ハイスクールD×D 銀ノ魂を宿し侍   作:イノウエ・ミウ

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三大勢力会談開始!遂に十門寺家の当主が登場します。


ジャンプ作品の最強ポジションのキャラは割と死にやすい

「それじゃあ、行くわよ」

 

『はい!』

 

リアスの言葉に、今回の会談に出席する眷属が返事する。

部室に残る眷属は、ギャスパーと小猫の二人。ギャスパーは会談中に力が発動したら騒ぎになる恐れがあるので残ることになり、小猫はそんな彼の付き添いである。

 

「ギャスパー、しっかりお留守番してるのよ」

 

「はい・・・ところで、陸兎先輩はいないんですか?」

 

ギャスパーがこの場にいないオカルト研究部の部員の中で唯一の人間である先輩について聞き出す。

 

「陸兎は私たちと違って、人間代表として参加するから、そっちの方にいるわ」

 

「そうですか・・・見送りたかったけど、仕方ありませんよね。陸兎先輩にはよろしく伝えておいてください」

 

「分かったわ。小猫、ギャスパーのこと頼んだわよ」

 

「はい、いってらっしゃい」

 

ギャスパーと小猫に見送られながら、リアス達は今回の会談が行われる新校舎の会議室に向かった。

 

 

 

 

コンコンとリアスが会議室の扉をノックする。

 

「失礼します」

 

そう言って、リアスは扉を開けて部屋の中に入る。

室内には既に椅子に座っている三大勢力のトップに、彼らの護衛と思わしき人物が数人後ろに控えている。

悪魔側はグレイフィアに生徒会長のソーナと副会長の椿姫、堕天使側は白龍皇のヴァーリ、天使側は・・・

 

「イリナ!?」

 

「っ!?・・・・・」

 

イリナの姿を見て、驚きの声を上げるゼノヴィア。対するイリナは一瞬驚いたが、すぐに顔を背けた。

 

「紹介するよ。私の妹とその眷属だ。先日のコカビエル襲撃の件で活躍してくれた」

 

サーゼクスが他の陣営にリアス達を紹介した。

 

「ご苦労様でした。改めてお礼申し上げます」

 

「悪かったな。俺のとこのコカビエルが迷惑かけた」

 

「なんつー態度だ・・・」

 

礼を言ったミカエルに対して、悪びれる様子もなく謝罪するアザゼル。その態度に一誠が嫌悪感を露わにする。

 

コンコン

 

すると、新たに扉がノックされる音が聞こえた。

 

「失礼します」

 

そう言って、入って来たのは五人の少年少女たち。その全員が上位の存在と対等に戦える実力を持ち、異形の脅威と言われる存在、十天師に属する人間だ。

頭目の十門寺剣夜を初め、関東を担当する八神陸兎と七星麗奈、東北・北海道を担当する無六龍牙と四宮聖良。十人いる十天師の内、半分が今回の会談に参加するのだ。

一切の乱れなく堂々と入って来た彼らに、この場にいる者達はただならぬ緊張感に包まれる。

横一列に並んだ剣夜たちは、その場に片膝をついて、テーブルに座っている各勢力のトップに(こうべ)を垂れる。

 

「三大勢力のトップの皆様方、もうじき我らが(おう)がご到着いたします。今しばらくお待ちいただけたい」

 

真ん中にいる剣夜が頭を下げながらそう告げる。

堂々と頭を垂れる彼らの姿に、周りの者達は呆然とする。普段から無気力でだらしない印象を持つ陸兎も、きちんとした姿勢で頭を下げており、彼を知っている者達は驚いていた。

尚、彼の友人である一誠はというと・・・

 

「(あの聖良ちゃんの胸、しゃがんでるからこそ目立つあのナイスボディ!大きさからして、部長たちにも引けを取らないおっぱい・・・お触りしたい)」

 

「おい、そこの赤ガエル」

 

陸兎には興味を示さず、聖良の胸を嫌らしい目で見てると、彼に声を掛ける者がいた。

視線を向けると、聖良の隣にいた龍牙がゴゴゴゴゴっと殺気を出しながら一誠を睨んでいた。

 

「なに聖良のことを嫌らしい目で見てやがんだ・・・殺すぞ?」

 

その凄まじい殺気に、一誠や彼の隣にいるアーシアは顔を青くし、他のグレモリー眷属が腰を低くして、いつでも飛び出せるよう警戒する。

剣夜が「龍牙」と彼を咎めるように言うと、龍牙は「チッ」と舌打ちしてから殺気を収めた。

それ見てた周りは、喧嘩ごとにならなかったことに、ホッと安堵した。

その時、会場の空気が揺らいだ。

 

ドスン!

