ハイスクールD×D 銀ノ魂を宿し侍   作:イノウエ・ミウ

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最強の集団は十人くらいが丁度いい

今現在、兵藤一誠はかつてない緊張感に包まれていた。

昨日の夜、友人である八神陸兎から明日の放課後部室に来ると言われ、その言葉を信じ、待つことにしたリアス達。

その言葉通り、陸兎は複数の人物を連れて部室にやって来た。

彼らはリアスに進められるがままにソファーに座り(麗奈だけはソファーの後ろに立っている)、反対側のソファーにリアスが座って、その後ろに木場、小猫、一誠が立つことになった。

そこで彼は気づいた。あれ?この部屋ヤバくね?と。二大お姉さまに三大イケメン、ファンクラブ(非公式)が作られる程の美人生徒会長とその役員、学園のマスコットである小猫。一誠を除く全員が駒王学園の有名人である。

そして、そんな有名人だらけの部屋にいる一誠は、顔では平静を装っているが、内心物凄く居心地が悪かった。もっとも、一誠自身も学園ではエロ三人組の一人として、悪い意味での有名人ではあるが。

 

「お茶です」

 

「ほう、紅茶じゃねぇか。この間飲んだ緑茶も良かったが、こいつもいけるな」

 

「うふふ、ありがとうございます。お褒めが上手ですね」

 

「そりゃ俺は褒める時は噓偽りなく褒める脳みそまで真っ白人間だからな。あんたの紅茶は苦味よりも甘味を多めに含んだ俺好みの紅茶だ」

 

「まぁ!うふふ、嬉しいですわ」

 

内心緊張している一誠をよそに、人数分の紅茶を配り、そのままリアスの隣に座った朱乃は美味しそうに紅茶を飲む陸兎を見て、嬉しそうに微笑むと、そのまま彼と会話を始めた。

心なしか親しげそうに話している陸兎と朱乃。気になった一誠が陸兎に問いかける。

 

「おい、八神。お前、朱乃さんと知り合いだったのか!?」

 

「まぁな。日曜にお茶をご馳走になったぜ」

 

「マジか!?スッゲー羨ましい!」

 

「欲望に忠実だね~お前は」

 

純粋に羨ましがる一誠に向かって何処か呆れるように言う陸兎。

 

「ゴホン!二人共、そろそろいいかしら?」

 

「ハハハ、すみません。二人共、少し静かにしてよう」

 

咳払いしながら、会話している陸兎と一誠を睨み付けるリアス。剣夜がリアスに謝りながら、二人に注意した。

リアスと剣夜に言われ、会話を止めた一誠と陸兎を確認すると、剣夜は正面からリアスを見据えて喋った。

 

「それでは、まずは自己紹介からしましょう。僕の名前は十門寺剣夜。隣にいる見た目は問題児、頭脳も問題児の彼は僕の友人であり、問題児の八神陸兎です」

 

「おーい、ケツ穴まで小さくなった高校生探偵みたいな紹介してっけど、全部問題児なせいで行き着く先も問題児になってっぞ」

 

「いいじゃないか。これでも、見た目はマダオ、頭脳もマダオのマダオで紹介するかかなり悩んだよ」

 

「そんなんでいちいち悩んでんじゃねぇよ。つーか、この紹介だと、もはや俺の存在自体がマダオになってんだよ。暴ぜろイケメン」

 

自身に暴言を吐く陸兎を無視し、剣夜は後ろにいる麗奈の紹介をする。

 

「そして、後ろにいるのが、同じ生徒会の人間で僕の侍女でもある七星麗奈」

 

「七星です。どうぞお見知り置きを」

 

「(おぉー!まさかの従者系美女!普段から礼儀正しくクールビューティーな麗奈ちゃんだが、まさかこんなメイド属性まで兼ね備えていたとは!で、できる・・・!)」

 

丁寧にお辞儀をした麗奈を一誠は嫌らしい目で見ていたが、直後彼女から絶対零度の目で見られ、顔を青くした。

そんな一誠に誰も興味を示すことはなく、剣夜が話し合いを始めようと口を開いた。

 

「さて、自己紹介も済んだことですし、そろそろ始めましょうか」

 

「その前に、一ついいかしら?」

 

そう言って、手を挙げたリアスは目線をソーナの方に移す。

 

「ソーナ、貴方は彼らの事について知ってたの?」

 

