ハイスクールD×D 銀ノ魂を宿し侍   作:イノウエ・ミウ

44 / 53
急いでいる時は近道よりも回り道の方が安全

「い、今のはいったい・・・」

 

一瞬体に襲われた妙な感覚に、疑問の声を上げながら周りを見渡す。

 

「ご無事ですか?剣夜様・・・」

 

「ふむ、一瞬空気が揺らいだから、咄嗟に霊力を纏ってみたけど・・・」

 

「正解だったね。リュウ君も何ともない?」

 

「当然だ。あんな小細工、俺に通用するかよ」

 

「ケッ、そのまま止まっちまえば良かったのに・・・しっかし、こいつは・・・」

 

十天師たちが会話しながら状況を確認する。

見ると、一部の者達が時間が停止したかのように止まっていた。

この現象に見覚えのある一誠は呟く。

 

「まさか、ギャスパーの力・・・?」

 

「らしいな。動けるのは上位の力を持った俺たちトップと大旦那」

 

「俺たち(ヴァーリと一誠)はドラゴンのお陰だな。リアス・グレモリーは兵藤一誠に触れたから。そっちの連中(木場とゼノヴィアとイリナ)は聖魔剣。十天師たちは・・・なるほど、全員霊力で防いだのか・・・ん?十門寺家の当主とそこの女(桜蘭)は・・・霊力を纏っていない?上位の存在だからなのか?」

 

アザゼルとヴァーリが動いている者達の動ける理由を解説する。霊力を体に纏っているのを感じる十天師たちはともかく、纏っている気配すら感じさせない道玄三武郎と桜蘭が動いていることに、ヴァーリが疑問を抱いていた。

 

「なんだあれは!?」

 

一誠が声を上げて、全員が窓を覗くと、駒王学園の上空に魔法陣が展開されていて、そこからローブを着込んだ複数の人間が現れた。人数はざっと百人以上いるだろう。

 

「魔術師ね・・・全く、魔女っ子の私を差し置いて失礼なのよ!」

 

セラフォルーが現れた人間たちの正体を言いながら緩く怒っていた。

 

「しかし、この力は・・・?」

 

ミカエルの呟きにアザゼルが答える。

 

「恐らく、あのハーフヴァンパイアを強制的に禁手状態にしたんだろう」

 

「ギャスパーを!?」

 

「私の眷族がテロリストに利用されるなんて・・・これほどの侮辱はないわ!」

 

一誠は驚き、リアスは自身の眷属がテロリストに利用されていることに怒りを感じていた。

そうしている間にも、外では変化が起きていた。

会談の警護を担当している天使、堕天使、悪魔たちが、停止されている状態で次々と転移されていた。

 

「転移魔術・・・どうやら、この結界にゲートを繋げている者がいるようですね」

 

「逆に、こちらの転移用魔法陣は完全に封じられています」

 

ミカエルとグレイフィアが今の状況を説明する。

かなり不利な状況であるのを察したアザゼルがやれやれと言った顔で口を開いた。

 

「やられたな」

 

「あぁ、こちらの会談中に襲撃とは、敵も大胆な事をするようだ」

 

大旦那もアザゼルの言葉に同調する。

 

「襲撃するタイミングといい、リアス・グレモリーの眷族を逆利用する戦術といい・・」

 

「裏切り者がいる・・・」

 

ミカエルの言葉に、イリナは呟きながら、視線をゼノヴィアに向ける。ミカエルから事情を聞いたとはいえ、そのわだかまりは簡単に解けるものではなかった。

 

「とにかく、このままじっとしている訳にもいくまい。ギャスパー君の力がこれ以上増大すれば、我らとて止められてしまう」

 

「なら、話は早ぇな」

 

サーゼクスが懸念した直後、突然そんな声が聞こえて、全員が振り向くと、龍牙が凶悪な笑みを浮かべながら、どこかへ行こうとしてた。

すかさず剣夜が呼び止める。

 

「どこに行くつもりだい?」

 

「決まってんだろ。この状況をどうにかしたいのなら、それを引き起こしてる元凶をぶち殺せば済む話だろうが」

 