 

『!?』

 

突如響いた大きな足音と異質な気配に、この場にいる十天師を除く全員が大きく反応した。

一方、十天師たちは立ち上がると、開きっぱなしになっている扉の脇に寄った。まるで、これからやって来る者の道を邪魔しないように。

 

ドスン!ドスン!

 

足音はだんだん大きくなっていき、それにつれて気配も大きくなっていく。その気配に、一誠たちはそうだが、サーゼクスやアザゼルなどの上位の存在も冷や汗をかきながら警戒している。

やがて、入口の方に巨大な人影が現れ、それが部屋に入ったことで、その姿を現した。

そこにいたのは一人の男・・・いや、漢だった。

筋肉が異常なまでに目立つ鍛え上げられた肉体。肩まで伸びた長い金髪。100人中100人全員が見れば逃げ出すであろう悪鬼の如き強面に、三日月の形をした白い髭。上はアザゼルのような黒いジャケットを身に纏い、下もまた黒のズボンを履いている。

この漢こそ、剣夜の父にして、十師族で最も大きな力を持つ家系、十門寺家の現当主。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十門寺(じゅうもんじ)道玄三武郎(どうげんざぶろう)

 

その漢が部屋に入った瞬間、空気が完全に変わった。

 

「(な、なんだよこの爺さん!本当に人間か!?)」

 

一誠を始めとしたグレモリー眷属は、その強大な威圧感に恐怖し、体の全細胞が震え上がるのを感じた。見ると、ソーナや椿姫、イリナも同じような反応だ。

三大勢力のトップやヴァーリといった上位の存在は、震えはしなかったが、その顔は険しいままだ。

彼らが道玄三武郎に感じたもの・・・それは'死'だった。

圧倒的強者による、命乞いすら許さぬ蹂躙。あらゆる生物の頂点に立つ者のみ許された特権。それを彼らは、自らの肌、骨の髄、血液、一つ一つの細胞で本能的に感じ取っていた。

 

「ハァ!ハァ!ハァ!」

 

アーシアが苦しそうに息を何度も吐いていた。無理もない。こんな居るだけでも命を取られてしまいそうな空間に、か弱い彼女がまともに居られるはずがない。

そんなアーシアの様子を隣で見た一誠は、恐怖を必死に抑えながらアーシアの手を掴むと、彼女は力強くその手を掴み返した。

呼吸は先程に比べたら、大分マシになっていき、震えこそあるが、彼女は一誠に視線を向けて、大丈夫だと伝えた。

そうしていると、道玄三武郎の他に、二人の人間が入って来た。

一人は剣夜の母である十門寺桜蘭。公開授業で見た時と変わらず、美しい美貌と凛とした佇まいで、道玄三武郎の後ろを歩く。

そして、もう一人は道玄三武郎程ではないが、筋肉が目立つ茶髪の大男だった。

 

「(誰だ?このおっさん・・・)」

 

見知らぬ人物に一誠が疑問符を浮かべると、大男が前に出て、二つある椅子を引くと、その椅子に道玄三武郎と桜蘭が座り、大男はそのまま剣夜たちがいる方に移動して、彼らの隣に立った。

そして、二人が椅子に座り終えたところで、道玄三武郎は口を開いた。

 

「悪ぃ、ちょっくら遅れた」

 

「い、いや、気にしてない」

 

戸惑いながらもサーゼクスが冷静に対応する。

異質な雰囲気を漂わせる道玄三武郎の存在に、会場の空気が重苦しくなる。

 

「いやはや、すみません。お待たせして申し訳ない」

 