「そうよ。だから、こうして話し合いの場に参加しています」

 

「・・・どうして、私に教えてくれなかったの?」

 

非難めいた視線でソーナを見るリアスに、剣夜が申し訳なさそうに話した。

 

「すみません、リアス先輩。ソーナにはある理由から内緒にしておくよう僕が告げ口しておいたんです」

 

「・・・その理由が、あなた達の正体に関することなのね?」

 

リアスがそう言うと、剣夜はコクリと頷いた。

 

「それでは、早速本題に入りましょう。まずは僕たちの正体を・・・と行きたいところですが、その前にリアス先輩、僕の名前に聞き覚えがありませんか?」

 

「貴方の名前?確か、十門寺・・・まさか!?」

 

剣夜の名前、正確には彼の苗字を口にした途端、リアスは目を見開いた。

 

「ご察しの通り、僕は十師族の家系の一つ、十門寺家の家柄の者です」

 

剣夜がそう言うと、リアスは険しい表情で息を吞んだ。

すると、後ろにいた一誠がおずおずとリアスに問いかける。

 

「あの~部長、十師族ってなんですか?それに十門寺家って?」

 

「・・・五大宗家とはまた違う、日本の陰陽師の組織よ。大昔、人間と妖怪との間で大きな戦いが起きたわ。その戦いで特に活躍した十人の陰陽師たちが、来たるべき異形との戦いに備えて作られた、日本で最強の陰陽師の集まりよ」

 

「十師族は名前の通り、十の陰陽師の家系で構成されています。その中で、特に優れた力を持つ家系、それが十門寺家です」

 

二人の説明を聞いた一誠は「へぇー」と興味深そうに剣夜たちを見た。

 

「つまり、十門寺の家はその十師族の中でもかなり強い権力を持っていて、強い陰陽師の人達がいっぱいいるってことか?」

 

「うーん、少し違うかな?」

 

一誠の言葉を否定した剣夜に疑問符を浮かべる一誠。

 

「十門寺家は他の十師族と違って、情報処理班や伝令班はいっぱいいるけど、実際に現場に出て除霊活動をする退魔師は僅か十人しかいないんだ」

 

「十人だけ!?そんなんで、最強の家系として成り立つのかよ?」

 

「それが成り立つのよ・・・」

 

表情を険しくしながら小さい声で呟いたリアスに首を傾げる一誠。

そんな一誠の疑問に答えるかのように剣夜は説明する。

 

「確かに、現場に赴く退魔師は十人しかいません。しかし、その一人一人が圧倒的な力を持ち、その力は日本に住まう異形同士の争いの抑止力となっています。そして、僕と陸兎と麗奈はその十門寺家が誇る最強の戦力。異形から人々を守り、日本の秩序を保つことを目的とした、十人の退魔師のみで構成された組織・・・《十天師》の一人です」

 

十天師、剣夜から述べられたその言葉に、リアスは険しい表情のまま小さく呟いた。

 

「十天師・・・まさか、ここでその名前を聞くことになるなんて・・・」

 

「部長、十天師ってなんですか?」

 

「一言で言えば、彼らは日本が誇る最強の退魔師の集まりよ。その強さは、一人一人が上級悪魔並みの強さを持ち、下手すれば最上級悪魔にすら勝るとも言われているわ。駒王町の領主になる前、お兄様から絶対に喧嘩を売るなって念入りに忠告されてたからよく覚えているわ」

 

リアスに説明された一誠は目を丸くしながら剣夜たちを見る。

 

「そんなに凄い奴だったんだな~八神たちって。でも、上級悪魔より強いって言っても、見た感じそこまでヤバそうには――」

 

「そりゃあ、今は力を押さえているからな。俺らが力を解放すりゃマジでヤベーぞ。ドモンもびっくりのスーパーモードになれるぜ」

 

「流石にGガンみたく体は金色にならないけど、そうだね・・・少なくとも、今この場で君たちを除霊する事くらい造作もないよ」

 

『!?』

 

一瞬だったが剣夜が放った凄まじい殺気にリアスと朱乃と一誠は顔を強張らせて、小猫と木場は咄嗟に身構える。しかし、その顔には自分で認識できないくらいの冷や汗をかいている。

緊迫した空気の中、ソーナがため息をつきながら剣夜に言った。

 

「剣夜、あまり刺激しないの。あなた、戦うためじゃなく交渉するために来たんでしょう?」

 

