放課後、兵藤一誠は夕暮れの道を歩いていた。
悪友の松田に誘われて、彼の家でエロDVDを見ていたが、途中で気分が乗らず、帰路についていた。
「どうなってんだ?今朝はあんなに怠かったのに、今では怠いどころか、力がみなぎってくる」
歩きながら一誠は徐々に力がみなぎってくる己の体に違和感を覚える。
違和感を覚えながらも、帰路についていると、突如後ろから気配を感じ、振り向くと、黒いスーツを着た男がいた。
「これは数奇なものだ。こんな辺境な地で、よもや貴様のような存在に出会うとは・・・」
そう言いながら、一誠に近づいてくる男。
その瞬間、一誠は己の直感が何かを感じたのか、こちらに向かって歩いてくる男から逃げるように走った。
「逃げ腰か?これだから下級の存在は困る」
だが、走った先には先程の男・・・いや、堕天使が背中の黒い翼を出して、一誠の前に降り立った。
「主の気配も仲間の気配も無し・・・となると、はぐれか。ならば、殺しても問題あるまい」
そう言いながら、堕天使は光の槍を出現させ、一誠の腹に突き刺した。
「っ!?がぁっ!?」
刺された腹の部分から焼けるような痛みを感じ、その場に膝を付き悶え苦しむ一誠。
苦しみながらも、刺さった槍を引き抜こうとした一誠だったが、槍が焼けるように熱くて触ることすらできない。
「痛いだろう?光はお前ら悪魔にとって猛毒だからな。安心しろ、すぐ楽になる」
一誠が苦しんでいる間に、堕天使は槍を再度作って、一誠に目掛けて投げようとしていた。
ここで死ぬのか?っと、一誠は徐々に薄れていく意識の中でそう思っていると・・・
「おーい、イッセー。何とか息はあるみてぇだな~」
「や、やが・・・み・・・?」
薄れていく意識の中で、一誠は陸兎の姿と彼の能天気な声が聞こえてくるのを感じた。
その直後、一誠の意識は途切れた。
陸兎が駆けつけた時には、一誠は光の槍に腹を貫かれていた。
普通の人間なら致命傷になりかねないが、悪魔となった一誠は体が人間よりも丈夫な為、この程度の傷では命に別状は無い。まあ、悪魔にとって光は弱点である為、痛いのには変わりないだろうが。
「貴様!何者だ!何故こんなところに人間がいる!?」
一誠の無事を確認し、命に別状が無いことに安堵していると、堕天使の男が陸兎に向かって叫んだ。
「何故って、決まってんだろ。
「
「小せぇな」
「何?」
陸兎に言われ、こめかみを僅かにひくつかせる堕天使。
そんな堕天使に向かって、陸兎は言葉を続ける。
「悪魔だからなんだ?こいつが悪魔だろうと、こいつはいつも学校で一緒にエロ話で馬鹿騒ぎしたり、たまに覗きがバレて落ち込んでるこいつを嘲笑う
「貴様・・・!いいだろう、その
堕天使は羽を羽ばたかせて宙に浮かぶと、再度槍を作り、陸兎目掛けて投げようと構える。
対する陸兎は、堕天使に好戦的な笑みを向ける。
「そんじゃ、始めるとしますか」
そう言うと同時に、陸兎の右手から木刀が出現した。
その様子を見て、堕天使は顔をしかめる。
「そんなおもちゃで我ら誇り高き堕天使とやり合うつもりか?嘗められたものだな」
「心配すんな。自分の事を自分で誇り高き(笑)って言ってる痛いおっさんよりかは10倍マシだぜ」
その挑発が戦闘開始の合図となった。
挑発に乗った堕天使は憤怒の顔で光の槍を陸兎目掛けて投げた。
それに対し、陸兎は槍が当たる直前に木刀でその槍を真っ二つに斬った。
堕天使は槍を斬られたことに驚いていたが、すぐさま冷静になる。
「やるな。ならば、これならどうだ!?」
そう言いながら、片手ではなく、両手に光の槍をそれぞれ作り出し、それを陸兎目掛けて何回も投げつけた。
最初は捌いているような素振りをしていた陸兎だが、次第に槍の数が多くなっていき、最終的には公園全体に槍が降り注ぎ、その衝撃で辺りは砂煙に覆われた。
槍を捌いていた陸兎の姿は見えなくなり、捌いていた音も聞こえなくなった。
静寂と化した公園を見下ろしている堕天使は勝ち誇った笑みを浮かべる。
「フン!大口を叩いておいて結局はこの程度か。所詮は人間。あのような
しかし、次の瞬間、その顔は驚きに変わった。