そんな空気を一変させるような爽やかな声が聞こえて、開いてる扉から日本神話の代表である大旦那と彼の部下と思わしき顔を隠した人型のあやかし数人が入って来た。

駒王町で会った時と違い、大旦那は豪華な黒い着物を身に纏い、額には鬼を象徴とする二本の角が生えていた。

 

「席を見るからに、どうやら俺が最後みたいですね。自国へ招いたというのに、その国の神話代表が一番最後に来てしまうとは・・・慙愧の念に堪えません」

 

「・・・いえ、時間通りなので大丈夫です。どうぞお座りください」

 

「寛大な心、感謝致します」

 

そう言って、ミカエルに一礼すると、大旦那は椅子に座り、部下たちは後ろに控えた。

すると、アザゼルが笑顔で大旦那に声を掛けて来た。

 

「お!大旦那じゃねぇか!久しぶりだな。元気してるか?」

 

「やぁ、アザゼル。700年ぶりだ。こちらは今も昔も変わらぬままだよ」

 

大旦那もまた、笑みを浮かべてアザゼルに言葉を返す。

二人は古くからの友人のような雰囲気で会話する。

 

「そちらこそ、700年という長い年月が経ったのに、姿は昔のままじゃないか。人間は50年足らずで老いていくというのに」

 

「俺らにとっちゃ、700年なんてあっという間だからな。そうだ。今度また、お前さんとこの宿屋に泊まらせてくれよ。割と気に入ってるし、今まで泊って来た宿屋の中で一番と言っていい」

 

「宿を営む大旦那として、これ以上ない誉れだ。従業員一同、いつでも歓迎するよ」

 

そんな感じに、親し気に会話してた大旦那とアザゼルだったが、サーゼクスによって中断される。

 

「お二方、世間話はそこまでにして頂きたい」

 

サーゼクスが注意すると、二人は会話を止め、再度サーゼクスが口を開いた。

 

「これで参加者は全員揃った。それでは会談を始めよう」

 

この会談に参加する者全てが入室したのを確認したサーゼクスの発言によって会談が始まった。

 

 

 

 

「――以上が、私、リアス・グレモリーとその眷族。そして、十天師数名が関与した事件の顛末です」

 

「私、ソーナ・シトリーも彼女の報告に偽りが無い事を証言いたします」

 

「同じく十天師が頭目、十門寺剣夜も彼女たちの言葉に一切の虚偽が無い事をこの場に証言いたします」

 

会談が始まり、最初はリアスとソーナと剣夜の三人によるコカビエルの騒動に関する報告から始まった。

あの日起きた出来事をリアスは噓偽り無く話し、ソーナと剣夜も彼女の報告に噓が無かったと証言した。

 

「ご苦労、下がってくれ」

 

「ありがとう、リアスちゃん、ソーナちゃん、剣夜君☆」  

 

サーゼクスが指示して、セラフォルーが後ろに下がる三人にウインクを送る。

 

「さて、アザゼル。リアスの報告を受けて、堕天使総督の意見を伺いたい」

 

サーゼクスに意見を求められたアザゼルは、不敵な笑みを浮かべた。

 

「意見も何も、コカビエルが単独で起こしたことだからな」

 

「与り知らぬことだと?」

 

「目的が分かるまで泳がせておいたのさ。まさか、俺自身が町に潜入してたとは奴も思わなかったようだがな。ここは中々住み心地がいい町だぞ」

 

「話を逸らさないでもらいたい」

 

ミカエルの問いに答えながら、話題を変えるように言うアザゼルだったが、サーゼクスに咎められた。

 

「だから言っただろ。そこの十天師二人がコカビエルを倒して、白龍皇に連行してもらった。その後は『地獄の最下層(コキュートス)』で永久冷凍の刑にした。もう一生出てこれねぇよ」

 

コカビエルを倒してから一連の流れを説明するが、トップの顔は険しいままだ。

 

「問題はコカビエルが事を起こした動機ですよ。コカビエルは貴方に不満を抱いていた」

 

「だろうな。戦争が中途半端に終わっちまったことが相当不満だったんだろう。俺は戦争なんか今更興味ねぇからな」 

 

「不満分子ってことね・・・」

 

そう呟くセラフォルーに対して、アザゼルが言葉を返す。

 

