ハイスクールD×D 銀ノ魂を宿し侍   作:イノウエ・ミウ

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今回の話、前半は天使長とのやり取り、後半は陸兎と朱乃の会話です。


女は顔よりも心で決まる

ギャスパーが解放されてから数日後。

この日陸兎と一誠は、放課後朱乃に呼ばれて、神社に来ていた。

 

「なぁ、八神。神社は悪魔にとって超アウェイだよな。これ俺が入って大丈夫なのか?」

 

「大丈夫だろ。朱乃曰く、この神社は悪魔でも安全に入れる術を施してるみたいだからな」

 

神社に続く階段を登りながら、そんな会話をする一誠と陸兎。

すると、見えた所で、巫女服を着た朱乃が二人を出迎えてくれた。

 

「いらっしゃいませ。陸兎君、イッセー君。ごめんなさいね、急に呼び出してしまって」

 

「いえいえ、気にしてませんよ」

 

「しっかしまー、随分懐かしいモンだ。俺とお前が初めて会ったのは、この門の前だったよな」

 

陸兎が懐かしむように眺めていると、朱乃が陸兎と初めて出会った時のことを思い出しながら微笑んだ。

 

「ウフフ、そうでしたわね。あの時は死んだ魚のような目をした殿方が、地面に寝転がっていたので、かなり警戒しました。あまりにも目が死んでいたので、人に化けたお魚が陸で死体ごっこをしてるのかと思いましたわ」

 

「死体ごっこって・・・独特過ぎる表現ですね、朱乃さん」

 

そう言って、若干引き気味になる一誠。

そんな彼をよそに、陸兎が神社に呼んだ理由を聞く。

 

「そんで、俺らをここに呼んだ理由はなんだ?」

 

「私はある方を出迎える為に、ここにいますわ」

 

「ある方?それはいったい・・・」

 

「彼らが赤龍帝と十天師ですか?」

 

ある方について一誠が聞こうとした瞬間、新たに第三者の声が聞こえた。

声がした方に振り向いた途端、空が光り出して、そこから人が現れた。

白いローブを身に纏い、背中には黄金の十二枚の羽が生えている髪の長い青年だ。

 

「初めまして、兵藤一誠君に八神陸兎君。私はミカエル、天使の長をしています」

 

そう言って、天使の長ミカエルは優しく微笑むのであった。

 

 

 

 

朱乃に案内されて、陸兎たちは神社の本殿に入る。勿論、ミカエルも一緒だ。

ミカエルと対面になるように座る陸兎と一誠。何処か緊張気味の一誠と違い、陸兎は変わらず平常心のまま、ミカエルに問い掛ける。

 

「えーと、ミカエル様、でしたっけ?」

 

「はい、何でしょうか?」

 

「早くしないと、イッセーが緊張死しそうなんで、早速本題に入ってもらっていいですか?」

 

「おい!確かに緊張はしてるけど、流石の俺もそれで死なんわ!」

 

気遣っているのかそうでないのか分からない陸兎の発言に、ツッコミを入れる一誠。

そんな二人をミカエルは微笑ましく見てると、彼らの間に淡い光が輝き出した。

 

「なんだ!?」

 

一誠が腕で目元を隠しながら驚く。

光は徐々に弱まり、やがて消えたが、代わりに一本の剣が宙に浮いていた。

 

「これはドラゴンスレイヤー、龍殺しの剣『アスカロン』です。これを貴方がたに授けようと思いましてね」

 

「これを!?」

 

「・・・なんで、俺らなんすか?」

 

驚く一誠に対して、陸兎はこの剣を自分たちに与えようとするミカエルの真意を問う。

 

「三大勢力による大戦後、大規模な(いくさ)こそ無くなりましたが、小規模な鍔迫り合いは今でも続いてます。このままこの状況が続けば、いずれ三大勢力は滅ぶ。或いは他の勢力の横合いを受けるでしょう。八神陸兎君、君にこの剣を託そうと思ったのは、君並びに十天師の存在が、三大勢力を始めとした各勢力同士による争いの抑止力になって欲しいと考えています。現に貴方たちは人間でありながら、強大な存在とも対等に戦える力を持っています」

