死なないからってどうしろと?   作:明石雪路

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プロローグ

 こんにちは。君が今日来た新人だね。これまでと違う生活に少し戸惑うとは思うけど、何かあったら私に聞いて欲しい。こっちのシスターさんが君のお世話係。必要な物は彼女に頼め。エッチなお願いは……「神罰」扱い不慮の事故にあっても良いなら頼むといい。聖典に目を通しておきなよ

 

 色々話したいことはあるんだが、必要な情報を三つ伝えよう。

「この世界には創作物の様な魔法が存在する」

「この国ではもう10年近く戦争が続いている」

「君はこの世界に来るに当たって、超常的な力を貰っている」

 

 一つ目に関してはもうそのまま飲み込んでくれ。無理? じゃあそこのシスターさんに頼もうか。魔法じゃなくて奇跡? 悪かったよ、奇跡を見せてくれ。……ほら、手のひらで光の玉が浮いてるぞ。これぞ神の御玉……なんちゃって。

 

 もういいだろ。二つ目だ。

 この国では戦争が長引き、こっちもあっちも国力を低下させていた。敵地に近い街を要塞に作り替え、国の端っこの村からも徴兵しなくてはならないくらい切羽詰まっていたんだ。それでもどちらも戦い続けたのは、失ったものが多かったからだ。

 ギャンブルで賭けすぎて、勝つ以外にやめられなくなったと言うか……。君らの世代なら、ソシャゲのガチャに課金しすぎて目的のキャラを出すまで引っ込みがつかなくなったと言った方がわかりやすいか。

 そんなもんだから、その国ではまぁ「なんでもやった」わけだ。国が引き飛ぶような古代の禁忌魔術の研究をしたり、不可逆的な肉体の改造をしたり。ああ、ナントカって古代兵器を博物館から引っ張ってきたこともあったらしい。

 日本でも似たような事あったよね。

 国中が何か打開の一手を探し続けて、「それ」を最初に見つけたのはとある宗教の教会だった。

 神様に祈りが届いたんだって。

 なんだと思う?

 

 別世界に住まう知的生物を呼び出し、協力を仰ぐ…。

 

 平たく言うと、「異世界召喚」だよ。

 

 ここで三つ目なんだが、つまり君はいっぱい人を殺して英雄になってもらうために呼ばれたんだよ。

 

 こちらの意見を聞かずに呼ぶなんて馬鹿げてる。初めにパンフレットでも招待状でも送れって話だよね。……まぁ、大体のやつは楽しそうに暮らしてるよ。

 受験や就職に悩んでた若者ばっかが呼び出されて、何もしなくても目的とそれの達成に必要な能力を貰えて、このままここで生きていけば一生安泰だって言われたんだ。欲しいものは何でもくれる確約までしてくれてそりゃあ言うこと聞くよね。結局裏でイケナイことを考えてるメタボなおっさん共の人的資源にされてるだけだってのにな。

 

 そんなこと出来ないって? 平気平気。なんせ召喚された人間は君も含めて全員に特殊な力「祝福」を受けているからね。みんなミュータントみたいな超人なのさ。心の問題だって? それもどうせ変わるよ。

 そうそう、これも言っておかなきゃ。

 祝福はランダムで、それによっては人を殺す以外の役割を与えられるんだよ。土を操る力だったら中央で色々な建築物を作らされるし、人を操れたら議会で好きな法律作り放題だろ?

 英雄を求めて召喚しても、狙った祝福を持ってきてくれるわけではないらしい。

 この辺りもガチャみたいだよね。

 

 ではこれから君の祝福を調べよう。

 

 戦場で英雄になるか、誰かに雇われてサラリーマンみたく勤めて高給取りとして暮らすか、それとも実験台の上で被検体になるか。君はどれになるだろうね?

 

 

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