「お前さんらも色々あるみたいじゃねぇか」

 

その言葉にセラフォルーが顔を顰めるが、サーゼクスは表情を変えぬまま口を開く。

 

「それは今回の会談とは関係のないことだ。今回の会談の目的は――」

 

「もうめんどくせぇ話はいい。とっとと和平を結んじまおうぜ」

 

アザゼルがそう言うと、天使、悪魔の陣営の者達が驚愕の表情となった。

一方、不思議そうな顔をしているのが、日本神話及び人間の者達だ。和平を結ぶ会談の筈のなのに、和平を提言されて、何をそんなに驚いているのだろう。

 

「皆さん、随分動揺していますね。これは元々和平を結ぶための会談だったのでは?」

 

「い、いえ、確かにそうですが、まさか堕天使側から和平を提言されるとは思わなかったので・・・」

 

大旦那の言葉に、戸惑いながら喋るミカエル。

日本神話や人間側は知らないが、堕天使はどうも(普段の行いのせいか)天使や悪魔に比べて信頼されていないのだ。

 

「ですが、アザゼルの言う通りです。これ以上、戦争を続けたら、種族そのものが存続の危機に危ぶまれます。戦争の大本であった神は消滅したのですから」

 

続けてミカエルがそう言うと、アーシアやゼノヴィア、イリナといった現及び元教会の関係者が暗い顔をする。

この場にいる者達は、全員神の死について知っている。無論、コカビエルとの戦いにいなかった他の十天師や道玄三武郎、大旦那も既に把握済みだ。

 

「さて、この和平について、会談の見届け人である日本神話と人間代表に意見を願いたい」

 

「意見も何も、こちらは和平について何も言うことはない。日本神話は今後も三大勢力と協力関係を築いていくだけだ。これは日本神話のトップ、天照大御神様の言葉と受け取ってもらいたい」

 

アザゼルから意見を求められて、大旦那はそれに答える。

しかし、道玄三武郎は腕を組んだまま、何も喋る気配がない。

 

「どうなされましたか?十門寺殿」

 

「・・・異形共が和平を結ぶことに関しちゃ、俺は言うことねぇ。だが、この世の全ての人間がオメェらの和平を望んでいると思ってんのか?」

 

「どういうことですか?」

 

疑問符を浮かべるサーゼクスを始めとした異形の者達。

そんな彼らに、道玄三武郎は告げた。

 

「簡単なことだ。連中はオメェら三大勢力がもう一度戦争を起こして、そのまま同士討ちしてくれるのを期待しているからだ」

 

「!? そんな馬鹿な!」

 

「いいや、ありえなくはないな。昔から人間は俺ら異の存在を嫌うからな」

 

動揺するミカエルに対して、アザゼルは難しい顔をしながら言う。サーゼクスやセラフォルーも思うところがあるのか顔を険しくしている。

道玄三武郎が言葉を続ける。

 

「聞けば、カラス共は神器を持っているだけで人間を殺し、コウモリ共は人間をテメェに転生させてるらしいじゃねぇか。鳥共は何もしてねぇが、下っ端の教会連中がテメェの神を崇めてねぇって理由で一般人を殺しているときた・・・ふざけてんのか?」

 

そう言った途端、道玄三武郎の雰囲気が明らかに変わった。

ズシリと今まで以上に空気が重くなり、部屋にいる者達はその空気に押しつぶされそうになる。

誰もが理解した。今、この怪物は怒っていると。

 

「散々好き放題やっておいて、いざ立場が危うくなったら、都合のいいように記憶を書き換える。仮にも日本神話から許可を貰って、この国に居座っている割には、ちょっくらやんちゃし過ぎじゃねぇか?」

 

「し、しかし、我々の存在を知ってしまえば、人間は我々に敵意を向ける可能性だってある。それに、先の戦争で私たちは絶滅の危機に晒されている状況なんだ。こうでもして、悪魔の出生率を増やしていかなければ、私たち悪魔は滅んでしまう」

 

「・・・そうだな。生物ってのは、テメェ自身を存続させる為に、ありとあらゆる手段を使うモンだ。そこに異論はねぇ」

 