龍牙の発言に、グレモリー眷属は一瞬何を言ってるのか分からなかったが、すぐにその意味を理解して、怒りの眼差しで彼を睨んだ。

その言葉の意味。それは神器を暴走させているギャスパー本人を殺して、時間停止を解除しようというのだ。

当然、そんなやり方をリアス達悪魔が認めるはずがなく、龍牙に怒りを向ける。

剣夜もまた、顔を険しくさせながら龍牙に言う。

 

「・・・龍牙、魔王様やウラディ君の『王』がいる前だよ。人間と悪魔の関係を悪化させる真似はよしてくれないか?」

 

「ハッ、悪魔と仲良しごっこして何の価値があるんだよ。人に迷惑を掛けるゴミ屑が一人死んだところで、社会に何の支障も出ねぇだろ」

 

「!? テメェ!」

 

ギャスパーをゴミ屑呼ばわりする龍牙に、一誠が激情した。

 

「今、ギャスパーのことをゴミ屑って言ったか!?」

 

「そうだろうが。空間の時間を止めることができる異形・・・人間にとっちゃ、害をなす存在でしかねぇ」

 

「ふざけるな!ギャスパーのことを何も知らない癖に、勝手なこと言ってんじゃねぇ!」

 

「は?会ったこともねぇ奴のことなんざ知ってるわけねぇだろ」

 

「ギャスパーはずっと苦しんで来たんだよ!神器の制御ができないから、周りから嫌われて、一人ぼっちになって、それでも制御しようと必死に頑張ってきたんだ!その努力を踏みにじるようなことをする奴は俺が許さねぇ!もし、ギャスパーに手を出してみろ!俺がテメェをぶっ飛ばしてやる!」

 

力強くそう宣言する一誠。

対する龍牙は、心底めんどくさいといった顔をする。

 

「・・・力を持っただけの雑魚がカエルみてぇにギャーギャー騒ぎやがって・・・耳障りでうぜぇんだよ・・・」

 

鬱陶しいと言わんばかりに喋る龍牙は、冷たい目で一誠を見た。

 

「お前、殺すわ」

 

そう言った直後、龍牙の姿が消えて・・・彼の拳が一誠の顔面を捉えようとした瞬間、ガキーン!!と金属同士がぶつかり合ったような衝撃音が響いた。

全員が一誠の方を見ると、彼の正面には龍牙の拳を一本の木刀が防いでいた。その先には・・・『洞爺刀』で龍牙の拳から一誠を守った陸兎が、鋭い目で龍牙を睨んでいた。

 

「・・・なんのつもりだ?三下ぁ」

 

「その質問にはテメェが答えろ」

 

不機嫌な様子で喋る龍牙に、陸兎も低い声で返す。

遅れて、リアスや木場などが武器を構えたり、魔力を出しながら龍牙を睨む。

龍牙は周りから敵意を向けられても気にともせず、殺気を陸兎に向けながら口を開いた。

 

「人間に害をなす異形を殺すのは退魔師の役目だろ。異形共と一緒に仲良しごっこしてきたせいで、元々おかしかった頭が更にいかれちまったか?」

 

「安心しろ。俺の頭は今も昔も天然パーマのままだよ。テメェのウンコみてぇな色した脳みそと違ってな」

 

「そうか。俺はてっきり、糖分の過剰摂取でテメェの脳がドロッドロッに溶けたせいで、そんなメンヘラチックな頭になっちまったのかと思ったぜ」

 

「そう思うなら、眼科にでも言って目を直してこい。テメェの中二病拗らせた赤メッシュより数倍マシだよ・・・それとも、'普段からいっぱい殺してきたから'、有害と無害の判別もできない頭になったのか?」

 

陸兎がそう言った瞬間、龍牙の体から大量の闘気が放たれた。

龍牙が放つドス黒いオーラに周りが圧倒される中、龍牙は低い声で口を開いた。

 

「・・・よく分かった。どうやら、よっぽど面白れぇ死体になりてぇようだな」

 

「上等だゴラ。テメェのそのカレーまみれな脳みそ、真っ二つにしてやるよ」

 

