リアス・グレモリーは激怒した。とは言っても、かのメ○スのように真っ先に王様を取り除かんとする程ではないが。
その理由は二つあった。一つは先日自身の眷属にした兵藤一誠がシスターと出会い、彼女を悪魔にとって絶対に行ってはならない場所である教会まで案内したこと。それに関しては、軽い注意だけで済んだ。
そして、もう一つは・・・
「なんで、ここに八神君がいないのかしらねぇイッセー君?」
「そ、それはですね・・・色々と訳がありまして・・・」
お怒りの笑みを浮かべながら一誠の方を向くリアスに、一誠は恐る恐る今日の出来事を説明した。
今朝、シスターであるアーシアを教会に送った後、一誠は学校に着いたが、もう少しでHRが始まる為、陸兎には昼休み中に放課後オカルト研究部の部室に来るように伝えようと思っていた。
そして、昼休み。一誠は早速、陸兎の席に向かったが、そこに陸兎の姿は無かった。
一誠は周りにいる男子に陸兎がどこに行ったのか聞いてみた。
「なぁ、八神の奴どこに行ったんだ?」
「八神?それならさっき、食堂に行くのを見かけたぜ」
その情報を頼りに、一誠は食堂に向かったが、またしても陸兎の姿は無かった。
「八神ならさっき、体育館に行って来るって言ってたぜ」
周りの生徒に聞き、今度は体育館に向かったが・・・
「八神?それなら確か、バスケの試合に突然乱入してきて、敵味方問わず大暴れした後、図書室に行ったと思うぞ」
「八神君?図書室を見渡したと思ったら、いきなり詰め寄ってきて、『ここにジャンプとマガジンを毎週分置け。さもなくば、お前の顔面にスパーキング!すっからな』って言った後、校長室に行ったよ・・・正直、すっごい怖かったよ・・・」
「八神君なら、ここで私が出したお茶を一杯飲んだら、すぐ出ていってしまったよ・・・毎回思うんだけど、なんで彼はごく当たり前のように
「八神?そんなことより、ラーメン食いてぇー」
「おめぇ強そうだなぁ~。オラと勝負しねぇか?」
「俺はルフ○!海賊王になる男だ!」
「キャー!エロ兵藤よ!」
・・・・・・
「全然見つかんねぇーーー!!つーか、後半何!?明らかに、
結局、昼休み中に陸兎は見つからず、一誠が教室で陸兎を見つけた時には既に授業が始まっていた。
昼休みがダメなら放課後と、一誠は授業が終わってすぐ陸兎の席に向かったが、またしても陸兎の姿は無かった。
「八神ぃーーー!!どこにいるぅーーー!!」
「八神君なら、ポピパのライブを見に行くって言って、真っ先に教室から出たわよ」
大声で叫ぶ一誠に、桐生が冷静に話した。
一応、校門まで追いかけたが、既に陸兎の姿は無く、諦めた一誠はそのままオカルト研究部の部室へ向かうのであった。
「――以上が事の顛末です」
「はぁ~・・・流石は駒王学園の問題児ね。厄介さで言ったら、はぐれ悪魔の討伐の方がまだマシね」
一誠から事の顛末を聞かされたリアスは疲れたような顔をした。
「ひとまず、八神君の事に関しては明日にしましょう。明日は裕斗にも手伝わせるし、私も使い魔を使って彼を監視しておくわ」
「頼みます部長。俺一人だと、その内疲労で倒れますから。いや、ホントマジで」
割とガチ目の顔で語る一誠にリアスは苦笑いするしかなかった。
その時、部屋の扉が開き、朱乃が険しい表情で入ってきた。
「皆さん、お揃いですか?」
「どうしたの朱乃?そんな顔して・・・?」
「・・・大公からはぐれ悪魔討伐の依頼が届きました」
そして夜。リアス達オカルト研究部は、はぐれ悪魔討伐の為、町外れの廃屋にやって来た。
「イッセー、貴方には悪魔の戦い方について知ってもらうから、今日は見学しててちょうだい」
「はい、部長!」
一誠の力強い返事を聞くと、リアスは警戒しながら辺りを見渡す。
暗い廃屋の中を慎重に進んでいくリアス達。すると、小猫がふと上を見上げた。
「!? 上から来ます!」
小猫がいち早く上から気配を感じ、他の面々も戦闘態勢に入りながら上を見上げる。
その瞬間、小猫の言葉通り、上から何かが落ちてきて、その衝撃で辺りは砂煙で満たされた。
リアス達が警戒する中、煙は徐々に晴れ、落ちてきたものの正体が明かされる。
「あ"ぁ・・・」
「こ、これは!?」
リアスは上から落ちてきた'者'の正体に絶句した。他の面々も同様である。
上から落ちてきたのは、上半身は美人の女性だが、下半身は巨大な獣のような形をした化け物。
しかし、その姿は全身傷だらけだった。片腕は斬られ、数本ある異形の足もほとんど斬られており、立っているのがやっとの状態だ。
討伐対象がこんなボロボロな状態で落ちてきて、警戒を更に高めるリアス達。その時、コンテナの上から声がした。
「よぉ、遅かったじゃねぇか」
声に反応し、リアス達は一斉にコンテナの上を見上げると
「八神!」
木刀を肩に担ぎながら、こちらに向けて笑みを浮かべている八神陸兎がいた。
一誠が声を挙げ、他の面々が討伐対象をボロボロにしたと思われる陸兎に警戒する中、リアスは冷静になって問いかける。
「これは、貴方がやったの?」
「あぁそうだ。お前らを待っている間、暇だったから、それを潰してただけだ」
「待っている間・・・私たちがここに来ることを知ってたの?」
「正確に言やぁ、俺に討伐の命令を下した奴が知ってた」
「・・・貴方は何者なの?」
「悪ぃが、それに関してはまだ言えねぇな。んじゃ、俺帰るからそいつ(はぐれ悪魔)の後始末よろしく~」
「!? 待ちなさい!貴方にはまだ聞きたいことが――!」
後ろに振り向き、去ろうとする陸兎をリアスが慌てて引き止めようとすると、陸兎は顔をリアス達の方に向けて喋った。
「・・・明日の放課後、うちのリーダーがあんたらとこの部室に来るつもりだ。それまで我慢しろ」
そう言って、顔を戻した直後
シュッ!