人間を悪魔に転生させていることを否定されると思いきや、あっさりと認められて、サーゼクス達は惚けてしまう。

しかし、道玄三武郎が言いたいのはそこではなかった。

 

「けどよぉ、それはそこの嬢ちゃんみてぇに筋を通してたらの話だろうが」

 

道玄三武郎はリアスをチラッと見たら、威厳のある声で言う。

 

「テメェの答えを無視して、一方的に攫い、周りの記憶を都合のいいように置き換える。そんなやり方を誰が認める。知ってしまえば、オメェらに敵意を向けるだぁ?当然だろうが。テメェの体や脳みそを散々弄くり回されて、それを知った奴らが、その怒りをどこに向けるかは明白だ。オメェらはオメェら自身で敵を増やしているのさ」

 

道玄三武郎の言葉は、異形を知る人間たちの怒りの声に聞こえた。

理不尽に転生、或いは殺されて、更には隠滅という理由で、その人物の記憶を知らぬ間に消されてしまう。そんなことをされていたと知った人間やその人物の関係者が、それを行っていた悪魔や堕天使に怒りを抱かないはずがない。

三大勢力はその自覚が無いまま、今まで多くの人間を殺害、転生させていき、関連する人間の記憶を消していった。それが自らの敵を増やしている行為だと知らずに。

 

「仁義を欠いちゃこの人の世は渡っていけねぇ!そいつを外したら、それはもはや人間という生き物に対する冒涜だろうが!」

 

「でも、それは一部がやってることで――」

 

「だから、自分たちは関係ないってか?テメェらはそういう連中を率いている王だ。王が動かねぇと民衆は動かねぇ。逆に民衆がやらかした時に、全部背負うのが王だ。神話の時代から決まってる掟だろうが」

 

道玄三武郎の言葉に、セラフォルーは顔を顰めながらも反論しようとするが、そこにサーゼクスが待ったをかけた。

 

「止めるんだセラフォルー。あの戦争を得て、私たちは悪魔の古き思想を捨て、人間と共に歩む道を選んだ。しかし、それを認めない者がいるのも事実だ。その者達に対して、罰することもせず、黙秘している私たちにも責任はある・・・十門寺殿、貴殿の・・・いや、人間の想いは十分伝わった。それを踏まえて、今の貴殿の率直な意見を聞かせてもらえないだろうか?」

 

自分たちの失態や人間側の主張を認めた上で、サーゼクスは改めて和平に対する道玄三武郎の意見を求めた。

 

「ひとまず、こっち側の答えは、三大勢力の和平に異論はねぇ。だが、オメェらが少しでも人間(俺ら)に牙を剝けることがあれば・・・容赦はしねぇ。全員叩きのめすだけだ!」

 

自分の手をグッと握りしめ、闘気を放出させる道玄三武郎。その強力なオーラに、この場にいる誰もが圧倒された。

普通に見れば、人間が三大勢力という強大な存在を侮っている発言にしか聞こえない。しかし、道玄三武郎の重圧と彼から放たれている猛者の闘気は、その言葉を本当に実現させてしまうかもしれない説得力があった。

 

「・・・肝に銘じておく」

 

故にサーゼクスも反論することなく、道玄三武郎の言葉を真意に受け止めた。

話はこれで終わりかと思いきや、アザゼルが手を上げながら口を開いた。

 

「あー・・・こんな話をした後にするのもあれなんだが、俺からあんたに質問してもいいか?」

 

「好きにしな」

 

「ありがとよ・・・俺が聞きたいのは一つ。あんたら陰陽師の連中が作った神器、誓約神器について、あんたが少しでも知ってることがあれば教えてくれないか」

 

アザゼルの質問に対して、道玄三武郎が目を細めながら質問の意図を問う。

 

「そいつを聞いてどうするつもりだ?テメェらの所に取り込もうってか?」

 

「無論、そんなつもりはねぇし、悪用もしなければ、所持者を襲うなんてこともしないと、この場で誓わせてもらう。ただ、神器を研究してる身として気になってな。あんなとんでもない物を誰がどうやって作ったとかな」

 

噓偽りなく自分の考えを伝えたアザゼルを見て、道玄三武郎は少し間をおいてから質問に答えた。

 