なぜなら・・・自分の目の前で、木刀を構えながらこちらに向けて笑みを浮かべている陸兎がいきなり現れたからである。
「知ってるか?剣士に向かってそんなことを言う銃使いって・・・二秒でバラバラにされるか、斬られる瞬間にウ○コ漏らしたかのような顔をするの二択なんだぜ」
「っ!?貴様いつの間に!」
その直後、陸兎は堕天使の腹部目掛けて目にも見えぬ速さで木刀を振った。
「ぐぉっ!?」
木刀の一撃を腹部に食らった堕天使は、その勢いのまま地面に落ち、うつ伏せに倒れた。
堕天使は何とか立ち上がるも、先程斬られた箇所に痛みを感じ、腹部を押さえている己の手を見て、目を見開く。
その手は真っ赤な血で染められており、斬られた箇所には血が溢れ出ていた。
堕天使は見開いた目で陸兎を見る。まさか、あんな
「な、なんだその刀は・・・!?神器か・・・!?」
「神器じゃねぇよ。似てるけど、神器とは別モンだ」
そう言うと、陸兎は神器と思わしき木刀を再度構える。
「そんじゃ、さっさとぶっ倒すとしますか・・・ん?」
追撃をかけようとした陸兎だが、ふと上から気配を感じ、その気配の正体が何なのか知ると、「はぁ~」とため息をついた。
「悪ぃが、どうやらここまでだ。グレモリーの眷属には見つかるなってあいつに言われてんだ」
そう言いながら、陸兎は手に持っている木刀を消滅させると、後ろに振り返った。
その姿を見て、堕天使が流血している腹部を押さえながら叫ぶ。
「ぐっ!貴様、逃げる気か!?」
「別に追ってきても構わないぜ・・・けど、そん時は首を置いてく覚悟で来やがれ・・・!」
「!?」
陸兎が咄嗟に放った殺気。それは、相手を殺すという意志を持った、本物の殺気だった。
その殺気を正面から受けた堕天使は、体中に鳥肌が立つのを感じ、動けずにいた。その瞬間、陸兎はその場から消えた。
「消えた!?」
突如消えた陸兎に戸惑っていた堕天使だが、その直後
「そこまでよ。これ以上、その子に手を出さないでくれるかしら?」
紅髪の悪魔、リアス・グレモリーが夕暮れの空から現れた。
次の日の昼休み、陸兎と剣夜は屋上で昨日起きた出来事について話し合っていた。
「なるほど・・・つまり、兵藤一誠は悪魔や堕天使のことについて知ったというわけだね」
「正確には、グレモリーがイッセーと接触したんじゃね?ってことだ。お前の忠告通り、グレモリーとは接触してねぇから、俺が去った後のことは分かんねぇよ」
剣夜に昨日の出来事について説明する陸兎は「けどよ」と言葉を続ける。
「グレモリーとは接触してねぇけど、イッセーには昨日俺がいたことがバレてんだ。遅かれ早かれ、俺らのことがグレモリーに知られるのは時間の問題じゃね?」
「それはこちらも承知の上だ。昨日も言ったけど、彼女たちにはいずれ話す予定だし、今は僕たちの正体がバレないように行動してくれ」
剣夜の指示に「ヘイヘイ」と返しながら、陸兎は屋上から出た。
そして放課後。昨日の夕方、リアスに救われた一誠は、今日の放課後オカルト研究部に来て欲しいとリアスに言われ、教室でリアス・グレモリーの使いを待っていた。
しばらくの間待っていると、教室の扉が開き、金髪の少年が入ってきた。
「やあ、兵藤君。部長の使いで君を迎えに来たよ」
「・・・お前か、木場裕斗」
教室に入ってきた少年は木場裕斗。陸兎や剣夜と同じく、駒王学園三大イケメンの一人に君臨する程の美少年だ。
内心では女子が来るのを期待していた一誠は、残念な気持ちを心の中にしまうと、木場の後に付いていく。
途中、二人が歩いている所を見て、腐女子たちが興奮していたが、何とかやり過ごしながら二人は旧校舎にあるオカルト研究部の部室に辿り着いた。
「ここがオカルト研究部の部室だよ」
木場がそう言うと、部屋の扉を開き、二人は中に入った。
中は至る所にロウソクが置かれ、壁や床、天井にまで魔法陣があったりなど、かなり不気味な雰囲気を感じる部屋だ。そして、その部屋に二人の人物がいた。
一人はソファーに座って黙々と羊羹を食べている白髪の少女、塔城小猫。もう一人はリアスの物と思わしき制服を手に持っている駒王学園二大お姉さまの一人、姫島朱乃。
そして、しばらくして部屋の奥から、朱乃に着替えを渡され、制服に着替えたリアス・グレモリーが出てきた。