陸兎もまた、力強い闘気を放出させながら龍牙に殺気をぶつける。

白と黒、二つのオーラがぶつかり合い、この場の空気を震えさせる。

両者互いに睨み合い、戦いが始まろうとした次の瞬間、新たに声を上げる者がいた。

 

「おう、随分楽しそうなことしてるじゃねぇか。俺も混ぜろよ」

 

低く、けれども重圧な声で道玄三武郎は顔を動かして二人を見た。

彼の燃え上がるような闘気は、部屋のあちこちにヒビが走り、一瞬で二人のオーラを塗り替えた。場は一気に道玄三武郎の独壇場となった。

誰もがその闘気を前に動けないでいる中、道玄三武郎は冷や汗をかきながらこちらを見てる二人に告げた。

 

「いい色だ。テメェらのその'闘気'。至高の領域に一歩踏み出していやがる。是非とも味見してぇモンだ。何、心配すんな・・・例え途中で屍になろうと、欠片だけは残しておいてやるよ・・・!」

 

先程までお互いの殺気をぶつけ合っていた二人は、道玄三武郎の圧倒的な闘気に押されてしまう。

しばらく無言の時間が続いたが、道玄三武郎の介入により、すっかり毒気が抜けた様子で龍牙が口を開いた。

 

「・・・白けたぜ。ちょっくら表の掃除してくる」

 

そう言って、龍牙の姿が消えたと思った瞬間、ドーン!と会議室の壁が破壊されて、辺りに衝撃や石片が飛び散った。

周りの者達は腕を前に出しながら飛んでくる衝撃や石片を防ぐ中、外の方から先程と同じような衝撃音が鳴り響き、砂塵が舞い散る。

外にいる魔術師たちが慌てた様子で、衝撃がした方に向くと、砂塵が晴れた場所に龍牙が立っていた。

その姿も先程までの彼と違い、両腕に龍の形をした黒い籠手を纏い、背中にはドラゴンのような漆黒の翼が生えていた。

自身の誓約神器を発動させて、やる気満々と言った様子の龍牙に、陸兎が顔を顰める。

 

「あんの馬鹿!」

 

「私も行くね。リュウ君一人だと心配だから」

 

「ちょ、おい!」

 

呼び止めようとする陸兎を無視して、聖良は龍牙が壊した穴から外に出た。

外では魔術師たちが龍牙に向けて魔力弾を放っていく。

しかし、龍牙は驚異的な速度で降り注ぐ魔力弾を躱していくと、近くにいた魔術師の一人に拳を突き出した。

突き出された拳は魔術師の腹部に当たり・・・龍牙の右腕が魔術師の腹を貫いた。

魔術師は何が起きたのか分からず驚いた顔をしてたが、龍牙が右腕を引っこ抜いたら、バタリッと倒れた。

既に魔術師は事切れており、空いた腹から血がどんどん流れる。

それを見た周りの魔術師は動揺し、その隙を逃さず、龍牙は次の獲物に向けて拳を振るう。

魔術師の集中砲火を気にともせず、龍牙は次々と魔術師を葬る。腹部だけでなく、腕や足、頭に首などあらゆる箇所を一撃で粉砕していき、彼の体や翼に血がこびりついていく。

その姿はまるで、戦場を獅子奮迅の勢いで暴れ回る龍そのもの。

 

「とんでもねぇ力だな」

 

「これが、嘗て聖書の神が恐れた空を作りし創世の神、始原の龍バハムートの力・・・!」

 

アザゼルが冷や汗をかきながら言い、ミカエルは創世神であり、始原の龍であるバハムートの力に戦慄する。

そんな彼らに、剣夜は龍牙の持つ誓約神器について話す。

 

「彼の誓約神器の名は『始原龍の星砂(バハムート・フラグメント)』。バハムートの力の欠片を体内に取り込み、人体の力を限界以上に引き出す能力です」

 

「ちょ、待てよ。バハムートの力を取り込むって・・・欠片つっても神の力だぞ!人間がそう簡単に扱える代物モンじゃねぇんだぞ!?」

 

「えぇ。ですから、この誓約神器は陰陽師では最も危険な誓約神器と危険視されていて、歴代でも龍牙を含めて、たった三人しか適合できなかったと聞いています」

 