「・・・誓約神器に関しちゃ、俺も詳しいことは知らねぇ。何せ、こいつが作られた後、当時の十師族の当主を始めとした陰陽師の連中がお前みたいな輩に悪用されないよう、こいつに関する資料を一つ残らず破棄したらしいからな。だが、こいつを作った奴に関しては、一人心当たりがある」

 

「ほう、そいつはいったい・・・?」

 

安倍晴明(あべのせいめい)

 

道玄三武郎から語られたその人物に、他の者達は目を見開いた。

一方で安倍晴明のことを知らないアーシアは、疑問符を浮かべていた。

 

「どなたでしょう?」

 

「俺も妖怪退治の凄い人ってぐらいの印象しか・・・」

 

「とんでもねぇ。俺ら陰陽師の人間にとっちゃ、伝説の勇者並みのスゲー退魔師だ」

 

安倍晴明について話す一誠とアーシアに、会話を聞いてた陸兎が訂正した。

 

「安倍晴明か・・・嘗て鬼の王と呼ばれた妖怪、酒吞童子を討った英雄、源頼光と対をなす陰陽師最強の退魔師。俺たち異形に対抗する数々の術や道具を作った天才と言われていたが・・・なるほどな。確かに、そいつなら作れてもおかしくはないな」

 

そう言って、納得するアザゼル。

そこにサーゼクスが口を開く。

 

「そろそろ良いだろうアザゼル。これ以上、会談と関係のないことを話すべきじゃない」

 

「そうだな。十分収穫はあったし、これ以上は追求しねぇよ」

 

サーゼクスに言われて、アザゼルはこの話題を切り上げた。

その後、アザゼルは二天龍である一誠とヴァーリにも意見を求め、ヴァーリは強い奴と戦えればそれでいいと言う。

対する一誠は、なんて言えばいいか悩んでいたが、アザゼルに助言されて、一時はリアスとエッチがしたいと仮にも兄であるサーゼクスがいる前でトンデモ発言をしたが(尚、聞いてたサーゼクスは怒らず、小さく笑っていた)、最終的に仲間の為に力を使うという結論を出した。

すると、ミカエルが一誠に声を掛けて来た。

 

「赤龍帝殿、私に話があるとの事でしたが」

 

「!?・・・いいんですか?」

 

はい、とミカエルが答えると、一誠は真剣な表情で言った。

 

「どうして、アーシアを追放したんですか?」

 

その問いに、ミカエルはこう答えた。

神の死後、加護と慈悲と奇跡を司るシステムが残った。

そのシステムの力が、時が経つに連れて弱まっていき、少しでも長くシステムを保つ為に、システムに悪影響を及ぼす存在、アーシアのような堕天使や悪魔を癒すことができる者やゼノヴィアのような神の死を知ってしまった者などを教会から遠ざけるしか無かったのだ。

 

「私の力不足で、貴女たちに辛い思いをさせてしまい申し訳ございません」

 

一通り話したミカエルは、アーシアとゼノヴィアに謝罪した。

 

「(じゃあ、ゼノヴィアは教会(私たち)を裏切ったんじゃなかったの・・・!?)」

 

一方、ゼノヴィアが追放された真実を聞かされたイリナは、驚愕の表情で彼女を見た。

ゼノヴィアは真っ直ぐな眼差しでミカエルを見ながら口を開いた。

 

「どうか頭をお上げください。長年、教会に育てられた身。多少の後悔はありますが、新しい仲間や夢を見つけることができて、今は悪魔としての生活に満足しています。他の信徒には申し訳ありませんが・・・」

 

「・・・・・・」

 

そう言って、ゼノヴィアは申し訳なさそうにイリナを見る。その目を見たイリナは、何も言えずに呆然とするだけであった。

アーシアもまた、ゼノヴィアの隣で自分の想いを語った。

 

「私も今、幸せだと感じております。大切な人達とたくさん出会えましたから」

 

「貴女たちの寛大な心に感謝します」

 

二人の想いを聞いたミカエルは、安堵の顔を見せた。

その様子を周りは微笑ましく見守り(一部つまんなそうな顔をしてた者もいたが)、場は和やかな雰囲気になった。

だが、そこで空気を読まずに口を開いた者がいた。

 

