リアスと握手を交わした陸兎は次に朱乃の方を見る。
「お前とは日曜以来だな。そんじゃ改めて、俺は八神陸兎。駒王学園の二年で問題児だが、裏の顔は十天師の一人だ」
「あらあら、では私も・・・改めまして、私の名前は姫島朱乃。駒王学園の三年生ですわ。そして、裏の顔はグレモリー眷属の『
そう言って、背中に黒い翼を出しながら朱乃は丁寧にお辞儀した。
「ほう、初めて会った時、只者じゃねぇとは思っていたが、グレモリー眷属の『女王』を務めていたとは・・・なるほど、通りでおっぱいがでっけーわけだ」
「いや、おっぱいの大きさ関係なくね!?」
「うふふ、人は見かけによりませんよ」
「朱乃さんも何普通に接しているんですか!?今のどう見ても、うふふって返す場面じゃないですよ!」
「うるせぇーぞ、イッセー。これだから発情期は」
「少し落ち着きなさい、イッセー君」
「あれれ~?これ、俺がおかしいのか!?」
しばらくの間、二人で一誠をひたすら弄すると、朱乃は後ろに下がり、今度は木場が入れ替わるようにやって来た。
「僕とは初めましてだよね?僕は木場裕斗。よろしく、八神君」
「おう、よろしくな。俺らの敵」
「敵!?僕、君に何かしたかな!?」
いきなり敵と言われ、驚く木場。
「勘違いすんなよ。俺らってのはイケメンに強い憎しみを宿す野獣みてぇな存在だ。奴らは常にイケメンを敵視し、イケメンを食い尽くそうとする。木場、お前も腐女子が狂喜するレベルのイケメンだから、俺らには常に警戒して生活しろよ。あ、イッセーも一応俺らの仲間だから、もし目が合ったら、そこいらに落ちているゴミ屑を見るような目で返してやってくれ」
「う、うん・・・分かったよ」
「おい!どさくさに紛れて俺のことディスってんじゃねぇよ!木場も真に受けて俺から距離を取ろうとすんな!つーか、さっきから木場のことばっかしか言ってるけど、八神も十分イケメンだろ!」
「ハハッ!なめんなよ。こちとら小学校の頃、学年一顔がイケてるランキングで二位だったんだぞ。しかも、一位の剣夜と大差での二位だぞ。イケメンって言われても、真の完璧チートイケメンが身近にいるせいで全然嬉しくねぇんだよ」
一誠に向かってそう言いながら、陸兎は制服の胸ポケットから羊羹を取り出した。
「!? 私のお菓子・・・!いつの間に・・・!?」
「部屋に入った時だ。旨そうだったから、ソファーに座る直前に地獄からの使者並みの速さですり替えて置いたのさ!(※取っただけです)」
「いや、そういう時に使うネタじゃないからなそれ!?」
しかし、後数センチで手が届くと思った次の瞬間
シュッ!
「!?」
陸兎の姿が突然消え、陸兎がいた場所を通り過ぎた小猫は慌てて動きを止める。
突然消えた陸兎に戸惑いながらも辺りを見渡す小猫。すると、陸兎は先程小猫がいた場所におり、手に持った羊羹を一口食べた。
小猫は先程よりも速いスピードで陸兎に迫ったが、またしても陸兎は急に姿を消し、今度は右側の方に移動してた。
「くっ!返してください・・・!」
「おぉ、中々いけるじゃねぇか」
何度も動き、必死になって陸兎を捕まえようとするが、陸兎を捕まえるどころか触れることすらできない。
やがて、陸兎が羊羹を食べ切ってしまい、それを目にした小猫は動きを止めると・・・
「・・・・・・(シュン)」
物凄くしょんぼりしてた。
その姿を見て、流石に悪いと思った陸兎は小猫に謝る。
「悪かったよ。詫びに明日、俺特性の手作りお菓子をお前にやるよ」
「・・・本当ですか?」
「応とも、侍は守れねぇ約束はしねぇよ」
そう言って頭を撫でると小猫は少しだけ機嫌が良くなった。
一方、リアス達は先程の陸兎の瞬間移動が気になってしまい、リアスが代表して陸兎に問いかける。
「ねぇ、八神君。昨日の時やさっき見せた瞬間移動、あれはいったい何なの?」
「これか?ただ素早く移動しただけだが何か?」
陸兎が発した率直な言葉に全員が固まる。
しばらくして一誠が我に返り、信じられないといった顔で陸兎に問い詰める。
「え?いや、噓だろ!?だって、どう見ても瞬間移動したようにしか見えなかったぞ!」
「こいつはそういう体術なんだよ。まぁ、木場の奴は気づいたみてぇだがな」
陸兎にそう言われ、全員の視線が木場に向く。
「・・・彼がさっき小猫ちゃんに追いかけられてる時、一瞬だったけど、地面に足を蹴って移動してたよ。正直あんな技、『
「俺らはこの体術を『
十天師全員が今の瞬間移動じみた技を使える。さり気なくとんでもないことを言った陸兎にグレモリー眷属は呆気に取られた。
「なんというか・・・流石は最強の退魔師の集団ね」
「こんなもんじゃねぇぞ。俺ら十天師は異形と戦うために人体を超えた色んな技を持ってるぜ。こんくれぇの事をできないようじゃ上級悪魔となんざ到底戦えねぇよ」
陸兎の言葉にグレモリー眷属の面々は顔を強張らせる。
圧倒的過ぎる。彼は間違いなく、自分たちよりも強い力を持っている。それだけじゃない、もし彼が自分たちの敵になるようなことがあれば・・・
そんなリアス達の様子を感じ取ったのか、陸兎は少し笑みを浮かべながら喋った。