「いや、三人って・・・十分過ぎるだろ。これを作った安倍晴明はマジで何者なんだよ・・・」

 

バハムートの力を使いこなす龍牙もだが、それを基にした誓約神器を作った安倍晴明に戦慄しながら、アザゼルは戦いの様子を見る。

背中の翼による飛行や『神速』を始めとした様々な体術を使いながら、次々と魔術師を屠っていく龍牙。

無論、魔術師たちもこの状況を黙って見てるはずもなく、遠距離から龍牙を狙い撃とうと手をかざした。

しかし、魔法を放とうとした魔術師たちの動きが突如止まり出した。

 

「なんだ?動きが急に止まって・・・」

 

「!? 見て!魔術師たちの体に細い糸が・・・!」

 

木場が魔術師たちの体に細い糸が絡まっているのに気づいた。

まるで蜘蛛の巣に絡まった蝶のように動けなくなる魔術師たち。その中心には、魔術師たちを拘束している糸を手で掴みながら宙に浮いている聖良の姿があった。

 

「『月の機神糸(アリアネンセ)』。彼女が付けてるグローブには、霊力で作られた強靭な糸が仕込まれていて、相手の拘束や切断の他、使用者によって様々な活用ができる多様性豊かな誓約神器」

 

剣夜の説明通り、聖良が付けている指ぬきグローブに糸を生み出していると思われる機構が付いていて、そこから大量の糸が放出されていた。

それら糸は彼女の周りに展開されており、近くの木や建物にも糸がかかっているのが分かる。彼女が浮いて見えるのも、糸の上に乗っているからだ。

公開授業の時に陸兎を脅したのも、恐らくこの誓約神器の力なのだろう。

糸で拘束されている魔術師たちが苦しそうに呻く中、聖良は冷たい目で両腕をクロスさせた。

 

赤の死舞踏(レッド・マカブル)

 

その瞬間、糸に絡まっていた魔術師たちの体が一斉にバラバラになった。

大量の血が飛び散り、バラバラになった遺体が落ちていき、地面を赤色に染め上げる。

 

「うぅ!」

 

「イッセー君!」

 

一誠は気持ち悪くなり、口に手を置いて、吐きそうになるのを必死に抑える。顔は大きく青ざめ、目に薄っすらと涙が溜まっている。

今までの人生の中で人の死は一度も見たことない。いや、レイナーレやはぐれ悪魔など、人の形をした異形が死んでいくのを見たことはあるが、どちらも死体が残らず、リアスの滅びの魔力で跡形も無く消滅という形だったため、死というものに対して、あまり実感が湧かなかった。

だからこそ、今この場で人が死んでいく様を。それも、こんな惨たらしい方法で殺されたのを見て、死への恐怖やら何やら、そう言った負の感情が一気に吐き出されてしまった。

人はグロいものを見ると気持ち悪くなる。無論、人それぞれによるが、少なくとも一誠は悪魔に転生して尚、それに対する耐性はまだ低かったようだ。

木場が慌てながら彼の背中をさするが、一誠の気分が良くなる様子はない。

 

「紫藤さん、大丈夫ですか?」

 

「あ、ありがとうございます、ミカエル様・・・」

 

イリナも気分が悪くなったようで、ミカエルが心配そうな表情で彼女の顔を覗き込んだ。

一誠と違い、教会の任務で何回か死体を見たことがあるため、彼ほど顔色は悪くなかったが、それでも気分は優れない。元教会の戦士だったゼノヴィアは、幼い頃から教会で育ち、精神が鍛えられているからなのかダメージは少なかった。

 

「こんな風に彼女が任務に出向いた先は、いつも赤い血で染まる。故に付いた二つ名は『赤月』。白き月すらも赤で染める殺しのプロだ」

 

「殺しのプロって・・・」

 

剣夜の言葉に、幾らか回復した一誠が動揺する。

その言い方だと、まるで退魔師と言うより、殺し屋に近いではないか。

そんな彼の気持ちを察したのか、陸兎は苦笑しながら口を開いた。

 

