夜、ベッドの上でイラつきのまま天井を睨んでいた。
「~~~~!!」
歯をおもいっきり噛みしめて足をじたばたと、怒りや悲しみのまま動かして白い布団にシワが増えていく。
「どうした」
俺の精神状態とは逆にザルバが落ち着いた声で語りかけてきた。
「一週間後、分かるだろ…」
「王立学校へルナが行くんだったな」
ザルバがどうでもいい事のように言った。
それを聞いてルナが居なくなる実感が強まって俺は不意に目を強く瞑った。
「あぁ、未成年のスキルボード持ちは優秀な人材として王立学校へ、本人が望もうが望まない関係なしに入学される…」
「それに、高い地位を得るなんて事も…あそこへ行けば確実になる」
「へぇ…」
ザルバは学校には興味がないんだな……俺もあんな自分とは違う世界の場所の話題を話すなんて思ってもなかった。
「それだけすごいんだよ、きっとルナはこのチャンスを逃さずにこの地味な村からきらびやかな世界に行くんだ…」
頭がぼーっとしてきた、きらびやかな世界…つまり貴族だとかの仲間入りだ、ホントのホントに別世界に行ってしまう。
「あ~…どれもこれも国のスキルボード鑑定人のせいだ」
スキルボード鑑定人、五年に一度国の命令で色んな村だとかを回って優秀な人材やスキルボード持ちを探す仕事をしてる人間。
「この前言ってたやつか」
「そうだ、大体1ヶ月前来た…あの時俺は体調崩して俺は家で寝たきりだったから皆の集まってる所に言ってない、だからルナが鑑定される所は見てない」
という事は、だ。
「セルヴィ、集まってたんなら村の皆は知っていたって事か?」
ザルバは疑問を口にし、直ぐ答えた。
「そうゆう事」
「なぜだ?」
察しはつく、ルナだ。
「…まぁ十中八九ルナが自分で俺に言いたいとか言ったんだろ」
「確かにそれならあり得るし、恐らくそういう事だろう」
「…………………」
そこから沈黙が流れ、今度はさっきとは逆に落ち着いた目で天井を睨んだ。
「はぁ…」
俺のため息が沈黙を破る。
「今日は嫌な夢を見そうだ」
「?」
俺の言葉に対しザルバが
当たり一面真っ白の世界で目を開けた。
目の前には俺のトラウマの象徴とも言える、凛とした立ち姿のまま牙狼の鎧が右手に牙狼剣を握り立っていた。
この夢が何度目なのか、もう数える気も起きない。
ただ言えるのは、こいつと苦しみながら戦わないといけない。
勿論、ホントならこんな時に戦う気なんかも起きるわけない。
俺はいつの間にか左手に握りしめた赤鞘の牙狼剣を右手で抜いた。
「……ッ………」
俺の体に緊張が走り、牙狼を睨んだ。
だが、こんなやつの相手をしてる程、今日の俺に余裕は無い。
「こんな気分じゃない…」
無意識にそう呟くと急に白けてきた。
俺は牙狼から目を剃らし、手から力が抜けていく。
だがその瞬間、目の前の牙狼が剣を俺へ向かって横方向に切りつけた。
「!?ぐばっ」
その剣は俺の喉を切り裂き鮮血が飛び出す、俺の口からは声と呼べない物が漏れだした。
あまりの痛みに後ろへ飛び、倒れた。
俺が倒れて居る間も後ろからやつが歩く度になる金属音がガシャガシャと近づいてくる。
「っ!!……お前ぇ!!」
この
だが、同時に鎧の召喚も出来ない。
それが分かって居てもさっきまでの白けた気持ちをかきけすように奴への怒りが沸いてくる。
(…クソッ!!)
倒れた状態のまま体の体重を両手で支え、後ろのヤツへ向かって凪払うように蹴りを繰り出した。
手応えがある…!!。
勢いのまま立ち上がり少し後ろへ退いたヤツへ剣を向けた。
「今日は、お前を倒す」
これ以上この悪夢に悩まされない為には牙狼を倒す、そういった確信が有った。
「ルナは一週間後居なくなるから…俺はな…笑顔で、元気一杯であの子を見送らなきゃいけないんだ…!!」
思いを叫び、俺はもう一度言う。
「今日で、貴様を倒す!!」
逆手で持っていた鞘を普通の持ち方に変え、牙狼剣と鞘の二刀流のかまえをとった。
「……!!」
この構えへの微かなヤツの反応を俺は見逃さなかった。
ヤツへ向かって走り出しその勢いのまま鞘で胴体へと突きを繰り出すが剣で受け止められる…が、そのまま止まらず走り抜ける。
今まで感情の起伏のような物が見えなかった牙狼が驚いたようにこちらへ顔を向けた。
俺とやつの目が会い、俺は奴の顔面へ右の拳で殴り抜けた。
「っ~!!やっぱ効かねぇよなぁ!!」
ヤツの体制が左に傾いた程度でダメージは無いように見える…がこれは俺が想像するヤツの次の一手を出させる為の布石!!…この為に俺はこの焼ける痛みと拳が砕ける痛みを代償に使った。
「がぁあ!!」
ヤツは崩れた体制からそのまま流れるように左側からの斬撃を行い、俺の体は剣で持ち上げられた。
が、その剣を掴み自分へとえぐり混ませた。
「!?」