 

「抑止力ね・・・いいのかい?人間は異形に対して良い感情は持ってねぇ。その内、あんたらに牙を剥く可能性だってある。そんな存在にこんな上等なモン渡しちまって」

 

「心配してませんよ。少しだけ、魔王サーゼクス殿から貴方の事を聞きましたが、貴方は少なくとも我々の敵になる人間ではない。私はそう信じています。それに、コカビエルを倒してくれた貴方には非常に感謝しています。それは天使だけでなく、堕天使、悪魔も同じ気持ちです。これは三大勢力からの御礼と受け取って構いません」

 

「それは光栄なこった。けど、悪いがこいつはイッセーにやってくれ」

 

「え!?」

 

一誠に預けるべきだと主張した陸兎に、一誠は驚きながら彼に視線を向けた。

一方、ミカエルは表情を変えぬまま、陸兎が一誠を選んだ理由を聞く。

 

「理由を聞いてもいいですか?」

 

「まず一つ、俺は基本この『洞爺刀』一本で戦うからだ。まぁ、夜叉神流には二刀流の技もあるが、もう一本の剣は木場がいれば簡単に手に入るし、最悪こいつの禁手化で補える。二つ目は今のイッセーはハッキリ言ってひよっこもいいとこだ。けど、面倒なことに、こいつは色んな所からモテモテみたいでな。いつ襲われてもいいように、身を守る為の武器は必要だろ。そして三つ目。これは一番重要なことだし、他人に話すのも酷なんだが・・・」

 

「構いません。話していただけますか?」

 

深刻な顔をする陸兎だったが、ミカエルに言われて、意を決した様子で三つ目の理由を話した。

 

「こんな自分は目立ちたがり屋ですって主張してる金ぴかな剣を持って振り回すの、恥ずかしいからヤダ」

 

「そんな理由ぅーーー!!?」

 

まさか過ぎる理由に、一誠の絶叫が本殿に響き渡る。

ミカエルも予想外の答えに、少し困った様子で口を開いた。

 

「ま、まぁ、確かにアスカロンの見た目は結構目立つので、自己主張が激しすぎるかもしれませんね。では、これは赤龍帝に渡します。いいですか?」

 

「はい、それでいいです」

 

ミカエルがそう言うと、一誠は疲れた様子で返事した。

そして、ドライグのアドバイスを受けながら、『赤龍帝の籠手』にアスカロンを同化させることに成功した。

 

「これで用事は済みました。では、私はこれで・・・」

 

「あの!帰る前に一つ貴方に聞きたいことが・・・!」

 

去ろうとするミカエルを慌てて引き止める一誠。

しかし、ミカエルは羽を広げると、全身を光で包み込みながら口を開いた。

 

「生憎今は時間がありません。ですが、会談の席で必ずお聞きしましょう」

 

そう言い残して、ミカエルは光となって消えていった。

 

 

 

 

その後、リアスが神社にやって来たと思ったら、一誠を連れて帰ってしまい、現在は陸兎と朱乃の二人っきりである。

 

「お茶ですわ」

 

「サンキュー」

 

朱乃から渡されたお茶を飲みながら寛ぐ陸兎。朱乃はそれを見ながら小さく笑っている。

場所は違えど、同棲してる二人にとっては、いつもと変わらない日常である。 

お茶を飲んで一息ついたところで、ふと陸兎が口を開いた。

 

「・・・一つ、聞いていいか?」

 

「えぇ、勿論ですわ」

 

朱乃は笑みを浮かべながら聞こうとした。

 

「あのでかカラスと戦った時、あいつが言ってたよな?お前が堕天使の幹部の娘だって」

 

その言葉を聞いた途端、朱乃の顔から笑顔が消えて、表情が暗くなっていた。

 