「まぁ、十天師は正義の味方じゃねぇからな。国の秩序を乱す存在と判断されたら、すぐにでも排除しに行く。それが例え、同じ人間だろうとな・・・その中でも、あの二人は十天師の中で'最も殺しに躊躇がない'奴らだと言っていい」

 

そう言いながら、陸兎は窓の外を真剣な表情で見つめる。

視線の先には、次々と魔術師たちを殺していく龍牙と聖良が見える。

校庭が徐々に赤く染まっていき、あまりにも残虐な光景に、一誠は見ていられなくなり、目を背けてしまう。

 

「・・・ひとまず、向こうは大丈夫そうだな。今のうちに俺らはヴァンパイアの小僧を何とかしねぇとな。危なっかしくて反撃もできやしねぇぜ」

 

窓の方を見ながら、アザゼルがそう言う。

すると、リアスがサーゼクスに進言してきた。

 

「お兄様、旧校舎に未使用の『戦車』の駒があります」

 

「・・・なるほど、キャスリングか」

 

キャスリングとは、レーティングゲームにおいて、『王』と『戦車』を入れ替える技だ。リアスはその特製を利用して、ギャスパー達がいる旧校舎まで瞬間移動しようという算段だ。

グレイフィアが確認した所、現状でキャスリングが可能な人数は二人までとなっており、最初にリアス自らが志願し、次に一誠が志願した。

転移する者が決まったところで、新たに志願する者が現れた。

 

「俺も行くぜ」

 

そう言って、志願してきたのは陸兎だった。

しかし、キャスリングをする人物は既に決まっており、陸兎がどうやって旧校舎まで行くのか疑問に思った一誠が彼に聞く。

 

「行くってお前・・・転移は二人までじゃ・・・」

 

「んなモン必要ねぇよ。旧校舎までひとっ走りしてくらぁ」

 

「危険よ!外には魔術師たちが待ち構えているし、校舎内にだって罠が仕掛けられてるのかもしれないのよ!」

 

リアスが反対するが、陸兎は気にともしない。

 

「そんなモン、まとめてぶった斬るだけだ・・・後輩のピンチだってのに、先輩がボーっと突っ立ってる訳にいかねぇだろうが」

 

真剣な表情で語る陸兎の決意を聞き、リアスはこれ以上反論しなかった。

代わりに、サーゼクスが前に出て、真剣な表情で言った。

 

「頼んだよ。陸兎君」

 

「その想い・・・十天師が一人、『白鬼(びゃっき)』八神陸兎がしかと受け取った」

 

サーゼクスに託され、陸兎は覇気のある表情で言葉を返した。

すると、今まで何も喋らなかったヴァーリが口を開いた。

 

「そんなことしなくても、無六龍牙が言ってたように、ハーフヴァンパイアごと吹き飛ばせば、それでいいんじゃないか?」

 

「テメェ!」

 

彼もまた、ギャスパーを殺して時間停止を解除しようと考えており、それに対して一誠が怒る。

 

「ちったぁ空気読めよ。和平を結ぼうって時だぜ?」

 

「じっとしてるのは性にあわん」

 

「なら、始原の龍の手伝いでもしてやったらどうだ?お前さんもあいつには興味あるだろ」

 

「そうだな」

 

アザゼルに言われて、ヴァーリはそのまま外に飛び出した。

そして、空中で背中に光の翼を。自身の神器を展開させると、小さく呟いた。

 

「禁手化」

 

Vanishing(バニシング)Dragon(ドラゴン)Barance(バランス)Breaker(ブレイカー)

 

声が聞こえた瞬間、ヴァーリの体を光が包み込み、彼の全身に白い鎧が纏われる。

鎧を纏ったヴァーリは、そのまま魔術師たちが溜まっている場所の中央に移動する。

当然、魔術師たちはヴァーリに攻撃するが、効いている様子はない。よく見たら、魔力弾が当たる直前に小さいシールドのようなもので防いでいるのが見受けられる。

 

「フンッ!」

 

ヴァーリは手に溜めた魔力を一気に放出させると、魔力が雷のように広がり、彼を囲んでいた魔術師はおろか、龍牙が戦っていた魔術師まで消滅させた。

狙ってた獲物が横取りされる形で消滅してしまい、龍牙は苛立ちながらヴァーリに向かって叫んだ。

 