「ぐぅう…はぁっはあっ…こうくるとっ思った…死ぬことがないこの世界じゃないと…出来なかったなぁ…」
あまりの痛みに途切れ途切れで言う。
「あんたのっ動きは…前から思ってた……プロっぽい、はあっはあっ…こうやって崩れた体制からそのまま次の動きに繋げる……そう思って敢えて剣じゃなくて衝撃を与えられそうな…ごほっ…拳を選んだ、そして左側へ体制の崩れたあんたはその動きをそのまま
痛みで意識が朦朧になって来るがまだ、絶対に倒れない。
「だからこうやって逃げられないように自分に剣をえぐり込ませた…他にも突きとかが来る可能性も有ったけど、左側から来る前提でやったから対応しやすかったよ…!!」
俺は剣を握りしめ…牙狼の胸へ突き刺した。
「ぐぅうう…」
剣を引き抜き、俺は痛みに悶えながら地面へ倒れ込んだ。
「はあっ…はぁっ……」
体の傷がふさがり始めた…本当にどうなってるんだ、今さらだけどこれがただの夢だとは思えない。
牙狼へ目を向けると、脱力したかのようにただ
「そうか…強いな」
「!?」
俺は初めて彼の声を聞いた、だが、まさか、この牙狼は…!!。
俺は傷が完全にふさがったのを確認し立ち上がった。
牙狼を前に唖然として俺は何もせずただ立っていた。
「……………」
牙狼がこっちを見つめ直すと鎧が眩しい輝きを放ち、上へと吸い込まれて行った。
そして、そこに立っていたのは俺が知っている人間…だった。
「
凛々しく力強い顔に鋭い目、そして茶色の髪と沢山ディティールの入った黒い服の上に羽織った純白のコートが特徴的な若い男性だった。
俺は…知ってる……俺が憧れて、俺のヒーローだった。
テレビの中のヒーロー…でも、彼は本物だ。
「俺は確かに冴島鋼牙
意味が分からない…どういう。
「…これは驚いたな……本当に鋼牙か?」
その時俺の左手から声が聞こえた…ザルバだ、確かに今まで居なかった。
「ザルバ!?…一体いつから…」
「俺様も今目を覚ましたばかりだ、一体どこだここは!!何故鋼牙がいる?」
ザルバでさえも慌てている、やっぱりここはそれだけ特別なんだ。
「落ち着け、ザルバ」
鋼牙…さんがザルバをなだめるように言った。
その後、こっちに視線を戻すと口を開いた。
「話を始めるか…」
「まず、ここが何処か分かるか?」
「いいえ…」
あまりの急展開に対して無気力な返事しかできない。
「ここは、内なる魔界…人の邪心につけ込み憑依する魔獣、ホラーを100体狩った魔戒騎士が自らの
鋼牙さんは丁寧に話した、俺からすれば本来テレビの中の話なだけに実感の湧かない…そう思ったのも束の間直ぐに俺は疑問を口にした。
「俺はホラーと一度も戦ってません…なのになんで……」
「あぁそうだ、お前はホラーと戦って居ないしこの世界に存在しないホラーと戦うことも出来ない」
「……………」
「だからお前は代わりに小さな影を100体狩った」
その言葉に、ただ聞くことしか出来なかった俺は声をだした。
「えっ」
「俺は最後の百体目だ」
困惑、それしか出ない…疑問すらも理解が及ばないから出しようがない。
「…意味が分からないだろうな」
「お前は何度も戦った筈だ、牙狼と」
(でも、勝ったのは今回が初めてなのに)
「お前は忘れてるだけだ、長過ぎる戦いに」
「飽きる程、牙狼と戦い、これを夢だと思った…それが原因だろう」
「…教えてください!!、これは何なんですか?」
「お前は何度も影と戦い強くなった、お前という光が大きくなって行ったんだ、なら対となる影は濃く、大きくなるそして…牙狼剣の記憶とお前の思い、そして成長した影全てが結びつき…この俺の姿をとった」
「俺は最後の試練だった、それをお前は乗り越えた」
…思いだした。
最初は弱かったんだ、あの牙狼は、でも段々と強くなって行って勝てなくなった。
鋼牙さんが俺の牙狼剣を見ると言った。
「こいつが俺の事を覚えてると言う事はきっとこいつは俺が使っていた…冴島家に伝わって居た牙狼剣と全く同じで少し違う別の牙狼剣だろう…人の思いを託した道具は色んな事を記憶する…俺の友
こっちに視線を戻し、俺の目を見た。
「この試練はお前へ力を授ける為の物と言う事だ」
「まさか…!?」
この時、俺は薄々勘づいて居た。
「今のお前は
「!?」
俺が驚くと思い出しかのように笑った。
「ふっ」
俺がそれに驚く間もなく、鋼牙さんは少しだけ俺に笑みを浮かべた。
「
あれ?…もしかて二刀流の事…かな?。
「えっと…まぁ」
「もっと上手く扱え」
ちょっと怒った鋼牙さんの顔を最後に、俺の視界は白く染まった。
ザルバ「守りたい者に近寄る影、渦巻く不安、お前さん、そういうのを愛って言うのか?初めて見たぜ 次回轟天 中編」
次の話書いてたら轟天関係ない話になっちゃったんで予告セリフ変えて中編にしました