサーゼクスが来るという形で終わった。

そんなこんなで、着々と準備が進められていく中、唐突に携帯の着信音が鳴り響いた。

 

プルルルル!

 

「ん?失礼、少し外します」

 

着信元は剣夜の携帯であり、彼は一言断りを入れながら少し離れた場所に移動し、電話に出た。

しばらく電話していた剣夜だったが、突如驚いた、というより焦っているような顔をし、電話を切った頃には凄く険しい表情をしていた。

普段の爽やかな雰囲気を持つ彼らしからぬ顔に、周りは何事かと剣夜を見ていると、彼は陸兎の名を呼ぶと、そのまま彼を連れて、またしても少し離れた場所に移動した。

また厄介事かと思いながら面倒な顔を隠さないで聞こうとした陸兎だったが、剣夜から発せられた言葉で、その顔が驚きへと変わった。

 

「陸兎、緊急事態だ。もし、コカビエル討伐に時間がかかれば、上層部は東北にいる彼に救援を要請するみたいなんだ」

 

「!? マジか・・・!?」

 

陸兎は驚かずにはいられなかった。東北の十天師への救援要請。それは、陸兎や剣夜がこの件で最も危惧してたことである。

東北、北海道を担当する'彼'は、十天師の中でも高い戦闘能力を持つ上、一度ギアが入り出すと、敵を滅ぼすまで後先構わず暴れ続ける厄介な性格を持っている。それこそ、今現在危機に晒されている駒王町が数分足らずで瓦礫の山となるくらいに。

しかも、本来予定してた救援を要請する時間よりも少し早い。

 

「後、どれくらいだ!?」

 

「今が夜の23時30分で、次の日になったら救援を要請するみたいだ。つまり後30分だ」

 

剣夜から告げられたタイムリミットに、陸兎は悪態付く。

 

「クソッ!こういう事態を避けるために、早めに行動したつもりだったってのに、どんだけせっかちなんだよ上の奴ら!」

 

「仕方ないさ。町一つが滅ぶとなれば、誰だって焦ってしまうさ。とにかく、結界の維持は僕らがしておくから、君はグレモリー眷属と一緒に何としてもコカビエルを倒すんだ。それでも、もし間に合わなくて、コカビエルを討伐した後に、彼がグレモリー眷属の皆を狙い出したら・・・」

 

「そん時は、俺が力づくで止めてやらぁ。お前らには悪いが、もしあいつとやり合うことになったら、結界維持に全力を出してもらうぜ。じゃねぇと、せっかく町が助かったってのに、また滅んじまうかもしんねぇからな」

 

「・・・笑えない冗談だよ」

 

真剣な表情で言う陸兎に、剣夜は疲れ混じりのため息を吐いた。

用が済み、陸兎はリアス達の下に戻ると、皆に気合いを入れるかのように声を上げた。

 

「よし!行くぞお前ら!敵は目の前だ!一時間なんて待ってられるか!30分以内にケリをつけてやらぁ!」

 

「ず、随分やる気満々ね。でも、言われるまでもないわ。皆!必ず生きて、全員無事に帰るわよ!」

 

「「「「はい!」」」」

 

「応!」

 

リアスの言葉に応じて、オカルト研究部の面々は気合いの入った返事をした。

気合い十分のまま、陸兎たちはコカビエルへ挑むべく、結界の中へ入っていった。




ちなみに、新年特別編で酒吞馨が出した年賀状に書いてあった通り、馨は結界(退魔師の方)の外でずっとスタンバってます。
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