「チッ、邪魔すんな!」

 

「そう言うな。どちらが多く屠れるか勝負と行こうじゃないか」

 

そう言いながら、ヴァーリは次々と魔術師を消滅させ、負けじと龍牙も続く。

 

「す、スゲー・・・めちゃくちゃ強いじゃねぇか・・・」

 

「だが、あの強さは危険な匂いがする・・・」

 

龍を宿し二人の猛攻に、一誠は圧倒されていた。その隣でゼノヴィアは二人の異常な強さに危機感を覚える。

驚きはしたが、ひとまずはギャスパーと小猫の救出が優先と判断した一誠は、リアスと陸兎に声を掛ける。

 

「部長、八神、必ずギャスパー達を助けましょう」

 

「えぇ」

 

「応よ。先行ってるぜ」

 

そう言うと、陸兎は『神速』でこの場から消えるように移動し、リアスと一誠もキャスリングで転移するのであった。

 

 

 

 

一方、場面は旧校舎に移り変わる。

ギャスパー達が待機してた封印の部屋には、魔術師が複数いて、部屋にいたギャスパーと小猫は魔法で手足を貼り付けにされる形で拘束されていた(何故か小猫は逆さで吊るされていたが)。

すると、部屋に魔法陣が出現し、キャスリングで転移した一誠とリアスが現れた。

 

「ギャスパー!小猫ちゃん!助けにき――'ドーン!'たぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

「ギャスパー!小猫!クールでカッコイイ先輩が助けに来たぞ!」

 

魔法陣から一誠とリアスが転移した途端、部屋の扉を蹴り飛ばしながら陸兎が入ってきて、彼の前にいた一誠は、背中から陸兎の蹴りを食らい、扉ごと吹き飛ばされた。

突然現れた陸兎にタイミング悪く吹き飛ばされた一誠。周りが何とも言えない空気になる中、状況を把握してた陸兎は、奥で倒れている一誠に驚きの声を上げた。

 

「なっ、イッセー!」

 

次に見知らぬ服を着た者達が視界に映り、何かを察した陸兎は、視線の先にいる魔術師たちを睨み、怒りの感情を出しながら叫んだ。

 

「お前ら!よくもイッセーを!」

 

『いや、貴方(先輩)のせいでしょ(ですよ)!!』

 

一誠が倒れているのは魔術師たちのせいだと勘違いしてる陸兎に向かって、敵味方両方からツッコミの声が上がった。

気を取り直して、リアスが捕まっている二人に声を掛ける。

 

「と、とりあえず・・・ギャスパー、小猫、無事みたいね」

 

「リアス部長、陸兎先輩にイッセー先輩・・・!」

 

「部長・・・こんな時に言うのもあれなんですが、このタイミングでよくこのセリフが出ましたね」

 

「言わないで。自覚してるから」

 

小猫の指摘に、リアスは少しだけ疲れた様子で返した。

一方、魔術師たちの方も正気に戻って、陸兎たちに脅しをかけた。

 

「どんな手品を使ったのかは知らないけど、少しでも動いたら・・・」

 

そう言って、魔術師の一人がギャスパーに魔力を溜めた手を向ける。

すると、ギャスパーが涙を流しながら口を開いた。

 

「部長・・・僕を殺してください・・・」

 

「な、何を言ってるの!?」

 

自分を殺してと懇願するギャスパーに、リアスは困惑する。

 

「僕なんか死んだ方がいいんです。臆病者で、役立たずで、それどころかこんな力のせいで、また皆に迷惑を・・・!」

 

「馬鹿なこと言わないで!」

 

弱々しく語ったギャスパーの言葉をリアスは力強い声で返した。

 

「貴方を眷属にした時、私は言ったはずよ。私の為に生きて、同時に自分が満足できる生き方を見つけなさいって。貴方は私の眷属よ。だから、私にいっぱい迷惑を掛けなさい。その度に私は何度も貴方をしかって、慰めてあげる。貴方がその答えを見つけるまで、私は決して貴方を見捨てない!」

 

「リアス、部長・・・」

 