「ごめんごめん、少し脅かしてみようと思って。何せ、僕たち十天師は争いの抑止力となるために、日本に住まう異形にとって脅威となり得る存在であると認識しておかないとね」

 

ソーナに言われ、表情を緩めた剣夜だったが、一誠たちは先程充てられた殺気が体に残っており、その場から動けずにいた。

そんな中、リアスは紅茶を一飲みして心を落ち着かせると、会話を再開させる。

 

「あなた達の事については分かったわ。それで、ただ説明しに来たわけじゃなさそうね。さっきソーナが言ってた交渉って・・・」

 

「おっしゃる通り、ここからが本題です」

 

リアスの言葉に剣夜は真剣な表情で話を進める。

 

「本来、僕たち十天師はそれぞれ担当する地方に分かれて活動しています。ですが、一部の地域に関しては、何かあった時だけ介入する形で、普段は静観に徹しています。その地域と言うのが――」

 

「悪魔が収めている領地ね」

 

剣夜はコクリと頷きながら続きを話す。

 

「当然、リアス・グレモリーの領地である駒王町も、僕たちにとっては管轄外であり、はぐれ悪魔などの問題も全てあなた方に任せていました。しかし、今回は訳あって、あなた方と接触させていただきました。その訳というのは二つあります。一つはここ最近、駒王町で堕天使による異様な行動が多数見受けられること。そして、もう一つが・・・」

 

「堕天使による人間の犠牲者が出たことね・・・」

 

ゆっくりと出されたリアスの言葉に剣夜は再び頷いた。

すると、堕天使による犠牲者が自分の事だと気づいた一誠が、慌てながら剣夜に反論した。

 

「ちょっと待ってくれ!確かに俺は堕天使に殺されたけどよ。結果的に俺は部長に救われたんだし、そこまで問題にすることは――」

 

「兵藤君、それは結果の話だろう?結果的に君が助かったとしても、一度君が堕天使に殺されたという事実は変わらない。事実と結果を同じ目で見ないでくれるかい?」

 

「ぐっ!?」

 

剣夜に鋭い視線で睨まれ、たじろぐ一誠。だが、何とか反論しようと口を開こうとする。

しかし、その前に陸兎が一誠に険しい表情を向けながら喋る。

 

「イッセー。たまたまリアス・グレモリーが悪魔の駒(イーヴィル・ピース)を持ってたから良かったけどよ。もし、リアス・グレモリーが転生用の悪魔の駒を持っていなかったら、テメェは悪魔に転生することなく、その場で死んでたんだぞ。そうなれば、お前の周りにいる人間はどうなる?お前の家族は突然死んだ息子を見て、どれだけ悲しむ?俺らにとって、死人を出したって事実は簡単に済ますわけにはいかねぇんだよ」

 

「そ、それは・・・でも――!」

 

陸兎に言いとどめられて尚、反論しようとした一誠だったが、その前にリアスに止められた。

 

「やめなさい、イッセー。彼の言う通り、貴方を一度死なせてしまったのは、私の管理不足でもあったんだから。それで、貴方たちは人間の犠牲者を出してしまった私たちにどんな賠償を要求するつもりなのかしら?」

 

一誠を止めたリアスは険しい表情でそう問いかけると、剣夜は少し表情を緩ませながら喋った。

 

「そんなに身構えないでください。僕たちは別にそれに対しての責任を追求する為に来たわけではありません」

 

そう言って一拍空けると、再度真剣な表情になってリアスに問いかけた。

 

「リアス・グレモリー公爵。僕たち十天師と同盟を結びませんか?」

 

「同盟ですって・・・!?」

 

剣夜の言葉にリアスは驚かずにはいられなかった。

十天師程の強力な勢力が、一領主でしかない自分に同盟を提案する意図が分からない。

ある程度時間が経ったことでひとまず冷静になり、リアスは同盟を結ぶ理由を問いかける。

 

「・・・理由を聞かせてくれるかしら?」

 

「先程も言いましたが、この町で堕天使の活動が活発化した今、僕たち十天師はその被害を最小限に抑えるために駒王町に住まう堕天使に睨みを効かせておく必要があります。そのためには――」

 

「予め、領主である私たちと手を組んだ方が動きやすくなるってことね」

 