「消えた!?」
陸兎の姿が突然消えて、戸惑うリアス達。
「・・・小猫」
「ダメです。気配が完全に消えました」
気配に敏感な小猫ですら捉えきれない程遠くへ移動・・・いや、転移したのだろうか。
ひとまず既に虫の息のはぐれ悪魔に止めを刺し、陸兎の言葉通り、明日の放課後まで待つことにしたリアス達であった。
次の日の放課後、旧校舎に向かう人影が四つあった。
昨日の夜、リアス達に放課後オカルト研究部の部室に来ると言った陸兎は、その言葉通り、オカルト研究部の部室に向かっていた。
勿論、ただ有言実行のために来訪しているのではなく、彼らには二つの目的がある。
その目的は、自分たちが何者なのかリアス達に説明する為。そして、それを説明した上でリアス達グレモリー眷属と交渉をするためである。
来訪者は陸兎の他に、彼にはぐれ悪魔討伐の依頼を下した剣夜。そして、その隣を歩く眼鏡を掛けた鋭い目つきの少女と三人の後ろで歩いている金髪ツインテールの少女。
「つーかよぉ、説明すんのになんで生徒会長さんが一緒に付いてきてんだ?」
「彼女は僕たちの正体を知る唯一の悪魔だからね。今回の事を説明する際に、ついでだから僕たちとの関係も説明しておこうと思ってね」
「剣夜の言う通り、リアス達はあなた達のことを知らない。下手に隠しておくより、一緒に説明しておいた方が、今後何かあった時、すぐに対応できるでしょう」
そう言いながら、剣夜の隣を歩く彼女は駒王学園生徒会長、支取蒼那。
彼女はこの学園で剣夜たちが何者かを知る唯一の人間・・・いや、悪魔である。
剣夜たちも蒼那が悪魔であることを知っている。特に剣夜とその後ろにいる彼女は人間でありながら、蒼那ことソーナとその眷属のみで構成された生徒会に所属しており、剣夜に至っては、ソーナとは小さい頃からの友達であり、幼馴染である。ソーナとできちゃった婚を夢見ている転生悪魔の少年が聞いたら泣きそうになる設定だ。
そんな剣夜の後ろを無表情で歩いている金髪の少女に剣夜が話しかける。
「本当に僕たちと一緒に付いてきて良かったのかい?麗奈、君は別に今回の交渉に参加しなくても、何の問題は無いんだけど・・・」
「・・・主をお守りするのが私の役目ですので」
彼女は
交渉するためとはいえ、己の主を悪魔たちが居座っている場所へ移動することを良しとしない彼女は、せめて護衛として、今回の交渉に同行することを前もって決めていた。
その思いは剣夜も熟知している為、これ以上は何も言わずに旧校舎へと向かう。
しばらく会話しながら歩いていると、旧校舎の前に辿り着いた。
「着いたみたいだね」
旧校舎に入り、オカルト研究部の部室と思われる部屋の前までやって来た剣夜たち。
先頭に立ち、扉の前に立つ剣夜。その後ろから陸兎が喋る。
「頼んだぜ、剣夜。刺激し過ぎた結果、戦闘になって、うっかり殺っちゃったって展開になんないようにな」
「分かってるよ。心配しなくても、交渉に必要な下準備はもう既に済ませてあるから、何の問題も無いよ」
顔を陸兎の方に向けながらそう言うと、目線を再び扉に移す。
「それじゃあ、行こうか」
扉をノックすると、中から「どうぞ」とリアスの声が聞こえた。それに応じ、剣夜は部室の扉を開けた。
七星麗奈(ななほし れいな)
見た目は「魔法科高校の劣等生」のアンジェリーナ・クドウ・シールズの容姿を同じく「魔法科高校の劣等生」の司波深雪みたいなクールビューティー系美女にした感じ。