リアスの決意にギャスパーの心が揺れ動く。

彼女の隣にいた陸兎も口を開いた。

 

「たく、お前はそうやって事あるごとに殻に閉じこもりやがって・・・亀でもそんなに閉じこもらねぇぞ」

 

「陸兎先輩・・・」

 

「お前は確かに臆病で弱虫だ。その上、護りたいって言っておきながら、テメェの力も制御できねぇ。情けないったらありゃしねぇ」

 

「ちょっと陸兎!」

 

「だが!・・・いざという時、男見せる奴だって思っている。少なくとも、俺はそう信じているぜ。だからよ・・・」

 

陸兎は一拍空けると、自分の体の心臓部分に手を当てながら叫んだ。

 

「テメェも俺たちを信じろ!テメェが信じている俺やグレモリー眷属を!テメェ自身が信じているその魂に従え!ギャスパー!」

 

陸兎の叫びがギャスパーの心を動かした。

更に、陸兎に蹴られて、床に倒れていた一誠も起き上がり、ギャスパーに向かって叫んだ。

 

「そうだギャスパー!テメェもグレモリー眷属だろうが!男見せろ!ギャスパー!!」

 

そう言いながら、一誠は籠手にアスカロンを出現させると、自身の手を軽く斬って、ギャスパーがいる方へアスカロンを振った。

アスカロンに付いた血が、ギャスパーの顔にべたりと付く。

 

「!?」

 

その血をギャスパーが舐めた途端、彼の体に異変が起こった。

瞬く間に強力な時間停止が起き、部屋にいる全ての存在を停止させた。

唯一動ける陸兎は、変化したギャスパーの姿を見ながら口を開いた。

 

「・・・随分、真っ黒になったな」

 

「はい、これが僕の護る力です」

 

ギャスパーは無数のコウモリに変化していた。

その力は凄まじく、魔術師たちや小猫、先程まで神器の影響を受けなかった一誠とリアスすらも止めていた。

 

「見せて貰ったぜ。お前の熱い魂を・・・!なら、俺も先輩の意地を見せてやんねぇとな!」

 

そう言うと、陸兎は『洞爺刀』を腰に当てて、居合の構えを取る。

 

「動けねぇ奴を斬るのもあれだ。峰内で勘弁してやるよ・・・夜叉神流一刀『乱れ咲(みだれざき)桜花(おうか)』!」

 

陸兎は部屋全体を目で追えない速さで動き回りながら『洞爺刀』を振るう。

 

「そして時は動き出す」

 

最後に決め台詞を言った直後、時間停止が解除される。

その瞬間、部屋にいた魔術師たちは一人残らず倒れた。

 

「え?」

 

「あれ?」

 

「いつの間に・・・」

 

リアスと一誠、いつの間にか拘束が解かれた小猫が呆けた声を出す。先の陸兎の技の余波で拘束していた魔法陣が壊されたのだ。

 

「もしかして、ギャスパーが・・・?」

 

「はい!僕が時間を止めて、その間に陸兎先輩が倒しました」

 

「そう・・・流石ね」

 

「やるじゃねぇかギャスパー!」

 

「えへへへ」

 

リアスと一誠に褒められて、ギャスパーは嬉しそうに笑う。

その後、キャスリング前にアザゼルから渡された暴走を抑える腕輪(二つ渡され、一つは一誠が付けている)をギャスパーに付けたところで、リアスが口を開いた。

 

「さぁ!急ぎましょう!」

 

リアスを先頭に、外に出ようとしたその時だった。

 

ドーン!

 

「な、なんだ!?」

 

「敵襲!?皆、注意して!」

 

突如前方にあった旧校舎の壁が壊れ、その衝撃に一誠が驚き、リアスは部員に声を掛けながら警戒する。

壊れた箇所は砂塵に覆われているが、徐々に晴れていき、そこから人影が姿を現した。

 

「う、うぅ・・・」

 

そこには眼鏡を掛けた悪魔の女がボロボロの姿で倒れていた。




・夜叉神流一刀『乱れ咲(みだれざき)桜花(おうか)
居合の態勢で構えた後、周りを超高速で斬り刻んでいく技。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。