「でもまぁ、今は十天師であってオカルト研究部の部員でもあるんだ。もし、お前らになんかあった時は部員の一人として最低限の義理くらいは果たしてやるよ」
「!?・・・フフッ、そういう義理堅い子、嫌いじゃないわ。改めて、これからよろしくね、陸兎」
リアス・グレモリーは自身の眷属、それと親しい人物にしか呼び捨てで呼ぶことはない。今この場で陸兎を呼び捨てにしたこと。それは、陸兎の言葉を信じようという彼女なりの決意表明であった。
夕方、部活が終わり帰路についていた陸兎は後ろに気配を感じ、その場で立ち止まった。
「・・・いるんだろ?隠れてないで出てこいよ」
「あらあら、流石ですわね」
後ろに振り向き、気配の正体を確認すると、曲がり角から姫島朱乃が姿を現した。
陸兎はこちらに近づいてくる朱乃を見ながら、尾行の理由を問いかける。
「目的は俺の護衛・・・いや、監視ってことか?」
「はい、部長のご命令で」
「そりゃそうだろうな。同盟結んだとはいえ、自分たちを一瞬で除霊することができる奴を身近に置くんだ。警戒して当然だな」
「うふふ、どうでしょう?」
惚けるように微笑みながら、朱乃は陸兎の隣に並んだ。
帰路につきながら、二人は会話する。
「それで、お前はどこまで俺を監視するんだ?もう少しで家に着くぞ?」
「そうですわね・・・部長は、一日中と言っておりました。つまり、あなたの家に住まわせてもらうことになりますわ」
「・・・マジで?」
「マジですわ。あ、生活品の事に関してはご心配なく。自分で用意しておりますので」
「さいですか・・・」
この時、表情では無表情のままの陸兎だが、内心では・・・
「(おいおいおいおい!聞いてねぇぞ!なんだよ、このラブコメ展開!?こんな展開、ToLOVEるだけで十分だろ!?)」
日曜日に出会ったばかりの少女と同棲することになるとは思っておらず、かなり焦っていた。
そんな陸兎の内心を知りもしない朱乃は陸兎の顔を覗き込むように問いかける。
「ところで、ご家族はお家にいらっしゃいますか?もし、ご家族が一緒でしたら、挨拶をしておかないと・・・」
「はっ!あぁ、そうだったな!俺は一人暮らしだから、そこら辺の心配はいらねぇよ」
「一人暮らしですの?ご両親とかはいらっしゃらないので?」
朱乃がそう問いかけた途端、陸兎は少し顔を暗くしながらゆっくりと言った。
「・・・二人共死んだ。親父は俺がまだ小せぇ頃、母さんは五年前にな」
「!?・・・ごめんなさい」
「謝んな。顔の知らねぇ相手の事なんざ、いちいち気にしてたらキリねぇぞ」
そう言ったが、歩いている朱乃の表情は暗いままだ。
「はぁ~、そこまで気にするなよ。そうだ!なら、家に着いたら、何か一つ家事をやれ。それなら、文句はねぇだろ?」
「そうですわね・・・それなら、今夜のお夕飯は私が作りましょう。腕によりをかけて作らせていただきますわ」
「そいつは楽しみだな・・・お!着いたな」
そう言って、陸兎は立ち止まり、上を見上げる。朱乃もつられて上を見上げた。
二人の目の前にあったのは、かなりの階数があるであろう高いマンションだった。
如何にも高級そうなマンションを「まぁ」と興味深そうに見上げる朱乃をよそに、陸兎はさっさとマンションの中に入ってしまい、慌てて朱乃も中に入る。
マンションの中に入った二人はエントランスを通ってエレベーターの前に立つ。
「俺ん家はここの30階だ。最上階だから、他の階よりもひと味違うぜ」
二人はエレベーターに乗り、陸兎の部屋があるであろう30階まで目指す。
しばらくして扉が開き、廊下を歩いていると、部屋の扉前まで辿り着いた。
「ここが俺ん家だ」
そう言いながら、陸兎は扉を開けて中に入った。朱乃も後に続いて中に入る。
中に入った朱乃の目に広がった光景は彼女を驚愕させた。広いリビングに綺麗に整備されているキッチンやバスルーム、ふかふかのソファーにかなり大きいテレビ、窓の外には屋外の温水プールが設置され、そこから駒王町の景色を見渡すことができる。
正に高級マンションとも言える部屋に朱乃は感心しながら、陸兎に問いかける。
「とても広いですわね。家賃はおいくらでしょうか?」
「さぁな。そこら辺は十門寺が負担してるから俺は知らね。つか、このマンション自体が十門寺が所有してるモンだ。キッチンは向こうにあるから、好きに使ってくれ。部屋は空いてんのがいくつかあるから、好きな部屋を選んで勝手に使え」
「分かりました。うふふ、これからよろしくお願いしますね」
そう言うと、朱乃はキッチンに向かった。
朱乃が冷蔵庫を開いてるのを確認した陸兎はリビングを出て、自分の部屋の中に入った。
部屋に入った陸兎は机に飾られている一枚の写真を手に取った。
「・・・信じられるか?この間、出会ったばっかの女と一緒に暮らすことになったんだぜ。母さん、もし母さんが生きてて、息子が女を家に連れて来たら、どんな反応してたんだ?」
手に取った写真を見ながら、写真に写っている人物に問いかけるように喋る陸兎。
その写真に写っていたのは、幼い頃の自分と後ろで陸兎の両肩を掴みながらカメラに向かって微笑んでいる雪のように白い髪の女性の姿だった。