「そういやぁ、俺の部下がそこのお嬢さんを殺したんだったな」

 

「!?」

 

アザゼルに視線を向けられたアーシアはビクッと体を震わせた。

すると、一誠が怒り混じりに叫んだ。

 

「他人事みたいに言うな!あんたに憧れてた堕天使の女が、あんたの為にアーシアを殺したんだよ!」

 

「"すっ"」

 

「!?・・・っ!」

 

アザゼルの鋭い視線に、一誠は一瞬たじろぐが、すぐさま睨み返す。

一方、詳しい事情を知らない大旦那が説明を求めた。

 

「ふむ、さっきの報告には無かった出来事みたいだが何の話だ?」

 

「コカビエルの事件の前に、駒王町で堕天使によるちょっとした騒動が起きたんです。その時、ここにいる兵藤一誠及びアーシア・アルジェントがアザゼル総督の部下に殺害されたんです。まぁ、この件はその部下の独断のようで、アザゼル総督は関与してなかったみたいですが」

 

「なるほど・・・」

 

剣夜から説明を聞き、理解した大旦那がアザゼルに向かって口を開いた。

 

「アザゼル。これはあくまで君の部下が勝手に引き起こした事であり、君が責められるべきだとは言わない。だが、部下の失態は上司の責任と言うだろう。流石に首を切れとまでは言わないが、彼らに対して、何らかの償いはするべきじゃないか?そうしてもらわないと、納得しない子もこの場に一人いるみたいだしね」

 

「うっ・・・」

 

そう言いながら、大旦那は一誠の方にチラッと顔を向ける。視線を向けられた一誠は気まずそうな顔をした。

 

「無論、そのつもりだ。赤龍帝、この件に関してお前さんが納得しないんだったら、別の形で償ってやるよ」

 

「何を・・・!」

 

人を見下すようなアザゼルの態度に、再度一誠が嚙みつこうとした瞬間、この会場全ての時間が止まり出した。




<駒王町コソコソ噂話>
1300年代、鎌倉幕府が滅び、室町時代に移り変わる頃、『誓約神器』の存在を知ったアザゼルは、その秘密を探るべく、日本各地を歩き回っていた。
しかし、『誓約神器』は当時の陰陽師でも最重要機密事項であった為に、中々調査が進まず、疲労が溜まったアザゼルは息抜きに隠世を訪れた。
隠世の幻想的な景色を楽しんでいると、たまたま散歩してた大旦那と出会う。
鬼神と堕天使、お互い初めて見る未知の存在に、心が躍ったアザゼルと大旦那はすぐ仲良くなり、そのまま大旦那が営む宿、天神屋に案内されて、アザゼルはそこで一夜を過ごした。天神屋の従業員たちも最初は未知の異形であるアザゼルに警戒したが、見下すことなく気さくに話しかける彼の性格(後は彼自身の顔の良さ)もあって、最終的には良好な関係を築くことができた。
尚、後日無断で隠世に入ったことで、アザゼルは多額の罰金を支払う羽目になり、シェムハザ(『神の子を見張る者』の副総督)から大量の小言を貰うのであった。


・十門寺道玄三武郎(じゅうもんじ どうげんざぶろう)
見た目は「刃牙」の範馬勇次郎だが、髪型は「ワンピース」の若い頃の白ひげで、口元にも三日月の形をした白い髭が生えている。
十門寺家の現当主。妻の桜蘭や息子の剣夜と違い、イケメンや美女とは程遠い闘争本能剥き出しの厳つい漢。息子が頭目を務める十天師を部下に持ち、その実力は人間でありながら魔王や神々に届くとも言われている。今作のオリキャラの中で一番強いと断言できるザ・チート人間。


会談はアニメ版を基準に進めていきます。そのため、原作では会談に出席していないイリナも登場しています。
また、少しネタバレになりますが、道玄三武郎や桜蘭と一緒にいた茶髪の大男は十天師です。見た目は「とある魔術の禁書目録」の後方のアックアです。名前、能力に関しては次章以降のお楽しみということで。
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