「ごめんなさい、今朝シャワーを浴びれなかったから、ここで浴びてたの。待たせちゃったかしら?」
「いえ、大丈夫です」
「そう・・・それじゃあ、兵藤一誠君。貴方をオカルト研究部に歓迎するわ・・・悪魔としてね」
そこから先は色んな事を説明された。悪魔や堕天使などといったこの世界の裏に潜む異形について。昨日一誠を襲った男や日曜日に一誠を殺した天野夕麻が堕天使であること。夕麻が一誠を殺した理由が一誠の中に眠っている神器を危険視してのこと。夕麻に殺され、死に掛けていた一誠を召喚されたリアスが悪魔に転生させたこと。一誠の神器を目覚めさせてみたりなど。
一通り説明され、ある程度納得した一誠だったが、一つ気になったことがあり、それをリアスに聞いてみる。
「あれ?・・・一つ聞いていいですか?部長」
「えぇ、何でも聞いてちょうだい」
「オカルト研究部の部員って、ここにいる全員だけですよね?」
「? えぇ、ここにいる皆は部員であって、私の眷属でもあるのよ。それがどうかしたの?」
質問の意図が読めず、疑問を浮かべるリアスに一誠が問いかける。
「八神はオカルト研究部にいないんですか?」
「八神?それって確か・・・」
「木場君と同じ、駒王学園三大イケメンの一人ですわよ、部長」
朱乃に説明され、思い出したかのような顔をするリアス。
「あぁ、たまに昼休み中、放送室でラジオ放送をする問題児君ね。彼はそもそも悪魔じゃないから、オカルト研究部に所属してないし、私の眷属でもないけど、彼が何だって言うの?」
何故いきなり問題児である八神の名前が挙がったのか疑問に思うリアス。
そんなリアスに、一誠は昨日、薄れていく意識の中で見た出来事を伝えた。
「実は昨日、部長に助けられる前に、八神が俺のことを助けてくれたような気がしたんです」
「本当!?」
一誠の言葉に驚くリアスだったが、ふと昨日起きた出来事で気になった所を思い出し、冷静になって喋り出す。
「そう言えば、昨日の出来事で不可解な点が一つだけあったのよね。私が公園に駆けつけた時、対峙した堕天使の腹に刃物で斬られたような傷があったのよ」
「それって、もしかして八神がつけたものなんですか?」
「そこまでは分からないわ。私が来た時には一誠と堕天使しかいなかったもの」
そう言いながら、リアスはしばらくの間思案していたが、一誠の方を向いて命令した。
「一誠、貴方に部長として初の命令をするわ。明日の放課後、八神君をここに連れて来てくれるかしら?」
「八神をですか?はい、分かりました」
リアスの指示に特に反論はせず、一誠は首を縦に振った。
その後、一誠は悪魔の初仕事ということで、召喚に応じようとするも、悪魔になったばかりだからか転移することができず、自転車で召喚者の家に向かった。
残った部員は一誠が戻るまで部室で過ごすことになった。そんな中、朱乃がリアスに話しかけてきた。
「部長、一つよろしいですか?」
「何かしら?朱乃」
朱乃の顔を見て、ただごとではないと感じたリアスは真剣な表情で聞く。
「実は私、先日の日曜日に八神君とお会いしましたわ」
「!? 本当!?」
「えぇ。それで・・・彼は、私の事を悪魔だと見抜きました」
「「「!?」」」
これにはリアスだけでなく、木場や小猫も驚かされた。
朱乃と会ったことならまだしも、正体まで知られたとは思っていなかったリアスは恐る恐る朱乃に問いかける。
「ほ、本当なのそれは・・・?」
「本当よ。あれは、隣町近くの神社でお手伝いをさせていただいてた時のことでした――」
朱乃は陸兎と出会い、彼と話した事をリアス達に伝えた。
「隣町のはぐれ悪魔の討伐・・・そこは、私の管轄じゃないし、ありえなくはないと思うけど・・・彼は、五大宗家の関係者、或いは陰陽師に関係する何か・・・?」
「そこまでは、私にも分かりませんわ。でも、異形を知る人間であることは確かだと思われますわ」
朱乃の言葉を聞いて、リアスは再度思案するも、中々いい答えが浮かばない。
「彼はいったい何者なの・・・?」
リアスの発した呟きには誰も答えることができず、静かな時間だけが部室の中に過ぎていった。