「本当なら、戦いが終わって家に帰った後で聞くつもりだったが、お前が話したくなさそうな顔をしてたからな。時間を空けて、聞くことにした・・・それで、どうなんだ?」

 

「・・・そうよ。私は堕天使バラキエルと人間との間に生まれた者です」

 

間がありながらも、朱乃は真剣な表情で陸兎の問いに答えた。

そこから彼女は、自分の過去について話し出した。

 

「母はとある神社の娘でした。ある日傷つき倒れていた堕天使の幹部バラキエルを助けて、そのまま恋に落ちました。その時の縁で産まれたのが私です」

 

そう言いながら、彼女は翼を広げた。

いつもの悪魔の翼ではない。片方に悪魔の翼、もう片方に堕天使の翼。見るからに異質な両翼が彼女の背中に生えていた。

 

「悪魔の翼と堕天使の翼、私はその両方を持っています。元々堕天使の羽が嫌で、私はリアスと出会い、悪魔となったの。でも、生まれたのは堕天使と悪魔、両方の翼を持ったおぞましい生き物。フフフ、この身に汚れた血を宿す私にはお似合いかもしれません」

 

そう言って、朱乃は自らを自虐するかのように笑った。

 

「この汚れた翼、陸兎君はどう思います――」

 

「お!今週のジャンプ、ルリドラゴンの連載再開するのかー」

 

「――って、聞いてるの!?」

 

陸兎は朱乃の方を見ず、どこからともなく取り出したジャンプを読みながらくつろいでいた。

 

「あー聞いてる聞いてる。ゴムゴムの実かと思ったらヒトヒトの実モデル'ニカ'だったって話だろ?」

 

「全然聞いてないわよね!・・・いいえ、そうよね。こんな醜い化物の言葉なんて、聞かなくて当然よね・・・」

 

「何言ってんだお前?こんなに顔が良くて、胸もでかい化物がいてたまるかよ」

 

陸兎はきょとんとした顔で言った。

そんな陸兎の反応に、朱乃は一瞬驚いたが、すぐに暗い表情に戻った。

 

「・・・やっぱり、貴方は変わらないのですね。私の正体を知っても、貴方はありのままの自分であり続けている・・・だから、私は――っ!」

 

「やれやれ、初デートで緊張してるJKの顔で何を言うのかと思えば・・・」

 

叫ぶ朱乃の言葉を遮りながら、陸兎は立ち上がり、真剣な表情で朱乃に言った。

 

「お前が誰から産まれようとも、お前はお前だろ。なら、そのままでいいじゃねぇか。誰からの血を引いてようと、お前がお前のままでいる限り、俺はお前のことを嫌いにならねぇよ。寧ろ、このままずっと家にいて欲しいくらいだ。母さんが死んでから、ずっと一人で生きてきた俺だけど、お前やゼノヴィアが家に来てから、毎日が楽しくて仕方がねぇんだ。だから、これからもお前はいつも通りのお前でいろ。例え今みたいにヘラることあっても、俺が受け止めてやるよ。お前のそのでっけぇ胸ごとな」

 

「・・・殺し文句言われちゃいましたわね。そんなこと言われたら、本気になっちゃうじゃない」

 

朱乃は目に涙を溜めながら、けれども笑顔でそう言うと、そのまま陸兎に抱きついてきた。

 

「・・・早速有言実行ってか?」

 

「えぇ、そうよ。少しだけ、このままでいさせて頂戴・・・」

 

「しょうがねぇなぁ。こんな機会、二度と来ねぇだろうからな。お前のその馬鹿デケェ胸、精々堪能させてもらうぜ」

 

「ウフフ・・・(ありがとう陸兎君・・・今はまだ難しいけど、いつか必ず、この想いを貴方に伝えますわ)」

 

密かに秘めた想いを胸に抱きながら、朱乃は陸兎にその身を委ねた。




次回からいよいよ会談が始まります。
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