「その通りです。それに、僕たちの力を借りることは、強力な戦力を自分たちの手の中に収めることができます。つまり、あなた方にも理はあると思われますよ」

 

確かに、何かあった時、十天師程の強力な勢力が味方になってくれたら、戦いや交渉等で圧倒的有利になるだろう。しかし、もし何らかのすれ違いが起きて、十天師が敵になるようなことがあれば、自分たちは確実に除霊されるだろう。自分の選択で眷属たちを危険な目に合わせてしまうことは絶対に避けなければならない。

理を選ぶかリスクを選ぶか。リアスが自身の選択に対して葛藤していると、ソーナが話しかけてきた。

 

「リアス、私はこの話に乗るべきだと思います。堕天使がこの町で良からぬ動きをしてる今、何かしらの大きな事件が起こる可能性があります。最悪の場合、この町全体を巻き込む事態になるかもしれない。もしそうなったら、その時貴方はその魔の手から貴方の眷属たちを、この町の住人を守り切れる?」

 

「・・・・・・」

 

ソーナに言われて、リアスは再び思案する。堕天使の目的は未だに不明。もしかしたら、組織で動いている可能性だってある。その矛先が自分たちグレモリー眷属に向けられるならまだしも、関係のない町の住民や一誠の家族に向けられたとなった時、果たして自分たちだけで守り切れるだろうか。この町を守る領主として、今自分が選ぶべき最善の選択は・・・

長々と考え、周りがリアスを見守る中、リアスは遂に顔を上げて答えを言った。

 

「・・・分かったわ。私たちグレモリー眷属は、あなた方十天師と同盟を結びます。皆もそれでいいかしら?」

 

「私は異論ありませんわ」

 

「僕も賛成です。今後何かあった時、十天師の皆さんが力を貸してくれたら心強いです」

 

「私も特に異論は無いです」

 

「難しいことはよく分かんねぇけど、同盟を結べば八神たちと喧嘩しなくて済むんだろ?だったら、俺も賛成だ!」

 

眷属たちも特に反対する様子はない。リアスはそれを確認すると、剣夜の方に目線を戻した。

その目線の意味を理解した剣夜は微笑むと、ソファーから立ち上がった。

 

「決まりですね」

 

「えぇ、これからよろしくお願いね」

 

剣夜とリアスは立ち上がり、お互い手を握った。

 

「さて、同盟も成立したことで、早速ですが一つお願いを聞いてもらえないでしょうか?」

 

「お願い?何かしら?」

 

リアスの手を放した剣夜は陸兎の方を向き

 

「彼を・・・オカルト研究部に入れてくれませんか?」

 

そう言いながら、剣夜は陸兎の肩に手を置いた。

 

「八神君を?どうしてかしら?」

 

「今後何かあった時、人間側と悪魔側とで情報の共有ができたら、こちらも色々と行動しやすくなります。それに、彼もまた僕と同じ十天師の一人です。戦力としては申し分ないと思います」

 

「そうね・・・八神君個人としてはどうかしら?」

 

「まぁ、ここに居りゃ学校だけでなく、夜までイッセーをイジリ倒せそうだしな。オーケー、入部するぜ」

 

「おい!それどういう意味だ八神!?」

 

「いいわ。入部を許可するわ」

 

「部長!?」

 

陸兎の言葉に物申そうとした一誠だったが、直後にリアスが速攻で入部を許可したことで、驚愕の表情をリアスに向けた。

 

「それでは、僕たちはこの辺で。また何かあれば、連絡ください」

 

そう言って、剣夜はソファーから立ち上げると、ソーナと麗奈と共に部室から出ていった。

剣夜たちが部室から出たのを確認すると、リアスは「フゥー・・・」と息を吐き、背中をソファーに預けた。

 

「お疲れ様です、部長」

 

「ありがとう、朱乃。まさか、かの有名な十天師と同盟を組むことになるなんてね・・・」

 

朱乃から紅茶のおかわりを貰ったリアスは一杯飲むと、陸兎に向けて右手を差し出した。

 

「それじゃあ改めて・・・これからよろしくね、八神陸兎君。オカルト研究部は貴方を歓迎するわ」

 

「オーケー・・・あー・・・あんたのこと、なんて呼べばいいんだ?」

 

「そうね・・・部長って呼んでくれるかしら?」

 

「了解。よろしく頼むぜ、リアス部長」

 

そう言いながら、陸兎はリアスから差し出された手を握った。

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